ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

369 / 380
368話 アリウス自治区へ

 というわけで。カヤツリはアリウス自治区へとやってきたのだが、早速問題が発生していた。

 

 

「四十六番」

 

 

 分かれ道でカヤツリは、何番目かを口に出すと、耳元で声が響く。

 

 

『そこの左はもう通りました』

 

「じゃあ右か」

 

 

 王女の声に返事をして、右へ進むとまた分かれ道に出る。分かれ道の境の根元を確認すると五と数字が彫ってある。

 

 

「また五番に出たぞ」

 

『ふむ……恐らくは何処かで間違いのルートを踏んだのでしょう。後ろへ戻ってください。そうすれば一番に戻る筈です』

 

 

 王女の言う通りにすると、また分かれ道で。境の根元にはしっかりと一と彫ってある。

 

 もう何回繰り返したかわからない苦行に、カヤツリは天を見上げる。今の時間からして、空には月が昇っているだろう。しかし見えるのは固そうなカタコンベの岩肌だけだ。

 

 

「こんなの聞いてないぞ……」

 

『ええ、私も聞いていません。あの女もここまでとは想定外でしょう』

 

 

 とうとう、言わないように努めていた文句が溢れ出してしまった。無線の向こうの王女も疲れた声色である。

 

 カヤツリだけでなく、王女も手伝ってくれている。文句を言うのは失礼であり、士気に関わる。だが、これには仕方のない理由があった。

 

 

「まさか、アリウス自治区へ入る前に足止めを食らうとは……しかもこんな訳の分からないのに……」

 

 

 もう見飽きた分かれ道を見て、カヤツリは溜息をつく。単純に言えば、カヤツリは道に迷っていた。

 

 

 ──貴方にこれから行ってもらう場所は、アリウス自治区ですから。

 

 

 事の始まりは、数日前の連邦生徒会長の言葉からだ。キヴォトス中に散らばるオーパーツ。それを何処から集めるべきかの回答。

 

 

 ──アリウス自治区?

 

 

 その名前をカヤツリは聞いたことがなかった。そもそも位置もおかしい。トリニティの自治区内に飛び地があるなど初耳であるからだ。

 

 

 ──それはそうです。あそこは存在しない筈の学園ですからね。

 

 

 連邦生徒会長が言うには、かつてのトリニティ統合の際に溢れて迫害された学園だと言う。迫害され、逃げて逃げて、たどり着いた場所が今のアリウス自治区なのだと。

 

 故に、ずっと鎖国状態であり、殆どの人間はその学園が実在する事を知らないらしい。

 

 それを聞いた時に成る程とも思った。誰も知らないのであれば、横槍が入りにくい。それにカヤツリに向こうの情報を集めてきてほしいのもあるのだろう。

 

 アリウスの問題に首を突っ込んで、それを取っ掛かりにトリニティにも首を突っ込めそうだ。

 

 だから、最初はアリウス自治区なのだと、カヤツリはそう思っていた。

 

 

 ──入り口は通功の古聖堂。その地下のカタコンベだと言います。カタコンベの構造からして、オーパーツの反応がある場所と一致しますから。

 

 

 そんな事をカタコンベの地図を取り出して言っている時に怪しむべきだったのだ。

 

 今から思えば妙な点しかない。

 

 何故、秘境に行くような装備と、数日の準備期間を取るよう念押ししたのか。

 

 どうして、カタコンベの地図を持っていたのか。確かアレはシスターフッドの管轄の物。写しとはいえ、彼女らが持ち出しを許すとは思えなかった。

 

 そして、今の今まで何故介入しなかったのか。答えは今、カヤツリが直面している。

 

 

「しなかったのではなく、ずっと出来なかったわけか。何かしらの妨害はあるとは分かっていたが、ここまでのものとは想定外だったと」

 

 

 出来なかったから、今の今まで放置されている。迫害された学園への介入など、早ければ早い程良いに決まっているのに。そうではない理由はこの迷宮に違いなかった。

 

 そう、迷宮。トリニティ自治区からシスターフッドの警備を掻い潜って、カタコンベに侵入したところまでは順調だった。

 

 そこから、事前に選定したルートに入った瞬間に異変が起きたのである。

 

 どの道を通っても同じ場所に戻されてしまう。しかも戻される場所が入り口ですらない。進めもしないし出れもしない。そんな状況にカヤツリは嵌まり込んでいた。

 

 連邦生徒会長が準備しろなどと言う曖昧な指示しか出せないのも頷ける。

 

 恐らくは調査のために行かせたドローンか何かは帰って来なかったのだ。以前に試したから地図は用意してあり。それが帰ってこなかったから、ああも準備をさせた。

 

 普通ならここで干からびるだけだが、カヤツリには救いの手が差し伸べられていた。

 

 

『……今度は左右を二回づつと、正面を二回行ってください』

 

 

 今のカヤツリには、王女のサポートが付いている。今までのルートを総合して、正解へのルートを導き出す声がヘッドセットから流れ出していた。これがなければ、カヤツリは拳で壁を抜いていかなければならなかっただろう。

 

 

「悪いな」

 

『悪い? 今、悪いと言いましたか?』

 

 

 ヘッドセットの王女の声の機嫌が、途端に悪くなった。

 

 

『ああ、悪いと。そう貴方は思っているわけですか? まさか、これに付き合わせたことに関してではないですよね?』

 

 

 下手に返す言葉はないので黙っていると、王女の機嫌が更に急降下していくのが分かった。

 

 

『確かに、貴方は私のサポートは要らないと言いましたね。腹立たしいことに、場所の選定だけで良いと』

 

 

 カヤツリが王女に頼んだのは、オーパーツを探す手伝いまで。現場で実働しろというつもりはなかった。王女があの地下室から離れるのを連邦生徒会長が許さなかったのもある。

 

 けれど王女は、外に出なければ良いわけですねと。そう言って、再び地下に呼び出して。今カヤツリがしているヘッドセットを押し付けてきたのだ。

 

 どんな仕組みか、カヤツリの視界と聴覚を共有するそれのお陰で今助かっている状況。だから最初拒んだことに対して悪いと思っていたのだ。それも含めて、王女は気に入らないのだろう。

 

 

『私が自分の意思で参加しています。その事について、貴方が私の気持ちを、貴方に巻き込まれて迷惑していると、勝手に推しはからないで下さい。貴方はただ私に感謝して、前に進めば良いんです。私は王女なんですからね』

 

「ありがとう」

 

『よろしい。初めからそうしていれば良いんです。あの女の所為で全力は振るえませんが、何せ私は完璧なので』

 

 

 王女の声から、自慢気に踏ん反り返っているのが分かった。謝罪すれば怒るだろうから、彼女の機嫌を直すためにも、カヤツリは褒めようとする。

 

 

「そうだな、完ぺ……またか」

 

 

 口を閉じて、カヤツリは足を止めざるを得なかった。また自分で数字を書いた分岐点が見えたからだ。

 

 

『……暗くて見えませんが、何番ですか?』

 

 

 数字を言えば、王女は黙り込んでしまう。ブツブツと、何かを考えているのか、独り言が聞こえる。それが止むのを待ってから、カヤツリは声を掛けた。

 

 

「そっちの見解は?」

 

『道が変わっています』

 

「そんな事は分かってる」

 

『はぁ……分かってないですね』

 

 

 王女の答えにカヤツリはそう吐き捨てたが、王女は呆れたように言い返してくる。

 

 

「何が?」

 

『貴方が言うのは、別れ道の先が物理的に、地図通りには繋がっていない事ですよね』

 

 

 ああ、とカヤツリは返事をする。歩いた距離と道の傾斜から考えて、とっくにアリウスには到着していないとおかしい距離を歩いている。大回りさせられているわけでもないから、分かれ道を通るたびに、どこか別の道へと飛ばされているのが自然だった。

 

 

「道がこうして残っている以上、まだ誰かが使っている。この道で合っている筈だし、実際に使用されている。正規ルートか何かがあるはずだ」

 

『ええ、そうでしょう。この分かれ道には最近まで使用されていた跡があります』

 

 

 じゃあ何なのかと。カヤツリは口を曲げる。王女は答えを焦らしているからだ。自慢げな声の響きから、それが分かる。

 

 

「じゃあ、何が分かってないって?」

 

『道の変わり方ですよ』

 

 

 お手上げ。降参と言ったようなカヤツリの声を感じ取ったのか。王女はあっさり答えらしきものを言った。変わり方? そんなもの、別れ道を通った瞬間に変わる以外にない。

 

 

『貴方は、道を通る度と思っているようですが。それが違うんですよ。時間経過でも変わっています。だから全ての道のつながりを記録しても意味が無かった』

 

 

 時間経過と聞いて納得した。それでは法則性は見つかるはずもない。調べている途中変わってしまうからだ。結構な悲報ではあるが、カヤツリは心配していない。王女は分かりやすいから。

 

 

「それで、分かったと」

 

『勿論です。どうしてこんな長話をしたと思いますか? あと数秒で、最初の配置に戻るからですよ。さあ、走ってください。最短距離を行きますよ!』

 

 

 王女から矢継ぎ早に、方向の指示が飛んでくる。カヤツリは文句もそこそこに、カタコンベを走った。

 

 右へ左へ、時には真っすぐ。岩肌しか見えなかった道が、徐々に変わり始めていた。岩肌から石畳へ、石畳からコンクリートへと。

 

 最終的にはボロボロのアスファルトへと変わった道を行けば、上空に星空が広がっていた。

 

 

「抜けた……?」

 

 

 地下の湿って淀んだ空気ではない。乾いて冷たい風が頬を撫でるのを感じて、カヤツリは漸く忌々しい地下を抜けたことを実感した。

 

 

『どうですか。間違ってなかったでしょう?』

 

「ああ、ありがとう。いや本当に」

 

 

 王女への対応も今は気にならない。自然に礼も言える。それだけの事を王女はしてくれたから。王女が居なければ、カヤツリはまだ地下をうろついていたか、拳が血まみれになっていただろう。

 

 自慢げに話し出すと思っていたが、黙ってしまった王女に感謝を続けながら歩いていると、カヤツリは足を止めた。

 

 

『どうしましたか』

 

「見張りだ」

 

 

 カヤツリが居るところは坂道で、上り坂になっている。丁度トンネルから出てきて、このまま行けば地上に出るという塩梅だ。

 

 その上から気配がする。ここから誰かが出てくるなど気にもしていないから、全く抑えられていない。

 

 

『どうしますか? 気絶させますか?』

 

「いや、巡回ルートに入っているだけかもしれない。待ってみよう」

 

 

 王女の物騒な提案を差し止めてカヤツリは息を殺して待つ。王女の提案は最終手段で、カヤツリとしては取りたくなはい手段だ。

 

 アリウスの状況は何も分かっていない。だから、見張りを襲えば、オーパーツの回収どころではなくなる可能性もある。騒ぎは最小限に、動かした物は元通りに、現状復帰が隠密行動の鉄則だった。

 

 

『行きましたね……』

 

 

 カヤツリの視界から気配が消えたのを感じたのか、王女が呟く。カヤツリも確認するが気配はない。足音も遠くへと消えていった。念のため、しばらく待ってから坂を上がっていく。

 

 上がった先には見張りも何もなく、アリウス自治区だろう町並みが広がっていた。

 

 

「まるで、スラム街だな」

 

『そうですね。電気、ガス、水道。それらのライフラインは一部にしか通っていないようです』

 

 

 カヤツリの前に広がる町並みは暗い。星明りが明るく見えるくらいには暗いのだ。それは、アリウスの街並みが暗いから。

 

 電灯は点いていない。道は大穴があき、幾つかは罅割れて下の土が見える。まともな形の建物が殆どない。唯一見えるのは、どこかトリニティらしさを残した巨大な建築物だけだ。

 

 

『概ねの予想は正しかったわけですね』

 

 

 王女の呆れた声が耳に響く。それも仕方ない。アリウスの現状は想像よりも酷かった。

 

 この荒れ果てた街並み。これは風化した末の姿では無かった。地面の大穴は爆弾の跡だろう。壁は弾痕が無い場所を探す方が難しい。それだけで、ここは戦場だったと分かる。

 

 トリニティが暴れたわけでは無い。そうなら、アリウスは存在しない。そして、ここにはアリウスしかいない。なら、ここで争ったのは誰かなど分かり切ったことだ。

 

 

『トリニティに追われたアリウスはここに逃げ込んだ。その後に内乱とは……責任の押し付け合いでしょうか。そして何もないから、あの通路を通ってゴミ漁りですか? ……まぁ、何とも愚かと言いますか』

 

「ともかくとして、一番面倒な状況を引いたわけだな」

 

 

 カヤツリにとって、アリウスの現状などはどうでもよかった。それを気にするのは連邦生徒会長の仕事であって、カヤツリの仕事ではない。カヤツリの仕事はまた別の事だ。

 

 

「普通にオーパーツを引き渡して貰えなさそうだ。そして持っているかも怪しい」

 

『しかも、今も内乱が続いている可能性の中で探さなければならないと。初仕事にしては、大分骨が折れますね』

 

 

 寧ろ、誰も持っていない方が都合が良い。誰かが持っていた場合、最悪このアリウスで戦いを起こさねばならない。それはカヤツリの手には負えない事態だ。それを避けるためにも、まず最初にやらなければならない事が一つある。

 

 カヤツリは見張りに見つからないように高台へと移動した。凡その地形を確認するためだ。

 

 

「はぁ……嘘だろう?」

 

 

 端末を開いて、王女が出してくれた反応。その座標を周りの地形と照らし合わせる。反応は無数にあるが、概ね二つに分けられた。一つは遠く離れた人気のない建物群。そして、もう一つは唯一無事に聳え立つ、トリニティ調の建築物だった。

 

 つまり、二つの場所を周らなければならない。まだ遠くに見える方は良い。持ち込んだ双眼鏡で確認したが、倉庫の様に見え人気はなさそうだ。簡単に探し出せるだろう。

 

 最悪なのは、トリニティ調の建物の方だ。あそこだけが異様に綺麗で、電気さえついている。人が多く駐留しているのは嫌でも分かる。カヤツリは誰にも見つからずに、あそこへ侵入し、何かも分からないオーパーツを見つけなければならない。

 

 

『何を考えているか、当てて見せましょうか? 私に頼るか迷っているでしょう?』

 

 

 どうしようか悩むカヤツリに、王女が聞いてくる。腹立たしいが、正解である。恐らくは、いやほぼ確実に、王女はオーパーツの細かい位置を特定できるのだろう。

 

 そう出来るのならば、リスクを大幅に減らすことが出来る。無駄に見つかる危険を冒して、あのトリニティ調の建物を徘徊しなくていい。倉庫群だって早く終わるだろう。でも、それは頷きかねる。

 

 

「そんな事はしなくていい」

 

『ふむ、オーパーツの正確な位置情報を拒否する理由は何故ですか?』

 

「だって、嫌じゃないのか? 連邦生徒会長にそうされて嫌だったんじゃないのか?」

 

 

 王女は嫌いなはずだ。自身の力を他人に濫用されるのは嫌うはず。だから、カヤツリはここまで必要以上に手伝わせる気も無かった。

 

 

「それは王女の力なんだろう。そう簡単に振り回すから、碌でもないのが寄って来るんだ」

 

『つまり、私を心配しているわけですか?』

 

「そういう訳じゃない」

 

 

 そんな上等な理由ではないから、カヤツリは否定した。

 

 

『それでは、どういう訳ですか? この面倒で危険極まりない状況を避ける以上の、上等な理由があると?』

 

「今ここで解決する理由もない」

 

 

 カヤツリは言い返した。王女の言っていることは正しいが、詭弁ですらある。今ここで、全てを片付ける必要はない。連邦生徒会長に報告してからでもいい。

 

 

『言わなければ協力はしませんよ。私の案内が無ければ、カタコンベを抜けられないでしょう?』

 

「それは反則だろう……」

 

 

 王女は本気だった。恐らくは、要求を呑むまではそうするつもりなのが、嫌でも伝わってくる。

 

 

「……そうしたら、同じだろう」

 

『同じ? 何とですか?』

 

「利用したみたいじゃないか。その力をさ。そういう奴には成りたくないんだ」

 

 

 それは、カヤツリがやられて嫌だったことだ。能力だけ見られて、用が終われば捨てられる。初めて王女と会った時、色々言ったのはこれを思い出したからだ。

 

 そして、カヤツリを捨てた人間と同じことをしたくはなかった。

 

 

『貴方、バカなんじゃないですか?』

 

「バカとは何だ、バカとは。俺は真剣に……」

 

『バカですよ。本当にバカです。私が見た人間の中で、一番の大バカ者です』

 

 

 王女の言い方は辛辣で、カヤツリが言い返しても衰える気配を見せない。

 

 

『貴方、私をバカだと思っているでしょう。私が考えなしに力をポンポン使っていると思わなければ出てこない言葉です。私が誰の言うことを聞く様な頭の緩い女だと思っているんですか? とんでもない侮辱ですよ』

 

「そんなつもりは……」

 

『ええ、そんなつもりは無いんでしょう。貴方はバカ野郎ですからね。だから、そんな大バカ者にも分かる様に言ってあげます。いいですか。一度しか言いませんから』

 

 

 王女は静かな声だ。その代わりに、何かが言葉に煮えたぎって、ヒートアップしていた。

 

 

『私は、力を振るうかどうかは自分で決めます。だから、あの女には最低限の協力だけしかしませんでした。ですが、貴方には少しサービスして良いと思っています』

 

 

 その声は、あの地下からは想像もできない程に生気に満ちていた。衝動的ではあるが、ちゃんと王女なりの理屈を考えて言っていた。

 

 

『勿論、加減はしますよ。あの地下に居る限り、全盛の力は振るえませんし、ここは距離がありますから、指先一つで解決とはいきません。私が出来るのは、先も言った通りに場所の特定だけです。実働は貴方であることに変わりない。それでも、私を利用と言いますか? 私をバカにするのも大概にしてください。良いですね!』

 

「降参……分かった」

 

 

 カヤツリは両手を挙げて、それだけを言った。王女はカヤツリの言う事など聞いてくれない。その時点で、カヤツリの論理は破綻していた。ちゃんと嫌なものは嫌だと言えているなら、カヤツリの心配は杞憂でしかないのだ。これ以上は、カヤツリの言い訳の為に、王女を利用する羽目になる。

 

 

『初めから、そう言っていればいいんですよ。それでは、端末に出しますから。倉庫群から行きましょうか……ああ、これはまた懐かしいものを……』

 

 

 満足げだった王女は、倉庫の反応から端末に出した。カヤツリは呻くことしかできなくなる。

 

 

「巡航ミサイル……? こんな物がオーパーツだって?」

 

『オーパーツですよ? 部分部分が私側の技術の産物ですし、貴方が思うよりも威力があります。反応が多数あるのは、パーツの幾つかが反応したせいでしょう』

 

 

 倉庫の中にあるのは、流線型の巨大な円錐に円柱が接続されたもの。巡航ミサイルと発射台。あまりにも即物的で、対処に困る。

 

 

「爆破処理は難しいな。どうすれば良いんだ?」

 

『基幹パーツを抜けば問題はありません。そうすれば唯の巡航ミサイルに過ぎなくなります。やり方は教えますよ。直ぐに済みます』

 

「次は?」

 

 

 ミサイルの解体の事を一先ず頭から追いやって、カヤツリはトリニティ調の建物のことを聞く。

 

 

『……場所は最上階の様です。しかし、妙ですね』

 

「妙?」

 

 

 王女の声が疑問で揺らいでいた。今までの確信に満ちた言葉ではない。巡航ミサイルとは違う。

 

 

『いえ、確かに反応はあります。オーパーツであるのは間違いないんですが……何なんでしょうか。この違和感……』

 

 

 画面に情報が出てくる。目標は建物の上層階。そこにオーパーツがある。ただ、その形が妙だった。

 

 

「人型……? まさか……」

 

 

 シルエットが人型。しかも少女らしい起伏が見える。王女と同じようなものであるのかと、カヤツリは呻いた。

 

 

『いえ、これは身に着けている人物のシルエットですね。今もオーパーツが起動しています。身体の表面を覆う防壁なのか、そのせいでこうなっています。それが何かを判別するには近づくしかないでしょう』

 

「つまり、あそこに侵入して、それが何なのか調べなけりゃならないと」

 

 

 夜闇に輝くトリニティ調の建物を見て、カヤツリは肩を落とす。とても骨が折れそうだ。

 

 

『助けは必要ですか?』

 

 

 王女が問いかけてくるが、カヤツリの答えは決まっていた。

 

 

「今はいらないが、必要なら言う」

 

『そうですか。なら、用が出来たら呼んでください』

 

 

 その王女の返事は、今までよりもずっと明るいように、カヤツリには聞こえた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。