Mキャンプにて、一九二六年 四月四日
ご両親様
本日三月二十八日付のお手紙をいただきました。皆さんが相変わらず元気にしていると知ってとてもうれしかったです。私とアンリはまだ生きています。ジラール大尉とグレゴワールも無事です。
先日帝国軍の魔導大隊と激しい戦闘がありました。大隊で残ったのはほんのわずかで、多くは戦死しました。私はこんな形でも切り抜けられてよかったと思うべきなのでしょう。
キャンプでの生活は快適です。久々に柔らかいベッドで寝ることができましたし、食事が時間通りに食べられるというのが何より喜ばしいことです。新聞で言っているような「前線における快適な兵士の生活」は嘘っぱちですが、もしそのような「快適な生活」があるとすれば、この後方における生活のことを言うのだろうといった感じです。
前線では食事が定時に食べられること自体が極めて稀なのですが、それでも温かい食事をとれるなら良い方です。酷いときには炊事兵が砲弾に怖気づいたために、食事を近所まで持ってこないことがあるのです。そうなると、食事当番が食事を受けとってから戻ってくるまでには食事が冷え切ってしまうことになります。
そういうときは、炊事兵のところまでちょっと飛んでいこうかとの考えが頭をよぎることもあります。これはおそらく魔導士ならば皆一度は考えることです。
しかし、そんなことをしたら帝国軍の砲兵がたちまち魔力に反応してこちらを狙い撃ちしてくるでしょう。そんなわかりきった死に方をするほど間抜けな話はない、ということで結局魔導士であろうとも、前線では食事は徒歩で取りに行かなければならないのです。
それでも以前は帝国の観測を受けながら飛行で食事の配達をやってのける勇者―もしくは愚か者―もいたのですが、最近では帝国軍の大鍋は以前にも増して激しく降ってくるようになりました。なので今ではそのような者はおりません。
食事の話をやたらに書いてしまいました。ともかく、現在は危険のない地域で快適な生活を送っています。この生活が全ての兵士の日常となるよう祈ってください。
今年の夏で私たちが戦場に来て三年となり、最後にあなた方にまみえたのももう一年以上前になります。
何事にも終わりがあると言いますように、この戦争も自然の法則に従って必ず終わりがあるはずです。しかし、すぐに終わりがやってくることはなかなかありません。それまでの苦労はどれほどのものになるでしょうか。
もしかしたら―本来不確かな話をするのは戦場では厳禁なのですが―キャンプが長引くようなら休暇がおりるかもしれません。三年目を迎える前にはお会いしたいものです。
それでは、また。心からのキスを送りつつ。
〔差出人〕郵便区二百七十四 魔導第三百五十三連隊 第一大隊 第三中隊 特務曹長 ロジェ・フォール
〔宛先〕パリースィイ十四区 マルソー通り七十六番地 オーギュスト・フォール様