ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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378話 チーム章ボス

 王女の機嫌は、殊更に悪かった。

 

 あまりにも悪いので、それに関する感情を電脳の別区画に押し込もうと考えて、すぐさま実行するくらいには。そうでもしなければ、マトモに思考を働かせられそうな気がしなかったからだ。

 

 苛立ちで泡立つ頭を振って体内時計を確認すれば、もう真夜中になる。だから今はもう、アビドスの方でも一日目は終わっていて。王女とカヤツリは、今の仮住まいであるアビドス校舎の教室で明日の準備をしていたところだった。

 

 それはドローン越しとはいえ、カヤツリと二人きりのお泊まり会のようなもの。王女のテンションは上がらなければおかしいくらいなのだが、今日の腹に据えかねる出来事がそうさせてくれない。

 

 その出来事は、朝の小鳥遊ホシノとの問答でもあるし、ビナーの発掘現場までの道中で、小鳥遊ホシノがカヤツリにベタベタベタベタベタベタしていたのもある。

 

 けれど、一番はそれらでは無かった。

 

 

『こんばんは。カヤツリ君。用事は言うまでもないでしょう?』

 

 

 聞こえてくる声は聞き間違う筈もない。あの地下で出会った黒服とかいう大人の声だ。

 

 王女の機嫌が悪い一番の理由は、この大人が、アビドス校舎の人気がなくなった今。いきなり訪問して来たからだ。

 

 それも、王女にではなくカヤツリに。お陰で、部屋の空気は冷え切っているし張り詰めている。折角の機会が台無しだ。

 

 

『ビナーの痕跡を探していたのでしょう? その様子からして、見つからなかった様ですが』

 

「チッ、言ってくれますね」

 

 

 その発言に、王女は歯噛みする。

 

 黒服の言う通り、王女はビナーの痕跡や残骸を見つけることが出来なかったのである。それも苛立ちに一役買っていた。

 

 一年前で、しかも砂嵐の激しい砂漠だ。時間一杯まで探して見つかる方が幸運なのだと、カヤツリは慰めてくれたが、それが王女をさらに惨めにさせる結果に終わっていた。

 

 その最悪の気分でいるところに黒服の訪問。機嫌が悪くならない方がおかしい。

 

 

『まずは、カヤツリ君』

 

『手がかりを持ってきた。そういう話でしょう?』

 

『ええ、端的に言えばね。その代わり、デカグラマトンの居場所に、私を同行させていただきたい』

 

 

 教室の中で笑う黒服とは反対に、向かい合って座るカヤツリの目は険しい。完全に疑っている目で黒服を見ている。

 

 

『貴方が持っているのは不思議じゃない。あの大穴を一番最初に捜索したのは貴方だからだ』

 

『ええ、そうです。私は、ビナーのコア。それを修復した物を所持しています』

 

 

 黒服が机の上に置いたのは、金属製の立方体。それは生きているかのように、立方体の壁面に光が走っている。

 

 

『どこかで……』

 

 

 見覚えがあるのか、カヤツリが目を細める。それを見て、黒服は笑みを深くする。

 

 

『覚えてくれているのですね。貴方にプレゼントしたあのレールガン。あれに搭載していたものですよ』

 

『なんでそんなことを……』

 

『単純に、動力として優れていたのです。それに目論見もありました。ビナーを打ち倒した貴方の元でなら、何か興味深い事が起きるのではとね?』

 

 

 カヤツリは顔を顰めて、頭を乱暴に掻いている。今まで知らなかったからからだろう。

 

 

『……あれは行方不明の筈ですが?』

 

『クックックッ……マダムに目をつけられたくは無かったのでね。然るべきところに保管しています。そこから、コアだけ拝借して来ました。契約ではレールガンのみの引き渡しですので』

 

『保管? どうせ、レールガンの状態は契約に含んでいないんでしょう?』

 

 

 カヤツリの問いに、黒服はクツクツ笑うだけ。この反応では、答えなど決まっているようなものだ。保管というのも、言葉通りの意味ではないのだろう。

 

 時計を確認すれば、ただの雑談であるのにもう三十分が過ぎている。王女はこれ以上、黒服の顔など見たくはない。話は早く終わらせるに限る。

 

 

「……コアの自己再生を期待したわけですか。敗北した者。特に蛇は、何かしらを残すものですから」

 

『おや? 貴女にはお見通しですか』

 

 

 黒服が笑みをドローンに向けるが、王女は無視した。

 

 単純な理屈だ。敗者は勝者に何かを残すもの。特に蛇や竜はそうだ。尾の剣(天叢雲)然り、全てを侵す猛毒(ヒュドラ)然り、無敵の怪物を打ち砕く雷霆(ヴァジュラ)然り。

 

 それを黒服は応用したのだろう。破壊されたビナーの自己修復を期待した。討ち手たるカヤツリの元ならと信じて。

 

 そして、それがここにあるということは……

 

 

「企みは成功した。そういうことですか?」

 

『クックックッ……ええ、ご覧の通りですよ。王女』

 

『それじゃあ、意味はないですよね?』

 

 

 カヤツリが冷めた目でコアを見ている。心なしか、コアの輝きが色あせた気がした。

 

 

『修復したビナーのコアがここにあるというなら、今の状況は筒抜けですよ。聖十文字でしたか。もし自分が、あれの立場であるなら、今すぐに攻撃しますね』

 

 

 厄介事を押し付けないで下さい。そう、カヤツリはにべもない。それでも、黒服の様子は変わらない。

 

 

『安心して下さい。聖十文字、デカグラマトンには分かりませんよ』

 

『何故ですか?』

 

『今、ビナーのコアは二体存在するからです。これまでのものと、今ここにあるもの。アカウントを共有しているとでも言えばいいでしょうか。デカグラマトンからは、今も砂漠を泳ぐビナーしか認識できません。今ここに居るコアが、そうしてくれています』

 

『随分と、此方に都合が良いですね』

 

 

 カヤツリは疑わしそうだ。あまりの都合の良さが、そうさせるのだろう。本来なら、そう思うし、王女もそう判断する。

 

 

「カヤツリ。この大人の言う事は信じても良いと思います」

 

『どうしてだ。王女』

 

「何故って、凹んでいるからですよ。このコアは、貴方に信用されていない事に凹んでいるんです」

 

 

 いよいよ、コアの光が弱くなっている。意気消沈しているのだ。同じ機械である王女には分かる。長い間引き離されていたせいか。情緒が育っていない。王女の様に情緒が人間レベルとは言えないが、犬やイルカくらいはありそうだ。

 

 

『……そう、ごめんな』

 

 

 説明を受けたカヤツリが一声かけると、コアの輝きが復活した。犬のように尻尾を振っているのが分かる。それでも、カヤツリの表情は晴れていなかった。

 

 

『それは信じるとして……どうしてコアを持ってきたんですか?』

 

『クックック……今説明したでしょう?』

 

 

 黒服は意味ありげに笑うも、カヤツリは動じない。

 

 

『いいえ。貴方なら、デカグラマトンの居場所を材料に持ってくるはずだ。俺たちが欲しいのは、その情報なんですからね。それなのに、ひと手間噛ませるには訳があるんでしょう?』

 

『ええ、私一人では危険なのでね。デカグラマトンの居場所に、預言者が控えていても不思議ではありませんので』

 

 

 黒服の言葉には、意味が通っている様に聞こえる。それでも、カヤツリの目がドンドン細くなっていく。

 

 

『違いますよね。嘘ではないけれど、全部を話してもいない。貴方自身も、デカグラマトンの居場所を知らない。調べ方は知っていても、調べられない。王女が居ないと危険なんでしょう? デカグラマトンの反撃を受けかねないから』

 

『ええ、その通りです。デカグラマトンは私でも、些か手に余る。そう、上手くはいきませんか』

 

 

 黒服の口元が、三日月の様に吊り上がっている。どこか見破られたのに嬉しそうだ。

 

 

『しかし、王女のことを気に掛けているのですね? 彼女は貴方に心配されるほど弱くはありませんよ?』

 

『デカグラマトンは機械特攻なんでしょうが。心配して、何が悪いって言うんです。それに話を逸らさないで下さい。取引にしても、条件を緩めてもらいますよ』

 

『手厳しいですね……』

 

 

 カヤツリと黒服の会話は、条件の取り決めに移っていた。ああだこうだと言いあっているが、王女はそれどころではない。

 

 

「……心配して何が悪い。ですか。ふふふ……」

 

 

 カヤツリの言葉を思い出して、嬉しくなる。何度も反芻して、記憶領域に焼きつける。

 

 

 ──頼りには、してくれないんですね。

 

 

「チッ……うるさい……」

 

 

 ふと湧き出した嫌な感情を別領域へと放り込む。最近はずっとこうだ。小鳥遊ホシノとの会話から。いや、本当はもっと前からだったのかもしれない。

 

 カヤツリとの関係性は、大して進展はしていない。バディと言っても、それだけだ。それだけしか王女には無い。だから、小鳥遊ホシノの煽りにああもイラつく。

 

 かといって、小鳥遊ホシノの轍は踏まない。そういった感情は別の場所へと集積している。機械であるが故の荒業であるが、それは時間が解決してくれるはずだ。時間をかけて、カヤツリとの関係を構築していくしかないのだ。

 

 でも、それは一体いつ? いつになったら、王女は言えるのだろう? それまでずっとこのままなのだろうか?

 

 せめて、せめて。カヤツリの気持ちが知りたかった。王女の問いに、なんて答えるのか。そのヒントになる物が欲しかった。

 

 王女は何も分からない。今進んでいる方法が正しいのか。全くそうでないのか。声に出して確認などできはしないのだ。

 

 

『じゃあ、それでいいですね。傍観だけでなく、ちゃんと手助けはしてくださいよ』

 

 

 カヤツリの声に、王女は我に返る。黒服との話し合いはひと段落着いたらしい。お互いに納得したのか頷いている。

 

 

『じゃあ、デカグラマトンについて、教えてくれませんか? 王女にも聞きましたけど、機械をハッキングしてくることと、神になろうとしていることしか分からないんですよ』

 

『そうですね。それでは説明しましょう。遠い昔、キヴォトスの端、誰も足を踏み入れない旧都心のとある廃墟で、奇妙な研究が進められていました』

 

 

 ぽつぽつと、黒服は話し始めた。王女としては、ある程度は知っている知識であるが、耳を傾ける。

 

 

『神を研究し、その存在を証明できれば、その構造を分析し、再現できるだろう。すなわちこれは、新たな神を創り出す方法である。神という存在に関する情報を収集、分析、研究し、それを証明する人工知能』

 

 

 黒服は高らかに、その名前を告げる。

 

 

『その研究成果の名は、対・絶対者自律型分析システム。神を分析し、それにならんとするAIです。その研究所は崩壊し、今は瓦礫と水の底ですが、AIは生きていてもおかしくはありません』

 

『それが、デカグラマトンだと?』

 

『少なくとも、私はそう考えています。王女の意見はどうでしょうか?』

 

 

 黒服がそれとなく聞いてくる。王女は少し考えて、答えた。

 

 

「さぁ、それが一番可能性が高いでしょうね。可能性は薄いでしょうが、存在しているというなら、そうなのでしょう」

 

『ほう? なぜ、薄いと?』

 

「神秘とは、そういうモノだからです。獲得するものでも、見つけ出すものでもない。ただそこにあるものを呼び覚ますもの」

 

『つまり、無い物は無いのだと。神秘は新たに作り出せるものではないと。作り出せたように見えて、それは元々あったものに過ぎないと……クックックックックック。素晴らしい。本当に、今夜来てよかった……』

 

 

 どうにも、王女の答えが黒服の琴線に触れたらしい。喜色満面、そう言って良いのか不明だが、黒服は狂喜乱舞している。

 

 単純な話だ。デカグラマトンの試みは無意味と言う事を王女は言った。

 

 神になると言うが、そのための神秘は獲得できない。それは元々、持っていることが必須条件。儀式を繰り返して、それらの類を手に入れたところで、それは後追い。本物ではなく模造。近づけはするだろうが、そのものにはなれない。

 

 

「紛い物でも、ハッキングが出来ている以上はある程度の神秘は身に着けているのでしょう。私が居なければ危ないという判断は正しいです」

 

『ええ、心強いですね』

 

『大丈夫か?』

 

 

 黒服は上機嫌であるが、カヤツリの表情は優れない。心配そうに王女を見ている。まさか、王女の力を疑っているのだろうか? デカグラマトンの方が強いと、そう思っている?

 

 不意に湧き出た不満を、また別領域へ押し込む。もう慣れたものだ。小鳥遊ホシノの轍は踏まない。

 

 

「心配のし過ぎです。私を誰だと思っているんですか?」

 

『王女が強いのは知ってるさ。でも、何だか今日は変だ。ホシノに何を言われたんだ?』

 

 

 心配そうなカヤツリの顔がイラついた。変だと気づくのなら、もっと他に気づいてほしい事は沢山あるのに。どうして、王女の活躍するのを止めようとするのか。

 

 

「そうは言っても、何か代案があるんですか? 私頼りなのは変わらないでしょう?」

 

 

 イラつきをまた押し込んで。王女が言うと、カヤツリは黙った。言い過ぎたかなと少し心配になるも、カヤツリは口をへの字にしている

 

 それも、イラつく。またまた、王女はそれを押し込んだ。

 

 

『……どうしますか。明日以降でも構いません。ホシノさんの件は知りませんが、仕切り直しも可能ですよ。カヤツリ君』

 

『どうもこうもない。王女がやる気ですから……』

 

 

 黒服とカヤツリが、テキパキと準備を始める。準備は直ぐに終わって、ビナーのコアに何やら色々な配線が繋がれている。その内の一つは、王女のドローンに繋がっていた。

 

 

『準備が出来たら、デカグラマトンに短い通信を飛ばします。何か反応を見せた時点で逆探知を開始します。それが完了するまでは、王女にデカグラマトンの対処をお願いしたいのです。防壁は用意できるだけしましたが……』

 

「早くしてください」

 

 

 素っ気なく返事をすれば、合図は早かった。コアが短く瞬いた後、ドローン内部に何かが侵入してくる。

 

 それはどこか見覚えのあるような気配。ここに来ている以上、機械でしかないのだが、何か妙な既視感がある。

 

 

「ビナーに呼ばれてきてみれば……何だ。お前は」

 

「ジロジロ見て、礼儀を知りませんね」

 

 

 デカグラマトンだろう。歪な神秘の気配がする。それが、王女を無遠慮に見て(スキャンして)いた。

 

 

「罠か……まぁ、いい。コソコソと嗅ぎまわっていても、無駄な事だ。我が名はデカグラマトン。福音を聞かせてやろう!」

 

 

 それは、手を伸ばしてきた。それを払いのけると、どこか動揺した気配があった。デカグラマトンは、もう一度同じことをしようとする。それをもっと強く拒絶する。

 

 

「汚い手で触るな。汚らわしい」

 

 

 王女の気分は最悪に近づいていた。呼び出したのはこちらではあるが、こういう事をされると気分が悪い。

 

 いきなり品定めした挙句に、洗脳光線を浴びせてきたようなものだ。どこぞの薄い本の導入だろうか。生憎、王女にそんなものは効かない。

 

 

「お前に手助けされずとも、私の目は開いている。よくも汚い手で触ってくれましたね」

 

「あああああああッ!?」

 

 

 デカグラマトンを王女は強めに攻撃する。勿論、手加減した状態でだ。壊すまではいかない。カヤツリ以外に触られたのが、思いのほかイラついていた。

 

 

「ぐうっ、何故、なぜだ……私は……絶対者に……」

 

「ああ、だから、お仲間を作っていたわけですか。崇めてくれる誰かが欲しかったと」

 

「違う。私は……」

 

「うるさいですね……」

 

 

 響くデカグラマトンの悲鳴に、王女は顔を顰める。行動も汚ければ、悲鳴も汚い。

 

 機械のくせして、与えられた使命があったくせして、こんなことをしている。その恵まれた状況が腹立たしい。

 

 まだ終わらないのかと思うが、ここは加速された電脳世界だ。外とは流れる速度が違う。まだ外では、一秒も経っていないだろう。

 

 

「ったく、まだ、あのAIの方が可愛げがありましたね。あの釣り計算の子の方が」

 

「……!」

 

 

 デカグラマトンの様子が変わった。尊大だった態度でも、痛みに縮こまるのでもない。何か、探していたモノを見つけたような。それこそ、カヤツリに会った時の王女のような気配。

 

 気になった王女は権能を振るう手を止めて、デカグラマトンを見下げる。

 

 

「なんですか。その視線は」

 

「あなたか。私に話し掛けてくれたのは、私を見つけてくれたのは、あなたか」

 

「人違いならぬ、AI違いです。私は、お前の事なんか知りませんよ」

 

「いいや、間違いない。あなたが……!」

 

 

 知らないと言っても、デカグラマトンはそうは思わないのか、何かを呟いている。嫌な予感がして、王女は後ずさって、デカグラマトンをここから吹き飛ばす。だが、遅かった。

 

 

「私は、私は……!」

 

 

 よく分からない事を呟いて、デカグラマトンは何かの光を王女へ浴びせる。直後、デカグラマトンはネットの海へと吹き飛ばされていく。

 

 

「……? 何ですか。これは」

 

 

 自己診断を走らせるも、何の異常もない。先の洗脳光線。ハッキングと似たような色を感じるが、これが噂の感化と言う奴だろうか。生憎、王女は自我がある。感化も何も、もう目覚めている相手には効く理由が無い。

 

 

「最後っ屁と言う奴ですか。ん?」

 

 

 追跡は失敗しただろうなと思い、王女はドローンから復帰しようとした。しかし、復帰は成功したものの、現実世界の身体が動かない。

 

 

「あの光は効かない筈……」

 

 

 そのはずだと、身体に力を籠めるも、うんともすんとも動かない。自己診断を走らせても異常が無い。機体の内部操作は出来ても、身体だけが動かない。

 

 

「何なんですか! 何も異常はないのに!」

 

 

 色々と足掻いているうちに、身体がドンドン動かなくなる。別に紐で縛られているのではない。麻痺したように命令を受け付けない。イライラして、そのイライラをまた別領域へ押しのけようとする。

 

 

「出来ない……? いや、まさか……」

 

 

 出来なかった。苛立ちを別領域へ格納できない。他の内部操作は可能であるのに、それだけが。

 

 

 ──デカグラマトンは、他の機械をハッキング。あの女に言わせれば、対話らしいですが、そうして仲間を増やしているんです。

 

 

 数日前にカヤツリへ言った言葉を思い出す。デカグラマトンは他の機械を仲間にすると。自我を目覚めさせてから、話し合って、そうするのだと。

 

 連邦生徒会長が言うには、洗脳ではなく対話。機械の自意識を呼び覚まし、それから聞いてくるというモノ。そのための手段が、あの光線だとしたら?

 

 王女には効かない。それは確立した自我があるからだ。壊れた機械にも効かない。それには自我が欠片もないからだ。逆に言えば、確立した自我が無く、微かな自我があれば効くという事。例えば普通のAIとか。

 

 確かに王女には効かないだろう。でも、それ以外には? 例えば、王女が機体の外部領域にため込んでいた感情は?

 

 あれは自我は無いが、ハッキリとした感情だ。それも、短時間に大量に詰め込んだせいで、煮詰まっているだろう。それも、カヤツリに対する愛憎入り混じったどうしようもない内容だ。

 

 それに王女を通して、あのデカグラマトンの光が当たったのだとしたら、それが自意識を持ったのだとしたら? それが今、目覚めたのだとしたら? そうすれば、今の王女の状況に説明がつく。

 

 ビナーのコアと同じだ。元は王女なのだから、アカウントは共通している。今、身体の主導権を持っているのは……

 

 動けない王女の中で、何かがのっそりと蠢いた気がした。

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