ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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320話 鬼の居ぬ間の襲撃

「各自治区のインフラの停止を確認しました!」

 

「ふむ。問題ないようだな」

 

 

 部下の報告に、ジェネラルは満足して頷いた。今のところ、計画は上手く行っていた。

 

 ジェネラルはカイザー。カイザーの子会社はキヴォトス全域に浸透している。それらを活用すれば、各自治区。ゲヘナ、トリニティ、ミレニアム、その他諸々。それらのインフラを掌握するか遮断するのは難しいことではない。

 

 

「各自治区の様子は?」

 

「混乱しているようです。事態の把握にはしばらくかかるはずです」

 

「よろしい。では突入だ」

 

 

 精鋭で構成された部隊と共に、混乱する市民を掻き分けて、目的の場所へと向かう。気にすることは何もない。異常事態に展開しているようにしか見えない。

 

 

「何ですか! あなたたち──」

 

 

 煩く吠える守衛を銃弾数発で黙らせて、ジェネラルたちは中へ入った。

 

 中に居る数人も同じようにする。丸腰の相手なら簡単だ。このまま一階を制圧して一息つく。

 

 

「このまま上階もだ。行け。それとシャーレはどうなっている」

 

「情報通りに先生は不在。アビドスに出張です。向こうのインフラも飛ばしましたので、二、三日は帰ってこれない筈です。今、クラフトチェンバーを確保したと」

 

 

 報告を聞きつつ、ジェネラルは無線を取った。

 

 

「連邦生徒会の各階を制圧せよ。多少手荒に扱っても構わん」

 

 

 命令を飛ばしつつ、ジェネラルは焦りも感じていた。ここからは時間との勝負になる。各自治区が感づく前に、サンクトゥムタワーの制御権を手に入れなければならなかった。

 

 

「あともう少しです。プレジデント……必ずや宇宙戦艦をカイザーの手に」

 

 

 口に出せば本当になる気がして、ジェネラルは興奮する。

 

 ジェネラルたちが連邦生徒会とシャーレを襲撃するという暴挙に出たのは、それなりの理由があった。

 

 始まりは、カイザーのトップであるプレジデントの宿願だ。キヴォトスを支配するという野望。それは、カイザーコーポ―レーションをキヴォトスに展開するところまでは上手くいっていた。道を数歩歩けばカイザー系列の店が見つかるのだ。ある意味、キヴォトスを支配していると言っても過言ではないだろう。だが、プレジデントはそうは思っていない。ジェネラルもそうだ。

 

 ここは学園都市キヴォトス。生徒が政治を行い、生徒が物事を動かす都市。大人は契約や金銭で優位に立つことはできる。しかし、物事の争いで最終的にモノを言うのは力だ。

 

 生徒は大人と違って基本スペックが段違いだ。幾ら小細工を弄そうと、そんなものは直ぐにひっくり返されてしまう。

 

 今年の春先がいい例だ。九割九分九厘勝ちだった。それなのに圧倒的な暴力でひっくり返されてしまった。こういった苦汁を何度もカイザーは飲んできている。

 

 結論、力が必要なのだ。経済力や権力と言った立場によるものではない。暴力という純然たる力がいる。

 

 そこで宇宙戦艦だった。アビドス砂漠の底に埋まっているとされるそれ。過去の黒服がアトラ・ハシースの方舟とか言った古代のオーパーツ。それをようやくカイザーは見つけたのだった。

 

 あの空が赤く染まった日。あの時に現れた宇宙要塞と同じようなものと黒服が言ったのだ。あの力が手に入れば勝ちは決まったようなものだった。

 

 だが、そこで問題が発生した。そのままでは方舟は起動しなかったのである。プレジデントが言うには、起動には同様のオーパーツが必要だという。

 

 カイザーが把握しているオーパーツは二つ。先生が持つデバイス、それとサンクトゥムタワー。

 

 カイザーはどちらかを選ぶ必要があった。そして、先生ではなく、サンクトゥムタワーを選んだ。

 

 

「まだか……」

 

 

 ジェネラルが腕時計を確認すると、あまり時間は経っていなかった。しかし、はやる気持ちを抑えきれない。

 

 嬉しさではない。焦りだ。これは、博打に近い作戦。反対意見も多く、カイザーは二つに割れている。

 

 一つはジェネラルの推進派。プレジデントの意向に沿うように動く派閥。もう一つは全くの真逆。カイザーコーポレーションの維持を目的とする派閥。

 

 向こうの言い分はこうだ。このままではカイザー自体が立ち行かなくなる。そんなものは、余裕が出来てからでいいと。

 

 この言い分に、ジェネラルは不満しかない。そもそも宇宙戦艦さえ手に入れてしまえば、そんな事を気にする必要はないのだから。

 

 物事には機というものがある。それが今だということが分かっていない。

 

 確かに、カイザーは大きな打撃を受けた。空が赤く染まったあの日、突如出現した怪物達にカイザーはめちゃくちゃにされた。

 

 特に、巨大化したペロロジラとかいうのが痛かった。遅れて出現したカイテンジャーロボとの乱戦で、工場は破壊され、輸送ラインはズタズタ、建築資材も急騰と泣き面に蜂。だが、それは向こうもそうなのだ。

 

 連邦生徒会も余裕はない。壊滅したシラトリ地区の復旧に、自分の学園が心配なのか、それとも連絡役か、出向している職員も元の学園に一旦戻っている。

 

 だから、今がチャンスだ。あの怪物達の襲来で全員が等しくダメージを受けている今が。一番体力があったカイザーが、一番余力を残している。突入し、制圧し、サンクトゥムタワーの制御権を奪う。あの事件の後だ。一度襲撃を退けて、さぞ気が緩んでいるだろう。絶対に上手く行く。ジェネラルはそう確信していた。それなのにだ。

 

 

「あの男め……!」

 

 

 ジェネラルは怒りで目の前が明滅する。あの顔を思い出しただけで電圧が上がるのだ。

 

 元理事だったのに、もう一度這い上がってきた。だから、ジェネラルの意見を理解してくれると思っていたのに。理解して味方になってくれるどころか、あの目!

 

 

 ──カメラが曇っているようだが? 買い替えをお勧めする。

 

 

 完全にこちらを嘲っていた。それでジェネラルの中の尊敬の念は崩れて跡形もない。あんな頑迷な人間だとは思わずにいた過去の自分が恥ずかしい。

 

 

「だが、ここまでだ。進捗はどうだ?」

 

「はい。連邦生徒会は制圧しました。シャーレも同様です。クラフトチェンバー確保。もう少しで、サンクトゥムタワーが掌握……しました!」

 

「ヨシ! プレジデントに繋ぐ」

 

 

 上手くいった。それだけの事実がジェネラルに歓喜を与えてくれる。プレジデントともそうだろう。今頃、起動した宇宙戦艦に色めき立っている筈。

 

 しかし、繋がった先のプレジデントは、ジェネラルの想像とは違っていた。喜ぶどころか、力が抜けているような……

 

 

「プレジデント。どうしたのですか?」

 

「ない……」

 

「は?」

 

「これは宇宙戦艦などではない!」

 

 

 プレジデントの言葉が、よく理解出来なかった。電脳がエラーを吐いている間にも、プレジデントは絶望したように呟く。

 

 

「何も武装が付いていない……装甲も平凡なものだ。起動前と何も変わらない! あの時襲来した宇宙要塞とは似ても付かん! ただの鉄屑ではないか!?」

 

「そんな……」

 

 

 あまりの事態に、黒服とやらに対しての罵詈雑言も湧いてこない。だがジェネラルは自分が持っているものの価値をようやく思い出す。

 

 

「サンクトゥムタワーの制御権があります。それさえあれば……」

 

「時間が足りぬ。宇宙戦艦あっての作戦だ。学園都市を企業都市にしたところで、物量と力量差は覆せん……」

 

 

 詰みという言葉がジェネラル達に迫って来ていた。

 

 

「いや、まだ手はありますプレジデント。シェマタを使うのです」

 

「シェマタ……? ビナーを一撃で屠ったという……確かに、武力としてはこの上ない」

 

 

 あの理事は気にもせずその場しのぎにと債権を売り出したが、幸運なことにジェネラルがインフラを破壊した。ネットが使えない今。まだ、あの債権も買えた人間はいないはずだ。

 

 ならば、まだ。シェマタの場所はカイザーの物だ。場所も方舟を探した場所以外を探せばいい。列車砲を隠せる場所など幾つもない。

 

 

「早く、ネフティスのスパイに……? おい! どうし……!?」

 

 

 部下に声を掛けても、返事が無い。それどころか気配も無くなっていた。無線のチャンネルを変えても何の反応もない。全ての部下との通信が途絶していた。プレジデントの通信も、いつの間にか切れている。

 

 

「何だ……? 何が起こっている……?」

 

 

 理解不能の事態が起こっていた。状況把握の為に端末から顔を上げた瞬間、ジェネラルの顔面に何かが張り付いた。

 

 

「何だ!? ぬおっ!?」

 

 

 顔面一杯に張り付いて、首に何かが突き刺さる。その瞬間に身体の自由が失われた。倒れた衝撃で、顔面の何かが外れて視界が開くも、ピクリとも身体が動かない。

 

 視界の先では、部下たちがジェネラルと同じように倒れていた。その理由に思考が飛ぶ前に、腹の上で何かがカチカチ動く音がする。

 

 動いていた。ジェネラルの意思に反して、身体が動く。仰向けに転倒したジェネラルの身体。その上に乗った端末だろうものを、意思に反して両手が掴む。

 

 

 ──まさか……止めろ!?

 

 

 顔面に近づけられた端末に指先が、制御権を手放す操作を始めていた。そんな事をすればジェネラルは終わりだ。プレジデントもタダでは済まないだろう。幾ら声を出そうとも、虚しくジェネラルの中で響くだけだ。

 

 そして、遂に致命的な操作がなされてジェネラルは絶望する。舌を出してウインクする、デフォルメされた眼帯の少女のアイコンを最後に、ジェネラルの視界と意識は途切れた。

 

 

 □

 

 

『オウル。ふざけ過ぎ』

 

「良いじゃないですか。頼まれたことはちゃんとやりましたよ」

 

 

 オレンジ色の電脳空間で、眼帯の白い少女──オウルは言い返した。大体が、文句を言われる筋合いもないのだ。

 

 

「命令なら良いですが。あなたはお願いをしてきました。お願いなら文句を言うのは筋違いです」

 

『だからって、何だあのロボット。こないだの映画からパクっただろう』

 

「ふふん。アインが作って、ソフがソフトを組んだんですよ。完璧に決まっているでしょう」

 

 

 通信相手が暇つぶしに見ていた映画。それに出てくるデザインを拝借したのだ。カサカサ這いまわって、飛び掛かってハッキングするだけの単純な機構だが。中々よくできていた。

 

 

「ナイフで指の間を突いてあげましょうか。失敗なんてありえませんよ」

 

『はぁ……真っ二つにならないようにな』

 

 

 ハンとオウルは鼻を鳴らす。そんなヘマを踏むなどありえない。今回のお願いだって完璧だ。

 

 

「シャーレとここ、両方のカイザーの戦闘員も無力化しておきました。外から見たら、サンクトゥムタワーのファイアウォールに焼かれたようにしか見えないでしょう。そのサンクトゥムタワーでしたか。その制御権も戻しておきましたよ?」

 

 

 オウルはニヤニヤ笑いながら、チクリと刺した。

 

 

「勿論、現地であなたが小細工したことも分かりませんよ? ハンドラー?」

 

『そこは、感謝してるよ……』

 

 

 ハンドラーの口調が弱弱しい。疲れた表情が目に浮かぶようだ。ハンドラーの名前であるカミガヤは知っているが、こう呼ぶと嫌がるのである。黒服が呼んだようにパパと呼ぶともっと嫌がる。だが、それは勘弁してやる。いつも言い負かされるオウルは調子が上がって気分が良いから。

 

 

「今頃、アインとソフが必要な分の債権とやらを確保したでしょう。遮断されるのが分かっていれば防ぐのは簡単ですからね」

 

 

 ハンドラーが、向こうの誰かと手を組んで、ジェネラルとやらを誘導したのは言及しなかった。言った所でオウルの要求は通らないのだ。

 

 

「どうです、どうです。これで子ども扱いも不適当だと分かったでしょう?」

 

『そういう所がガキ臭いんだよ』

 

 

 ハンドラーの声が呆れ一色に変わった。

 

 

『出した宿題もこなせないくせに、一人前か? アインやソフはやってる。欲しいものとか、必要な物を言ってくる。言って、その必要性を感じたなら、何でも用意はしよう。で、そっちは?』

 

「……ふん」

 

 

 オウルは見えない事を良い事に、そっぽを向いた。

 

 

「あんなもの、あなたの匙加減じゃないですか。お願いじゃなくて、早く私たちに命令を下さいよ」

 

 

 オウルはため込んでいた文句を垂れる。そう、命令だ。オウルはお願いではなく命令が欲しかった。アインやソフだってそうだろう。

 

 オウル達は、気づけば知らない場所に居た。見下ろすのはハンドラーと黒服とか言う怪しい大人。勿論、オウル達は困惑した。

 

 故障していたオウル達を、黒服とハンドラーは直したのだという。そのせいで大した記録は無く、黒服たちはその記録が目当てだったと。その記録も、オウル達は何の感慨もない。それは、今のオウル達の記録ではない。前のオウルの記録でしかない。今のオウルは、前のオウルではない。

 

 自分の物ではない断片的な記録はある。だがそれは今のオウルに何も与えてはくれない。デカグラマトンとやらは今はなく、お姉様という大事だった存在にも合わす顔はない。お姉様が求めるのは前のオウルだ。今更別人が顔を出した所で困るだろう。

 

 オウル達は機械だ。何かを目的として作られた。機械には、皆それがあるのだ。製造目的という、生まれた時から与えられた天命の様なものが。

 

 しかし、オウル達にそれは無い。前に合ったものは知らず、新しく与えられもしない。ただ身一つでこの世界に放り出されたのである。人間にとっては取るに足りないそれは、機械たるオウル達にとってはとても重要なモノなのだ。アイデンティティといってもいい。

 

 それなのに、黒服は完全放置。面倒を見るように言われているハンドラーは訳の分からない事を言ってくる。身体のメンテナンスの関係上オウル達はここに居るしかない。よく話しているアインやソフは何故か懐いているが、三人の総轄たるオウルは我慢の限界だった。

 

 

「何が、自分で決めろですか。そんなもの出来るわけがないでしょう!」

 

『そうか? 皆やってるが。初めからやるべきことを決められて生み出されたヤツなんぞいないからな』

 

「それは人間の話でしょう!? 私たちは機械で──」

 

『悩んでるのにか? プラスドライバーが悩むか? 全部のネジを締められないって。悩まないだろ?』

 

 

 ぐっと、オウルは息を飲んだ。

 

 

『機械は悩まない。そんな機能は無いし、それしかできないし、そう生み出されるからだ。だが、オウルは違うだろう。いろいろできる。だからこそ、何をしていいか。何をするべきか、何のために産まれたのか悩むわけだ。それなのに、俺が決めていいのか? 間違ってるかもしれないぜ? それなら、自分で決めた方がまだ納得できるだろう?』

 

 

 困った。上手い切り返しが思い浮かばなかった。言い負かされたことにむしゃくしゃして、オウルは口走る。

 

 

「人間は良いじゃないですか。何でもしてもいいんですから。私の悩みは分からない」

 

『でも、好きな事ばかりやってもいられないんだ。嫌な事も、やりたくない事も、やらなくちゃならないんだ。その上で、やったことの責任は取らなくちゃならない』

 

 

 そんな事を言うハンドラーが、オウルは気にくわない。

 

 

「まるで、今もやりたくない事をやってるかのような言い草ですね」

 

『そうだ。やりたくもない事をやっている。実際、めんどくさいだけだこんなものは。何一つ俺の為じゃない。嫌いな奴らの尻拭いをしてる』

 

「じゃあ、どうしてやるんですか。止めてしまえばいいでしょう。人間は何をしてもいいんですから」

 

 

 通信の向こうから、特大のため息が聞こえた。ハンドラーの見えない顔がありありと浮かんで、オウルは頬を膨らませた。

 

 

『人生それだけじゃ生きられないんだ。誰かが、やりたくもない事をやらなきゃならない。必要だからやっている』

 

「それだけで、出来るものですか? 人間はおかしいです」

 

 

 オウルは理解できない。何でもやって良いなら、やりたいことだけやるべきだ。それが人間には許される。それなのに、ハンドラーはそうではないらしい。

 

 

『大人も子供も嫌いだ。開き直った奴が得をして、真面目な奴が損をするのも嫌いだ。誰かが誰かの尻拭いをしないといけない仕組みが嫌いだ。世界が気持ち悪くて大嫌いだ』

 

 

 やけに実感が籠っていた。でも、ハンドラーは言うのだ。でもと。

 

 

『でも、それだけじゃなかった。ただ、それを台無しにはしたくなかった。大人も子供も嫌いで、世界は気持ち悪くてどうしようもない。でも、早々に切り捨てるのはまだしたくない。これは、拘りなんだよ』

 

「拘り?」

 

『そうだ。自分の中に拘りを持つ。そうすると折れないでいられるのさ。強くいられる。嫌な事や辛い事も耐えられる。怪物を飼うと言ってもいいかもしれない』

 

 

 ハンドラーの声のトーン。それが低くなったように聞こえた。

 

 

『この世界は理不尽だよ。大切だったものから奪っていくし、ずっと隙を伺ってるんだ。強くなければ生き残れないし、何も守れやしないんだ。だから拘りがいるんだよ』

 

 

 珍しく、ハンドラーは饒舌だった。普段は必要最低限のことしか言わないのに。今は違う。今さっきやっていることの理由さえ言っている。

 

 

『それは何でもいいんだ。正しくなくともいい。ただ、自分が納得できればそれでいいんだ。あんまり期待し過ぎるのも良くない。反動が大きいから』

 

「なら、尚更正しい方が良いのでは?」

 

『そりゃそうだが。それが分かるのは最後なんだ』

 

 

 少し困ったような声になって、ハンドラーは言った。

 

 

『最後。最後になって分かる。最後には嫌でも分かるんだよ。自分のやって来たこととそうでない事が。でも、その時にはもう遅い。時間は残っていないんだ。なら、最後の最後に納得できたかどうかが大事だろう。それを、オウルは他人に決めて貰うのか? それで納得できるのか? 何かあった時には遅いんだ』

 

「分かった。分かりましたよ……」

 

 

 オウルは白旗をあげる。変わらずハンドラーには口では勝てなかった。

 

 

「だから、()()()なわけですか。命令じゃなく。自分で見つけろというんですか。なんて意地悪なんでしょう」

 

 

 よよよと、泣き真似を言ってみてもハンドラーはオウルを無視した。少し腹が立って、オウルは嫌がらせを開始する

 

 

「全く……ビナちゃんみたいなことを言いますね。あの子も五月蠅いんですよ。あなたは誰ですかって」

 

『ビナちゃん……? レールガンの事を言ってるのか?』

 

「それ以外の何があるんですか。よくアインがハードを弄って、ソフがソフトを弄っているあれですよ。向こうが言ったんですからね。好きに弄れと」

 

『マジかよ……跨って乗り物にしてるだけじゃなかったのか』

 

 

 ハンドラーの何とも言えない呻きが聞こえた。愛銃を滅茶苦茶にされているのだから、こんな声も出るだろう。しかし、オウル達は悪くない。良いと言ったのはビナーの方だ。それに、アイン達も適当な仕事はしないことは承知しているだろう。

 

 

『まぁ、いい。兎に角ありがとうオウル。助かった』

 

「そうでしょう、そうでしょう。賛辞は当然ですよね」

 

 

 ふふんとオウルは胸を張る。ハンドラーは気に食わない所もあるが、ちゃんと礼をするところと褒めてくれるところは気に入っていた。何しろオウルは機械。スペックを褒められるのは悪い気はしない。

 

 

「人間にしては上出来ですよ」

 

 

 放った言葉に返ってきた答え。それにオウルは唇を緩める。

 

 何だかんだ、オウル達の面倒を見ているのはハンドラーだ。お目当ての記録はオウル達に無かったのに、そうしている。機能停止させて放り捨てても良かったのにだ。

 

 今回の様に()()()も楽しいし、中学校というスペックを振るう場所や機会を用意してくれている。それに、何故かこの時間も悪くはないと思う自分も居た。

 

 それに、人間らしく面倒そうなことで悩んでいる。力が無いなら、オウル達を使えばいいのに、命令すればいいのに。そうしない。お願いをするところなど特にそうだ。それが、拘りなのだろう。

 

 本当に面倒くさい生き物である。なら、手助けくらいはしてやってもいいかもしれない。何しろオウルは優れているから。憐れにも力に縋る人間を助けるくらいはお手の物。

 

 だから、しばらくは一緒に居てやるのだ。オウルは緩んだ唇を締め直した。

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