「……つまりだ。出久には今回の『変速』みたいに『OFA歴代継承者』の『個性』がこれから更に発現する可能性があるってワケか?」
「うん…僕のことを9代目って言ってたから初代から8代目…になるのかな?オールマイトまでで今回の人を除いてあと7つだと思ってたんだけどあと5つだって」
「継承者の人数と発現する『個性』の数が合わねぇな。なぁオールマイト、アンタにはなんか心当たりとかねぇのか?アンタの先代の個性はどんなだったとかそれ以前の継承者の素性とかよ」
「……」
先程出久の身に起こったイレギュラーについて何があったのかを本人の口から聞いた勝己と空牙は、自分が(恐らく)何十年も扱ってきたであろう『個性』のことなのに「何それ知らん」と抜かした事で総スカンをくらい縮こまっているオールマイトに対して「それぐらいならわかるよな???」と言わんばかりの圧を込めて言ったのだが、やがて決心がついたのか口を開いた。
「1つずつ答えていこうか。まず『個性』の数についてだ、これについては単純さ…初代と私は『無個性』だったからね、それを除いて残りが5人なのだろう」
「お、オールマイトが『無個性』!?!?」
「ああそうさ!初代は厳密には『OFA』の原型となる『個性』を持ってはいたが、今後発現する『個性』では無いから除外したのだろう」
「それも大事な情報だけどオールマイト、アンタ……」
「……次の話をしよう。私の先代、7代目の『個性』は『浮遊』!文字通り宙に浮かぶことが出来る『個性』だ!……私のお師匠であり、私にとっては誰よりも尊敬出来るお方だったよ」
「「「……」」」
「お師匠より前の継承者についてはすまないが私もわからなくてね、後日頼りになるお方にも頼んで調べてみるとするよ」
懐かしむような、哀しむような表情をしながら語ってくれたオールマイトに3人は無言で聞き入っていた。直接言葉にはしていないがオールマイトの口調や表情がその人がどうなっているのかを物語っていた。
暫く無言の時間が続いたが、そんな雰囲気を消し飛ばすかのようにオールマイトがマッスルフォームになりながら立ち上がった。
「Hey!クヨクヨしてばっかりじゃ良くないぜ少年たち!ヒーローってのは笑顔で民衆を安心させてあげることも大事なんだ!」HAHAHAHA
「……お師匠の言葉さ。どんな時でも『自分は大丈夫!』って笑うんだ、世の中笑ってる奴が1番強いんだってね!」
「「「!」」」
顔を上げ自身を見る3人の少年に対し、オールマイトは安心させるように笑いかけ、かつて自分が教わったことを今度は自分が3人に対して教えてあげていた。
「今日はここで解散にしよう、明日からは話していた通りここの清掃がてらの特訓だ!では少年達よ、気をつけて帰るんだぞ」HAHAHAHA
高笑いしながら並んで帰っていく3人を見送ったオールマイトは、3人の姿が見えなくなると1度大きく深呼吸をしてからとある連絡先に電話をかけた。
「お久しぶりですグラントリノ……えぇ、後継の件でご相談が……実は…もう……」
勝己side
「それにしても『OFA』だけじゃなく『個性』があと5つもね…」
「でも『変速』の持ち主の人は不手際って言ってたし本来は発現しないか、もっとずっと後に発現するはずだったみたいなんだよね…まずは『OFA』の超パワーと『変速』を使いこなせるように頑張るよ」
「……」
俺の隣に並んで話してる2人の話を聞きながら考え込んじまう。今日聞いたオールマイトの話…衝撃的な内容の連続だったが、俺にとって特に衝撃的な話があった。
オールマイトが元『無個性』だったこと
空牙を挟んで隣を歩く出久を横目で見る。『無個性』でも俺や空牙を努力を重ねて追い抜こうとしてきたライバルだ。
「かっちゃん?」
「ん?勝己どした?」
「ん?オォ…」
黙っていた俺を心配してか出久と空牙が声をかけてきた。ライバルとして長年一緒に努力してきたから心配されても何も思わねぇが、これがそうじゃなかったら俺は絶対にその心配を受け入れられねぇし許さねぇ。
俺はそういう奴だ。俺より弱え奴が俺を
「…オールマイトの話聞いて、思うとこがあったんだよ」
こうやって弱音を、自分の心情を吐くこともきっと出来なかっただろう。オールマイトの事を聞いた時に空牙に啖呵切っといて情けねぇと自嘲しながら吐き出した弱音は、他ならぬ2人によってブチ切られた。
勝己sideOUT/出久side
「かっちゃん…」
かっちゃんの吐き出した言葉は思っていたよりずっと深刻で、それだけかっちゃんが思うところがあったんだと思わせる言葉だった。くうちゃんもそれがわかっているから黙ってしまった。
…確かにあの時、くうちゃんが僕の手を引いてくれなかったらそうなっていたんだろう……だからこそ、僕はこう言うんだ。
「え、そんなの気にしてたの?かっちゃん大丈夫?湿気って爆破できなくなってない?」
「ぶふぉっ」
「……………………あ゛???」
僕の発言を聞いてくうちゃんは吹き出し、かっちゃんは1度何を言われたのかわからずか固まった後に、こめかみに血管を浮かべながらこちらを睨みつけてきた。
でもそうとしか答えられないんだよかっちゃん。だって…
「かっちゃんの言う通りだよ。あの時、僕はくうちゃんに救われて君に立ち向かえたんだ。くうちゃんが居なかったらきっと僕は君の隣にいれなかったし、君は僕を認めなかっただろうね」
「っ……だからそうだっつってんだろ「でもねかっちゃん」遮ってんじゃねぇぞ出久コラ!」
かっちゃんが怒鳴りつけて来るが無視して続ける。
「
「っ!」
「だから僕は気にしてないしかっちゃんだって気にする必要無いんだよ。それより明日からの特訓のことを一緒に考えて欲しいんだ。かっちゃんが1番そういうの詳しいだろうしさ」
くうちゃんはその辺ちょっといい加減だし。そう付け足すとくうちゃんに「いらんこと言うな」とお尻を蹴られた。ズドンと重い音が響いたけど甘いよくうちゃん、僕のお尻は長年の鍛錬と『OFA』が合わさりもはや鉄板の如く硬くなってるのさ。
「この筋肉バカが」
「……ハッ」BOM
「うわっ!?」
くうちゃんと戯れていると固まってたかっちゃんが僕の背中を軽く爆発させながら叩いてきた。
「俺としたことが小せぇことでバカバカしかったなぁ…!それはそうと出久テメェ!誰が湿気ってるてぇ!?テメェが黒焦げンなるまで爆破しまくったるわ!!」BOOOM
「勝己!今日はもう遅いしまた明日だ!明日出久シバくぞ!」
くうちゃん!?
「おぉ…首洗って待ってろや筋肉ダルマァ…」
「えぇ…」
かっちゃんたら調子が戻ったと思ったらすぐこれだよ…くうちゃんもかっちゃんのこと焚き付けて全く…
「上等だよ雲の上までぶっ飛ばしてあげるから明日はパラシュートの用意してきなよ」
「「「…」」」
「プッ」「ハッ」「ケッ」
僕らはやっぱりこうじゃなくちゃね
出久sideOUT
「今日はうちで食べていかない?お母さんにも『個性』のことを話して安心させてあげたいんだ」
煽り合いも終わったところで、出久がそう口にした。普段から3人は誰かの家で揃って夕食を食べることも多いのでいつも通りでもあるのだが、今回は事情が違った。
「あー、それは確かに言ってあげないとな。母さんに出久ん家で食ってくるって送っとくか」
「流石に『OFA』は濁す方向だよな?どうせババアと
「ババアて…光己おばさんにバレたらまた吊るされるぞお前」
「ババアはババアだわクソが!それより出久の話すんぞ!」
勝己の口の悪さに呆れつつも話は出久の『OFA』を母親に、ひいてはそこから伝わるであろう自分たちの家族にどう説明するかという話に戻った。
「そこんとこもオールマイトとも相談しとくべきだったな。今後も似たようなこと起こるだろうし明日オールマイトに連絡先聞いとくか」
「オールマイトの連絡先…!お、教えて貰えるかな…!?」
「出久テメェ連絡先より遥かにすげぇもん貰ってんのにんな事で緊張する必要あるんか」
「ん゛ん゛……僕は『エネルギー操作』って説明して『OFA』の超パワーも『変速』も全部僕の身体から生み出されるエネルギーで可能にしている…とかが無難かなと思ってるんだけどどう思う?」
「…完璧じゃね?もし今後新しい『個性』が発現しても余程のことが無ければエネルギーでゴリ押し出来るしそれでいいだろ」
「『個性』の届出も医者に深く突っ込まれなきゃだが「出力が高過ぎてセーブがかかってた」とか言えば問題ねぇだろ」
「そうか、届出もしなきゃいけなかった…うん、その方向でいくね」
「バレんじゃねぇぞ」
「最悪オールマイトにも頼れるしまぁ大丈夫だろ…てかオールマイトとも口裏合わせねえとな。『個性』使う許可くれたヒーローいなきゃドヤされちまう」
冷静さを取り戻した出久の考えていた案に賛成し、事情を話せない相手用の設定を細部まで相談し終わった頃には、既に出久の住むマンションの前まで帰ってきていた。
母親が待つ部屋の前まで来た3人は、緊張を解すように深呼吸をした出久が扉を開けた。
「ただいま…!」
「遅かったわね出久……まぁ!勝己君と空牙君も来てくれたのね、いらっしゃい!」
「ウッス」「おじゃましまーす!」
丁度夕食の支度をしていたのか出久の母親、引子がエプロンをつけたまま玄関の方に身を乗り出し、出久の後ろにいる勝己と空牙を見ると笑みを浮かべて2人を招き入れた。
「今日もいつもみたいにヤンチャしてたの?出久!お母さん鍋見てるからテーブルと食器の準備よろしくね」
「あ、俺らも手伝いますよ!」
「食器取って来るっス」
「あら、ありがとうね2人とも。勝己君は辛口が良かったわよね?冷蔵庫の中に入ってる唐辛子ペースト好きに使っていいからね。空牙君は中辛のままで良かったかしら?」
「ありがとうございます」「大丈夫です!」
「くうちゃーん、テーブル出すから荷物よけてー」
「おーう」
引子の指示を聞きながら3人でテキパキと支度をして、出久が用意したテーブルに人数分のサラダとカレーが並べられた。全員がテーブルを囲い座ったところで引子が申し訳無さそうに微笑みを浮かべた。
「こんな簡単なお夕飯でごめんなさいね?冷蔵庫のお野菜とお肉がいくつか危なくなってて手っ取り早く使わなきゃいけなくて…」
「お母さん…!」
「急に来たんだし気にしなくていいっすよー!俺おばさんのカレー好きですよ!」
「俺も、いつも味変用のペーストとか置いて貰ってるし嬉しいっス」
「そ、そう…?ありがとうね2人とも」パアッ
「それじゃ」
「「「「いただきます!」」」」
「うめぇ…いつも思うが勝己のそれ味わかんの?」
「あ゛?わかるに決まってんだろめっちゃうめぇわ!」
「かっちゃん好みはアレだけど味の違いとかはすぐわかるよね。将来そっち方面のバラエティでも需要ありそうだよね」
「興味ねぇよ」
「その前に態度治さねぇと全カットだろこいつ」チラッ
「あ!?んな事させっかノーカットで流させるわ」チラッ
「!…」コクッ
「お、お母さん!」
「ん?どうしたの出久?」
それぞれに舌鼓を打ちながらカレーを食べていく中、会話をしながらアイコンタクトを送ってきた勝己と空牙に気付いた出久は、覚悟を決めると母親に声をかけた。
「大事な話があるんだ…!僕、今日『個性』が発現したんだ……!」
「ーーーーーーーーー」カラン
出久の言葉を聞いた瞬間引子は持っていたスプーンを落として固まってしまった。暫く時が止まったかのように固まっていた4人だったが、やがて引子が口を震わせながら声を絞り出した。
「…出久、あなたを『無個性』に産んでしまったことは…本当に申し訳ないと思ってるわ……でも、何も2人が来てる時にそんな嘘をつかなくてもいいじゃない……」
「!?う、嘘じゃないよ「嘘でしょ!?その歳になって『個性』が発現するなんて聞いた事無いわよ!!」嘘じゃない!ほら、見てよ!」
バヂヂヂヂ
「……………え?」
最初は琴線に触れたのか目に涙を溜めながら出久に語りかけ、爆発したかのように泣き叫んだ引子だったが出久が『OFA』を使い緑色の雷を纏うと再び固まった。
「家の中だからこれ以上のことは出来ないけど…!『エネルギー操作』!発現したんだよ!!」
「ーーーーーー」
「おばさん、本当だぜ。俺らこいつがパンチで海割ってるとこしっかり見たからな」
「多分出力がエグいから脳がリミッターかけてたんじゃないかって見てくれてたヒーローも解説してくれてたぜ」
「……………」
「お、お母さん……?」
放心したように固まったままの引子に空牙と勝己も補足を入れたが、引子は涙を流しながら出久を見つめ固まったままだった。
もう一度声をかけるべきかと空牙が動こうとした時、再び引子の口が開いた。
「……本当に、『個性』が発現したの?」
「うん……かなり遅咲きだったけど、しっかり発現したよ」
「……っ!」ガバッ
「うわっ」
「出久……!ごめん、ごめんねぇ……っ!信じてあげられなくて、信じられなくてっ…………!!」
「お母さん……!う゛ん゛っ…大丈夫、気にしてないから……っ!!」
「勝己、席外しとこうぜ」
「わーっとるわ」
勝己と空牙の2人がこっそり席を外した後も、出久と引子はしばらく涙を流しながら抱きしめあっていた。
いい幼なじみを持ち、自分の心配がいらないほど立派に…立派になり過ぎて出久に締め上げられたと言う顔も知らない不良から頭を下げられたりすることもあったが、どうしても心にしこりは残っていた。
『個性』を持って産んであげられていたのならば、もっと出久は楽を出来ただろう、勝己や空牙とももっと仲良くなれただろう、と。
これまで仲良くしてきた3人を見て仲を疑う訳は無いのだが、それでも負い目が素直に現実を見させてくれなかった。
だが、それも今日で終わったのだ。出久は『個性』を手に入れ、ようやく引子はありのままの現実を見られるようになった。
余りの嬉しさに号泣しながら光己と速美に電話をかけ、自分の息子が引子を泣かせたと勘違いした2人によって勝己と空牙が冤罪で制裁を受けることになるのだが、それはまた別の話……
駆藤速美
個性『加速』手元がめちゃくちゃ速く動かせるぞ!
空牙のお母さん!かっちゃんママとは遠い親戚にあたり出久ママを含めた3人でよくお茶会をしているぞ!
『個性』で家事が凄く速く終わるから自分の趣味に時間をかけることが出来るぞ!
勝気な性格で3人の喧嘩で空牙が負けたと知ると次は勝てと豪快に笑い飛ばすぞ!
身長は166cmでモデル体型だ!本人はボリュームを多少気にしているが空牙は親のそんな姿は見たくないと目を逸らしてるぞ!