ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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367話 ガイダンス

「……無事に帰って来れましたか」

 

 

 席についている連邦生徒会長はそんなことを言うので、カヤツリは渋い顔になった。

 

 ここまで来るのに、要らぬ苦労をさせられた。エレベーターに乗り、連邦生徒会の制服を着ていない者に対する奇異の視線を一身に受けながら。そうして連邦生徒会長室にやって来たカヤツリに吐いて良い言葉ではない。

 

 やっぱり、広く白く殺風景な連邦生徒会長室だけあって、その部屋の主もとても白々しい。不満一杯の顔で、カヤツリは立ったまま嫌みで返す。

 

 

「へぇ、そんな可能性があったんですか」

 

「勝算があったからこそ、そうしたんですよね? 兎に角、無事でよかったです」

 

 

 駄々広い窓を背景に、白い机に手を付いた連邦生徒会長は食えない笑顔だ。ただ、心配していたのは本当らしく、胸を撫で下ろしている。

 

 妙な相手だと思う。正直言って、カヤツリには連邦生徒会長のスタンスが全く分からなかった。

 

 何かしらの目的があって、それにカヤツリを使いたくて、そう動いているのは分かる。その為に、態々アビドスくんだりまでやって来て、しなくてもいい取引材料を引っ提げて、彼女はカヤツリを引き抜いて来た。

 

 そのくせ、何も説明をしないのが解せない。キヴォトスの平和を脅かしかねない危険物。それらを確保し、収容し、保護する活動とはいうが、そういったモノは、事前の情報が何よりも大切である。この超人が単騎で処理できない、正体が分からない物に何も聞かずに特攻するほど、カヤツリはバカではないし、向こうもそうだろう。

 

 きっと、話したくない事情があるのだ。カヤツリに知られたくない、依頼ともあまり関係はない。けれども多少触れざるを得ない。そんな時に、オーナーとの会話で何度も出会った場面である。

 

 そういう時の対処法は一つ、必要以上に触れない事だ。聞いても答えないから聞くだけ時間の無駄。だから、カヤツリは今の段階では問い詰める事はしない。

 

 

「それで? 危険物を集めるにも、どうすれば良いんですか? 今まで、説明らしい説明が全くないんですが」

 

「ああ、そうですね。貴方の所為で遅くなりましたが、始めましょうか」

 

 

 あの王女に噛みついた事をチクリと刺して、連邦生徒会長は机に資料を出した。

 

 

「貴方も良く知っていると思いますが、このキヴォトスにはオーパーツと呼ばれるモノが数多く埋まっています」

 

 

 パラパラと資料を捲れば、よく見るオーパーツが載っている。アンティキティラ装置だの、ネブラディスクだの、水晶埴輪だのその他諸々。それなりに金になるモノらだ。

 

 

「貴方に探してほしいのは、それに載っているもの以外です」

 

「それを、あの王女が知っていると?」

 

「そうです。あの名もなき……ん? 私、貴方にあの娘の名前を言いましたっけ?」

 

 

 勿論言っていない。そして連邦生徒会長が、カヤツリが答える前に事実に辿り着いたらしく溜息を吐く。

 

 

「何をしたのかは分かりませんし、上手くいったからいいですが、油断は禁物ですよ。名前を教えてくれるほど、顔合わせは無事に終わったみたいですけど……問題はその先です」

 

「その先?」

 

 

 神妙に連邦生徒会長は頷いていて、やけに確信を持った反応だった。訝しげな目を向けると、当然と言ったような顔をする。

 

 

「今回は上手く話せたようですが。次もそうだとは限りません。ちゃんと、場所を調べて教えてくれるかも分かりませんし、あの娘の危険性は重々分かったでしょう?」

 

 

 連邦生徒会長の言葉に、カヤツリは首を傾げる。

 

 

「だから、あそこにずっと閉じ込めておく気だと? 脅して、縛り付けて、言う事を聞かせる?」

 

 

 確かに、あの能力は脅威である。思うだけで、殆ど全ての事が叶う力など危険が過ぎる。けれど、連邦生徒会長のやり方は些か過激に思えた。

 

 

「そこまで押し付けるのは逆効果では?」

 

 

 連邦生徒会長は、王女と呼べと強要してきたあの少女を危険視している。その判断は正しいと思うが、全てをあの王女に押しつけている気がしてならない。王女の能力の危険性はカヤツリも認めるところだ。けれど、王女はカヤツリの目の前で一度しか能力を使わなかった。しかも、使った内容も脅しにしか使っていない。

 

 あの王女は節操無く能力を振るう。表に出せば、混乱を巻き起こすことは必至だろう。でも、それは王女の所為だけでもないと、カヤツリは思っていた。

 

 王女はきっとそれしか知らないのだと思う。王女は、あの出鱈目な力しかないのだ。それしかないから、それを振るうことしかできない。そうでもなければ、あの反応は奇妙に過ぎる。

 

 

 ──面白い意見だったので、良いですよ。願いを叶えてあげましょう。

 

 

 何かしらの反応を見たかったのもあるが。割合、強い言葉を使った自覚はあった。普通は気にしないか怒るかはする。であるのに、王女は笑っていた。その上、願いを叶えてあげますである。情動の推移が掴めなくて、相当に気味が悪かった。

 

 ただ、能力の使い方から分かることもある。王女にとっての能力の使用。それ自体が、王女のコミュニケーションスキルなのだろう。

 

 カヤツリの目の前で行われたことは二つ。一つは能力で脅していうことを聞かせる。もう一つは能力で懐柔しようとする。そうするやり方しか王女は知らない上に、そう要求してくる人間としか出会ってこなかったのではないだろうか。

 

 あの王女は、能力を振るい、その価値を示すことでしか会話してこなかった。それを、王女の所為だと切り捨てるのは乱暴で怠惰だと思う。

 

 

「こちらが気をつければいい。接する人間を選べばいいと思いますけどね」

 

 

 カヤツリが思うに、そういう相手と組ませなければいい。普通に会話してやればいいと思うのだ。王女は、何やらその名前と力に拘りと誇りを持っている。むやみやたらと振るわないようにするのは簡単だ。その力を振るう以外の方法を探せばいい。

 

 そうカヤツリは思って発言したのだが、連邦生徒会長の反応は微妙の一言に尽きた。

 

 

「……それは危険な考えです」

 

 

 微妙どころではない。何か、カヤツリを見る目が信じられない物を見る目に変わってきている。

 

 

「彼女が危険な力を持っていて、それを簡単に振るえることに変わりはありません。その上、私たちのことを何とも思っていない」

 

「……だから、何をしても良いと?」

 

「そういう訳ではありません。何もできないように閉じ込める。そうするしか手が無いんです。そうやって初めて、私たちは彼女に対して、話し合いのステージに立つことが出来るんです」

 

 

 お手上げというように、連邦生徒会長は両手を挙げる。

 

 

「それを貴方はよく知っているでしょう? 争いは同じレベルの者とでしか発生しません」

 

 

 連邦生徒会長の言う通りである。争いは自分の要求を通すためのもの。その為に一番楽であるのは暴力で、それに対抗するには暴力しかない。片方が弱ければ暴力が通るだけで、それは難しいとお互いに判断できて初めて、話し合いのステージに立つことが出来る。

 

 ただ、あの王女は連邦生徒会長が言うような、話の通じない人間ではないような気がする。そうでなければ、カヤツリにあんな絡み方をしなかったはずだ。

 

 

「あの王女と碌に話しても居ないらしいのに、どうしてそんなことが分かるんです? 人伝に聞いた情報だけでそうしているのか?」

 

 

 流石に、これをカヤツリは看過できなかった。ずっと引っかかっていた嫌な部分を無視できなくて、口調から丁寧語が剥がれ掛ける。

 

 きっと連邦生徒会長は地下の王女の口ぶりからして、オーパーツの在処しか聞いていないのだろう。

 

 それなのに、連邦生徒会長の情報量は多すぎる。自分で殆どアクションを起こさないのに、王女から得ている情報量が釣り合っていない。第三者からの情報提供。それも金が絡まないものなど、情報の信用レベルからして最底辺。

 

 それしかないのなら仕方がないが、連邦生徒会長はそうではない。幾らでも王女と話せるだろう。それをしないのは怠慢と言って差し支えない。

 

 

「まさかと思うが、面倒だからやらないのか? もうある、誰の経験だかも分からない知識を鵜呑みにするのか?」

 

 

 そうであれば、カヤツリは怒らざるを得ない。ただでさえ気に入らない連れてこられ方をしているのに、そういう不誠実な対応は腹に据えかねる。

 

 閉じ込める以外にも契約で縛る等。あの王女接し方は幾らでもある。それなのに、閉じ込めるだけ閉じ込めて、話すまで出さないとは。選択肢くらいは与えるべきだ。

 

 そもそも、最初から気にくわないのだ。自分の思うように人を動かしたいという思惑が透けて見える。自分はこうしたいから、貴方はこうして欲しいと言えばいいものを。この超人は言わない。

 

 言わずに、そうするように。そうせざるを得ないように誘導する。

 

 

 ──あなたが欲しいのはこれなんですよね? だったらあげますよ。だから私の言う通りに動いてくださいね? 私の目的は言いません。話すだけ無駄なので。

 

 

 アビドスのやり取りでは、こう言われている様にしか感じなかった。余りにも、カヤツリというモノを見ていない。勝手に欲しいものを決めて、押し付けてくる。腹立たしいのは、それが普通に合っていることだ。

 

 オーナーのやり口と似ている部分もあるが、決定的に違う部分もある。連邦生徒会長のものは、選択肢が無い。

 

 厳密に言えば、オーナーのにもないけれど。少なくとも向こうは選択させてはくれる。恣意的に説明を省き、逃げ道を限界まで塞ぎはするが、最後に聞いて選ばせてはくれる。

 

 ただ、連邦生徒会長はそれがない。決められたルートを歩かせようとしてくる。こちらの意思など知ったことでは無いような感じでだ。そうしてほしいなら、少なくともやらなければならない事が一つはある。

 

 

「オーパーツを集めろと言うのは分かった。けれど、あの地下の王女について、最低限の説明をしてほしい。そちらが、なぜ危険だと思うのかを」

 

 

 危険危険と言われたところで、詳細を言われなければ分からない。最低限の説明は必要で、今の連邦生徒会長はそれをしていない。

 

 それは甘えだ。他の室長連中なら聞くのかもしれないが、カヤツリはそうではない。ホシノなら兎も角、カヤツリにそれを受け入れる義務はなく、仕事の同僚、ましてやお友達でも何でもない。

 

 その最低限の説明。それすら、連邦生徒会長は不服そうではあったが。退かないカヤツリに、とうとう諦めたのか息を吐いた。

 

 

「仕方ありません。なら、彼女について話しましょう。彼女は──」

 

『どうして貴女が話すんですか?』

 

 

 どこからか、王女の声が響いた。連邦生徒会長も、カヤツリも言葉を失う。焦ったように連邦生徒会長がカヤツリを見るが、カヤツリは勢いよく首を横に振った。その間にも、王女の声は続いている。

 

 

『カヤツリは関係ありませんよ。貴女の事ですから、先の会話でカヤツリが絆されて裏切ったとか思ってるのかもしれませんが』

 

「じゃあ……どうやって……」

 

 

 王女の声が流れ出したのは、連邦生徒会長のPCからだ。回り込んで画面を見れば、デフォルメされた王女が呆れた顔で映っている。

 

 

『どうやってもなにも。ここから電子機器にハッキングするなんて普通にできますよ。今までやらなかっただけです』

 

 

 そういえばと、カヤツリは思い返す。外のことを知っているような素振りは、連邦生徒会長の前ではしていなかった。知らないなら、対策のしようもない。

 

 

「……終わりですか」

 

 

 そして連邦生徒会長は、どこか放心しているようだった。諦めのオーラが全身から放たれている。

 

 

「イチゴ、イチゴミルク……最期にイチゴミルクくらいは飲めるでしょうか……」

 

『その貧相な最後の晩餐を想像して悲観している所悪いですけど、何もしませんよ』

 

 

 ピクリと連邦生徒会長の動きが止まる。

 

 

「えっえっ……? 一体どういう風の吹き回しですか?」

 

 

 うつろな目をしてイチゴミルクを連呼していた連邦生徒会長は、王女の言葉に目を瞬かせている。

 

 

『吹き回しも何も、私にとってそれは意味のない事ですから。貴女は、それが私の至上命題だと思い込んでいたようですけど』

 

 

 反対に画面の王女は呆れたような表情だ。

 

 

『私自身の事なのに、貴女が話すのはおかしいとは思いませんか。貴方の都合の良いように話されるのは気に入りません。私の事は、私が話します』

 

「だから出てきたというんですか? 先手を取ったアドバンテージを捨ててまで?」

 

『……随分と思い込みが激しいですね。貴女のその経験を私に当て嵌めないでほしいです。貴女の経験なんか私は知りませんし、そうするように強制されるのも迷惑です。そうされたら、癇癪で世界くらいは滅ぼすかもしれません』

 

 

 痛いところを突かれたのか、連邦生徒会長は黙り込む。そしてカヤツリにも、連邦生徒会長が危険だと言った意味が分かり始めていた。

 

 あの何もない場所から、王女はここまでの事をしている。本人の言う通りに、世界を滅茶苦茶にできそうだ。肝心の王女は、そのつもりは全くないようで、大声でスピーカーを震わせている。

 

 

『だから、出てきたんですよ。手伝って欲しいとカヤツリのお願いもありますし、これ以上貴女に好き勝手されるのも癪です。私は、私の目的の為に、多少は言う事を聞いてあげますよ』

 

「……それでは、あれらの居場所を教えてくれるという事ですか?」

 

『そうだと言っているでしょう。だから、貴女の妄想をカヤツリに吹き込むのは止めてください。これは名誉棄損ですよ』

 

 

 画面の中で怒りマークを大量に飛ばしている王女に納得したのか、連邦生徒会長は椅子にズルズルと凭れかかった。首の皮一枚つながったと言う心持だと言うのは、想像に難くない。

 

 

『この女の話は単純ですよ。ただ怖いだけです』

 

 

 どこからカヤツリの様子を見ているのか、画面の王女がカヤツリの方を向いていた。そのまま連邦生徒会長の事について言う。

 

 

『鍵、聖十文字、遺産。あれらは、その資料に載っているオーパーツとは天と地の差がある危険物です。そして、鍵と遺産は私と同じ技術系統の物と言えば、この女が怯える危険性は分かりますよね』

 

 

 まぁ、分かる。そして、その危険性も。

 

 

「だから、情報を話さないと。知られること自体が危険だから」

 

『そういうことです。特に遺産は、私の様に意思などありません』

 

 

 その遺産や鍵とやらが、それらがどういったモノかは分からない。けれど危険性は高い。王女と同じような超常的な事を起こせる技術が使われているともなればそうだろう。

 

 そして意思が無い道具だという点が質が悪い。それは手に入れた人間の善性に左右されると言い事。それなら、情報も渡したくないし、関わる人数も少なくしたい。

 

 

『そして、私と同じ技術系統という事は、私にならその場所が分かるということです。だから、この女は私に言う事を聞かせたかった』

 

「でも、どうして接していいか分からなかったと」

 

 

 連邦生徒会長から見れば、王女は特大の危険物だ。及び腰になるのも理解はできる。カヤツリとて王女の説明を受けていれば、さっきまでのような対応を出来たか微妙だろう。

 

 

『まぁ、そこはこの女の都合です。この女も苦労をしていることは間違いありません……これでいいですか!?』

 

「うわっ!? 急に大声を浴びせないで下さいよ!?」

 

 

 話すべきことは話したのだろう。王女は放心している連邦生徒会長に大声を浴びせる。驚いたのか、連邦生徒会長は椅子ごと跳ね跳んだ。

 

 でも話は聞いていたのか、着地した後は、特に文句も言わないで頷いている。

 

 

「貴女が私の思うようにしない。待っていてくれている。それだけで、貴女が私の想像したような人では無いとは分かります。本当に協力してくれると言う事も」

 

 

 けれど、その後は眉根を寄せて、訝し気に王女を見る。

 

 

「協力してくれるのは嬉しいです。ですが、目的と言うのは教えてくれないままですか?」

 

 

 ここで、何となく連邦生徒会長がどういう人間なのか。カヤツリは分かった気がした。王女の怖がっていると言う言葉は、ある意味で的を得ていたのだろう。

 

 分からない事が怖いのだ。全てを把握しないと気が済まない。分からないことは最大限の警戒を持ってあたる。そうなれば、今までの行動にもある程度の説明は着きそうな気がした。

 

 これは、ある意味で連邦生徒会長の甘えだ。彼女は教えて欲しいのだろう。

 

 

「俺も知りたい」

 

 

 だから、助け舟を出すと、画面の王女はカヤツリを一瞥した。

 

 

『私にも分かりませんよ。大きな目的があるわけではないんです』

 

 

 王女の言葉は、取り留めのないものだった。あやふやであろうそれを、王女は何とか形にしているようだった。

 

 

『ただ退屈だった。あの部屋に居るのは飽きていた。だから、何かをやりたかっただけです。丁度、その機会もめぐってきたことですしね』

 

「……つまり、行為自体が目的だと?」

 

『そうですね。そうなります』

 

 

 そうですかと、連邦生徒会長は呟く。大いに悩んでいるようで、難しい顔をしている。でも、それは長続きはしなかった。

 

 

「分かりました。手伝いの方を、よろしくお願いしますね。今の所、部屋からは出せないままですが……」

 

『それは別にいいです、外は勝手に見るので』

 

 

 お互いに納得したのか、二人はそれで構わないらしい。すっかり連邦生徒会長は最初の態度に戻って、席に座り直した。

 

 

「では、オーパーツの捜索をお願いしてもいいですか?」

 

『もう出来てますよ』

 

 

 とっくに用意していたのか、王女はパソコンの画面に地図を映し出す。その地図はキヴォトスの地図であり、赤い点がバラまかれたパチンコ玉の如くに点在している。

 

 

『これが、遺産の大まかな位置です』

 

「鍵と聖十文字は?」

 

 

 遺産だけで、これだけの数だと言うのに。これで全てではないらしい。少しカヤツリは眩暈を覚えた。その間にも、二人の話は続いた。

 

 

『鍵は反応がありません。恐らく休眠状態です。聖十文字は躯体がオーパーツでは無いのでしょう。ですので反応はしません。預言者から辿った方が良いでしょう』

 

「なら、遺産から行きましょうか」

 

 

 話の流れ的に遺産から片付ける事に決まった。口を挟みたくとも、根本的な知識量に差があって挟めない。実働部隊の悲哀と言うやつを、オーナーの元から離れても経験するとは思わなかった。

 

 

「……山の様にありますが? どれから手を付ければいいんです?」

 

「ああ、それは決まっています。最初はやっぱりここからでしょう」

 

 

 カヤツリはその場所を見て、眉をひそめた。嫌な予感しかしない。

 

 

「トリニティの自治区ですか? 一番面倒くさいと思いますけど」

 

 

 連邦生徒会長が指したのは、恐らくはトリニティの一角。中心区から遠く離れた場所で点が複数個光っている。

 

 

「連邦生徒会と言っても、拒否されそうです。他の場所からの方が良いんじゃないですか?」

 

 

 トリニティの人間は気位が高い。財力もある。そのオーパーツがどんな形をしているか知らないが、持ち主がコレクションとして収集していた場合は抵抗するだろう。金持ちだから、買い取ると言っても聞かない可能性もある。

 

 

「心配はいりませんよ。ここはトリニティの自治区ではありませんし、今の彼女たちは、そこに何があるかを把握していませんから」

 

「そうなんですか?」

 

 

 どう見ても、トリニティの内部で光っている。幾ら見てもそうだが違うらしい。

 

 

「ええ、そうなんですよ。ですが、準備はした方が良いと思います。これくらいは必要です」

 

 

 自信満々に、連邦生徒会長は必要そうなものを上げていく。それが耳に入る度、カヤツリの中に困惑が広がっていく。

 

 

「……未開の地にでも行かせる気ですか? トリニティの自治区ではないと言っても、すぐ傍なのに?」

 

「はい。そうです。絶対に必要だと思いますよ」

 

 

 連邦生徒会長は自信満々に胸を張って、口を開いた。

 

 

「貴方にこれから行ってもらう場所は、アリウス自治区ですから」

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