ホシノ同級生相棒概念 作:洞鼬
今回も独自設定あります。
既に日は暮れて、辺りは暗くなっていた。空には星が瞬いていて星明りでそれとなく明るい。きっと周りに電灯などの光源があまりないせいだろう。
アビドスも場所によっては、廃墟だらけで同じような風景が見られるが、それとは少し違うなとノノミは思う。それは当然だ。あのどこか寂しいものとは違うから。
さっきまでは砂浜にはバーベキューセットが並べられ、鉄板の上では肉や野菜、魚が小気味いい音を立てて焼かれていた。今は昼間に遊び過ぎて空腹だった皆に食べつくされてほとんどなくなっている。残りは先生が何か飲み物を飲みながら少しづつ摘まんでいる。好みの味付けなのか、箸が止まっていない。
砂浜の向こうでは、カヤツリとシロコが打ち上げ花火を打ち上げようと四苦八苦しているし、セリカとアヤネは、それを少し離れたところから見ている。どうやら手間取っているようだから、距離を取りたくもなるだろう。
そんな光景をジュース片手に椅子に座って眺めているとホシノがいないことに気がついた。まさかとは思うが、割り当てられた部屋でもう寝ているのだろうか。
「どうしたの。ノノミちゃん。何かを探しているみたいだけど」
ホシノを探して、キョロキョロと辺りを見回すノノミに、当のホシノ本人から声がかかる。
ノノミが振り向けば、ホシノはゴミ袋を抱えて、テーブルの上のゴミを片付けていた。
「あ、それなら私がやります」
「大丈夫だよ。ノノミちゃんはゆっくりしてていいよ?」
ホシノはノノミの提案を断って、片付けを再開した。テーブルの上はあっという間に片付けられ、綺麗になっていく。それをノノミはジュースをストローで啜りながら眺めていた。
なんだか、ホシノのやる気に満ちている様子にノノミには違和感しかなかった。確かに、やる気があるのはいいことだけれど、これは遊びではなくて片付けだ。昼からも用意を始めようとしてカヤツリを振り回していたし、食事もそこそこに配膳やら片付けやらに精力的だった。義務感からかとも思ったが、とても嬉しそうにやっている。ノノミには全くもって理由が分からない。
カヤツリなら分かるのかもしれない。昼から、精力的に働くホシノをどこか微笑ましそうに見ていたから。
──でも、聞きにくいですね……
二人の間に割り行ってまで聞きたくはないし、ノノミの知らない何か、重い話題だった場合は取り返しがつかない。折角の休暇を台無しにしたくなかった。でも、知りたい気持ちもある。好奇心もあるけれど、半分はもやもやするからだ。
ノノミの悪い癖だ。どうしても人の目が気になる。人からどう見られているのか、どう思われているのか。それが気になって仕方がない。関係のない、または薄い人物ならまだいい。ただ対策委員会やアビドスの人たちには過敏になる。特にホシノとカヤツリは。
ホシノが笑顔なのは、きっといい理由なのだろう。ノノミが気になっているのは笑顔の理由でなくて、今までそうでなかった理由だ。その理由が自分のせいだとしたら、ノノミは耐えられない。
「ねぇ。ノノミちゃん」
ホシノの声がすぐ近くから聞こえた。急に聞こえたものだから、ノノミは驚いて座っていた椅子から飛び上がった。
「わ!? どうしたんですか。ホシノ先輩」
「いや。何度も呼んだんだよ。ノノミちゃん。それ、もういいんじゃない?」
ホシノがノノミの手の中の物を指さす。何だと思ってみればジュースのコップが空になっていた。考え込んでいるうちに飲み干してしまったようだった。それを見たホシノが回収しようと声をかけるのは当然の事だろう。
何ともない様子を装ってホシノの広げるゴミ袋にコップを入れると、ホシノは満足そうに満杯になった袋の口を縛って砂浜に降ろしている。それで、その後なんでもないような様子でノノミに言った。
「何でノノミちゃんは楽しそうじゃないの?」
「そんなことないですよ?」
いつもの笑顔でノノミは誤魔化した。ホシノの言っていることは半分合っていて、半分間違っている。
楽しいのは本当だ。対策委員会の先生を含めたリゾートでの休暇。楽しくないはずがない。でも、完全に楽しめているかと言われると頷けなかった。楽しめないのは極めて個人的な理由だ。それをホシノに言ったところで今は何も解決しないし、カヤツリに言うなどもってのほかだった。ただ今の、ノノミの望みはこの休暇の雰囲気を壊したくない。ただそれだけだった。
「……うん。やっぱり、皆との買い物の時と違うよ。楽しいのは本当だけど、何か抱えてるでしょ」
「……」
もうお手上げだ。素直に両手を挙げて降参する。時期までバレていては誤魔化しようがない。ただ、休暇が終わってからにしてほしかった。
話そうとしないノノミを、ホシノは暫く黙って待っていたが、ノノミが話そうとしないのを悟ったらしく、別の事を聞いてきた。
「誰にも話せないの?」
「いいえ」
「後でなら話せるの?」
「はい」
ホシノは短い質問を繰り返す。答えられるのは答えて、答えたくないのは答えない。そうやって質問とその答えを積み重ねていく。大体の質問を聞き終わったホシノは目を瞑って何か考え込んでいるようだった。考えが纏まったのかホシノは目を開くと、ノノミにとっては致命的な質問を繰り出した。
「ネフティスの事?」
「……」
困ったなとノノミは思う。だって正解だから。黙っても答えても、答えは一緒だ。嘘をつけば誤魔化せるだろうが、後日言いにくくなってしまう。それでは本末転倒だった。
「うん。カヤツリから教わったやり方だけど効果あるね。じゃあ最後の質問」
ノノミとしては、これ以上は勘弁してほしかったが最後の質問と言う事なので素直に聞くことにする。
「おじさんとカヤツリ、どっちが言いやすい?」
「……」
これもまた答えにくい質問だった。こういった事を相談するならカヤツリが一番だけれど、これはカヤツリには言いたくなかった。じゃあホシノになら言えるのかといえばそうでもない。先生などには言えるはずもない。管轄外の事だから、言われたところで困るだけだろう。
「……同じくらいに言いにくいです……」
「じゃあ、ノノミちゃん。言える時に言えばいいよ」
「え?」
ホシノのあっけらかんとした返答にノノミは疑問の声を上げた。てっきり問い詰められると思っていたのに、それとは真反対の返事だったからだ。困惑するノノミに向かってホシノは当たり前のように言う。
「だってノノミちゃん。そこら辺の危機管理はしっかりしてるでしょ。昔のおじさんやカヤツリとは違って、言うべきことは言うべきタイミングで言えるよね」
「ですけど……」
ノノミは言葉に詰まる。それは正しくない事だ。大事なことはすぐに相談するべきで、そうしなければならないのだ。そうしなかったから、先輩二人はあんなことになったのに。それを二人はよく知っているはずなのに。
「おじさんはノノミちゃんを信用してるから。カヤツリも一々口には出さないけどそうだよ。そうじゃなきゃ、あんな腹黒いやり方なんて教えないからね」
それは分かっている。二人が、シロコが、後輩たちがノノミの事を信用してくれているのは。
「ノノミちゃんはさ。自分があんまり好きじゃないかもしれないけど、私たちはノノミちゃんの事が大好きだから。それは忘れないでほしいな」
「どうしてですか?」
「うん?」
「どうして分かったんですか?」
ノノミの切羽詰まったような質問に、ホシノは不思議そうに答えた。
「おじさんはノノミちゃんの先輩だからね。先輩は後輩の事なら何でもわかるんだよ。……今になって実感するとは思わなかったけどね」
”なんだそれは”とノノミは唖然とする。そんな事で自分が隠していたことが分かるはずがない。ぴったり合っているという訳ではないが、ほとんど当たっていた。
「だって、ノノミちゃん。アビドスに来るかハイランダーに行くかで迷ってたでしょ。普通はハイランダーを選ぶんだよ。私もそう言ったのを覚えてるでしょ」
「はい……」
ホシノは昔を懐かしんでいるのか、遠くを見ている。
「私は止めたよね? ハイランダーの方がノノミちゃんが得るものが大きいから、そうしなよって。でもノノミちゃんはアビドスを選んでくれた。きっとそれなりの理由があるんでしょ?」
「カヤツリ先輩から聞いたんですか?」
その理由はカヤツリには初見でバレて、問い詰められている。その時は、自分の内心を解剖されて見せつけられているかのようで、驚いて固まってしまったのを覚えていた。カヤツリがホシノにそれを言っているのなら、納得は出来た。ノノミはカヤツリが軽々しく言うとは思っていないけれど。
「カヤツリは何にも言わなかったよ。どっちを選んでもノノミちゃんが後悔しないと良いねとは言ったかな。最初は、アビドスを見捨てて行ったネフティスの責任を果たそうとしてるのかなって思ってたんだけど」
それも間違ってはいない。ネフティスのせいで、アビドスは止めを刺されたようなものだから。だから恨まれていても仕方がないのだ。
「……ノノミちゃんはさ。よく周りを見てるよね。空気が悪くなりそうな時や喧嘩しそうな時、何かに煮詰まった時は雰囲気を変えてくれる。最初は気が利くのかなって思ってた。でも、違うよね。その雰囲気に耐えられないんでしょ。それで、その雰囲気を変えられない自分が嫌なんだよ」
図星だ。
ノノミは悪い空気感や雰囲気が大嫌いだった。それが好きな人間などはあまりいないだろうが、ノノミは輪をかけてそれが嫌だった。
中学での思い出は最悪だ。ノノミの通っていた中学は私立ネフティス中学校。ネフティス企業傘下のエリート校だった。だからこそ、アビドス高校を除いて最後まで残っていた学校だったのだが。
最後まで残っているという事は、周りの学校が無くなる噂がどんどん入ってくると言う事だ。一つ二つと周りの学校が無くなっていく。次は何処だろう。次はここかもしれない。そんな暗い雰囲気が学校全体を覆っていた。
そうなれば人は理由を欲しがるものだ。どうしてこうなったのか、こうなってしまったのか。幸か不幸か、私立ネフティス中学校ではその理由はすぐに察せられた。
学校が次々無くなるのは、自治区が限界だからだ。何故限界かと言えば、借金が返せないから。大本の原因は砂嵐ではあるが、止めを刺したのはネフティスだ。そんな簡単な事実など隠せるはずもない。
そうなればどうなるか。皆がノノミを見るのだ。罵詈雑言や暴力をぶつけられたわけでは無い。ただ、何も言わずに見るだけだ。それだけでもその視線に乗った感情は察するのは容易だった。
──お前のせいだ。お前のせいで、アビドスはこんな風になった。
ノノミの気にし過ぎだと人は言うだろう。でもあの時のノノミにとってはそれが真実だった。他人の視線が恐ろしくて、罪悪感が重すぎて、どうしようもできない自分が情けなくて。部屋から出れなくなった。
そして、逃げるようにアビドス高校の事を調べた。まだそこでは頑張っている生徒がいると噂になっていたから。その人たちを手伝えば、そうすれば、あんな目で見られることもない。そう思ったのだ。私は頑張っているから、どうか、どうか、そんな目で見ないでほしいなんて。
だが、現実は厳しかった。生徒会長の事を知ってしまった。行方不明だと。それを泣きながら、さ迷い歩いて探すホシノも見た。もうノノミの罪悪感は限界だった。だから、アビドス高校に飛び込んだ。少しでも罪悪感を減らしてしまいたかった。それに押しつぶされて息もできなかったのだ。
それならまだいい。だが、ホシノとカヤツリに聞かれた時。ハイランダーかアビドスかを聞かれた時。あろうことかノノミは迷ったのだ。本当に悪いと思っているのなら迷うはずもないのだ。結局は自分が可愛いだけだった。それに気づきもしなかった。
全てが中途半端だった。親に反抗したいのか、ただ自分が楽になりたいのか。そんなことすら分からない自分が、アビドスに厄を振りまいているような自分が、ノノミは大嫌いだった。
「でも、私はノノミちゃんが来てくれて嬉しかったよ」
ホシノはノノミに向かってポツリと言う。慰めの言葉だろうか。けれど、ホシノは優しい口調で言う。
「私は嬉しかった。手伝ってくれる人なんてカヤツリ以降は誰もいなかったからね。ノノミちゃんの動機が何であれ、手伝おうと思ってくれたことや、事実そうした事は嘘じゃない。私はただそれが嬉しかったんだよ。ノノミちゃんがどう思おうとね」
なんだかノノミの胸の中はよく分からない事になっている。罪悪感はまだ燻っている。けれど、他のモノも確かにあった。
「私とカヤツリが大事になった時も助けてくれたよね。その気持ちが嬉しかった。私は良い後輩を持ったんだよ」
なんだか心の奥がポカポカする。お礼を目的にやっていたわけでは無いけれどなんだか嬉しくて、楽になった気がした。そんなノノミを見て、ホシノはクスリと笑って言う。
「兎に角ね。私やカヤツリ、シロコちゃんやセリカちゃん、アヤネちゃんもノノミちゃんの事が大好きなんだよ。それだけは覚えておいて」
そのままホシノは何事もなかったかのように、片づけを再開した。そして、言葉が出ないノノミに向かってホシノは思い出したかのように付け加えた。
「ああ、それとね。カヤツリが探してたよ。避けられてるのかって落ち込んでたから、後で行ってあげて。カヤツリなら言葉にするのが上手いから、話してみるのもいいかもね」
□
「それで避けてるかと思ったら、いきなりこんな重い話題を持ち込んできたのか。で、自分の事が良く分からなくなったって?」
さっきまでホシノがいた位置に、カヤツリは椅子を用意して座っていた。なんだか疲れたような表情のカヤツリに向かってノノミはこくりと頷く。ホシノの言う通りなら、ぐちゃぐちゃになった自分の内心にも一区切りつけてくれるだろう。
カヤツリは海の方を見る。ノノミもつられて海辺を見れば、後輩たちと先生、ホシノが手持ち花火で遊んでいた。ホシノは視線に気がついたのかウインクまでしている。それを見たカヤツリはもっと疲れた顔になっている。
「多分、十六夜後輩が言った事は全部、十六夜後輩が思った事だよ。親に反抗したいのも、アビドスの事に責任を感じているのも、自分の生まれが嫌なことも、それに付随する何もかもを投げ捨ててしまいたいのも。全部そう」
カヤツリはノノミから聞いた話を再度組み立て始めた。言葉に出されるとなんだか恥ずかしい。そんなノノミを気にもせず、カヤツリは続けた。
「十六夜後輩は優しいから、それぞれに筋が通った理由が、正しい理由がないと納得できないんだよ。それぞれの事柄をそう思うのは当然の事だよ。自分のせいじゃないのに、アビドスの事で責められるのは嫌だし腹が立つだろうさ。でも、十六夜後輩は何とかできたかもしれない立場にはあった。それを後悔するのも当然だよ。恵まれた生まれなのにそれが何も与えてくれないんじゃ投げ出したくもなるし、十六夜後輩もそんな親に反抗したくもなるだろうさ」
「それなら私はどうすれば良いんですか……」
カヤツリは仕方のないことだと言ってはくれるけれど。それはただの現状維持だ。
「もうやってるだろ。俺から教わって色々してるじゃないか。自分からやるって言ったんだろ」
「そうですけど……」
あの時に言った言葉は本心だ。ノノミは二人に感謝しているし、対策委員会の事が大好きだった。だからこそ、あのカヤツリに向かって啖呵を切れたのだ。あの時は対策委員会に逃げてきたことを自覚して向き合うつもりでいた。
「ネフティスの事が関連してるのか? 後で言うっていうやつ」
そうだ。もう言ってしまおうか。もうここまで来たら、変わらないだろう。
「この休暇の前日の夜に、実家から電話が来たんです」
「戻って来いって?」
「いいえ」
カヤツリの問いに首を振る。それならどれだけよかったか。実際はもっとひどい。あの夜に警戒心を最大にしてノノミは電話を取った。電話口の相手は執事だった。いつも親が直接電話を掛けてくることは無い。ゴールドカードを使い過ぎれば別だが、ノノミは親に、ネフティスに頼りたくないから、ゴールドカードはほとんど使わなかった。そうでなくても、ノノミの方もこの執事越しにしか連絡しないのだが。
──お久しぶりです。お嬢様。夜分遅くの電話をお許しください。
「契約について話がしたいと。カヤツリ先輩を指定してきました。卒業までであればいつでもいいと。私にもカヤツリ先輩にもいい話だと。きっとお互いに得るものがある話だと。そう言っていました」
「ふぅん。それで、十六夜後輩は保留にして切ったんだな」
「はい」
ここで勝手に了承したり、拒否をすることはノノミはしなかった。この休暇が終わったら話すつもりだったのだ。ただこれを一人で抱えるのは厳しかった。そこをホシノに見透かされた訳なのだが。
あの電話一本でノノミのあの時の決心は粉々になった。自分の心構えなど何一つ関係なかった。自分の生まれが、ネフティスがまた何かをしようとしている。皆に迷惑を掛けようとしている。自分だけならまだしも、カヤツリを道具にしようとした。
──お嬢様の言う事なら、私共よりかは聞こえがいいでしょう。ネフティスの為、アビドスの為にお嬢様が出来る唯一の事ではありませんか?
執事の言う事、それに対してノノミは何もできなかった。
「ちゃんとできてるじゃないか」
けれど、カヤツリは嬉しそうにノノミに言った。むしろ誉めていた。なんでか分からずに、ノノミは聞き返す。
「でも、私のせいでネフティスから何かされて……」
「別に十六夜後輩は窓口代わりに使われただけだよ。公式な窓口を通すと面倒だと思ったんじゃないか。そこで自己判断せずに、激情に駆られて拒否をせずに、俺まで話を通した。しかも気まで使って休暇中は黙ってた。何がいけないんだよ。十分じゃないか」
カヤツリはさっきのホシノと同じような口調で続ける。
「カイザーからの利息が減ったのを察知して接触してきたんだ。ホシノを指名しない所を見るに碌な話じゃない。拒否一択だし、後で断りを入れる。十六夜後輩が気に病むことは無い。何でもかんでもが十六夜後輩のせいじゃない。もうちょっと楽に考えていいと思う。普段の様子みたいにね」
「本当にいいんですか?」
執事は、ネフティスは言った。良い話だと。彼らが嘘を吐かないのはよく知っている。
カヤツリは、碌でもない話だから断るという。
なんだか、さっきと同じように心が楽になるのを感じた。自分のせいじゃないと、よくやってくれていると言われて、なんだか嬉しかった。
「それは皆思っていることだと思うよ。その中学の奴らや、他の大人が悪いと言ってきても、俺やホシノや、シロコ、後輩たちは言ってやるとも、ノノミ後輩は悪くないってね。少なくとも俺はそう思ってる」
二人の言葉で心の奥で燻っていたものが鎮火していく気がした。自分ではまだ引き摺るモノがあるけれど、この二人がノノミのせいじゃないと言ってくれるのなら信じられる気がした。
少し元気を取り戻したノノミを見たカヤツリは、少し試すように言う。
「じゃあ、ノノミ後輩にはネフティスに断りの返事を言っておいてくれ。向こうが非公式な手段をとるなら、こっちもそうする。どうだ。やり返すみたいで良いんじゃないか? いつか本当に反抗したままなのか、折り合いをつけるのか。どっちか決める必要があるけれど、今はこれでいいだろう。どうする? 嫌なら俺がやる」
「やります」
少し食い気味にノノミは返答した。これが出来れば少しは前に進めるだろう。自分で決めるのだ。いつかカヤツリが言うように、自分で決める日が来るのかもしれない。ただ、今は反抗することに決めた。今はノノミは対策委員会で頑張っていきたいのだ。今までのような何をしているのかも分からない状態ではない。一歩ずつ前に進んでいるから。
なんだか気分が晴れやかだった。さっきまでの暗い気持ちが嘘みたいだった。抱え込んでいたものを吐き出したせいかもしれない。
「よし、じゃあ花火を楽しんできな。俺はシロコに振り回されて疲れたから。代わりに行ってきてくれノノミ後輩」
「……呼び方は変えたんですか?」
「嫌なら戻すが? セリカ後輩やアヤネ後輩から言われたんだよ……」
ノノミはあの二人を思い浮かべる。確かに言いそうだった。少し揶揄い半分に笑って言う。
「ホシノ先輩が怒りませんか?」
「皆、おんなじこと言う……いいよ。怒ったら俺が止めるから」
「じゃあ、ノノミ後輩でお願いしますね。カヤツリ先輩」
揶揄われたことが分かったのか、むすっとした顔をするカヤツリを背に。ノノミは皆の待つ浜辺へ駆け出した。さっきまでの気持ちはとうに無くなっていた。