ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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312話 方舟の墜とし方

「どういうこと?」

 

 

 信じられない。セトの内心は、それで埋め尽くされていた。

 

 目の前ではアトラ・ハシースの方舟が炎上している。

 

 それは、まずありえない光景だ。ここのキヴォトスでは、あの多次元防壁を抜く方法はないはずだからだ。

 

 あれを外側から抜く方法は一つだけ。名も無き神々の王女の力を使うしかない。あらゆる可能性の鎧は、同じ可能性の力でしか打ち破れない。

 

 だが、現実は違う。確かに方舟にダメージが入っていた。だが方舟のしぶとい抵抗に、落下速度がだんだんと遅くなっていく。

 

 セトは方舟を睨みつける。あの青い光が再び放たれる気配はない。

 

 

「何? あの光は……」

 

 

 何処かで見覚えがあるような、ないような。あやふやな記憶を探る内、セトを置いてけぼりに事態が展開していった。

 

 再び攻撃が方舟を襲う。今度は光線ではない。巡航ミサイルの嵐だ。防壁の内側から展開したそれは、方舟の外殻を食い破っていく。

 

 それだけではない。トドメとばかりに、巨大な極光が方舟を飲み込んだ。

 

 最後に放たれたこの光を、セトは知っていた。これは、名もなき神々の王女の……

 

 セトは舌打ちして、ホルスに掴みかかる。

 

 

「……何したの? チャキチャキ喋って」

 

「何もしてませんよ。これが勝手に……」

 

「んな訳ないでしょうが!」

 

 

 ホルスは心外だと言うように反抗的に言う。機械は勝手に壊れない。こうなったのはホルスが何かしたに違いないから。

 

 

「いい? この世界線はこれで滅びる筈だった。見なさいよ」

 

 

 映像を一時停止しようとするが、全く操作を受け付けない。早送りも同様で、巻き戻しすらも出来なかった。

 

 

「……どういう事です?」

 

「どうしたもこうしたも、分からない? この世界は滅ばなくなった。だからこんなことになる」

 

 

 セトは、完全に言うことを聞かなくなったリモコンを放り捨てた。

 

 

「……リモコンは壊れてないですよ? あなたの操作が悪いんじゃないですか?」

 

「私の所為にしないでくれる? 大体、リモコンの所為だったらどれだけいいか」

 

 

 再生機器の本体も弄ってみるが、ウンともスンとも言わない。原因を探るためには、その瞬間の映像が欲しいのに。全く言う事を聞いてくれない。

 

 

「ああ、クソ! 動けっての! このポンコツが!」

 

「……何で動かないんです?」

 

「……言ったでしょ。滅びなくなったって。つまるところ、そう言う事」

 

 

 ホルスは首を傾げているが、当然の結果だ。滅びなくなったが故に、早送りも巻き戻しも出来なくなった。

 

 

「……いい? 今まで見ていたのは世界の記録。始まりと終わりが決まったもの。だから、早送りも巻き戻しも、スキップすら出来た。ビデオテープやDVD 、ブルーレイみたいにね」

 

 

 そう、今まではそうだった。でも、出来なくなったなら違う。もう閉じた世界ではなくなった。

 

 

「もうここから弄れない。ということは、この世界はこれからも続くってこと。先が定まらない世界を早送りは出来ないし、巻き戻しもできない。定められた筈の滅びを退けた」

 

 

 画面の中では、アトラ・ハシースの方舟が黒煙を上げて地面に突き刺さっていた。如何なる絡繰か、大凡の原型は留めている。だが、多次元防壁は展開出来ず、浮遊も出来ないようだ。

 

 時間稼ぎだろう。方舟からディビジョンシリーズが沸き出してくる。だが、セトにはこの先の展開が読めていた。

 

 本当なら。セトの世界なら、ユスティナ聖徒会を出したいところだろう。無限湧きする軍団は、方舟を修復させるまでの最高の時間稼ぎ要員だから。

 

 しかし、この世界では不可能だった。何故なら、出現しなかったからだ。

 

 虚妄のサンクトゥムの番人として置かれた敵。それは、アヌビスがゲマトリアを襲撃した際に、奪い取った物。その中に、ユスティナ聖徒会の複製があった。そして、ヒエロムニスもだ。

 

 ヒエロムニスは、ユスティナ聖徒会のデータを元にマエストロが制作した作品。であるから、この世界ではヒエロムニスは出現しない。

 

 つまり、その分の戦力に余裕がある。そして方舟には本船で突入した関係で、少人数でしか乗り込めなかった。しかし今、方舟は地上にある。こちらの世界では、周囲を囲んでのタコ殴りが可能であった。拉致られたであろうシロコの心配はしていない。プレナパテスなら、全力で守り切るだろうから。

 

 これで、負けろという方が難しい。色彩襲来の際の最大のネック。それはアトラ・ハシースの方舟だったから。シッテムの箱は使い手が使い手だし、アヌビスは対策委員会をぶつければいい。勝ちはもう揺るがない。

 

 

「本当に何もしてない?」

 

「いや、してないですよ……」

 

 

 じろじろとホルスを舐め回すように見るが、セトの目では困惑しているようにしか見えない。けれど、この状況下には思いあたる節しかない。

 

 

「そっちには前科があるからね……」

 

「それは、謝りませんから」

 

 

 何という面の皮の厚さだろう。私欲でカヤツリの情緒を滅茶苦茶にしたくせして。セトが同じことをやれば、烈火のごとくに怒りだすに違いない。今だって、同じような理由で何かしらの介入をしたとしか思えなかった。

 

 

「私が何かをしたとして、どうやってやるんですか?」

 

 

 流石に苛立ったのだろう。さっきの騒動で下がった目じりが、再びつり上がっている。

 

 

「これは映像です。少なくとも、さっきまではそうでした。介入なんてできませんし、したところでそれだけです。映像の終わり、世界の終わりは変えられない」

 

 

 今ここでセトたちが見ている物は、生放送のテレビ番組の様なものだ。だから、早送りも巻き戻しも出来はしない。今までそれが出来たのは、見ていた映像が終わった世界だったから。

 

 終わった世界は、録画されたテレビ番組の様なもの。だから、早送りも巻き戻しも自由自在。であるから、収録時間が決まっている映像を幾ら弄繰り回しても、収録時間以上の映像は作れない。二時間しか録画できないビデオに、三時間の映像は録画できないのと同じだ。

 

 今のセトたちは鑑賞者に過ぎない。生放送の、あの映像の結末を変える権利を持つのは、あの中に居る人間たちだけ。でも、それはありえないのだ。

 

 

「最後の光は、光の剣の砲撃だった。ケイと天童アリスの共同作業でしかありえない。プロトコル。アトラ・ハシースでしかね」

 

 

 元の世界でも見たから、すぐに分かった。あれなら方舟を撃墜できる。だが、この世界のアリスは、未だにケイと出会ってすらない。一体どこから、あの砲撃は飛んできたというのか。

 

 

「ほら、前にあったじゃないですか。ヒエロムニスに大人のカードを使った時ですよ」

 

「ああ、テラツリの雷槍? あの時見たく、可能性の先から持って来たって?」

 

 

 在り得るかもしれないと、セトは考え直す。先生の持つ大人のカード。全てをひっくり返す可能性のあるジョーカー。

 

 

「いや。違う。大人のカードじゃない」

 

 

 考えたセトは、その可能性を却下した。

 

 

「使えるなら、他の世界でも使ったはず。それでも、どうにもならなかった。それにあの光は防壁の内側から放たれて……内側?」

 

 

 内側というのが引っかかった。もし、大人のカードであの極光を呼び出したのなら、外から防壁にぶつかるはずだ。それに、極光が放たれたのは最後だ。普通に考えれば、最初に撃った方が効率的に違いない。

 

 

「内側、何で内側なの? それは、防壁の中に居るって事でしょう……?」

 

 

 それは不可能だ。あの防壁の中は混沌の領域のようなもの。あらゆる可能性で満たされた空間。矛盾する可能性で満たされた空間に居られるものは、並外れた演算機能を持つ本船と方舟以外にはない。

 

 

「内側から放たれたってことは意味がある。ああでなくちゃいけなかったってこと……」

 

「……少し、頭を冷やしたらどうですか?」

 

 

 ホルスが珍しく、セトを気遣う様子を見せた。それほどまでに今のセトが変に見えるらしい。

 

 

「異常事態なのは分かりますが、この世界に影響はありませんよ」

 

「……いや、嫌な予感がする」

 

 

 何か重要なことを見落としている。ずっとそんな気がしているのだ。誰かの掌で転がされている。そもそも、どうしてこの映像を見る羽目になった?

 

 

「そう、この映像群はひっそりと隠されていた。ログからコイツが追跡して……何で、完璧に消さなかったの?」

 

 

 そうだ。セトが思う犯人なら、証拠を完璧に消し去るだろう。そう言う人間だということは分かっている。それなのに、なぜこれらだけ後始末が雑なのだろう。

 

 

「見せたかった? コイツに、見せたかった?」

 

 

 ログを真っ先に見つけるのはホルスだ。ホルス以外にありえない。それで、ホルスがどうするかと言えば、犯人を見つけ出すだろう。そのために映像を精査する。それで、あんなことをやらかした。

 

 

「……誘導された? いや、それこそ不可能。あそこまでの事をするなんて予想は難しい。大体が、途中で飽きる可能性だってある。アレを全部見るなんて、どれだけ時間が掛かるか……待って、まさか……やられた!」

 

「何を……!?」

 

 

 セトはとんでもないことに思い至り、ホルスの襟首を掴んで揺さぶった。

 

 

「何するんですか!?」

 

「アンタ! この鳥頭! 全部確認するのにサンクトゥムタワーじゃなくて、目を使ったでしょう!」

 

 

 そうだ。最初からずっと引っかかっていたのはこれだった。全部確認したという割には抜けている個所がある。でも全貌は把握しているというちぐはぐさ。目を使ったともなれば、理由は明白だった。

 

 だから、ゲヘナもミレニアムも時間が延長している。あの超人の狙いが、そのうちの一つがようやく分かった。

 

 

「目を使って何が悪いんですか! 私の力ですよ!?」

 

「その結果、こんなことになってるのが分からないわけ!? 何、仕事を増やしてるの!?」

 

「何を言って……!?」

 

 

 苛立ちのあまり、ホルスを掴む力が強くなる。ホルスは事がここに及んでも、何も分かっていないらしい。

 

 

「いい。よく耳をかっぽじって聞いて。その鳥頭でも分かるように説明するから」

 

 

 ホルスを解放して、深呼吸を繰り返す。そうやってようやく、一先ずの怒りが鎮火する。セトは平坦な声を出す。

 

 

「多次元防壁から行きましょうか。アレを破る方法から」

 

「さっき、自分で言っていたじゃないですか。名もなき神々の王女の力でしか破れないと。確かに、私もそう思いますよ」

 

 

 ホルスは、セトが八つ当たりではない事が分かったのか。文句は言わなかった。真面目な返事に少し怒りが和らぐ。

 

 

「一つだけ方法がある。恐ろしいまでの力技なんだけど……」

 

「どうするんですか?」

 

「その目を使う。ここからホルスの目で見るだけで、あの多次元防壁は無効化されるの」

 

 

 それを聞いたホルスは意味不明な顔になる。使い手からしても、意味の分からない理屈だろう。だから、力技だと言ったのだ。

 

 

「多次元防壁、アレはどうやって無敵性を維持しているか。それは周囲に可能性の防壁を展開しているから。何て言えばいいか……攻撃が当たっている可能性と、当たっていない可能性が混在しているの」

 

「……当たってはいるんですか?」

 

「当たってはいる。ただ、その結果をすり替えてくる。当たった可能性もあるなら、当たっていない可能性もある。だから、当たっていない可能性をごり押してくるの。つまりあれよ。スポーツの試合で、当事者が誰も反則行為を見ていない状態。そうなれば当事者の自己申告に従うしかない。幾ら疑わしくとも、そう判断するしかない。だって、誰も見ていないもの」

 

 

 ドッジボールの方が分かりやすいかもしれない。確かにボールに当たったのに、当たっていないと駄々をこねる。確かに当たったと証明できない限り、外野に送れない。

 

 

「……演算機能で、全ての可能性を演算したという事ですか? 確かに力技ですが……」

 

「違う。その手段は本船でしかできないし、後手に回る分不利」

 

 

 それに物申す権利が、演算機能で証明する事。演算して、それはここにあるのだと証明する事。反則行為のその瞬間を監視カメラで撮って突きつける事。だが、それは簡単ではない。

 

 向こうも同じ力を持つから抵抗してくる。一つの反則を潰しても、幾つも向こうは繰り出してくる。後手に回る分不利だった。実際、セトたちの世界では対応しきれなかったのは記憶に新しい。

 

 

「それに、演算でそれを抜いたところで。最後の難関が残ってる。方舟本体っていう問題が」

 

「……それは防壁を抜いても、方舟を落とせないという事ですか?」

 

 

 セトは静かに頷く。防壁はまだ対抗できるだけマシなのだ。最大の問題は、方舟の無敵性である。

 

 

「このテクスチャで、アトラ・ハシースの方舟は落とせなかった。なら、一度も落とされたことが無いという可能性をごり押してくる。攻撃が当たっても無傷である可能性すらあるの。というか、私ならそうする」

 

 

 それを解決できるのが、名もなき神々の王女の力だった。直接可能性を操る力は、方舟の力の上位互換。教員や審判の宣言に等しいそれは、方舟の言い分を無視できた。

 

 ホルスは頷きながら、セトの解説を聞いたが、何か思いついたようだった。

 

 

「いや、でも。あの男は撃ち落しましたよね。あの子と一緒に」

 

 

 ホルスの言った事は核心を突く質問だった。本当に良い質問という奴だ。

 

 

「ああ、ケイがまだ鍵だった時のね。あれは鍵だけで作った張りぼてだし、まだ起動途中だった。でも、アレが大事だったと今なら思う。アレがあったから、方舟を落とせた」

 

「どういうことです?」

 

「あれで、方舟は一度撃墜されたかもしれないという可能性が生まれた。方舟のロジックに罅が入った。そしてこれが、名もなき神々の王女の力無しで、方舟を落とす唯一の方法だった」

 

 

 勿論、それだけではないかもしれない。でも、一助となったのは確かだと思っている。しかし、ホルスは残念そうに言う。

 

 

「でも、この世界ではそれは起きていません。その論法は使えませんよ。あなたの言い分が正しいなら、本船もありません。一体どうやって、方舟を落としたって言うんです?」

 

「方舟に向けて放たれた攻撃はどこへ行ったと思う?」

 

 

 いきなりそう聞けば、ホルスは豆鉄砲を食らった顔になった。

 

 

「すり抜けるんじゃないですか? 当たっていないんでしょう?」

 

「そう。私たちの世界はそうだった。でも、これまでの世界はどうだった? すり抜けた?」

 

「……いえ、違いましたね。消えたはずです」

 

 

 そう。消えた。すり抜けるでもなく、姿を消してしまった。まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「消えたのは、多次元防壁の無敵性を維持できなくなったから。当たっていないと言い張ることが難しくなった。だから、他の当たっていない世界の方舟が無事だからと言い訳した。だから、消えたの」

 

「当たっていない世界の方舟に飛んで行ったと? それなら理屈は通りますが……いえ、待ってください。だから、防壁の内側から? 処理できなくなって溢れ出した?」

 

 

 セトは静かに頷いた。それなら、ああなった理由も納得がいく。当たっていないという多次元防壁の言い訳が通じなくなったからだ。それで、他の世界の方舟は無事だと言い訳するしかなくなる。そうすればどうなるか。

 

 他の可能性の方舟。他の世界線の方舟へ盥回しすることになる。しかし、回された方の方舟も同じ状況だ。攻撃を受けている。何故なら可能性を操る以上は、全く関係ないところへは飛ばせないから。

 

 盥回しされた方も限界を迎えれば、他の世界線の方舟へと盥回しにする。それが巡り巡ればどうなるか。攻撃が当たらないという可能性が潰える。全ての世界で、攻撃が当たったという結果がいつか現れる。

 

 そうなればどうなるか。自転車操業だった可能性の制御が崩壊する。限界を迎えた攻撃が溢れ出す。溢れ出した結果があれだ。ため込んだ負債は自身へと帰る。

 

 

「ようやく思い出した。あの最初の光。カヤツリのレールガンだった。それにあの巡航ミサイルは、ミレニアムからの攻撃だった」

 

「待ってください。それじゃあ、あの攻撃は他の世界から流れ込んできたって言うんですか?」

 

「そう。そしてこの世界の攻撃も、他の世界へと流れ込んだでしょうよ。だから、ゲヘナもミレニアムもネフティスも、タイマーがおかしくなった。終わった世界が息を吹き返した」

 

「おかしいじゃないですか!?」

 

 

 ようやくここに至って、ホルスも事の重要性を理解したらしい。だが、その引き金が何だったのかは理解していないらしい。

 

 

「その理屈は分かります。でも、それは方舟の無敵性が崩された前提でしょう! 大体どうしてそんな事が──」

 

「だって、見たんでしょう?」

 

「何を……」

 

 

 言い淀むホルスをセトは睨んだ。

 

 

「その何でも見通す、ご自慢の瞳で見たんでしょう? この失敗した、滅んでしまった世界を観測した。この唯一かもしれない、方舟を退けた世界から観測したの。そうでしょう?」

 

 

 だから、こうなった。方舟の無敵性が損なわれたのは、ホルスの目に観測されてしまったからだ。

 

 

「その目は全ての世界を見たんでしょ。それは観測したって事。全ての世界を観測されてしまえば、方舟は言い訳できなくなった」

 

 

 そう。見えていなかったから。確認ができないからこそ、言い逃れが出来た。でも確認されてしまえばその手は使えない。全ての世界で、お前はそこにいると決められてしまったから。

 

 

「だから、他の世界に攻撃を流すことで対応した。だけど、その場面も今さっき確認した。残るは方舟自体の無敵性だけど、私たちの世界は方舟を破壊した。だから、もう方舟は逃げられない」

 

「いや、それも変でしょう」

 

 

 ホルスは往生際が悪かった。まだ、あの超人に乗せられたことを認めたくないらしい。

 

 

「どうして、この世界の理屈が影響するんですか。テレビを見たところで、映っている人間は反応しないでしょう!?」

 

「普通ならね。でも、その目で見たのが本当に良くない」

 

 

 例えば、セトだけが見たならこうはならなかったと断言できる。その場合は、ホルスの言い分が通る。テレビの登場人物が、観測者を認識は出来ない。

 

 

「それで、この世界と向こうは繋がってしまった。目線が通るってことは、向こうも見えるって事。よく言うでしょう。深淵を覗くとき、深淵もこちらを覗いているって。その目で見たなら、本当にその世界を覗いていたの。そして、その視線に一番に気づけるのは誰かなんて分かり切っているでしょ」

 

 

 覗いている視線に気づけるのは、同じ視線を持つ者だけだ。そして、そうされた者がどうするかなんて、火を見るよりも明らかだ。なにせ目の前の人物もそうしたし、あのログは全世界共通であるのだろうから。

 

 

「だから、聞いてみるしかないんじゃない? 多分話が弾むと思う。なにせ、同一人物なんだからさ」

 

 

 ホルスの後ろ。そこに鎮座したモニター。いつの間にか五つに分割された画面。Web会議の様になった画面のそれぞれからは、同じ顔をした人物が、セトたちをみつめていた。

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