ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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97話 戒律の抜け穴

『状況は?』

 

「ひとまず落ち着いた。そういったところだね」

 

 

 通信機越しにマトはカヤツリと話す。アリウススクワッドとの邂逅から数時間は経っている。

 

 あの後、満身創痍のヒナと腹部を撃たれた先生を救護班に引き渡し、マトはゲヘナに戻ってきていた。

 

 ミサイルが古聖堂に直撃した直後、カヤツリがマトに携帯で連絡してきた。マトはマトで調印式の会場に不審な物を感じ外縁部に陣取って、もしもの時の為に準備をしていた。あの戦闘ヘリもその一つだった。

 

 

「……なんで遠隔操縦にしたんだい? 専用の機器があるとはいえ、アビドスからじゃ、遅延が酷いだろうに」

 

 

 初めはマトが運転して、カヤツリには情報収集を頼むつもりでいた。けれど、カヤツリが強硬に遠隔で運転させるように要求したのだ。マトは不審に思いつつもそれを承諾した。その判断は大正解だったわけだが。

 

 

『ニュースで古聖堂について言っていた。地下の事とその逸話を。それで嫌な予感がしたんだよ。前にもあったんだ、こういったことが。契約がとんでもない力を持つことが』

 

 

 どこか懐かしむような口調でカヤツリは言う。悲壮な感じではない口調にマトは何かを察した。

 

 

「カヤツリ。録音したアリウススクワッドの会話は聞いたね。戒律とか契約について、アンタの考えを聞きたい。その様子を見るに詳しいんだろう?」

 

『多少は』

 

「よし。作戦会議と行こうじゃないか。こんな面子で悪いがね」

 

 

 マトはあたりを見渡して言う。そこは空き教室で、隣の保健室ではヒナやアコたち風紀委員が手当てを受けていた。動けるのはアコだけで、ヒナやイオリはまだ目を覚まさない。先生はトリニティの方へ引き渡している。

 

 

『その前に、先生は? トリニティか?』

 

「そうだよ。ここよりは安全だろうさ。向こうには救護騎士団が居る。あそこの団長なら誰にも手出しはさせないだろうね。頭の固さは筋金入りだよ」

 

『ああ、分かった。そういう事だな』

 

「話が早くて助かるよ。皆があんたみたいならいいんだけどね」

 

 

 割と本心でそう思っていることをマトは話す。

 

 先生がここに居ない理由は、スパイ対策だ。アリウススクワッドが言ったように万魔殿は裏切っていた。正確には騙されたのだが、やった事は変わりない。主犯は想像がつくし、理由も想像はできる。仕置きは後でするから問題ないが、万が一という事もある。

 

 

「で、アレは何なんですか。あの修道服の集団は。こちらの攻撃が全く利かなかったんですけど」

 

 

 まだ怪我が痛むのか、アコが顔を顰めながら言葉を零す。

 

 

『スクワッドが言ってただろ行政官。あれは、文字通りにゲヘナとトリニティを滅ぼすための集団だよ。だから、ゲヘナやトリニティの攻撃は利きが悪いんだ。そういう風に戒律で決められたからな。戒律の内容は絶対だ』

 

「何とかする方法は?」

 

『スクワッドの言ったように、契約したやつを殺すしかないだろう。それか、やられたことをやり返すしかない』

 

 

 それは難しいだろうなとマトは思う。引き金が軽いキヴォトスとはいえ、殺しは重罪だ。それこそ居場所がなくなる。もう一つの方法が何か聞こうとするマトを遮って、アコがカヤツリに食って掛かる。

 

 

「貴方なら、アビドス所属でシャーレ所属の貴方と対策委員会なら、攻撃が通るってことでしょう! あなたも、小鳥遊ホシノも居る! 武器やヘリ、金銭ならいくらでも提供しますから、委員長を傷つけたアリウススクワッドを──」

 

「アコ!! やめな!」

 

 

 ヒナが傷つけられて頭に血が上っているアコをマトは制止した。アコの判断は間違ってはいない。今のゲヘナが取れる手段はあまりない。それこそアビドスに助けを求めるくらいには。

 

 連邦生徒会は役に立たない。前日の会見からして無理だろう。各学園の事件については、むやみに介入しないと。連邦生徒会の傘下──SRT特殊学園の閉鎖。直属の強力な戦力まで手放すとまで言う。連邦生徒会長がいないのが余程マズいのか、それほどまでの余裕がないのかは分からないが。

 

 アコが何を口走ろうとしたかは想像がつく。けれどそれは言ってはならない事だ。きっと、それを言ってしまったらカヤツリは怒るだろう。それも、今までになく。

 

 

『よく聞こえなかったな』

 

 

 カヤツリは何事もないように言うが、きっとそんなことは無いだろう。

 

 アコがヒナを大事に思うように、カヤツリにとってのホシノや後輩たちもそうだ。それをゲヘナの都合で貸し、身を危険に晒せなど、あまりにもアビドスを馬鹿にしている。今の必死で頭に血が上っているアコにその自覚はないだろうけど。

 

 本来なら、ヘリの助太刀や今の作戦会議もやらなくていい事なのだ。そこまでの信用がゲヘナにはあった。

 

 その信用は万魔殿のおかげで、カヤツリの中では暴落しているだろうが。

 

 

『行政官。確かに攻撃は通るだろう。けれど、それは最初だけだ』

 

 

 マトはスクワッドの言った事を思い返す。ゲヘナとトリニティと言っていたが、それとエデン条約を妨害するものとも言っていた。もし、スクワッドに攻撃を仕掛ければ、エデン条約機構となった彼女たちに攻撃を仕掛けたことになる。そうすれば即座に、ユスティナ聖徒会に排除対象として認識されるだろう。

 

 今なら、マトにも分かる。遠隔操縦した本当の理由が。あれは戒律の隙をつくのもあったのかもしれないが、一番の理由は身元を特定されないようにすることだ。身元が分からないのなら、排除対象との認識のしようがない。

 

 

『おそらくスクワッドが先生だけは自ら処理しようとしたのもそのためだ。シャーレは排除対象ではないし、スクワッドに直接攻撃もしていない。その証拠に聖徒会は先生に攻撃していない。あのヘリの攻撃が見逃されたのは、おそらくスクワッドへの攻撃ではないと判断されたんだろう』

 

 

 そうだ。その仮説が正しいなら、こちらからの攻撃は出来ない。最悪の場合、アビドスにユスティナ聖徒会が湧く恐れすらある。

 

 

「手詰まりじゃあないですか! 今、動けるのは貴方達だけなのに!」

 

「……」

 

 

 他力本願な発言を繰り返すアコに、マトは何にも言ってあげられなかった。

 

 気持ちは良く分かるから。ゲヘナは壊滅的な被害を受けた。自業自得とは言え万魔殿が居ないのが本当に痛い。ゲヘナ生はタフだ。ここまでやられれば反骨心による士気も高い。ただ高すぎる事が問題だった。

 

 敵はアリウススクワッドとユスティナ聖徒会。マトたち風紀委員会なら、他のトリニティ生と見分けがつく。部下たちも同様だ。だが、他のゲヘナ生はどうだか分からない。下手をすれば、トリニティ生全てに攻撃するかもしれない。それだけは、今は避けなければならなかった。

 

 

『トリニティの様子はどうだった?』

 

「ダメだね。派閥同士の連携が取れていない。パテル派がゲヘナに宣戦布告するような動きもある。今はシスターフッドと救護騎士団が何とか押さえているが、時間の問題だね」

 

 

 マトは溜め息をつく。ゲヘナとトリニティは同じ状況だった。首脳陣が軒並みダウンしているせいで統制が取れていない。生徒の数が多い弊害が今になって出てきている。

 

 まだ押さえていられるが、時間の問題だ。もう一度襲撃されるか、誰かが暴発すれば、ゲヘナとトリニティの戦争が始まる。そうなれば誰にも止められない。ユスティナ聖徒会がやる前に、両方が地図から消える。

 

 

「こういう時の為のシャーレじゃないですか……。先生はどうしたんですか……」

 

「少なくとも、生命の危機は脱したみたいだね。今は眠っているみたいだ。でも、いつ目を覚ますかは分からない」

 

 

 マトはほぞを噛む。打つ手がない。カヤツリ達アビドスは表立っては動けない。ゲヘナもトリニティも、単独ではどうしようもない。この状況下では協力など不可能だ。唯一どうにか出来そうな先生は、未だに昏睡状態。どうしようもない。

 

 

「やり返すというのは?」

 

 

 少し落ち着きを取り戻したアコが、カヤツリに問う。殺害という手段が取れない以上、それが唯一の方法だった。

 

 

『言葉通りの意味だよ。エデン条約をやり直す。スクワッドはエデン条約を奪ったと言ったが、たぶんそうじゃない。もしそうなら複製などしなくてもよかったはずだ』

 

 

 言われてみればそうだ。まるで書き換えたからユスティナ聖徒会が起動したような言い方だったが、そうならわざわざ複製する手間などなくとも良いはずだ。

 

 

『契約ってのはそう単純じゃないし、器用でもない。その文面に約束されたことに対しては力を発揮するが、それ以外はそうでもない。しっかりと正式に書かれた事だけだ』

 

「話が分かりにくいですね。結論をスパッと言って下さいよ」

 

 

 アコが結論を急ぐ。カヤツリは困ったように唸った後に、できるだけ簡潔に言った。

 

 

『契約は複数人で結ぶもんだ。大本の第一回公会議も今回のエデン条約も。一人では結べない。だから、まだエデン条約は未完成なんだよ。内容が書き換わって、トリニティの代わりにスクワッドが調印しただけだ。まだ、ゲヘナの分の枠が残っているし、見届け人が承認したわけでもない。必要で正式な手順を、それを無視してごり押した。そんなやり方じゃ、ユスティナ聖徒会は起動しかしなかったはずだ。今みたいに自主的に動き回る事なんてないはず』

 

「だから、複製する必要があったんだね。正規品が使えないから違法コピーの海賊版を使おうってわけだ。じゃあ、本物を起動させれば……」

 

『おそらく、共食いか対消滅する。エデン条約が二つあるのはあり得ないからな。この場合はしっかりしている方が強いから、ゲヘナとトリニティ、それと見届け人を用意してやり直せばいい』

 

「それじゃあ
……」

 

 

 アコが勢いよく声を上げようとして小さくなった。問題点に気がついたのだろう。現在、両首脳陣が壊滅状態だ。ゲヘナはまだいい、風紀委員会が出れば何とかなるだろう。問題はトリニティだ。どの派閥が調印するかで揉めるのが目に見えるようだった。

 

 それにこの話を伝えに行ったところで信じるかどうかも怪しい。ゲヘナからの使者など門前払いされるのがオチだろう。

 

 カヤツリも残念そうに追加条件を告げる。

 

 

『それにな。おそらく結ぶのはきっと誰でもいいんだ。アリウスも生徒会長を名乗っているあの大人が来ていないみたいだし、最悪はそこらの一般生徒でもいいだろうさ。でも問題は、ゲヘナとトリニティが納得できるかどうかだ。その場にいる全員がそうだと良いなと思えなければ、同意したことにはならないだろう』

 

 

 その場を沈黙が包む。対抗策は見つかったが、実行するには困難が多すぎた。マトは意を決して口を開く。

 

 

「ありがとう。カヤツリ。もう巻き込めない。これはゲヘナとトリニティの問題だ。アビドスであるアンタには、これ以上の迷惑はかけられない」

 

『……それで、どうする気だ?』

 

「そうさね、やるだけやってみるよ」

 

 

 無線の向こうでカヤツリが言う。ああは言ったが、正直マトにもいい考えは浮かばない。これから押し寄せてくるであろうユスティナ聖徒会を押しとどめつつ、先生の目覚めを待つしかない。そうでもしなければトリニティとは話もできないだろう。

 

 首脳陣が健在なら話は違うが、今はそうではない。今ある手札で勝負するしかない。そしてカヤツリはマトの手札ではないのだ。

 

 マトがカヤツリを巻き込んだのはこれで二回目だ。一回目はアクシデントとはいえ、酷いことをした。カヤツリはマトに何も言わないし、マトもあの話題を掘り返さない。昔に巻き込んだことをマトは後悔していた。

 

 頼めば、カヤツリは手伝ってはくれるだろう。アビドスにもこの状況でゲヘナを助けるメリットはあるからだ。理由は十分にある。けれど、そういったメリット、デメリット、損得勘定でカヤツリやアビドスを巻き込みたくない。

 

 

「……」

 

 

 本当にいいのかという目でアコが、マトをみつめている。それにマトは頷こうとした瞬間に、カヤツリの声がした。

 

 

『そうか。じゃあ俺はトリニティに行ってこようかな』

 

 

 マトは目を見開いた。このタイミングでそれを言うということはゲヘナからの使者になるというのと同義だ。つまり手伝ってくれるということだ。

 

 

「アンタがそこまでする必要はないんだよ! 私はアンタにこれ以上の迷惑はかけられないんだ! 別に手伝わなくてもアビドスとの件は守る。万魔殿は絶対に動かして見せるから、だからアンタは──」

 

『俺はアンタを友人だと思っている』

 

 

 カヤツリの一言でマトの言葉が途切れた。黙ったマトにカヤツリは言葉を重ねてくる。

 

 

『友人を助けたいと思うのに理由がいるのか? アンタがあの事を気に病んでいるのは知ってる。でもこれまで色々やってくれたのは、償いの気持ちだけだったのか? 俺はそれだけじゃないと思ってる』

 

 

 そうだ。償いというのなら、病院の手配やあの時のカイザーの足止めで終わっている。何度もヒナやホシノとカヤツリと会議と言って、集まって話す必要はないのだ。これはマトの我儘だった。

 

 きっと楽しかったのだ。昔のように一人で何かをするわけでは無いことが。気心の知れた仲間と秘密を共有して、何かを為すことがきっと楽しかった。だから、必要もないのにズルズルと続けていたのだ。

 

 

『聖徒会がアビドスに進行することを心配しているのなら、それは杞憂だ。おそらく、聖徒会の方は全く融通が利かない。戒律に書いてある以上の事は出来ないし、命令されなきゃ、ゲヘナとトリニティ所属の生徒以外は自発的に襲いもしないだろう。身元を隠して、スクワッドにさえ直接攻撃しなければ大丈夫だ。流石に個人的な友人関係まで口出しできるほど、契約っていうのは便利じゃない』

 

「……随分と嬉しい事を言ってくれるじゃないか。後ろの方で全員が、この話を聞いているんだろう? アンタの相方のたてる物音が聞こえるよ」

 

 

 カヤツリが断言するということはそういう事だ。この話は対策委員が全員聞いているに違いなかった。それで、全員が了承しているのだろう。友人として、マトたちを助けに行くことを。

 

 

『そうだよ。また隠し事をすると怒られるからな』

 

「ふん。じゃあ、アビドスに甘えるとしようかね。これから詳細を詰めるよ。対策委員が全員話せるようにしな」

 

 

 マトは、口調をそのままにしようと努めた。けれど上手くいかずに、少し声が上ずっている。

 

 

「素直じゃないですねぇ」

 

 

 アコはそんなマトを見て、からかうように言う。マトはアコを無視して、アビドスとこれからの事を詰めにかかる。

 

 対抗策は見えたが、そこに至るまでの道は小さく細い。けれど、何とかなるような気が、この場の全員がしていた。

 

 

 □

 

 

「カヤツリ、ちょっといい」

 

 

 ゲヘナとの通信が終わった後にホシノが声を掛けてくる。分からなかったところでもあるのかと思って、カヤツリは対応するが、どうにも違うようだった。

 

 

「……さっき、エデン条約の戒律について話してたでしょ。契約について少し気になる事があるんだけど」

 

「良いけど……?」

 

 

 どことなく、ホシノの表情は強張っているというか、真剣な表情だった。

 

 これからの動きで緊張でもしているのだろうかとも思うが、そんなに大変なことは無い。

 

 カヤツリはトリニティへ、状況の共有に行く。一応はシャーレの肩書があるし、ヒフミという知り合いもいる。話ぐらいは聞いてもらえるかもしれない。

 

 ホシノたちは、ゲヘナの方へ行く。そこで、進行してくる聖徒会の間引きをする。もちろんアビドス名義ではなく、覆面水着団の名義でだ。まさかこの肩書をもう一度使う事になるとは思わなかった。

 

 マトからは足止めで良いと言われている。だからそこまで緊張するような要素はないはずだ。後輩たちもそんなに気負ってはいない。その証拠に早々に準備を終わらせて、校庭の方に行っている。

 

 

「私たちとの間の契約を覚えてるでしょ。あれの拘束力ってどこまでなの?」

 

「それは、ホシノが一番知っているだろ。俺を縛り上げたらしいじゃないか」

 

 

 カヤツリはその時に自覚は無いが、セトに乗っ取られたときに契約がカヤツリを縛り上げたのは黒服から聞いて知っていた。それを間近でみたホシノは理解しているはずだ。

 

 

「それはそうなんだけどさ……。ほら、カヤツリは気にならないの?」

 

 

 もじもじとしてホシノは言う。何か本命の質問があるが、それを隠して答えを得ようとする思惑が丸わかりだった。ただカヤツリは、そこを突く真似はしない。

 

 

「契約内容は”お互いどこにも行かない”だったっけ。俺とホシノが持っている紙には、俺とホシノの名前と、契約内容。それを順守することが書いてある。おそらくは、物理的な面でしか作用はしないと思うよ」

 

「……心までは弄れないってこと? 強制的に好きにさせるとかはできないってこと?」

 

「うん。弄りたいなら、”お互いずっと好きでいる”とか”心が離れない”とか、そういった文言になる。さっきも言った通りに、契約は書面上の事しか縛らない。言葉のニュアンスなんか読んではくれない。だからちゃんと確認して、納得して結ぶんだよ」

 

 

 それは、黒服がカヤツリに最初に教えたことだ。だからよく覚えている。

 

 セトの時に起動したのは、ホシノをどこかに置いて行こうとしたからだ。一時的ではなく永遠に。それは契約違反だから、カヤツリは縛り上げられたのだろう。気持ちが離れるとか、そういった心理的な距離では起動しない。そう契約書に書いてはいないから。まず無い事態ではあるが、死に分かれとか特殊な条件下では分からない。

 

 

「……まさかとは思うけど、ホシノ……」

 

「違うよ!? そんなことをするつもりはないよ!? そこまで私もバカじゃないよ! ただ気になったから聞いただけ!」

 

「……」

 

 

 慌てて否定するホシノを見てカヤツリは疑わしげな目になった。そういった事を書き足そうとしたから聞いたのではないのだろうか。まだ疑わしい目を向けるカヤツリにホシノは弁明する。

 

 

「いや、だって、ヘリからの映像を皆と見たけど、常識外の出来事でしょ? 契約でそこまでできるなら、どこまで影響があるのが気になるよ。どこまでが自分の意志なのか、契約に誘導されてるのか。怖くなるでしょ」

 

「まあ、そうか。それもそうだな。他に聞きたい事は?」

 

 

 黒服から教えてもらって、実物も事象も見ているカヤツリとは違って、ホシノにはそういう知識がない。その不安ももっともだろう。まだ知りたいことがあるかもしれない。そう思って、ホシノに聞くが、ホシノは首を横に振る。

 

 

「ううん。もういいよ。聞きたいことは聞けたからね。とても安心したよ。じゃあ、そろそろ出るよ。皆待ってるからね」

 

「……? それならいいけど」

 

 

 どこか上機嫌で教室を出ていくホシノの後ろを、カヤツリは追う。相当機嫌が良いらしく、スキップまでしていた。その理由が分からずにカヤツリは首を捻った。

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