ホシノ同級生相棒概念 作:洞鼬
「一体、何考えてるの!? どうして私に連絡を取らなかったの? 勝てると思ってたの!?」
命からがらカヤツリの攻撃から、先生と対策委員会を回収したテラノ。アビドス高校校庭から、オンボス郊外まで避難し終わって、彼らを大声で怒鳴りつける。全員が、全員、シュンとしている。
本当に焦ったのだ。いきなり権能の気配がして、突然の砂嵐と落雷だ。カヤツリが反転する最悪の事態かとすら思った。先生から話を聞いた今は、そうなっていなくて一安心ではあった。それに悪いことばかりの話でもない。
「……ひとまずは、まぁ、良かったよ。カヤツリは吹っ切れたんだね」
正しさに囚われたカヤツリは、解放されていた。この戦いはそのためのもので、だからこそ、それに全力なのだろう。全力と言うだけあって、火力は過剰に過ぎるが。
「何がいいのさ……」
それを聞いて、テラノの顔が渋くなる。この世界の自分自身が、しょぼくれて地面に座り込んでいた。この様子を見るに、いいようにやられたのは、いやでも理解出来た。
「カヤツリは話を聞いてくれないんだよ! 何が良いって言うの?」
「それは、カヤツリのセリフだと思うけど?」
テラノはホシノのセリフを一刀両断する。これまで歩いてきた軌跡が全く違うせいだろう。お互いの考え方にだいぶ差異があった。
「話を聞かなかったのは、そっちでしょ? こっちの私」
「聞いたよ。でも……」
言うことを聞いてくれなかった。そう言いたいのがありありと見て取れる。それを叩き潰すのは簡単だが、曲がりなりにも自分自身。そうされれば話が耳に入らないのは十二分に分かっている。
「そうだね。そっちの言う通り、カヤツリも最初は聞かなかった。聞いてはくれるけど、正論で叩き潰すだけ。聞かないのとほぼ同義」
「……今は、違うんですか?」
話を黙って聞いていたノノミが口を挟んだ。
テラノではなく、ホシノと同意見らしい。そうでなかったなら、カヤツリの挑発なんかには乗らなかっただろうし、もう少し戦いが成立していたに違いない。
「そんなものはね。後の話なんだよ。これからどうするかとか、そっちの言うことを聞くとか聞かないとか、ゲヘナとか連邦生徒会の事とか全部」
テラノはスパッと結論を先に言う。
「今日までずっと話されてきたこと。アビドスの復興、アビドス高校の行く先、砂漠横断鉄道、ゲヘナと連邦生徒会の攻撃への対応、このオンボスをどうするのか。このことについて、カヤツリは話してない」
先生を除く全員に、疑問符が浮かんでいた。
「おかしいじゃないですか……」
ノノミがポツリと話し出す。
「だって、ずっと。そのことについて話しているじゃないですか。私たちの話を聞かずに、戦って決めようなんて……」
「そうだね。最初はそうだった。ミサイルが飛んできて、オンボスのテクスチャが貼られて、私たちと対面するまでは」
正確には、カヤツリがユメの幻影と会っただろうまでは、そうだった。
「でも、納得したいって言ったんでしょ? そのために戦おうって。だから、順番が違うの。この戦いが終わらなきゃ、何も決められない」
最初から説明しないカヤツリもカヤツリだが、それはもう仕方がない。カヤツリはそういう人間であるし、一人だったここでは特にそうなのだろう。
「ミサイルの件とか、アビドスをどうしていくのか。それは後の話なの。カヤツリが話しているのは、前提の話。まず、アビドスとしてやっていくのか、オンボスとしてやっていくのか。ある程度は対策委員会やハイランダーに任せるのか、全部自分でやるのか。全てを始める前の前提条件。それを決めようって言ってる」
だから、ずっと話が通じていない。対策委員会は、ミサイル問題の解決のためにオンボスを展開し続けていると思っている。最初はそうだが、今の目的は違う。
「言うことを聞くって言ったんでしょ? そのままの意味なんだよ。カヤツリに勝ったら、そうしてくれるの。自分のやり方を曲げて、これからの事を考えてはくれる。するかしないかは別にしてね」
だから、無駄だ。話し合いでは解決できない。それをするのは、戦いの後になる。
そして、その為には、戦いに勝つ事が前提。そしてこの世界の対策委員会は、カヤツリの戦い方を知らない。であるから、その為にテラノは必要な事をする。
「全力全開って言っていたんでしょ? あのカヤツリが言ったんだから、普通に戦う訳がない。カヤツリの戦い方は性格が悪いから」
世界のテクスチャを書き換えられる相手で、それもカヤツリ。普通に戦うわけがない。案の定、しっかりと対策されていた。
あの状況での一番の懸念要素は先生で、まずはその無力化から始まった。シッテムの箱の防壁くらいは知っているだろうから、攻撃による排除を選ばず、テンポロスを狙っている。先生が指揮に割くリソースを別の部分へと回させられた。その間に先生を一時排除し、攻撃手段を奪っている。
「ん。次は負けない」
「ん。応援を呼ぶ」
「そういう問題じゃないよ……」
シロコとシロコ・テラーが、口をへの字に引き結んで決意表明している。軽くあしらわれたのが相当に悔しかったようだ。別世界の同一人物だけあって、思考回路もそっくりらしい。
戦力が足りないから応援を呼ぶ。その思考は確かに理にかなってはいるが、この場合は最悪の一手でしかない。幾らでも増援を呼んでいいなんて、まんまとカヤツリに乗せられている。
「カヤツリに対して、アビドスの関係者以外の攻撃は通らないよ。風の防壁すら展開しないだろうね。呼ぶだけ無駄だよ」
先生の指揮の枠は六人。その枠に何の役にも立たない人員を入れさせるほど無駄なことは無い。その上、増援を呼ぶにも直ぐという訳にも行かない。ここに来るのにヘリで一日かかる。鋼鉄大陸の時に使ったらしい、高速移動艇を使えば別だろうが。時間を浪費することに変わりはない。
「……今のカヤツリには、アビドス関係者以外の攻撃は通らない。だから、風で態々防壁を作ったし、そっちの私を一番に排除した。一番危険だからね」
「……どういう意味?」
暗い瞳がテラノを見ている。どうにも悪い意味で取ったらしかった。相応に気分が落ち込んでいるらしい。
「そっちの私の攻撃は、今のカヤツリにとっては致命傷なの。一撃でもマトモに食らえば、即動けなくなってもおかしくないくらい。君の攻撃だけは、先生並の耐久になってる」
詳しい理屈は説明しない。それだけ分かれば十分。セトはホルスに負けたから、何度も生き返ったらしいと言っても、ある意味ではそれが死因になる。死因で殴られれば、オンボスの展開下ではそれが致命傷になる。
「だから、君が戦わなくちゃいけない。他の後輩たちや、私たちの攻撃も通らないわけじゃない。でも、君でなきゃ、カヤツリは止まらない」
「そう……分かったよ。戦う」
ホシノが、ハッキリと返事をする。けれど、テラノの目には、全くそう思っていない事が分かり切っていた。他の後輩たちは騙せても、自分は誤魔化せない。奥の手を切る事とした。
「……じゃあ、攻撃役の君には色々言うことがあるから。ちょっと着いてきて」
少し、後輩たちから距離を取る。声が聞こえないだろう距離だ。作戦の説明をする先生の声は聞こえない事を確認して、テラノは言う。
「まだ迷ってるでしょ。何を迷うの」
「分かってるでしょ。私なんだから」
流石は自分だ。テラノと同じように、自分の事はお見通しらしい。
「カヤツリの邪魔をしたくないんでしょ。かといって、そのまま見ていることも嫌。どうすれば良いのか分からなくて、間違うのが怖くて、何も決められない」
それが今のホシノ。分かれ道でずっと立ち止まっている。気持ちは分からないでもない。
なにせ、全てが後手に回っている。カヤツリがカミガヤとして現れたのが一週間前。悩んで考えて、そうして用意した答えは、ミサイルで台無しになった。
ミサイルの後も酷い。ホシノには手が出せない次元の話だ。そもそも、あの状況下と時間で、マトモな解決策などでない。ホシノは流されるまま、何もできなかった。
そして、オンボスの幸せな夢から自力で抜け出して。ミサイルの時の様子から、普通に話を聞いてくれないだろうカヤツリを嵌めて拘束しようとした。
そして、その全てが失敗した。先生と合流して、話の進め方を相談できていれば結果は違ったろうが、そうはならなかった。
ホシノの行動は、何の効果も及ぼさず、何の意味もなかった。寧ろ、事態を悪化させ、全ての元凶ですらあった。ホシノは地面に座り込んでしまっている。
「……そうだね。君には、君だけには、カヤツリの苦しみが一部分だけだけど分かる」
「嫌だよ。私は、カヤツリをクジラにしたくない……」
鯨。大きくて、優しくて、傍に居るだけで安心できるもの。かつて、ホシノの傍にあり、無くなってしまったもの。そして、ホシノ自身が成ろうと決意したもの。
「ああ、辛かったでしょ、ずっと先輩として振舞うのは。辛くても、苦しくても、守るべき後輩の前では弱音なんか見せられないもんね。それで、寝てる時すら息もできない」
鯨は、肺呼吸の生き物だ。水面で呼吸をした後は、長時間息を止めて海中に居る。眠る時ですら息をしない。それは鯨だから出来る事で、鯨でないテラノたちには苦行でしかない。
「辛かった。辛かったけど、私は良いんだ。ノノミちゃんやシロコちゃんが居たから。私は頑張れたんだよ。でも、カヤツリはいなかった……」
人は報酬が無ければ動けない。初めは良いがやる気がドンドン朽ちていく。何か成果が無ければ、人はそれを続けられない。
ホシノは後輩たちが居た。辛くとも、行動の結果、後輩たちを守ることが出来た。海面に上がり、息をすることが出来た。けれど、カヤツリはいなかった。あのデカグラマトンの三人娘が来たのは最近だろう、それを息継ぎの期間に含める気は起こらなかった。それまでずっと、息をしなかったことに変わりはない。
「そんなカヤツリの邪魔はしたくないよ……」
「でも、そのまま傍観もできない。それは、カヤツリをクジラにすることだもんね。ずっと息をせずにやるべきことをやる。誰にも認識されず、誰かにとって、都合の良いガワを被り続ける」
それがホシノにとって辛いだろう。何も為せなかった苦しみ。誰かのガワを被り続ける苦しみを、ここのホシノは知っている。テラノですら知らない事を知っている。
「あの時のカヤツリは泣きそうだった。あの言葉は、本心だったんだよ……」
テラノは、その場に居なかったが。きっと限界だったろうカヤツリは本音を吐き出しただろう。それを聞いたことで、きっと理解した。
「何? 今更、追いだしたことを気に病んでるの?」
「当たり前でしょ!? 君には分からないよ。私の苦しみなんて、分からない! 君には居るじゃない!」
「そうだね。私にはカヤツリが居る。私は追い出さなかったからね。私は一人じゃなかった。勿論、君にはあげないけど」
そう。テラノに、このホシノの苦しみは分からない。テラノにはカヤツリが居て、ここのホシノの孤独は分からない。想像は出来るが、それだけだ。
「君には分からない! 全部上手くいった君には分からない! 失敗しなかった君には分からない! だから、こんなことが言えるんだ!」
「でも、私だって。全部が上手くいっていたわけじゃないよ? だから、ここに居るんだしね」
ホシノに取り合えずのカウンターを入れる。ここの世界が滅びてないからいいじゃないなどと、不毛な不幸自慢をする気はないが、傷の舐め合いもする気もない。少しだけ勘違いを解いておこうと思うだけ。
「……私は、カヤツリを追い出さなかった。でも、酷いこともしたんだよ」
「……何したの?」
「うーんとね。まず病院送りにした。私は怒って、カヤツリを監禁しようとして、カヤツリをボコボコにした。その他にもまぁ、色々とどうかと思う事をしたんだよ」
「何言ってるの……?」
完全に、ホシノはドン引きした表情だ。だが、事実は事実である。テラノは、そうした。
「……カヤツリは甲斐甲斐しく、私の世話をしてくれた。でも、二年生になった時。出て行こうとしたんだよ。まぁ、私の勘違いだったんだけど」
態度が余所余所しいし、引き継ぎ書まで作っていた。それを疑うなと言う方がどうかしている。
「それに、君もしたかもしれないけど。黒服へ身売りしようとした」
「何で……」
「君と一緒だよ。私に出来る事をしたかった。何もできない私が出来る事は、これしかないと思ってた」
騙されていたとはいえ、とんだ思い上がりだった。今でも後悔している。ただ、ここのホシノは、少し違うだろう。カヤツリを追いだした時の差異が、ここで響いてくる。
「私は、カヤツリに止められたけど。きっと君は後輩たちに止められたよね? 嬉しかった?」
「それは……」
恐らくは嬉しかっただろう。先生から事の経緯を粗方聞いた限りはそうだ。
「じゃあ、カヤツリもそうじゃないの?」
「そんなわけない! だって、私の時は騙されてた!」
「そうだね。黒服の罠で、カイザーがアビドスを滅ぼそうとしてた。君の想定とは大きく違ってた。なら、そうじゃなかったら?」
もし、もし。本当に黒服が、ホシノの想定通りに契約を守ったら。身売りをする代わりに、アビドスが救われたなら。そうなのに、後輩たちがホシノを助けに来たのなら。どうだろうか。どう、思うだろうか。嬉しいだろうか。それとも、怒るだろうか。
「……分からない。分からないよ。そんなの……分かりっこない」
それは、そうだ。分からない。どちらも正しく、間違っている。個人の願望を優先するのか、大衆の願望を優先するのか。どう正しいかなど、人によって答えは異なるから。
「そうだよね。だから、カヤツリも分からないんだよ。だから戦うの」
「そんな事は……」
「分からない? でも、カヤツリは言ってる。戦って決めようって。完全な優位を投げ捨ててまで、そうしようとしてる」
戦いに応じる。その行為自体が手加減だ。本気であれば、黙って、あの塔を完成させてしまえばいい。ガチガチにメタを張って、特殊勝利条件を目指す戦法なのに、
「カヤツリに、どんな心境の変化があったのかは分からない。でも、カヤツリは君に向き合おうとしてる」
心変わりの理由。それをテラノは言う気はなかった。それは、カヤツリだけのもので、あのユメの行動の結果だろうから。なら、テラノが言うのは一つだけ。
「ちゃんと、向き合ってあげて。カヤツリと向き合ってあげて。恐らくは初めての、この世界で初めての、カヤツリの甘えなんだから」
「甘え……?」
「だって、そうでしょ? 今まで正論で押しつぶしてきたのに、そうはしなかった。あれほど嫌っていたキヴォトスの理論。分かりやすく暴力で通そうとしてる」
前後後先考えず、やりたいようにやる。自分の欲求を通す、このキヴォトスに生きる者たちの得意技。それは、カヤツリの嫌う事だったはず。そうしないために、そうさせないために、ここまでの事をしたはずなのに、今になってそれを投げ捨てている。
「ちょっと待ってね……カヤツリはね。少なくとも、私の世界はだけど。人に迷惑を掛けるのを極端に嫌うの。だから全部陰でやる。コソコソとバレないようにやるし、説明もしない。聞かれても煙に巻く」
カヤツリはそういう所がある。ずっと、テラノが悪癖だと思っているそれ。最後の最後まで改めてくれなかったものが。
「カヤツリは黙って、説明しないで、引き継ぎ書を作って余所余所しくなった。私は、それが気に入らなくて、カヤツリを病院送りにした。その時に聞いたの。どうしてそんな事をするのかって」
ホシノは何も言わないが、目が続きを促している。
「嫌なんだって言ったの。人に決めさせるのも。重荷を背負わせるのも。大切な人たちに、そうさせるのは嫌なんだって」
「そんなの……」
ホシノは否定しない。今のホシノは、選択することがどういうことか。身に染みて分かっているだろうから。
「カヤツリにとって、選択することは恐ろしい事なんだって。選択するってことは、それによっておこる全ての責任を背負うってことだから。そんな辛い事を、させたくなかったんだって」
それは、オンボスを展開したカヤツリの目的そのまま。全部カヤツリが決めて、全部背負って、辛い事は全てカヤツリが代行する。それがカヤツリの思う、地上の楽園だった。
「それを、カヤツリは私に病院送りにされるまで言おうとしなかった。それだけ、カヤツリにとっては重い事なの。でもさ、それを今、ここのカヤツリは捻じ曲げてくれているの」
「うん……そうだね。カヤツリにとっては、少なくとも君の方のカヤツリは、そうだったんだね」
ホシノの目の暗がりが消え始めていた。漸く、理解し始めて来たらしい。
「私たちに選ばせてくれるんだ。聞いてくれてるんだ……」
「そう。そっちのカヤツリはまるっきり同じじゃないけど。考え方は似てるはず。そっちに選択権を与えるという事自体が、カヤツリの甘えなの。それは、カヤツリにとっては、責任の丸投げなんだから」
それは甘えではないと思うのだが。カヤツリにとっては、そこは譲れないラインなのだそうだ。その選択をすることが、カヤツリにとっては敗北宣言に等しいのだと。
「だから、本気で戦うの。ちゃんとカヤツリに向き合って。なあなあで終わらせないで。言葉じゃなくて行動で証明するの」
「カヤツリみたいに?」
そう言うホシノの調子は、完全に回復していた。もう目に迷いはなくて、これからの戦いの事を考えているようだった。
「そう。カヤツリみたいに行動で示して。向こうの事情とか、それに関する忖度とか。そんなものは求めてない。それは終わってから心配すればいい」
「分かったよ。戦う」
ホシノは立ち上がっていた。さっきと台詞は同じでも、完全に意気込みが違った。
「ありがとう。それと、ごめんね」
「別に? 気にしてない。ボタンが一つ掛け違っただけだよ。上手くいかなかった君が、私に対してああ言うのは、間違って無いよ」
こちらを気遣う余裕に、テラノは鼻を鳴らした。テラノだったら、同じことを言うから。そんな事を謝る必要はないのだ。ユメの幻影の事すら口に出していないテラノに、そんな資格はない。
「……私なら、誰でもいいの?」
ホシノが向こうに戻ったのを確認して、テラノは呟く。勿論答えは返ってこない。都合が悪いから、眠った振りをしているに違いなかった。
「上手くいくといいね。私たちみたいな関係にはなれないだろうけど。一から仕切り直すことはできるかもしれない」
あるいは、他の道を見つけるのだろうか。テラノたちのように、毎日一緒に何かをする道ではなく、もっと別の道を。
「でも、上手くいけばいいな。だから、頑張ってよ? タイミングはそっちに任せるからね」
返って来ない返事が分かっていながら、テラノは胸に手を当てる。やっぱり返って来ない。どうにも気になる。都合の悪い時の誤魔化し方の気配がするのだ。
「そういえば、やけに空を気にしてたね」
カマかけを声に出すも、相手の方が場慣れしているからか、反応はない。
ため息を吐いて空を見上げるも、白い飛行機雲が伸びているだけだった。