ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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394話 終末(終わり)だョ! 全員集合

 目の前で、映像が一旦止まった。長い、映像内の期間にして凡そ一年分。それなりの情報量であるためか、少し頭が痛かった。

 

 今までとは違う、一年。凡その特大の問題が片付いた一年だ。

 

 ここまでが、前提なのだろう。この王女ルートの前提。だが、まず思うのは一つだけ。

 

 

「随分とまぁ、心配性なことで」

 

 

 とりあえずの感想をセトは口に出す。しかし、心配性と言うのもかなりオブラートに包んだ言い方になる。少し考えて、セトは言い直した。

 

 

「いや、過保護か。初回だから万全を期したと言ったところかな」

 

 

 同感なのか、画面の中で王女ルートのホルスも頷いている。

 

 

『そうですね。随分と手の込んだ……いえ、ある意味で、お別れの餞別だったのかもしれません』

 

 

 何故かと、セトは聞かなかった。聞くまでもないとも言える。恐らくは、連邦生徒会長は気づいたのだろうから。

 

 連邦生徒会長はこの世界をやり直している。何度も何度も、きっとセトやホルスが把握しているよりも数多く。そして、その全てで失敗してきた。

 

 このやり直し。手段としては単純明快。決まった部分からやり直すことで、それ以降の出来事をなかったことにする。だが、単純であるがゆえに融通が利かないのだ。

 

 無かったことにされるのは出来事だけではない。それに付随する全てが無かったことになる。出来事も、結果も、それに付随する経験も。

 

 経験には、そのとき何を思ったか、どうするべきだったか、次はどうしようと思ったか。想いも知識も経験に含まれる。つまりは全てを忘れるという事。今まで築いたものを全て捨て去るという事。それを世界を巻き戻す人間には求められる。

 

 もし、それを巻き戻した本人が持ち込めばどうなるか。その知識がそこにあるための理由。因果が生まれる。この場合は、その出来事が起こったからその知識があると言うように。

 

 それの因果がある以上はやり直しではなくなる。その知識を必要とした事件が起きる。捻じれて歪み、決まっていなかったはずの先に方向性が生まれる。それを何十、いや何千何万も繰り返せば、ある程度の結果は固定されるだろう。

 

 例えるならあれだ。食中毒を起こしたくないのに、汚い掃除道具で調理場を掃除しているようなものだ。その道具自体が汚染されているから、幾ら対策をして部屋や食器を洗おうが、手を洗おうが意味がない。ただ菌を塗り広げるだけだ。

 

 だから、連邦生徒会長は姿を消した。自身の経験が未来を歪ませるのならそうするしかない。彼女の経験は邪魔でしかない。大事だったのは、その時にどう思い、どう選択するかだったのだから。

 

 そして自分自身から、これまでの経験を全て抜き去ったのが、王女が幼児プレイと言った、あれなのだろう。経験が人を形作る。ずっと引き継いだそれを失くしたならば、子供のようになるのは当然だった。

 

 

 ──それはそれとして……

 

 

 セトは、ホルスたちを見渡した。デカグラマトンの事件と言い、どうにも隠し事をされている気がする。

 

 今の事実を、ホルスたちは知らないと思っていた。だが、今の返しは知っている返しだ。世界を繰り返したのが連邦生徒会長であると知っているのなら、ここまで対策するのはおかしい。あの女が気にするのは先生とキヴォトスの事であって、小鳥遊ホシノとカヤツリの事はどうでもいいはずだからだ。

 

 それに、一番まともそうな王女ルートのホルスが何も言わないのが気にかかる。どうにも、情報を小出しにされている気配がある。

 

 だが気にしてもどうしようもない。セトはとりあえず諦めて、先を促すことにした。

 

 

「じゃあ、どうして失敗したの? まさか、痴話喧嘩の果てに……なんて言われても困るんだけど」

 

『そうだったら、どれ程良かったか……』

 

 

 ホルスたちの表情を見る限りは、どうにもそうではないらしい。もしそうだったのなら浮気だなんだと叫びだしている。ともなると、また別の要因。これから起こる事態に対応ができなかったという択になるが……

 

 

「それで、この強くてニューゲーム……いや、スタートダッシュガチャの方が的確か。序盤からカヤツリと名もなき神々の王女、デカグラマトンは過剰火力すぎない?」

 

『まぁ、そうですね。序盤からどころか、年末までぶつけていい火力ではないです』

 

 

 ホルスの言う通りに過剰火力だが、セトは首を横に振る。どうにも分からない。これで失敗したと言うのが信じられない。

 

 

「失敗する余地が無い。アビドスは特に苦労もしないでしょう? ヘルメット団や便利屋には王女が出る必要もない。理事はカヤツリが対処するし、小鳥遊ホシノは黒服の提案どころじゃない……風紀委員会も、特に危険要素はない。銀行強盗ももっとスムーズにいくでしょう?」

 

『ええ、あっさりとアビドスは解決しました。異なるのはそれ以降です。まずは、ミレニアム。ゲーム開発部でしょうね』

 

 

 セトは、その名前を思い出すのに少しかかった。セトとはあまり接点がない。悔しさか、怒りか、再び歪み始めたミレニアムのホルスを見て思い出したくらいだ。けれど、思い返せば思考は速かった。

 

 

「ああ、アリスか。このルートだと加入しないから……廃部になった?」

 

『いいえ。代わりの者が入部しました』

 

 

 セトはそれが誰だか、予想がついた。その後の展開も。だって似たようなものを一度見た。

 

 

「鍵か。ケイがアリスの代わりに入部した。G.Bibleとして紛れ込んだ。ミレニアムルートみたいに」

 

『それでテイルズ・サガ・クロニクル漬けにされた訳です……後は言わずとも分かりますよね』

 

 

 王女ルートのホルスが、火を吹いて爆発するゲームガールを画面に映した。そこに、王女とカヤツリの姿はない。ゲーム開発部と先生だけだ。

 

 

「カヤツリは着いてこなかったと。だから王女も来なかった。そのお陰で、鍵は時間を手に入れた。明星ヒマリと調月リオ。ゲーム開発部と話す時間を」

 

 

 もし、王女がこの場に居たら。問答無用で鍵を確保していただろう。鍵もなりふり構わず使命を果たそうとする。そこにあの時期の、名もなき神々の王女に怯えている調月リオが介入してくるのだ。それはもう地獄でしかない。

 

 だが、居ないのであれば事態は好転する。ゲーム開発部は、ゲームガールをどこへ持っていくだろうか。エンジニア部かヴェリタスだ。才羽モモイの交流関係から言えば、ヴェリタスの方を優先するだろう。

 

 都合の良い事に、明星ヒマリはヴェリタスの元部長。部室に居て張っていても違和感はない。エンジニア部には調月リオが張っていればいい。そこで確保した鍵に、二人は話しを聞くだろう。

 

 後は、時間との勝負だ。ゲーム開発部がテイルズ・サガ・クロニクル2を作るのに、アリスかケイのどちらかが必要だとしたら。もしも、あの面倒見のいいケイが、曲がりなりにも自身を認めたゲーム開発部を見捨てられなかったとしたら。アリスのポジションに、ケイが滑り込むことになる。

 

 

「……調月リオのあの騒動。あれは起きたの?」

 

『いいえ。大分経ってから、先生からケイの話を聞いたカヤツリ達は彼女に出会います。王女も予想外だったでしょうね。まさか、役目を果たせないと。逆に振られるなんて思わなかったでしょう』

 

 

 再び画面にミレニアムが映る。セトの知るものより多少片付いたゲーム開発部で、王女がゲームガールに驚いた目を向けていた。自分にその気はないのに、必死なケイが面白いのか。目が段々と揶揄いに満ちてきている。

 

 だが、これは答えにはなっていない。これで納得するのは明星ヒマリくらいだろう。調月リオはあれほど甘くない。確実性を求めてくる。王女ルートのホルスは黙って画面を変えた。

 

 

『……捨てる? 今、貴女は権能も、その身体も、捨てると言ったのかしら?』

 

『ええ、ケイを人間に近づける。再定義した後にそうしますよ。あとでケイに手伝ってもらいます。機械の身体も不便なんです。貴女には知る由もないんでしょうけど。一緒に生きて、一緒に死ぬと言うのは私には難しい事なので』

 

 

 王女を前にして、調月リオが唖然とした顔をしている。これは困惑ではなく、本当に理解できないものを前にした顔だった。そりゃあ、好意を抱く人間と一緒に生きていきたいからそうすると言われたらこうなるだろう。

 

 そして、画面が真っ暗になる。もうミレニアムのホルスが限界だったからだ。またクソ従者と叫びだされてはたまらない。見ている間も五月蠅かったのだ。

 

 

「……これが、年明けから消えた理由?」

 

『恐らくは。カヤツリは、連邦生徒会のゴタゴタに巻き込まれた形になりました。それで、ミレニアムには着いていけなかったんですよ。表向きは問題のある部活への訪問ですからね。先生だけで十分だと判断したんです』

 

 

 年明けから消えたおかげで、連邦生徒会は荒れている。その対応に、先生ではなくカヤツリが出張るのは不思議なことではない。

 

 

「チッ……ともなれば……エデン条約か。それのゴタゴタに巻き込まれた訳」

 

 

 セトは思い切り舌打ちした。連邦生徒会の信頼を回復させる。それにはエデン条約に関わり成功させるのが一番だ。あの連邦生徒会長が主導した条約なのだから当然ともいえる。

 

 セトの世界では、エデン条約に連邦生徒会は関わらなかった。その余裕と理由が無かった。でも、このルートでは理由がある。そして、それがどちらに転んでも問題ではない。目的はカヤツリと王女を、早い段階でミレニアムに行かせない事だから。

 

 そうであれば、失敗の原因はエデン条約関連だろうか。そう考えて、セトは頭を振る。

 

 

「……いや、調月リオと話している時点で、エデン条約は切り抜けてるか……」

 

『ええ。エリドゥだかの事件は、方舟が来る直前ですからね。エデン条約はもっと前です。それに、あれは酷かった』

 

「酷かった?」

 

 

 セトが聞き返すと、王女ルートのホルスは苦笑いした。

 

 

『いや、だって。カヤツリは知ってるじゃないですか。アリウスがどんなところで、どんな大人が支配していて、何を持っていたのか。そして、聖園ミカの話を聞いた先生は、カヤツリに聞くんですよ。アリウスを知っているかって』

 

「あー……」

 

 

 ホルスの言う事も尤もだ。これは酷い。カヤツリであれば、聖園ミカの語るアリウスが嘘だと分かる。そこからは芋づる式だ。聖園ミカが騙されている可能性に直ぐに辿り着くうえ、先生はベアトリーチェを許さないだろう。

 

 そして、カヤツリはアリウス自治区への行き方も、その入り口がカタコンベにあることも、ミサイルを持っていることも知っているのだ。ゲヘナから、その会場が指定された瞬間に怪しむだろう。

 

 

「ミサイルは?」

 

『ああ、撃ってきましたよ。黒服が何とか調達したんでしょう。でも、相手は名もなき神々の王女ですよ? 効くと思いますか? それもカヤツリを巻き込ませるとでも?』

 

 

 そんなわけがない。恐らくは飛来するミサイルを分解するのに一秒もかからない。万魔殿の飛行船爆破やアリウススクワッドの急襲、ユスティナ聖徒会は止められないにしても、正義実現委員会やシスターフッド、空崎ヒナが無傷でいる以上、アリウスに万一の勝ち目もない。

 

 

『そこで初めて、ベアトリーチェは知るわけです。今敵に回したのが、かつて自身を手酷く痛めつけた存在であるとね。急いで儀式を敢行しようとする。それを許す先生ではない。直ぐにアリウスへと突撃するでしょう』

 

「酷すぎる。勝ち目がなさ過ぎる……」

 

 

 ベアトリーチェの状況は、この一言に尽きた。軽い気持ちで藪を突いたら、蛇どころか終末兵器が飛び出してくるのは酷すぎる。そうでなくても、生徒を傷つけられそうになった先生は手加減などしない。セトの世界と同じように、ベアトリーチェはアリウスから撤退したのだろう。

 

 だが、そうなると困る。失敗の原因が消えてしまった。一体どうして、痴話喧嘩以外で失敗したと言うのか。

 

 

「じゃあ、何が原因で滅びたと?」

 

『滅びた訳じゃないんです。まだその方が良かった。……強いて言うなら全部ですよ』

 

「は? 全部?」

 

 

 鸚鵡返しに、セトは繰り返す。今此奴は何と言った? 全部だと? 何の全部かと悩むセトに、王女ルートのホルスは、恐ろしい事を言うのだ。

 

 

『だから、全部です。カイザーPMCも、色彩に浸食されたベアトリーチェも、アヌビスも、プレナパテスも、アトラ・ハシースの方舟も。かつて立ちはだかった、これから立ちはだかる敵たちが、一挙に襲来してきたんです』

 

「何でそんなことになる!?」

 

 

 やけくそになったセトは叫ぶ。何がどうしたら、そんな連合軍が攻めてくると言うのだ。映像でカヤツリ自身が何度も言ったように、ギリギリになっても人は協力できないのに。

 

 セトが睨むと、王女ルートのホルスはどこか疲れた様に言う。

 

 

『まず、ベアトリーチェですね。二回も同じ相手、しかも子供にしてやられた。カヤツリへの恨みは一入ですよ。しかも一度黒服に騙されている。そのせいで、ゲマトリアによるキヴォトス外への追放が失敗したんです』

 

 

 ベアトリーチェは愚かではあるが、バカではない。曲がりなりにも大人だから、三回目は無かったのだろう。ともなると時期から考えて、理由は絞り込める。

 

 

「異世界組。プレナパテスたちは規定通り。カイザーもあのサンクトゥムタワーへの急襲で襲ってきた。連合を組んだんじゃなくて、結果的にそうなったと……」

 

『そうですね。元々が、ギリギリのタイミングなんですよ。カイザーの急襲を退けた矢先にアレでしたからね』

 

「となると……だから、桃色頭は嫌い。どうせ、カヤツリがオーパーツを持ってるって、カイザーに流したりとかも……」

 

 

 そもそもの原因に思い至り、セトは吐き捨てる。カイザーPMCが侵入した原因など分かり切っていた。セトの世界では、その犯人は知れている。不知火カヤだ。

 

 動機も、七神リンの足を引っ張ろうとして、カイザーに頼るも裏切られ失敗。そのお陰で容疑者候補から外れるという物悲しいものでしかない。だからこそ、その後のクーデターも成功したのだろうが……

 

 

「だけど、何で? 不知火カヤは何が不満だったの? 私の世界よりも、マトモに活動できたでしょうに。七神リンの足を引っ張らなくても、自分の力を誇示できるでしょう? ネフティスルートの記憶でも流れ込んだ?」

 

『SRTです。正しく言えば、FOX小隊なんですが……』

 

 

 王女ルートのホルスも呆れた顔で、両手を挙げていた。さぞ、くだらない理由なのだろう。

 

 

『SRT解体のどさくさで、不知火カヤはFOX小隊を手中に収めていました。SRT特殊学園の再興を約束してね。しかし……』

 

「カヤツリの。いや、先生の目的をFOX小隊が知ってしまったと……」

 

『ええ、彼女らは嬉しかったと思いますよ? 七神リン派を闇討ち何ていう汚れ仕事をやらされ続けてるんですからね。言う事を聞く道理もない。それどころか、弱みを握られている』

 

「だから、そうならないように。時間稼ぎを込めて先生の邪魔をしたと? 本末転倒じゃない……」

 

 

 先生がSRTを再興するには、生徒の信頼が必要だ。だから失点させ、失敗させる。如何にも連邦生徒会から出たこともないような、お粗末なムーブである。それきしの失点で、信頼を失う方が難しい。積み上げた実績が違う。

 

 けれど、それよりも許せないことがある。何よりセトが不満なのは、カヤツリを裏切ったことだ。

 

 

「あの恩知らず……カヤツリは少しくらいは手助けしたはず。何とも思ってないってこと?」

 

『そりゃあ、あの性格ですからね。世界は自分を中心に回っていて、悪いのは使えない他人くらいには思っています。ベアトリーチェほどではないにしろね。それにカヤツリを嫌ってますから。それを矯正したいなら、それなりに本腰を入れて、鼻っ柱をベキベキに折らないと。まぁ、それが個別ルート分岐なんですけど』

 

「ホントに面倒な奴しかいない……」

 

 

 セトは天を仰いだ。となると、アレだろう。不知火カヤをルート分岐させないように、これを防げないかとかでも聞きたいのだ。どうせ、それで王女が大幅リードするとかで。そうに決まっているのだ。

 

 呆れつつもセトは頭を回した。

 

 

「フン……そもそものSRTの解体を無しにするのが一番だけど。それは出来ない。カイザー占領時に動かせる部隊が無くなるから……」

 

『違いますよ』

 

「じゃあ、アレだ。小鳥遊ホシノに我儘言わせて、アビドスに……」

 

 

 急に此方側のホルスが立ち上がった。立ち上がって、セトに向かって喚き散らす。

 

 

「だから、向こうの私が違うって言ってるじゃないですか! ここまでは変えられないんです! そういう事が聞きたいんじゃないんです!」

 

 

 耳元で、此方のホルスが叫んで煩い。セトも切れて叫び返す

 

 

「五月蠅い! どうせ王女が力加減を間違えて、キヴォトスごと叩き壊したんでしょう! そうでしょ! だから、戦力を分散しろと言うんでしょうが!」

 

「……分かってるんでしょう?」

 

 

 どこか、心配するような目で。王女ルートだけではない。他のホルスたちも、そんな目でセトを見ていた。

 

 

「何が分かってるって!?」

 

「だから、王女は強いと言う事です。アトラ・ハシースの方舟も、アヌビスも、無名の司祭も、カイザーPMCも、ベアトリーチェも。一蹴できるほどに強い。でも、一人なんです。どれか一つしか対応できない。まずは方舟に対応するしかない。デカグラマトンも鋼鉄大陸ほどではない。預言者は間に合わない。ビナーコアのコピーだけでは……だから……残りは全部……カヤツ──」

 

 

 答えを言おうとした此方側のホルスの襟首を掴み上げた。思い切り怒鳴る。

 

 

「──それで? それで、アンタの気持ちが分かっただろうって? 小鳥遊ホシノが滅茶苦茶にされた気持ちが分かったかって? アンタの親に私がかつて昔にやった事だろうって? だからここまで隠して最後に回したの? そんな事を言いたいの? いい気味だって? 大勢でなんて! ヤツは! そうは! されなかったでしょうが! またぶち殺されたいの!?」

 

「違うんですよ……」

 

 

 嫌がらせでセトにこれを見せる。少なくとも、ホルスはそこまでのカスではないと分かっていた。だから、最初から分かっている事実だけは言いたくなかった。

 

 でも、事実がそれを許してはくれないのだ。何千年も続いている世界。上位者に気に入られるという事。ここまでの王女の要求と顛末。滅びた方が良かったと言うホルスの言葉。それは、ただ一つの事実を指し示している。

 

 

「結局……その原因が、この見かけだけの連合軍でしょうが……何が違うの」

 

『そうじゃないんですよ……問題は、その後なんです。ここまでが前提(共通ルート)で、ここからが本番(個別ルート)なんです』

 

「はぁ……?」

 

 

 ホルスを落として。じろりと、セトは王女ルートのホルスを見た。ここまでが前提と言うのなら、この事態は大したことではないと、ホルスたちは考えていることになる。

 

 

『……カヤツリは頑張り過ぎてしまったんです。あの子を泣かせず、王女を期待させてしまったんですよ。叶うはずもなかった、その期待に応えてしまった。あの大人への啖呵の通りに、カヤツリは約束を守り、責任を取った。そのせいで、終わらなくなってしまった。それだけなら良かったんですが、今はこうです。これを止めなきゃならないんです』

 

 

 王女ルートのホルスは自分を指差していた。恐らくは王女との戦闘痕を。つまりは、王女はここを認識しているのだ。ここへ来ようとしている。それを王女ルートのホルスは押し留めている。

 

 そして、いつまで止められるとも限らない。とりあえずは、その理由で納得はした。させた。

 

 

「……続きを流しなさい。問題の日から流して。とりあえずは見てあげるから」

 

 

 苛立ちと哀しみとやるせなさ。それを全部を押し殺して、セトは画面を睨んだ。

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