ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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358話 冴えたやり方

 ──これから、どうすればいい?

 

 

 そんな問いが、カヤツリの頭を支配していた。今は、頭がそれで手一杯で、これから先に起こるだろうこと。先生やホシノたち、もしかしたらハイランダーも来るかもしれないこと。それらの事実は分かっても、そんな事までは頭が回らなかった。

 

 問題なのは、これからどうするかだった。カヤツリの前には二つの選択肢がある。このオンボスを維持するか、しないか。その二つ。

 

 維持する道は、あの塔を完成させればいい。今すぐに姿を眩ませれば、そのくらいの時間は稼げるだろう。

 

 維持しないなら、このままここで待てばいい。風で吹き飛ばしたが、大して遠くまでは飛んでいない。直ぐにここにやってくるだろう。そして、今のカヤツリに言い返す理由が無い。

 

 皆、ここは嫌だと言う。気持ちは分からないでもない。こんなものはズルだからだ。これから自分たちで作り上げていこう。そんな話をしていたのに、完成品を押し付けられればこうもなろう。

 

 だから、この完成された世界はいらないと、皆して言うのだ。自らの力で作り上げたものが欲しいと。

 

 正しい。圧倒的に正しくて、眩しい理由。それに対抗するには、同じくらいの真っ当な理由が必要だった。そんなものは、もうどこにもないのだけれど。

 

 

「……どうして、ユメ先輩」

 

 

 ポツリと、呟く。きっと言ってくれると、心のどこかでは思っていたのに。あのユメは何も言わなかった。

 

 分かっている。あれは、本物では無い事くらい。でも、限りなく本物に近い存在でもあった。きっと、あの状況下ではユメなら同じことをしただろう。

 

 

 ──何だってよかった。肯定でも、否定でも、何でも良かったのに。

 

 ──肯定してくれたら、その通りに出来ただろう。あの眩しい理由にだって対抗できた。

 

 ──否定してくれたら、きっと頷けただろう。これで、カヤツリの味方は全員消えるから。

 

 

 でも、ユメは何も答えてはくれなかったのだ。何の答えもカヤツリに与えてはくれなかった。お陰で、フラフラと二つの選択肢の間で揺れている。

 

 今までの理屈であれば、オンボスの維持を止める選択の一択だった。維持を望む者は誰もおらず、懸念点だったミサイルの被害に対する補填や後始末も先生が何とかした。もしかしたら、ミサイルが降る前よりも資金は増えるかもしれない。

 

 きっと、その方が良いだろう。きっと皆が幸せで、笑っていられるだろう。

 

 けれど、その中にカヤツリは入っていないのだ。

 

 

「ちくしょう……」

 

 

 悪態が口から零れる。それをすんなりと選べない自分自身に対してだ。本来であれば、迷うこと自体があり得ない。今まで掲げていた理由から則ればそうで、大人なら、そうするべきだから。

 

 出来ないのは、ただのエゴだ。そうしたくないから選べない。選んでしまえば、一つの事が確定する。

 

 それは、今までカヤツリがやって来たことは全くの無駄だったという事。

 

 そもそもミサイルが降ってきたのは、方舟襲来の際にシェマタを起動したから。あれさえなければ、ミサイルを撃つ大義名分は無かった。起動していない物に対して、文句のつけようもない。

 

 それに、先生が問題を一日も掛からず解決してしまった。あれはミサイル発射の事実があってこその成果だと分かってはいるが、素直に喜べるはずもない。

 

 想像してみて欲しい。君の醜態のお陰で全部うまくいったよと。そう言われて喜べるだろうか? 少なくともカヤツリは喜べない。そんな事を言われたら、相手の骨の十本やニ十本はへし折るかもしれない。

 

 よくある話だ。公的機関(ヴァルキューレ)に汚い川を掃除してくれと頼んでも聞き入れられず、爆弾が埋まっていると虚偽通報すれば対応してくれる。優先順位の問題で、そうなっている。結局、普通の大人しく真っ当な手段よりも。強引でダーティな手段の方が正しかったというオチ。いままでの道のりが、余りにも馬鹿馬鹿しい。

 

 大体が、最初からゲヘナと取引なんかしなければよかったのだ。そうすれば、この騒動などありはしなかったし、ユメだって死にはしなかった。

 

 

「……分かってますよ。間違いだって言うんでしょう? だから、肯定してくれなかった」

 

 

 分かっていた。初めから分かっているのだ。全部最初から間違っていることくらい。誰も肯定してくれないのは、最初から間違っているからだ。

 

 きっと、途中で戻るべきだったのだ。ホシノが正気でないことくらい、直ぐに察せられた。途中から、アレは純然たる事故だったのだと、信じるしかなかった。だから情けなくても、恐ろしくても、そうするべきだった。

 

 チャンスは何度もあった。ノノミの世話を押し付けられた時や、ネフティスに犯人が居ない事。そもそも犯人自体が存在しないのではないかと思い始めた時。それに、ノノミにあの提案をされた時。

 

 何故そうしなかったか。それは、自分自身のプライドだ。カヤツリは間違っていることを認めたくなかった。アビドスに戻るという事は、そういう事だ。あの時の判断は間違っていた事を認める事に等しい。これまでの努力は徒労に過ぎなかったのだと。それは何より辛い事だ。

 

 

「……でも、どうして、間違ってると言わなかったんですか?」

 

 

 ふと、思う。どうして、ビナーの時の様にユメは注意しなかったのか。

 

 あの時も一人で全てをカヤツリは解決しようとした。それを、一人でやるべきではないし、そのことが悲しく、頼られないほど弱くもないと、そう言ったのはユメのはずだ。

 

 なら今回も、そう言うはずではないのか? カヤツリが本当にすべて間違っているのなら、ユメはそう言ったはずだ。

 

 でも、言わなかった。なら、そこには何らかの意味が。ユメの考えがあったはずだ。

 

 

「……間違っても、合ってもいない……?」

 

 

 何も言わなかったのは、そう言い切れなかったから。カヤツリの選択は、正しくも間違いとも言い切れないから。だから、何も言えなかった。言わなかった。ユメには、そうする理由が無かったから。

 

 だったら、あのユメの沈黙。それ自体がカヤツリへのメッセージだったのではないのか? カヤツリの状態や心情なんかお見通しで、ワザとああいった対応だったのでは?

 

 

「じゃあ、あの人は、どんなつもりで……」

 

 

 なら、考えればいい。ユメなら、どんな風に考えたか。あのお人よしで、優しかった先輩は、なんてカヤツリに言うだろう。短いようで長かった、幸せだったあの日々が、正しい答えを教えてくれた。

 

 

「……自分で決めろってことですか? 自分で決めていいってことですか?」

 

 

 善悪、真偽、正当かそうでないか。その判断はカヤツリが決めていい。大人とか子供とか。正しいとか間違っているとか。そんな判断基準は置いておいて、自分で決めていい。

 

 そう、ユメは言ってくれているのではないのか。カヤツリの為に、そうしてくれたのでは?

 

 

「……そうだよな。あの人なら、きっとそうする」

 

 

 だから、少し困ったように、懐かしそうに、あの幸せな記憶のままに、幸せそうに笑って、何も言わずに消えた。カヤツリの為に、そうしてくれた。きっとそうなのだと、そう信じる。

 

 そう思って信じた瞬間、ずっと重くのしかかっていた葛藤が、何だか軽くなった気がした。正しいか、そうでないかで一本道だった思考が解放された。そのお陰で、動かなかった足が余りにも簡単に動く。

 

 そして、一つの感情が沸き上がってきた。

 

 

「ああ、ムカつく……」

 

 

 それは苛立ち。今までに感じた物とは違う、衝動的な物。理論や理屈、損益などはオマケの、あまりにも幼稚な感情。

 

 

「……ああ、クソ。何だか、段々と腹立ってきたな」

 

 

 しかも、今までの様に収まりはしなかった。最初の苛立ちを呼び水に、今までの事や過去の事、これまでの対応に対する憤りが噴出する。地面を蹴ってみるが、それで収まるはずもない。

 

 兎に角、この場で発散はできない。ここで怒鳴り散らしたところで、鬱憤が更にループするだけで非生産的にも程がある。こういったモノは、正しく発散するべきだ。

 

 

「……そうだな。なんかやり切ったみたいな顔してたけど、ただ初めに戻っただけじゃないか。そうか、それでムカついているのか」

 

 

 なぜ自分がイラついているのか。それを整理すると、納得のいく理由が次々と思い浮かぶ。ミサイルが降る前、最初の振出しに戻っただけだ。

 

 それは当然の事であって、話し合う最低条件に過ぎない。それで偉そうにされているのが気に入らない。

 

 

「……いや、何で、ああまで言われなきゃならないんだ?」

 

 

 ここに至るまでの、罵詈雑言。カヤツリが人を人とも思わないような、そんな分からず屋のような言い方をされていたことに気づく。

 

 

「……いやいや、謝って終わりか? 恥をかいて終わりか? 勝手に始末をつけて許してほしいって言うのも違うだろ。謝罪もさせるって、最低ラインだろう。それは」

 

 

 ミサイルを撃ち込んだ二人にも、怒りが湧いて来た。顔面に集中線が入って変顔になるくらいは、全力で殴りつけてもいい気がしてくる。

 

 

「よし……」

 

 

 怒りで頭が茹っているが、それでもやる事はハッキリした。考えてみれば簡単な事に過ぎない。思うようにやればいいのだ。カヤツリの責任が取れる範囲でやればいい。大人はそういう者らしい。

 

 だからカヤツリは、遠くに見える多くの人影が大きくなるのを待ちわびる。その新鮮な感覚が、どこかおかしくて、カヤツリは小さく笑った。

 

 

 □

 

 

「待ってましたよ。先生」

 

「待ってた?」

 

 

 先生の喉からは思わず、そんな言葉が飛び出た。本当に待っているとは思わなかったからだ。カヤツリのあの拒否の様子からは考えられない事態だ。テラノでさえそう思って、塔の方へと先回りしていた。

 

 そして、事情を説明した対策委員会も困惑の表情でカヤツリを見ている。

 

 

「話があるんでしょう。先生」

 

 

 カヤツリの様子は明るい。何かがあったのは確実で、それが何なのかは予想するのは簡単だった。だが、それを問い詰めるのも違うだろう。近くにはホシノもいる。ここで話すことでもない。

 

 

「……まずは、謝罪をしたいんだ。本当に申し訳ないことをしたよ」

 

 

 先生は頭を下げる。

 

 しっかりと対応しなかったこと、あの二人のやったことは許されない事で、しっかりと真実を明らかにし、賠償も謝罪会見もすること。最後に、このアビドスを戻せる手段もある事。

 

 それらをカヤツリは頷きながら聞き、渡した書類を隅々まで確認していた。

 

 

「……はい。分かりました。その謝罪は受け入れますよ。ハイランダーの娘たちにも説明はしてくださいね。私から言うのも違うでしょうから」

 

「それは当然だよ。勿論、そうさせてもらう」

 

 

 カヤツリはにこやかで、話はスムーズに進んでいた。対策委員会は安堵した表情で、明るい雰囲気も滲み出ている。この後にやって来るハイランダー。ネフティス中学卒業生たちもそうだろう。

 

 けれど、先生はそう考える事は出来なかった。あっさりと許した? どう考えても、そうは思えない。にこやかな雰囲気と表情が、一層その考えに確信を持たせていた。

 

 考えてもみて欲しい。ずっと年単位で進めていた計画を、あと一歩のところで滅茶苦茶にされた。その上理由が余りにも救えないと来ている。だから、オンボスを展開するなどという事態になっている。

 

 それほどまでの行動を起こしたカヤツリが、ただ謝罪の舞台を整えて、賠償をしただけで許す? まずありえない。これから先の要求を考えれば、もっと。

 

 

「それで、相談なんだけど。あの三人の能力を使って、土地を復活させるんだ。ミレニアムが全面協力して、再構築の精度を上げてくれる。その為には──」

 

「このオンボスを解除してほしい。そういった話ですよね? 一々オブラートに包んで言わなくても分かります。それが本題でしょう?」

 

 

 やっぱりと先生は冷や汗を流す。今の理由だけでない事は、とっくにお見通しだ。ホシノや他の生徒たちの拘りで、そうしたい事は隠しきれるものではない。

 

 

「それで、どうかな?」

 

「嫌です」

 

 

 ニコニコ笑顔で、語尾に星でもつきそうなくらいの言い方だった。カヤツリは、妙にハイテンションで、それが先生の嫌な予感を加速させる。

 

 

「何で!? だって、謝罪を受け入れたんでしょ! 私は、私たちは、カヤツリと頑張りたいんだよ! そう思ってくれたんじゃないの?」

 

「それは分かるよ? バカじゃないんだからさ。そんな大声で言わなくても分かる」

 

「だったら!」

 

 

 ホシノは信じられないとばかりに、カヤツリに噛みついた。対するカヤツリは、態度を一切変えない。無理やり封じ込めている感じでもない。きわめて自然体に見える。

 

 

「そういう風に、俺は頑張りたくない。……ああ、言い方が悪かったかな」

 

 

 言われたホシノが絶望した顔をしているせいか、カヤツリが申し訳なさそうな表情になる。

 

 

「そっちの方法で頑張りたくない。俺は俺のやり方を譲らない」

 

「……それは、このまま、この世界を維持するという事ですか?」

 

 

 申し訳なさそうな表情とは裏腹に、発言内容はホシノ及び対策委員会を突き放す物だった。ノノミが眉をひそめて確認するも、カヤツリは涼しい顔だ。

 

 

「聞こえなかったか? そう言ってるんだよ」

 

「だから、それは間違っています! あなただって、それは分かっているはずです!」

 

「うん。そうだな。間違ってるかもしれない。ただ、それはそっちから見たらだ」

 

 

 ノノミの追及は、カヤツリには何の痛打も与えていなかった。事ここに至って、先生はカヤツリの状態を把握した。

 

 

「俺から見たら、そっちだって間違っている。お前らの正しさを俺に押し付けるな」

 

「……何が間違いなんですか」

 

「まずはそこだよ。俺が間違っていたら、直ぐに直すと思っている所だよ。論破したら終わりと思ってる。押し付けて言うことを聞いてもらおうなんて、甘えんじゃない。俺はそんなに物わかりは良くはない」

 

 

 カヤツリは吹っ切れていた。勿論、いい意味で。そうでなければ、会話などしてくれないから。カヤツリは、今までの正しさとか、理由とか。そういった柵から解放されていた。

 

 

「甘えてるって……」

 

「あなたは間違っている。そう言って、あの羽沼マコトは言うことを聞いたか? 権力と暴力でぶん殴ってようやくだろう? 方法はそれぞれだが、人に言う事を聞かせるなら、それなりの行動が必要なんだよ」

 

 

 耳が痛かった。カヤツリが謝罪を簡単に受け入れたのはこれだろう。謝罪は受け取った。だが、先生側の言う事を聞くかは別の話。それはそれ、これはこれという訳だ。

 

 先生がやったことは、ミサイル直撃前の状態に戻しただけ。話し合いのテーブルに着いただけ。本題はここからになる。

 

 

「それをなんだ。間違ってるとかなんとか。否定しかしない上に、自分の要求しか通そうとしない。俺の話なんか聞きやしない。俺の事を未だに便利な召使か、相棒だとでも思ってるんだろう? 人間扱いしてない。お前ら二人とも、昔からずっとそうじゃないか? まるで成長していない。うん? 何とか言ってみろよ」

 

「……じゃあ、カヤツリはどこが不満なの? もうミサイル問題は解決したんだよ?」

 

 

 ホシノはへこたれないが、質問が悪い。先生の予想通りに、カヤツリのため息が響いた。

 

 

「次は?」

 

「次って、またやると思ってるの?」

 

「いや、あのクソカスがやらないと思えるとか。そっちの方が不思議だが? 言い訳で、あんなことを言う奴だぜ? このサインもヤケクソ気味だ。絶対に逆恨みするね」

 

「でも、ゲヘナと連邦生徒会の皆さんが見張ると……」

 

 

 バカじゃないのか。そんな言葉が再びカヤツリから飛び出してきて、ノノミは目を白黒させている。

 

 

「その監視はいつまでだ? ちゃんとやるかも怪しいし、同じ学園同士の監視だ。まったく信用できない。矯正局にぶち込むくらいの気概を見せて欲しい。それなら、俺は安全策を取る。このオンボスを維持すれば、報復措置が取れる。この程よい緊張が均衡を生むんだ。あのクソカスも、トリニティにはチャンスが無きゃ手を出さないだろ? そのくらいの頭はあるってことだ。抑止力は大事だよ」

 

「……ネフティス中学の娘たちは? あの娘たちも嫌だって……」

 

「他人を出汁にするのか? 随分と情けない言い訳だな……」

 

 

 カヤツリの挑発に、ホシノが涙目で睨むも。対するカヤツリは相変わらずだ。スオウたちがまだいないのを良い事に、とんでもないことを言い出した。

 

 

「嫌だって言うけど、結局方針は俺におんぶにだっこだろ? ああしたいとか、こうしたいとか。詳細な要望は聞いたことないんだ。まぁ、それは学生の立場から言ったら酷な要求だけども」

 

 

 情状酌量の余地あり。そう言いつつも、カヤツリは容赦がない。

 

 

「アイツらの言う通りにしたとするよ。絶対に不満は出ると思うね。やっぱり前の方が良かったかもって。なら、確実性を取った方が良いんじゃないか?」

 

「それは……」

 

 

 それは意地悪な回答だった。辛い事が無い物事などありはしない。だから、一度でもそう思う事は否定しきれないのだ。彼女たちだって、選んだ以上は愚痴として吐き出すくらいに留めるだろうが、カヤツリはそれすら許さないと言う。

 

 

「話は平行線っていう事かな?」

 

「今の状態ではそうですね。俺は納得できません。間違ってると言われ続けて、いい気分の人間はいません。それで言うこと聞くでしょみたいな扱いをされるのも。納得させられる材料もないみたいですしね」

 

「……君も、用意できないんだろう?」

 

 

 そうですねと。カヤツリは頷く。

 

 

「どうすれば納得できるかなんて、俺にだって分かりませんよ。そちらの要望にも文句を言いましたが、俺の方にだって気づかないだけであるかもしれない。もしかしたら、そんなものは無いのかもしれませんが」

 

「感情論以外の材料で、納得させろと言う事かな」

 

「感情論でもいいですよ? あれば、ですけどね。ああ、アイン達は関係ないです。無理やり目覚めさせて、手伝わせただけです。だから、ミレニアムに行かせたんですから」

 

 

 カヤツリの声に、申し訳なさを感じた。確かに、あの三人はアビドスの件には無関係。だからこそ、傍には置かなかったのだろう。

 

 それに、ケイも言っていたが、彼女たちは学生生活を楽しんでいるらしい。引き合いに出すだけ無駄だろう。

 

 感情論と言うが、きっとカヤツリも迷っているのだ。何が正解か、本当に分からない。それは、全てが終わってみなければ分からない事で、この場で答えを出すのは不可能だった。

 

 

「……君は、人に言う事を聞いてもらうなら、それなりの行動があると言ったね」

 

「ええ、言いましたね」

 

「……私たちの要望には納得できないし、納得できるものが出てくるかも分からない。君自身も、あるとは思っていないと」

 

「先生……?」

 

 

 対策委員会が、先生を不安そうに見つめてくる。心配することは無かった。どうすれば良いのかは、カヤツリ自身が言っている。

 

 

「なら、マコトやカヤと、同じ対応にしようか」

 

 

 カヤツリは言った。それなりの対応があるのだと。マコトに言う事を聞かせた様に、権力で殴る場合もあるのだと。なら、そうするしかないのだろう。そう、望んでいるのだろう。

 

 

「先生!? 何を──」

 

「良いですよ。なら、そうしましょうか」

 

「カヤツリ!?」

 

 

 ホシノとノノミが、眼を真ん丸に見開いている。でも、それがカヤツリの妥協点に違いなかった。その証拠に、カヤツリからの気配が強くなっていく。

 

 

「本気の、全力全開の俺を倒せたらいいですよ。そうできたなら、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 眼を糸の様に細くした獰猛な笑みを浮かべて、カヤツリはそう言った。

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