ホシノ同級生相棒概念 作:洞鼬
「嬉しそうですね。お嬢様」
運転席のカミガヤの言う通りに、本日の十六夜ノノミの気分は上々だった。上々の後ろに上向きの矢印が二つ並ぶくらいには気分が良い。
なにせ、給料日である。明細に並んだ数字を見るだけで胸が高鳴るし、充足感が心を満たす。
傍から見れば、そんなに貧乏なのかと心配されるかもしれない。しかし、ノノミは別にお金に困っていない。そんな理由で喜んでいるわけでは無いのだ。
幾らネフティスの経営が火の車とはいえ、その日を暮らしていけない程に困窮してはいない。勿論、お小遣いだってあるし、非常用にゴールドカードも渡されている。
そして、ノノミの機嫌の良さは、このゴールドカードとお小遣いにあった。
「当り前じゃないですか。私のお金ですよ。私のお金」
さっきも言った通り、ノノミはお金に困ったことは無い。だが、それはノノミ自身の金ではない。親の金である。
引きこもっている状況下で、その金を何とも思わないで使い倒せるほどノノミは図太くはない。そうであれたなら、ノノミは引きこもらなかっただろう。
そこで給料である。これは正真正銘、ノノミが自力で手に入れた物だ。どう使っても文句を言われないお金。そのお金で手に入れた物はノノミの物だけの物になる。それだけの事が、とても嬉しかった。
「どう使いましょうか。ショッピングに行くのは決まりとして……」
ずっと行かないでいた買い物は外せない。この先どうするかを考えるだけで、ノノミの心は幸せで満たされていた。
「……お楽しみのところ悪いですがね。あと一ヶ月で終わりですよ」
「何でそんなこと言うんですか?」
ノノミは後部座席で唇を尖らせる。楽しい気分に冷や水を浴びせるなんて、なんて人だろう。
一ヶ月というのは、バイト先の事だ。後一ヶ月で、楽しいノノミのバイト生活は終わってしまう。
「しょうがないでしょう。バイト先の方にも都合という物があります。初めから、二ヶ月という約束なんです」
「そうみたいですね」
ノノミは平静を装って返事をする。どうにも、今の時期はバイトが激減するらしく、その間だけの契約だったらしい。冬にはバイトの需要が戻って来るとのことだ。
その理由は大体の想像がつく、また少しだけ嫌な気分になった。
「それに、お嬢様は中学三年生。それにもう秋ですよ。高校生になってもトリニティ通いを続けるんですか? 今からトリニティ入学は厳しいんじゃないですかね」
「そんな事しませんよ……」
カミガヤの正論パンチは痛い。正論だからだろうか。さっきから痛いところしか突いてこない。
カミガヤがトリニティを選んでくれたのは、ノノミに配慮してだ。アビドスの人間の目が嫌なノノミに配慮して、遠いトリニティまで送迎してくれている。
進路についても、まだ何も言われていない。引きこもっていたノノミにその話題を振るのはためらわれたか。それとも、そもそも聞く気がハナから無いのか。だがまぁ、恐らくはアビドス外の高校に通う事になるとノノミは見ていた。
何でかと言えば、アビドス内の高校はアビドス高校しか残っていない。そして、そのアビドス高校には人が殆ど残っていないと風の噂で聞いた。生徒会もほぼ解散状態だと。
そんな高校に行けと両親は言わないだろう。ネフティスはアビドスからも撤退することだし、理由が見つからない。
それに、ノノミの進路も問題になる。まさか本当にトリニティへ入学何て思ってはいないが、どうするかを決めなくてはならないのは確かだった。流石に高校へ行かないのは問題だからだが、もう秋だ。カミガヤの言う通りにそろそろ進路を決めなくてはならない。
けれど、ノノミは全くそれを考えてなどいなかった。考える余裕などなかった。少しばかり元気が出てきたのに、また頭を悩ませる問題が降ってきている。またぞろ気が重くなってきた。
「おや? また悩ましい顔をしてますね」
気づけば、バックミラーのカミガヤの片目がノノミをみつめていた。
「まあ、考える余裕も出てきたと言う事でしょう。そろそろ、次の段階と行きましょうか」
ノノミの頬が空気で膨らんだ。妙に腹が立つ。この状況を見透かしていると言うより、コントロールしていますと言うのが見え見えだ。隠す素振りすら見られない。
「時にお嬢様。バイトは後一ヶ月で終了ですが、貴女はどうしたいですか?」
「どうしたいって……そんなこと言われても」
言葉の通りだ。いきなりそんなことを言われても、ノノミは答えられない。考えてすらいないからだ。何とか捻りだそうとするも、中々答えが出てこない。
「教えませんよ。そんな目で見ても無駄です」
助けを求めるように鏡を見ても、カミガヤの返事は素っ気ない。突き放しの意図を感じる言葉に、ノノミの胸が痛んだ。
「自分の進路でしょう? 人に決められるのは嫌だったんですよね? さっさと決めれば良いじゃないですか」
好き勝手に言ってくれるものだ。進路をそんな、今日の夕飯のノリで決めないでほしい。
「相談くらい良いじゃないですか」
「おお、お嬢様にしては真っ当な意見が出ましたね。八つ当たりしない分だけ成長しましたか?」
ノノミは言い返そうとした口を閉じる。初めて褒められたのかもしれないが、まったくもって嬉しくない。
「何で私に聞くんですかね」
「だって……色々知ってるじゃないですか」
カミガヤはノノミが変だと言う。勿論言い返したいがそれは出来ない。ノノミはここで言い返せば八つ当たりになる。負けたような気になる。勝つためには、進路を言うしかない。
でも、その為だけに決めるのはノノミには難しい。ノノミは何も知らないからだ。何を選ぶべきか、何が一番良いのか。何も知らない。
それなのに、カミガヤが言うのは嫌味ばかりだ。ノノミは頬を膨らませたまま睨む。
「あのですね。私より聞くべき相手が居ると思うんですが?」
「嫌です……」
ノノミはポツリと呟く。
誰に相談すべきか。そんなものの答えはもう決まっている。聞くまでもない。子供の面倒は誰が見るべきかなど、誰でも知っている。
「……両親に相談しろっていうんですか?」
「分かってるじゃないですか。それが普通ですよ」
カミガヤの返事はにべもない。確かに普通かもしれないが、ノノミはそうしたくなかった。
「嫌です! なんであの人たちに頼らなきゃいけないんですか! ずっと何もしてくれなかったのに! あの人たちはただ見てるだけじゃないですか!」
ノノミのいら立ちが、一瞬で沸点まで振り切れる。ただでさえいい気分だったのをぶち壊された怒りが、それに拍車をかけていた。
「ずっと、助けてほしかったのに! 何ですか! 何か言っても、あの人たちは、ああしろこうしろと言ってくるだけ! 出来ないことしか言ってこない! そうあるべきことしか押し付けて来ない!」
あの人たちは、ノノミの事などどうだっていいのだ。会社の方が大事で、ノノミの事などどうでもいいのだ。だから、規範から外れないようにグチグチ言ってくる。仕事が忙しいのか何だか知らないが、ノノミの話を聞いてくれない。
「そんな人たちに何を言っても無駄です! だったら──」
目の前の、今も車を運転してくれている人間に聞く方がよっぽどいい。アルバイトの時のように、解決策をくれるのだから。実績はもう十分だった。それなのに、カミガヤは鉄面皮。怒るでも嬉しそうにするでもない。運転も静かなままだ。
「お嬢様は失敗したくないんですね」
「それの何がいけないんですか!?」
誰だって失敗はしたくない。それは正しいことのはずだ。ノノミだって誰だって、目の前のカミガヤだってそうのはずだ。でも、カミガヤの言葉には、それはいけないことのような響きがあった。どうしても、裏切られたような気がして、ノノミの口調はキツクなった。
「誰だってそうじゃないですか。あなただって、そうでしょう?」
「それは、否定しませんがね」
答えるカミガヤは全く嬉しそうではなかった。ノノミには理解が及ばない。だってきっと、カミガヤは間違えない。そうできる強さがある。ノノミをそうできるし、してくれたのに。なぜそんな顔をするのか。アルバイトだって、ノノミは感謝しているのだ。何度もそれを伝えたし、お礼も言った。それなのにこの反応は力を出し渋っているようにしか見えない。
「私は早く強くなりたいんです。早く、あなたみたいに。そう成れれば誰も頼らなくても──」
そうすれば、そうできれば、ノノミは一人で立てる。もう、誰にも頼らなくていい。全部自分の力で対処できれば他の人の目なんて……
「──お嬢様は失敗しないで、私みたくなりたいんですか?」
「そうです。あなたが教えてくれれば出来ますよね。失敗抜きで」
ノノミは答えるが、そうだと確信していた。底知れなさがカミガヤにはあるが、ノノミと大して変わらない。カミガヤをカミガヤたらしめるそれを教えてくれるなら、ノノミだってそう成れると思う。
「……はい。できますよ」
「本当に?」
「はい。できますよ」
「こんな私でも?」
「はい。今すぐに努力すればできますよ」
普段とは違って、ロボットのようにカミガヤは繰り返すが、ノノミは気にもならなかった。不安が解決した安堵感が体を満たしていて、ノノミはそうしてくれるカミガヤの言葉にとびついた。
「じゃあ、お願いします」
そうすると、カヤツリは無言でハンドルを切った。走っている道路脇へと減速していくのを見たノノミは嬉しくなる。もしかしたら今すぐにでも教えてくれるのかもしれない。
「なめてんじゃねーぞ! こら! 失敗しないで強くなりたいだと!? なれるわけねぇだろうが!!」
「えっ……」
車を停車させたカミガヤから飛び出したのは怒鳴り声だった。あまりの勢いに、ノノミは言葉が出てこない。
「成長にはなぁ、失敗と痛みが伴うんだよ。教えたところで意味なんかないんだ!」
サイドブレーキを引いてこちらを向いたカミガヤは、憤怒の形相だった。今までのような慇懃さは無く、行儀悪くノノミをにらみつけている。
「何度も失敗したんだ! 思い通りにいかなくて、後悔にむせび泣いた! 好き勝手に言われてレッテルを張られた! 何回も裏切られて、八つ当たりされて、好き勝手に言われるんだ! その度に、何かを失うんだ!」
あまりの感情の奔流に、ノノミは座席からずり落ちそうになる。そんなノノミを見ても、カヤツリは全く怒りを引っ込めない。
「現実を突きつけられた気分はどうだ! この根性無しが! 高々アルバイトで成長した気にでもなったか!? 環境が変わったからそう感じただけだ! あれは初めからあった素質で、お前は何にも変わっちゃいない! 自分の親とすらまともに話せないんだからな!」
痛いところを突かれて、ノノミの目じりに涙が浮かぶ。
「なんだ! 泣きゃあ解決するとでも!? 俺を悪者にして解決か!? 自分は悪くありませんか!? だから、こうなっているんじゃないのか!?」
涙の玉を目ざとく見つけたカミガヤは、そこからノノミを追及してくる。耳が痛いどころの話ではない。今すぐにでも逃げ出してしまいたいくらいだった。おかしなことに、車のドアロックは開いたままだ。運転席のカミガヤは閉められるどころか、チャイルドロックすら掛けられるのに。
いつでも逃げていいのだ。ノノミの進退など、カミガヤはどうでもいいらしかった。
「教えて下さいだ? 何をどう教えて欲しいかすら言わないなんて、随分と人任せじゃないか。ええ!?」
思い切りノノミの触られたくないところを触れて、そこをカミガヤは言葉でグサグサえぐる。
「何にもないのは、人のせいじゃなくてお前のせいなんだよ。お前は怖がり過ぎて、何も手を伸ばさない! 失敗した事ばかり考えてやがる! だから、甘くして自信をつけさせればこれだ!」
苛立ちが治まらないのか、カミガヤの貧乏ゆすりが車を揺らす。
「契約違反だ! 悩むのは良いが、選択権を俺に丸投げするだと! お前は俺の操り人形か!? それが嫌だったとお前は言ったんじゃないのか! 自分で決めたいって、そう言ったんだろうが! あれは嘘だったのか!?」
「嘘なんかじゃありません!!」
思ったよりもはっきりした声が飛び出して。ノノミは驚いて口を押える。
「なんだ。言えるじゃないか。じゃあ、なんであんなこと言った」
「……意味ないじゃないですか」
そうだ。一人でできなければ意味などない。一人でできて初めて、ノノミは自立したといえるのだから。そうして初めて、ノノミは楽になれる。
「一人で出来なきゃ意味なんかないんです。ましてや失敗なんて。ただでさえ遅れているのに」
「そんな奴いない。一人で生きてる人間なんかいないし、失敗しない人間もいない」
「あなたがそうじゃないですか。何でもできて……」
「誰なんだソイツは……」
ノノミの言葉の途中で、カミガヤは笑い出した。本当におかしそうに笑うので、ノノミは言葉が途中で止まる。
「俺はお嬢の世話人なのにか? お嬢が居なきゃ、俺は立場を失うのにか? これのどこが一人で生きていけてるんだ? 前にも言っただろう。そんな気持ち悪い人間はいないって」
「そういうんじゃありません! あなたはここに居なくても平気でしょう!」
ずっと思っていたことだ。このカミガヤという人間は、ネフティスに居なくても生きていける。だから、学園に通っていないのだと。
だが、予想に反して、カミガヤは首を横に振った。
「それは生きているだけだろう。この世界じゃ何かしようと思ったら、誰かに関わらなきゃいけないのさ。同じ引きこもりでも、お嬢はゲーム感覚で人は操れない。それに精密作業途中で中途半端に手を出して、十四分割にはなりたくないだろ?」
ノノミの知らない誰かを口にして、カミガヤは乱暴な口調でノノミを笑う。
「何ですか、その口調……」
「だって、もう俺に全部丸投げするんだろう? じゃあ、お嬢の世話人じゃないんだ。公私はキッチリつけるんだよ俺は」
「そんなこと……」
ない。そう言おうとして、ノノミは口を噤んだ。さっき自分が言った事を思い出したからだ。
「なんだよ。今更気づいたのか?」
カミガヤの煽りに言い返せない。最初から言い返せていないが、これは致命打だった。
「俺のいう事をやるんだろ? 自分では何も決めないんだろ? なら、お嬢が主人かは微妙なラインだと思いません? そうであるなら、言う事なんか聞くものか」
「じゃあ、どうしろって言うんですか!?」
やりきれないノノミは叫ぶ。
「私は何にも分からないんですよ!? どうすればいいか聞いただけで、なんでこんな事……」
「言ったぞ俺は。どうすればいいかを拒否して、現状に満足して、低きに流れたのはお嬢だろう」
また正論が飛んで、ノノミは唇を噛む。いつもなら反抗する筈なのに、気持ちが萎えていた。恐らくはきっと、知られてはいけないモノを知られてしまったから。
「これ以上、何を守るんだ? 別に良いカッコなんかしなくても良いと思うが」
「……そんなんじゃありません」
「そうか。なら、そうなんだろうな」
責められると思っていたのに、それが誰に向けてなのか。カミガヤは突いてこなかった。
「……嘘を吐いた」
ポツリとカミガヤが呟く。
「皆が失敗する。程度の差はあるけれどな。その痛みを持って、二度としないように人は成長する。その失敗と痛みは人それぞれで、代用は利かない。だから、お嬢は俺のようになることはできない。同じ経験をしたことろで、そうさせることはできない。諦めろ」
「じゃあ私は、どうすれば良かったんですか……」
「……自分の事を好きになり過ぎない事。ちょっとだけ自分を嫌いになる。いや、厳しくなる事。今まででよかったのに、お嬢は安心しただろう。バイト先で受け入れられて、このままで良いと錯覚したろう。アレは良くない」
やり過ぎたと今更思ったのか、カミガヤは一旦、ノノミから目を逸らした。
「お嬢は自分が嫌いだったろう。それが変わりたいと思う原動力だった。だが、自分を好きでいるのは大切だ。それが無いと立てないからな。それでお嬢は土台の自信が無さ過ぎて燻ってた。このまま積んだところで、俺の手助けのお陰だという考えが振り切れない。それを解消したかった」
そこで梃入れした結果こうなった。ノノミは自信をつけすぎた。そのままでいればよかったのに、このままで良いと思い込んでしまった。それはトリニティだけの、あと一ヶ月だけの環境だったのに。
ちょっとだけ自分を嫌いになる。そんな風に言うカミガヤは、あんなに色々出来るカミガヤは、きっと自分が大嫌いなのだろう。そんな事をふと思った。
「で? どうする」
「……言う事を聞かないんじゃなかったんですか」
事ここに至って、憎まれ口しか出てこない。それでも、面倒くさそうにカミガヤは答えるのだ。
「お嬢が全部放り投げるならな。ただ、そんなんじゃないと言った。だから、待ってる」
何を待っているのか。それをきっと答えはしないのだろう。さっきから、答えたり答えなかったりと散々だ。いったに何が基準……
「……聞けばいいんですか? ちゃんと決めて聞けばいいんですか?」
「最初からそう言っているが? 俺はミレニアムの検索AIじゃないんだ。ちゃんと聞くことを絞ってくれないとな。これから先の事全てを、どうすれば良いんですかなんて。ぼやけた質問は答えられない」
意地悪だ。意地が悪い。でも、そうさせるノノミも悪いのだろう。
「私は両親と口を利きたくありません。ありませんが、向こうはそうでないかもしれません。必要以上の事を話したくないんです」
「微妙に忙しい時間帯を教える。そこで電話すれば、上手く躱せるだろう。食い下がるか、別の日付を聞かれたら忙しいとでも言えばいい」
さっきまでのが、嘘みたいにカミガヤは答えてくれた。でも、まだ懸念はあるのだ。
「両親の答えが気に入らなかったら? どうするんですか?」
「何を言っても気に入らないんだろう? なら、何が気に入らないのか考えるべきだ。お嬢は、自分でどうしたいのかまだ分からないんだ。だから、気に入らないと言う答えしか出ないんだよ」
ため息を一つ吐いて、カミガヤはノノミを見る。
「お嬢はどうしたいのか。どんな風なネフティスの令嬢になりたいのか。それを何となくでも良いから掴む事が次の段階。そのために話したくない両親と話すべきだ」
「あなたは分かるんですか?」
「さぁ? 私はお嬢じゃありませんからね」
両手を肩の位置に挙げて肩をすくめるカミガヤだが、絶対に嘘だと確信できる。そうでなければ、週末の休養日にノノミから電話など借りないだろう。しかし、聞いたところで答えないのは容易に想像できた。
「……少し手伝って欲しい事があるんですけど」
「代わりに話すのはナシですよ」
そんな事は勿論分かっている。口調も元に戻っているから、まだ手伝うことにしてくれたようで、少しノノミは安心した。
だからこそ、ノノミは気になった。カミガヤが何を考えているのか、何のためにここへ来たのか。最後にどうしてノノミを助けてくれるのか。
今までの事はどう考えても、片手間でやれることでは無い。さっきの怒声も、本気で現状維持を良しとしたノノミに怒っていた。カミガヤは本気で、ノノミをどうにかしようとしていた。
もし居たら、まるで年の近い兄のような雰囲気のこの人は、聞いたところで仕事だからと言うだろう。しかし、それではノノミは納得できない。それなら、ノノミはノノミなりに答えを見つけようと思うのだ。
そうすれば、そうできれば。ノノミは何かを見つけられそうな気がした。
だから、そのための第一歩をノノミを大きく踏み出す。
「明日、私のショッピングに付き合って下さい」