ホシノ同級生相棒概念 作:洞鼬
君に話がある。
関係の薄い人間からそう言われて、喜ぶ人間はいないだろう。そんな時に転がり込んでくる話は、得てして碌なものではないからだ。
考えてもみて欲しい。話が普段から無いからこそ、関係が薄いと言うのだ。そうであるのに態々、話があるなどと。殆ど全ての場合でトラブルを運んでくると言ってもよく、今までの経験上、それはカヤツリも例外ではなかった。
「……話? 昼休みが終わるまでしか話せませんが」
だから、番号をこっそりコールした携帯と鞄を手に持ったまま、カヤツリはカヤを見下ろした。当のカヤは怒りの感情はどこへやら、腕を組んで指を立て、困ったような表情で佇んでいる。やけに友好的な雰囲気であるのが、カヤツリに昔を思い起こさせて、一旦ジャブを放つことを選ばせた。
「
「ふふ、
連邦生徒会を構成する十一の室。行政委員会にカヤツリの担当部署はない。どちらかというとSRT特殊学園の立場に近い。連邦生徒会長の直属の部署がカヤツリの部署だからだ。そこのトップともなれば、カヤの言うことはある意味で正しい。
だが、カヤツリの警戒心は跳ね上がっている。やって来たのが、他の連邦生徒会役員ならいざ知らず、よりにもよって室長。それも防衛室のというのが拍車をかける。
十一の室のトップが室長である。十一人の室長はそれぞれが同格で、室長より上は統括室主席行政官と連邦生徒会長の二人しかいない。
そんな立場の人間が、わざわざ昼休みの、こんな人気のない場所に、カヤツリ目当てでやって来た。これだけで、警戒するには十分だった。
「それで、話とは? 私が防衛室長と話すようなことは何もないと思いますが」
「いえいえ、そんな事はありませんよ。私は、つい先日の件について。感謝を伝えに来たのです」
カヤは微笑みを深くするが、カヤツリは全く持って覚えがない。防衛室に関して、何も触れてはいない。そもそも防衛室はカヤツリの仕事と、あまり関係は無いのだから。
「ふふふ……D.U.地区の立てこもりの件です。いえ、未遂……でしょうか」
「あー……なるほど」
それに関しては覚えがあった。単純な話、カヤツリは立て籠り犯を鎮圧した。別に、態々出向いてそうしたわけでもないし、連邦生徒会長に命令されたわけでもない。
ただ、カヤツリが買い物をしていたところに、ヴァルキューレに追われた犯人たちが来ただけだ。追われて焦っていたのか、追ってきた相手が相手だったせいか。カヤツリに人質になる様に銃を突き付けて脅してくるものだから、反射的に手が出てしまった。頭蓋骨が変形していないと良いのだが。
「あの立て籠り犯は、カイザーの工場から盗み出した。それなりに強力な装備を持っていたようでして、ヴァルキューレであれば、手を焼いていたでしょう」
「それの感謝を。と?」
「ええ。その通りです。何か、ご馳走くらいはさせていただきたいですね」
含むところなどないように、カヤは笑顔だ。顔面に笑顔を貼り付けている。それを見て、カヤツリは安心した。とても分かりやすくていい。
「そうですか。態々、その為にご足労頂いたと……それはそれは、時間を掛けさせてすいませんねぇ。ただ、個人的に嬉しくは思いますよ」
「なら、都合の良い時間を言って下さい。今すぐにでも……」
「ああ、その必要はありませんよ」
カヤツリはそう言ってカヤを止める。電話を取り出そうとした姿勢のまま、カヤは固まっていた。少し考えて、聞いてくる。
「別の店が良いと。そういう事ですか?」
「いいえ。言葉とお気持ちだけで十分です。そう言っているんですよ。防衛室長」
カヤの提案に、カヤツリは首を横に振った。これは、罠だからだ。乗ってはいけない類の罠だ。
言葉だけ見れば、お世話になったからお礼を。そういう風に聞こえる。実際、当事者同士の間ではそうだろう。だが、お互いに立場を考えれば見方は変わって来る。
防衛室長が、連邦生徒会長直属の部署の部長と食事をする。そこにお礼以上の意味が無いのだとしても、周りはそうは思わない。カヤツリは防衛室側だと。そう見るだろう。それか、連邦生徒会長公認でそうしているとすら見るかもしれない。
それが、カヤの狙いなのだろう。その為に態々、ここまで出張ってきた。立場が目当てであれば、SRTの人員でも良さそうな気はするが、彼女らは兵士だ。彼女らは考える頭を持たない。責任を連邦生徒会長へ丸投げしている上に数も多い。誰が上だとかもないため、やっても効果が薄いのだ。
「ふむ……では、他の物が良い。そういう事でしょうか? アビドスの兎馬カヤツリさん」
少し、ほんの少しだけ。カヤの糸目が開いて瞳が見えた。
「アビドスの治安維持。お困りではありませんか? アビドスは指名手配犯が蔓延る無法地帯。あなたを含め、総生徒数が四名では対処が大変でしょう? あなたは暇があれば、ここからアビドスまで足を運んでいるようですから」
「ヴァルキューレでも派遣してくれると?」
「事実、そうするべきなのですよ。各自治区の自治権が優先される影響で、そうはなっていませんが。ヴァルキューレはキヴォトスの治安を維持する組織なのですから」
ふふんと鼻息荒く、カヤは薄い胸を張る。
「アビドスにヴァルキューレの拠点はありませんからね。対策委員会でしたか? そちらの生徒会長には保留と。直ぐに首を縦には振って頂けませんでしたが。其方も色々とあるようで」
カヤの言う、色々。そこには言葉通りに色々な意味が含まれているのだろう。カヤツリが治安維持のためだけに、任務の体を装ってアビドスに足繫く通っている。そんな仮説が飛び出すくらいでは、きっと見当はずれだろうが。
ヴァルキューレの存在意義は間違っていない。彼女たちはキヴォトスの治安維持組織。それなりの装備を与えられ、それなりの訓練を積んでいる。それは、シロコと昔行った銀行強盗の訓練で知っている。普通の強盗位なら対処は出来る。
だが、各自治区はヴァルキューレに良い顔をしない。彼女らは所詮、連邦生徒会所属の戦力だからだ。他人に自分の庭を踏み荒らされるのは誰だっていい気はしない。だから、トリニティには正義実現委員会、ゲヘナには風紀委員会が存在する。ミレニアムすら保安部があるし、特殊部隊もいるらしい。
つまり、ヴァルキューレは存在意義が微妙であったりする。書類の手続きで初動が遅いともなれば猶更だろう。でも、それは戦力が充実している学園だから言えることで、アビドスはそうではない。
実際、やってくれるならそうしてほしい。だが、カヤツリはヴァルキューレを全く信用していない。正確には防衛室ではあるのだが、理由はいくつかある。
まず一つは、ヴァルキューレは、アビドスの環境には耐えきれないだろう。そうでないのなら、数十年前の災害から残ってくれているはずだ。しかし彼女らは、とうの昔にアビドスから撤退している。新しく派遣したところで二の舞になるだけだ。それに耐えきれる
仮にカヤが命令したとしても、本人が頷かないだろう。そして、人員は必要だからそこに居るのだ。強引に引き抜けば、その人員がいた現場に大穴を開ける事になる。
そんな事は、防衛室長であるカヤなら承知のはず。ならばなぜ、カヤは今になってアビドスへヴァルキューレをねじ込もうとしてくるのか。それが二つ目の理由になる。
一年前、まだカヤツリが連邦生徒会に来る前。ノノミとシロコがやってくるか来ないか辺りの事。ある事件をクロノスがスクープとして引っこ抜いた。あの理事にしては珍しい不手際だと思ったからよく覚えている。
──カイザーインダストリー、違法兵器を製造!?
概要としては単純だ。カイザーインダストリーの兵器工場。そこで違法兵器を製造していたことが白日の下に晒されてしまった。理事らしくないとは思ったが、仕方ない面もある。まさか、秘密裏にSRTが潜入して、内部書類を持ち出されるなど想像の外だろうから。そこはSRTを動かした連邦生徒会長の手腕だろう。
あれは、それなりに大きな事件だった。大企業たるカイザーの不祥事と言うのもあるが、一番は関わった人間がとても多かったことだろう。
確保された書類には、工場の安全保障書の捏造について書かれていたらしい。金品の授受、つまり賄賂で安全基準を通過したことと、それに関係したメンバーの名前が。
そして、その中にはカイザーの幹部だけでなく、防衛室の関係者も挙げられていたらしい。そう、防衛室である。
勿論、その人員をそのまま運用はしないだろう。首にするか、閑職へと追いやるか。いずれにしても、防衛室に対して大規模な配置転換がされたことは想像に難くない。
つまるところ、今の防衛室はガタガタ、屋台骨が揺らいでいる。前の人員はほとんど残っておらず、以前までのコネクションも使えない。他の部署からの視線も厳しいうえ、予算管理も厳しい目で見られる。少なくとも、あの財務室長はそうする。
そうともなれば、現防衛室長であるカヤは困るだろう。新しく室長に任命されるくらいだから、仕事は出来るか、防衛室の残留組なのだろうと思う。そんな人間なら、考える事はそう多くない。
まずは、立場の回復だろう。真面目に仕事をこなし、実績を上げる事が求められる。しかし、防衛室の傘下組織はヴァルキューレ。しかし、ヴァルキューレは各自治区の自治権の影響で活動制限がある。直ぐの成果は期待できない。
なら、新しい部署を増やせばよい。成果が挙げられずとも、意欲は示せるだろう。それに、連邦生徒会長がカヤツリを拉致してきた影響か、アビドスの知名度は上がっている。
まだ、あったんだ。その程度の物ではあるが、何もしないよりはマシ。そう言える程度の成果はある。そして、カヤはカヤツリがアビドスから逃げてきたとでも思っているのだ。だから、生徒会長であるホシノと仲が悪く、権力争いでもしていると思っているのかもしれない。
まぁ、全くの見当外れであるのだが。カヤツリを上手く使ってやろうと言う意図が透けて見えるのが二つ目だ。そして最後は……
──こいつは、俺の事を知っているのか?
これが最後の理由。カヤは、防衛室は。未だにカイザーと繋がっているのか。今のところ、カヤの立場は分からない。ジャブの効きが悪いが、気づいて誤魔化している可能性もある。
カイザーが前々から、連邦生徒会の防衛室に鼻薬を嗅がせていたことは知っている。それが、一年前のSRTの活躍で一掃されたことも。ただ、それだけで終わるだろうか。
カヤツリは知っている。カイザーコーポレーションの誰が、裏でカイザーインダストリーを実質管理していたのか。
あの理事が、予想外の事態とは言え手を打っていないとは考えにくいのだ。今までの様にとは行かずとも、目と耳くらいは残している可能性がある。だから、今、カヤツリに接触してきた。
カイザー、またはカヤの狙いがアビドスなのか、それともカヤツリが仕事で集めているオーパーツなのか。あるいはその両方なのか。今の所は分からない。少なくとも、提案に乗る理由はなかった。それに、そろそろのはずだ。
「……おや、チャイムですね」
昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響いた。デカグラマトンからこちら、ずっと長話をしていたのだから仕方がない。
「そろそろ、戻った方がよろしいのでは?」
「……そうですね。では、何か要望があれば防衛室まで。さっきの話を考えてくれると嬉しいです」
少し、機嫌の悪そうな顔をしながら、カヤは帰っていった。廊下の先へ影が消えて、しばらく経ってから、カヤツリは移動を開始した。
「ありがとう。デカグラマトン」
『ただチャイムを鳴らしただけだ。礼を言われるほどのことではない』
繋げていた携帯電話から、デカグラマトンの声がした。何のことはない。携帯をつないで、デカグラマトンにお願いをしただけだ。
「それでもだ。助かったよ」
『ならば、王女の弁当を早く味わうのだな。もう、五分を切った』
不愛想にデカグラマトンは通話を切る。それにカヤツリは苦笑して、足を速める。
──少し、警戒はしておくか。
そんな事を考えながら、カヤツリは昼食が食べられそうな場所へと急いだ。
□
「また、来たんですか。毎度毎度、暇なんですか?」
深夜。毎度の様にやって来た連邦生徒会長に、王女は渋い顔をした。対する連邦生徒会長は変わらぬ笑顔だ。
「もう、年末ですからねぇ。今日から仕事納めなんですよ」
その回答に王女は呆れた。だからと言って、ここに来るのはおかしい。普通は、友人と来年の予定でも話す時分だろう。もしかして、友人がいないのだろうか。
「でも、安心しました。機嫌は良さそうですね」
「何、変な事を言っているんですか? 見て分かるでしょう。とうとう頭だけじゃなくて目もおかしくなりましたか?」
王女は不機嫌で一杯の顔を連邦生徒会長へと向けた。その原因は言うまでもなく、目の前の連邦生徒会長だからだ。だが、いつものように効いた様子はない。それどころか笑みを更に深くしている。
「いえ、機嫌は良いはずですよ。私を追い出さないのがいい証拠です」
王女は思い切り舌打ちする。確かに最悪の機嫌ではないが、そこを指摘されるのは腹が立つ。その間にも、いそいそと連邦生徒会長は席についていた。
「それでは、コイバナを始めましょうか。第何回でしたっけ……」
「知りませんよ。そんなもの……」
王女には嫌なことに番号を着けて数える趣味はない。連邦生徒会長は暫く思い出そうと頭を捻っていたが、思い出せないらしい。
「大体、コイバナと言ったって、何も話すことはありませんよ。貴女だって知っているでしょう?」
「ええ、またカヤツリ君はアビドスへ、とんぼ返りですからね。小鳥遊ホシノさんの誕生日は一月二日ですから仕方ないでしょう」
王女は思い切り舌打ちをした。クリスマスが終わった後、カヤツリはちゃんとここまで帰ってきた。王女の為にもう一度クリスマスに付き合ってくれたのだ。それは、非常に嬉しかったのだが、年末と新年もとなると話は違う。
連邦生徒会長の言う通り仕方ないのだが、少しズルいと言う気持ちもある。大体、何が一月二日の誕生日だ。そりゃあ、そうだろう。誕生日が新しい
「じゃあ、何を聞きたいんですか? まさか暇つぶしじゃないでしょう?」
「そんな事はありません。ちゃんと聞くべき用事があって、ここに来てますからね」
用事? 王女は訝しみつつ連邦生徒会長を見る。一体何だろうか。もしかして、全く外出しない事に関してだろうか。単純に用がないからそうしないだけで、引き篭っているわけでは無い。そこをまた突くつもりだろうか。
「今、楽しいですか?」
「は……?」
予想外の質問に、王女は言葉を失った。ふざけているのかとも思うが、連邦生徒会長は真剣そのものの表情だった。
「楽しいですよ」
「そうですか? 部屋からはあまり出ていないようです。やっている事といえば、地下の模様替えや料理とかいったもの。私たちが普通にやっている事がですか? 貴女なら力を使えば一瞬で終わる事が?」
「それが楽しいんじゃないですか」
王女は断言できる。今は楽しくて、充実していて、幸せであると。
「確かにそうでしょう。力を使えば結果は手に入ります。それも今すぐに。でも、私はそれだけを目的としているわけではありません」
それは、前の王女だ。ずっと地下に居て、何もかもを諦めていた王女。あの時は幸せでは無かった。充実もしていなかった。
「私は私です。名もなき神々の王女です。私は望まれて産まれてきた。なら、私は私だと、胸を張って言えるようになりたいじゃないですか。能力頼りでは胸を張れません」
誰が呼吸をして胸を張れるだろう。歩いて偉そうにできるだろう。それが許されるのは赤ん坊だけで、王女はもう赤ん坊ではない。
「失敗もするでしょう。上手くいかない事もありました。今だって少し寂しいです。でも、それは私が選んだからこそ起きた事です。そうでなければ得られないモノもありました。それならば、納得できます。私が選んだなら仕方がないのだと」
「それが楽しいと?」
「当たり前じゃないですか。私の事は私が決めます。それが私を形作るんです。自分を好きなように成長させられるんです。好きな私になれるし、どうなってもいい。それが楽しい以外に何かあるんですか?」
きっと、目の前の連邦生徒会長には分からないのだとしても。当たり前のことを聞かないで欲しかった。王女は連邦生徒会長を睨む。
「そう出来て初めて、それが私なのだと胸を張って言えます。お前は何者か、その問いに対して答えることが出来る。それは、私の選択で決めて出来る事なんですよ。力を使うとしても、それは最後です」
「カヤツリ君と似たようなことを言うんですね」
どうせ、王女が感化を受けていた時の間の話だろう。連邦生徒会長は、何かを考えるかのように瞳を閉じていた。
「大事なのは、経験ではなく選択。そういうことでしょうか」
「それはそうじゃないですか? 自分で決めて初めて、その経験に意味が生まれるんです。だからこそ、その経験が身に刻まれる。選択を丸投げする。人から言われたのなら、大して残りませんよ。貴女の机上の空論の恋愛講座と同じように」
あの、あまり役に立たなかった恋愛講座を思い出す。もし言う通りにしていたらどうなったか、想像したくもない。これは王女の恋だ。だから自分で方法を選んでいる。
「ええ……役に立たなかったんですか?」
「基礎は役立ちました。丸々その通りにはしません。参考にはしましたが」
連邦生徒会長は不満そうに唇を尖らせているが当たり前だ。
そもそも、なにが、全部あげますなのか。それは連邦生徒会長の性癖であって、王女の性癖ではない。性癖の押しつけは大罪であると、王女の知識もそう言っている。
「あれは貴女の経験でしょう。私が経験したことではありません。なら、そっくりそのままというわけでもない。貴女が感じたことを、同じように私が感じるわけではない。一部分は役立つでしょうが、全てがそうではない。貴女が良いと思った事が、私にとって良い事ではない。私と貴女は違うんですから」
ですが。と、王女は言葉を区切る。王女は無礼者ではない。善意と悪意の区別くらいは付く。
「ですが、感謝はしています。ズレてるとはいえ、貴女なりの善意だったのでしょうから」
王女を初手で破壊しないのは、きっと善意だった。王女は連邦生徒会長が、そういう面倒くさい人間だと感じている。善意だけでないにしても、それが一欠片でもあるのなら感謝すべきだった。
「……理解できない
連邦生徒会長は微笑んで、何かの文言を呟いている。また、良からぬことを考えているのかと王女が身構えると、連邦生徒会長は席から立ち上がる。
「……もう、帰るんですか?」
「はい。聞きたいことは聞けたので。それと……ありがとうございます。王女」
本当にもう帰るらしい。いつもは何だかんだ言って粘り倒すのにだ。王女は連邦生徒会長を上から下へと見る。特に変わった様子はないが、妙な雰囲気だった。どことなく表情に決意が満ちている。
「なら、今度来るときは連絡くらい入れて下さい」
だから、王女は珍しく帰り際に声を掛けた。振り向いた連邦生徒会長には、揶揄うような微笑みしかない。
「そうですね。そうしたら、コーヒーくらいは用意しておいてくれるんですか?」
「考えておきますよ」
「ふふふ……それでは、次からはそうしましょうか」
そう言って、連邦生徒会長は部屋から出て行く。後姿が消えて、エレベーターの音が遠くなっても、王女の胸には妙な予感が残っていた。