ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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年内最後の投稿になります。

皆様良いお年を。


84話 ホシノのグルメ

 カチャカチャと食器がぶつかる音。ジュウジュウと何かが焼ける音。そんな微かな物音でホシノは眼を覚ました。

 

 その物音はホシノの部屋の外から聞こえてくる。それに加えて、香ばしい良い香りもする。

 

 

「んー、まだ眠いよぉ」

 

 

 呻き声ともつかないくぐもった声を上げて、ホシノは布団の中でごろごろする。まだ温かい布団からは出たくはない。けれど、この匂いから察するにもう時間は残っていなかった。

 

 この匂いの感じからして、朝食はもう完成間際だ。早く起きないと間に合わなくなる。枕元の目覚ましを見れば、鳴った形跡はあるが止めた記憶はない。寝ぼけ眼の自分が止めて二度寝してしまったらしかった。

 

 目覚ましでは起きないくせに、匂いや物音では起きるのが、なんだか妙に恥ずかしくて、ホシノは素早く布団から抜け出した。

 

 眠気はまだ少し残っていて身体が少しふらふらする。頭に手をやっていないから分からないけれど、きっと髪もぼさぼさだろう。着替えを持って何時ものように洗面所に向かう。

 

 そのまま料理が乗ったテーブルを通り過ぎる。テーブルの上には、簡単な料理がもういくつか乗っていた。カヤツリはとっくに着替えていて、後ろを向いて何か焼いている。余った材料か何かをつまみ食いしているのか、料理に集中しているのか、ホシノに反応する様子はなかった。

 

 

「……慣れるもんだね」

 

 

 鏡を見ながら、そう自分に問いかける。鏡の中の自分は特に何も答えない。顔色も普通だ。初めの頃は顔も何もかも真っ赤で、寝間着姿をカヤツリにみられるのが恥ずかしくて洗面所に駆け込んでいたのに。いつの間にか慣れてしまった。気恥ずかしさは未だにあるけれど、それ程でもなくなっていた。

 

 カヤツリだってそうだ。

 

 さっき後ろを通り過ぎたホシノに無反応だった。初めの頃なんか直ぐに振り返っていた。その時のカヤツリが言うには、同じ家の中に他人が居るのが慣れなかったらしく、ホシノの気配がする度に反応していた。ホシノはそれが面白くて何度も繰り返して、拗ねたカヤツリが部屋に引きこもったこともあった。

 

 それらの事を思い出しつつ、身支度を整えてテーブルまで戻ると、カヤツリはもう座って待っていた。

 

 

「おはよう。随分ギリギリだったな」

 

「……おはよう。うん。なんか最近はね。よく眠れるんだよ」

 

「ふぅん。いいことじゃないか」

 

 

 そんな事を言って、カヤツリは手を合わせた後、朝食をもそもそと食べ始めた。ホシノも同じように手を合わせた後、食事をしようと今日のメニューを見渡す。

 

 焼いたカリカリのトーストに、ハム、目玉焼き。インスタントのスープにデザートのジャム入りヨーグルト。おまけのフルーツジュース──今日はリンゴ。いつもの朝食だった。

 

 ホシノはいつものようにトーストにおかずであろう物を全部乗せする。ホシノはサンドイッチ風にするのが好きだったが、カヤツリはハムをトーストを交互に口に運んでいた。余ったパンをスープと一緒に食べるのだろう。

 

 箸休めにスープやジュースを飲みつつ、変わったものだと思う。二人の生活もそうだが、朝食や弁当がだ。

 

 最初はやたらと手が込んだ。漫画や何かで見るようなものを早起きして作っていたのだ。慣れないせいもあるのか、時間が掛かっていたようだ。ただ最近はそうではない。カヤツリ曰く手の抜き方を教えてもらったらしく、随分と楽になったようだった。

 

 そんな事を思いながら食事に集中しているせいか。暫くお互いが無言だった。けれど、空気は全く悪くなどなく。むしろ心地良いくらいの雰囲気だった。

 

 

「今日は何かあったっけ?」

 

「何もないよ。夜の当番は無いし、バイトも無い。完全休養日ってやつだな」

 

 

 ホシノの質問にカヤツリが答える。ホシノも今日は特に予定はない。それなら、二人とも放課後は暇だと言う事だ。

 

 

「じゃあさ。連れてってよ。カヤツリの事だから買い物に行くんでしょ」

 

「いいけど、なんかほしいものでもあるのか? 着いてこなくても、言ってくれれば買ってくるけど」

 

「一緒に出掛けたいだけだよ? 久しぶりでしょ。こういうの」

 

 

 もう、カヤツリは殆ど食べ終わっていて、スプーンでヨーグルトを浚っていた。買いたいものがあるかと言えば、そういう事ではない。二人で出かける機会などそうそう無い。今回は後輩たちが、急用とかで先日の当番を交代した結果、発生したものだ。偶然とはいえ、こういう機会は大事にするべきだ。

 

 

「……そう。じゃあ校門で待ち合わせで」

 

 

 カヤツリは黙った後に短くそう言って、また器のヨーグルトを浚う作業に戻った。ホシノはそれを見てニヤニヤする。素っ気ない返事だが照れているのだ。だって器のヨーグルトは殆ど残っていない。これ以上は浚っても無駄だろうに。

 

 そんな風に見ていたせいで、いつものようにカヤツリの方が先に食べ終わってしまう。また手を合わせた後に、そのままカヤツリはシンクに食器を運んでいく。それが終わった後は洗面所の方に消えていった。

 

 作るのはカヤツリだが、食器洗いはホシノの担当だった。カヤツリが洗うと、洗い終わったカヤツリと食べ終わったホシノで洗面所で渋滞を起こすのだ。洗面所はそんなに狭くはないが、二人並んで歯磨きするようにはできていない。数回そういった事態が続いたので今のやり方になっている。

 

 ホシノは暫くニヤニヤしていたが時計を確認すれば、そろそろ急がないといけない時間になっていた。ホシノは食べるスピードを上げた。

 

 

 □

 

 

 校舎のチャイムが鳴った。昼を告げるチャイムだ。それを聞いたアヤネが会議の中断を宣言する。これからは昼食の時間だった。

 

 

「ホシノ先輩も手伝って」

 

 

 シロコが会議の片づけをしながら、物思いに耽るホシノにそう言う。ホシノはホワイトボードを片付けるために席を立つ。

 

 今日の対策会議も、良い報告ばかりだった。そう、片づけをしながらホシノは思う。

 

 借金を返せる目途が立ち、武装勢力も減少している。砂嵐も最近は起きていない。これだけでも嬉しいし、後輩たちもそうだと思っている。けれど、ホシノは別の事も嬉しかった。

 

 やっとだ。やっと前に進んでいるという感じがしている。

 

 今まではチェーンが切れた自転車をこぎ続けているような、そんな手ごたえしかなかった。必死にもがいているのにも関わらず、泥沼にどんどん身体が沈んでいくような。ゆっくりと緩慢に死に近づいていく。そんな遅効性の絶望しかなかった。

 

 けれど、今は違う。

 

 ホシノが頑張れば頑張っただけ結果が出る。それが良いにしろ悪いにしろ、アビドスや皆の為に何かが出来ている。そういう実感を感じることが出来ていた。そのせいもあるのか、最近は心に余裕が出来ている。

 

 これから先はどうしようとか、明日は何をしようかなとか。今まで考えもしなかったことが考えられるようになっている。

 

 まだ、あのことは思い出すと辛いけれど、いつか飲み込めるようになる日は来るのだろう。最近はそう思えるようになってきた。

 

 きっと、それは先生や皆のおかげだった。ただただ、そう感じることができるようになった自分がホシノはとても嬉しかった。

 

 そんなことを考えながら片づけをしていたせいか、それはすぐに終わる。皆が、思い思いの昼食を取り出していた。

 

 そんな中ホシノは、ウキウキしながら昼食の準備を始める。カヤツリが部室に設置した冷蔵庫に入れたそれを取り出す。

 

 

 ──今日のは楽しみにしておけよ。

 

 

 一緒に登校しながらカヤツリがそう言ってきたのだ。弁当箱ではない、いつもとは違う包みを渡しながらそう言ってきた。

 

 カバンから取り出したのは、握りこぶし二つ分くらいの包みが二つ。きっとこれが今日の昼食なのだろう。

 

 隣のカヤツリはいつもの弁当箱だ。そちらも非常に中身が気になるが、ひとまずホシノは一つ目の包みを開ける。

 

 

「……覚えてたんだ」

 

 

 出てきたのはパンだった。なんかカヤツリがよく使うバゲットとかいう奴だ。半分に切られたそれに具材が挟まっている。もう一つの包みも見れば中は同じバゲットで、それも同様に違う具材が挟まっていた。一つのバゲットを半分に切ったから二つの包みになったのだろう。

 

 具材はスモークサーモンと刻んだトマト、薄くスライスされた玉ねぎとオリーブ。一口齧ればパンの縦の断面にマヨネーズとマスタードが塗ってある。スモークサーモンの生臭さがトマトや玉ねぎで打ち消され、オリーブの味がアクセントになっている。それらをマヨネーズが柔らかくしていて食べやすかった。

 

 無言でむしゃむしゃ食べる。パンを口に運ぶ手が止まらない。鮭の旨味と脂が口の中を蹂躙し、そのしつこさをトマトの酸味が中和。マスタードの辛みが全体を引き締めて、マヨネーズがそれを行き過ぎないように加減する。触感も玉ねぎやオリーブが入っているからアクセントがあって良い。

 

 覚えていたのかと言うのはこれの事だ。魚の事。

 

 生魚が食べたいと、随分前にホシノは言ったのだが、それは延び延びになっていた。アビドスでは生魚は余り売っていない。刺身などもってのほかだ。アビドスは内陸に位置する。それに砂漠地帯でもあるし、ゴーストタウンだらけだ。鮮魚店などないし、遠出しないと売ってる店などはない。

 

 カヤツリが、ゲヘナのバイト帰りによく食材を買って帰ってくるが、その中にも魚はある。けれど鮮度の問題とかで加熱することが多かった。

 

 厳密には燻製だから生ではないのだが、その気遣いがホシノは嬉しかった。きっと生は無理だから、どうにか苦心してこれにしたのだろう。受け取った時に早く冷蔵庫に入れろと言ったのも納得がいく。

 

 半分まで食べ進めたところで、もう一つの具材が気になった。見たところ同じスモークサーモンなのは分かる。カヤツリの事だから、きっと違う具材だ。ワクワクを胸にホシノはもう一つの方に齧りつく。

 

 

「……うん。こっちもいいね」

 

 

 ホシノの予想通り具材は違った。こっちは先ほどと比べてシンプルだった。スモークサーモンとクリームチーズ、それに胡椒が掛かっているだけ。でもこちらもシンプルゆえに美味しい。さっぱりではなく、こってりしている。交互に食べ比べると味の変化が楽しめる。朝と昼でパンが被っているが、そんなことも気にならない程に、ホシノは大満足だった。

 

 

「ホシノ先輩」

 

「ん? 何、シロコちゃん」

 

 

 なにやら正面のシロコが物欲しそうな表情でホシノを見ていた。おおよそシロコの言いたいことはホシノにはお見通しだったが、分からないふりをする。

 

 

「少し頂戴。私のと交換」

 

「……ダメだねぇ。こればっかりは、あげられないよ」

 

 

 今にも涎を垂らしそうなシロコのお願いを却下する。譲ってあげたい気持ちも少しはあるのだが、これを独り占めしたい気持ちの方が強かった。だって、これはカヤツリがホシノの為に用意したものだ。それを勝手に譲るのは違う。

 

 それに交換と言っても、シロコの弁当はコンビニ弁当だ。別にコンビニ弁当が嫌いなわけでは無い。少なくとも昔はそうだった。けれど今はホシノの舌はカヤツリに調教されている。そのせいでどうにも物足りない。

 

 

「少しは譲ってやんな。毎回やってるじゃないか。また作ってやるから

 

「……わかったよ」

 

 

 カヤツリが見かねてホシノにそう言った。カヤツリに言われては仕方がないので、片方ずつ小さくちぎって、具材が乗ったそれをシロコに渡す。シロコからコンビニ弁当のおかずを貰って食べるが、やっぱり物足りなかった。

 

 

「ん! 美味しい! ホシノ先輩。これどこで売ってるの?」

 

「あー、どこで買ったかな……」

 

 

 目を輝かせたシロコが、ホシノに問いかける。ホシノと言えばその返事に困っていた。これはカヤツリの手作りだ。売っているわけがない。そう答えられればいいのだが、そう答えたらどうなるだろう。

 

 カヤツリが作っていることが知れたら、その理由も聞かれるだろう。一緒に住んでいることまで芋づる式に発覚するに違いない。カヤツリ曰く先生は知っているし問題はないのだが、それはそれだ。後輩にバレるのは幾らなんでも恥ずかしい。ノノミあたりには最近怪しまれている気がするが、どうにかここを誤魔化す必要があった。

 

 

「忘れちゃったよ。おじさんも年かな……」

 

 

 いつものおじさんキャラで誤魔化すが、シロコは何か怪しむような視線だった。ホシノもこの言い訳は無理があると思う。幾らなんでも朝、弁当を買った場所を忘れるのは異常だからだ。この話を聞いているセリカも”そんなわけないでしょ”とでも言いたげな視線を向けている。

 

 こういう言い訳が得意なのはカヤツリだが、今回は介入できない。介入したらもうそれが答えだからだ。ホシノの額に冷や汗が流れる。

 

 

「まあまあ、シロコちゃん。忘れちゃったなら仕方ないですよ。思い出したら教えてもらいましょう? それで、ホシノ先輩もいいですよね?」

 

「うん。ごめんねぇ。ノノミちゃん」

 

 

 思わぬところから、助け船が来た。落ち着いて答えを返したが、ホシノは内心ドキドキである。ちらりとノノミを見れば意味ありげにウインクしていた。

 

 

 ──やっぱりバレてるんじゃ? 

 

 

 まさか、カヤツリと一緒にコインランドリーで出くわしただけでバレたのだろうか。最近、ホシノと一緒にカヤツリから仕事の手ほどきを受けているとはいえ、凄まじい洞察力だった。カヤツリが向いてると言うだけはあるらしい。

 

 少なくともノノミには説明する必要が出来た。今日でなくともここ数日にそうしなければならないだろう。

 

 それを説明する気恥ずかしさと、それに対するノノミの反応を想像して、ホシノはため息をついた。

 

 

 □

 

 

「ん。二人とも一緒に出掛けた」

 

 

 シロコは教室の窓の外から、バイクに乗って出ていく二人を見送って、部室の三人へそう言った。

 

 シロコの中には確信があった。ホシノは何かを隠している。そういう確信が。

 

 お昼だってそうだ。前なら何も言わずとも、物欲しそうな視線を向けただけで分けてくれたのに。最近はそうではない。声を上げないと反応してくれないし、上げてもくれない事の方が多い。今日がレアケースなのだ。

 

 なんだか、以前のホシノとは違ってしまったようで、シロコは少し寂しかった。

 

 もちろん、前の方が良かったという訳ではない。前と比べて明るくなったし、笑う事も増えたのではないかと思う。今の方が絶対に良いとは思う。

 

 ただ、前ほど構ってくれないのが不満だった。最近は仕事を普通に任せてくれるし、ある程度の事はしっかり言ってくれるから。そうシロコたちの事を認めてくれたのもあるのだろうが、それはそれだ。

 

 

「それじゃあ、跡を追うわよ! アヤネちゃん。どこに行ったか分かる?」

 

 

 セリカはなんだかやる気満々だった。今にも教室を飛び出しそうな雰囲気だ。その勢いで、アヤネに話しかけている。

 

 

「うん。この方向はミレニアムの方……。何しに行くんでしょうか?」

 

「ん。それは跡を追えばわかる事」

 

 

 先輩のバイクには発信器を着けてある。愚直に跡を追えば気配でバレてしまうから。だから、アヤネに反応を追ってもらいつつ、車も運転してもらう。随分アヤネの仕事量が多い気がするが、アヤネも案外やる気なようだった。だって今も、準備を着々と進めている。

 

 

「……そういえば、ノノミ」

 

「? 何ですかシロコちゃん」

 

 

 さっきから黙って皆を見ているノノミにシロコは聞く。お昼に気になる事があったから。

 

 

「なんで、ホシノ先輩に助け舟を出したの?」

 

 

 お昼の問答だ。シロコはアレで誤魔化されてはいない。あの言い訳はあまりにもお粗末だからだ。あのまま問い詰めれば、話してくれたかもしれない。

 

 そう聞くと、ノノミはにっこりといつものように笑って言うのだ。

 

 

「うーん。あそこで聞いても誤魔化したと思いますよ? カヤツリ先輩もいましたしね。それに、ここまで準備したんですから、やってみましょうよ。私たちの目で見た方が、そっちの方が納得できると思います」

 

「そうでしょうか?」

 

 

 アヤネが作業をしながらノノミに問う。ノノミは頷いて言うのだ。

 

 

「きっと、二人が隠しているのは大した隠し事じゃないと思います。お昼である程度予想はつきましたし。もうあんなことはしないと言ってくれましたし。私もそう信じていますから。皆もそうでしょう?」

 

 

 それはそうだ。シロコも先輩二人が、カイザーの時のような隠し事をしているとは思っていない。もしそうなら先生を巻き込んでいる。ただ、仲間外れにされているみたいで気に入らないだけなのだという事も。

 

 

「ノノミ先輩。じゃあ、やめろってこと?」

 

「? そうは言ってませんよ?」

 

「え?」

 

 

 不満そうなセリカが、ノノミに咎めるような質問を投げるが、ノノミはそれを否定した。まさかそう返ってくるとは思わなかったのか、セリカがポカンとした顔をしている。それを見てノノミはにっこり笑って言うのだ。

 

 

「やっぱり隠し事は嫌でしょう? 大したことではないし恥ずかしいのかもしれませんが、もっと上手く隠してくれないと。私も内容に興味がありますし、隠されたのはちょっと不満なので。まあつまり、私が言いたいのは、思いっきりやりましょうってことです。皆で一緒にやるのは、きっと楽しいですよ」

 

 

 そう、少し黒い笑顔でノノミは言う。なんだか最近カヤツリの講義を受けてから、ノノミのこういう笑顔が増えた。

 

 今回の主な計画を立てたのもノノミだ。四人で一緒に計画して、カヤツリとホシノの予定を合わせたのだ。思った通りに二人は動いた。最近ノノミはこういうのが上手くなってきていて、シロコは少し怖かった。

 

 

「まあ、バレたら二人に怒られるでしょうが」

 

「え」

 

 

 さらっとノノミが怖いことを言ってセリカの腰が引けるが、要はバレなきゃいいのだ。シロコにその自信はある。セリカも覚悟を決めたのか、全員で頷いた。

 

 

「ん。じゃあ、出発」

 

 

 シロコの一言で全員が車に乗り込むために部室を出る。先輩たちの隠し事を暴きに行くというのに全員の顔には笑顔が浮かんでいた。

 

 ノノミの言ったとおりだからだ。言われなくとも分かっている。二人の隠し事が大したことではないことも、これがささやかな意趣返しだと言う事も、でもこういったことが出来るようになったことが。こういうことをしても、二人は怒るだろうけど最後は笑って許してくれることが分かっている。そういう関係になれたことが、そういうことが考えられるようになったことが、四人は嬉しかったから。

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