3年E組の剣豪   作:ファヴキール

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いつもご愛読いただきありがとうございます!

てか2月投稿したの1話だけじゃねぇか!!ってなったので3月は少し頑張ります。

はい。前原回です。今も厨二病に罹患している人間の拙い駄文ですがお付き合い下さいませ…………!!


湿気の時間

 

6月、言わずと知れた雨の季節だ。湿っぽいが俺は特別嫌いでもない。

 

今日も授業を受けている…のだが大きい、普段よりも大きい。

殺せんせーが何故かいつもより大きい。

 

『殺せんせー、33%ほど巨大化した頭部についてご説明を』

 

律による明確な分析を踏まえてからの質問。

 

「ああ、水分を吸ってふやけました。湿度が高いので」

 

「生米みてーだな!」

 

そのうちカビなんて生えたりしないだろうな?

 

「雨粒は全部避けて登校したんですが、湿気ばかりはどうにもなりません」

 

雨粒を全て避けるとかいうパワーワード。こんなの彼にしか出来ないだろう。顔の水分を雑巾のように絞ると、あちこちが雨漏りしているこの校舎のボロさ加減に泣けてくる。

 

「ま、E組のボロ校舎じゃ仕方ねーな。エアコンでベスト湿度の本校舎が羨ましーわ」

 

倉橋が殺せんせーの少し浮いた帽子に気付いたようだ。

 

「先生帽子どうしたの?ちょっと浮いてるよ?」

 

「よく聞いてくれました。先生ついに生えてきたんです」

 

「毛が」

 

「キノコだよ!!」

 

カビが生えるって伏線だったんかい。

頭の上に生えた毛……じゃなかったキノコを取ってムシャムシャと食べる殺せんせー。得体の知れないキノコを食べて大丈夫か?と思ったがまぁ殺せんせーだし大丈夫だろう。前にもボールペンとか食ってたし。

 

「湿気にも恩恵があるものですねぇ、暗くならずに明るくジメジメ過ごしましょう」

 

明るくジメジメというなんだか分からないが、人というのは雰囲気に左右されるように人の心もちょいと湿る。

 

ーーーーー

ーーー

ーー

 

「え、今日は中止ですか!?」

 

「あぁ、行おうにもこの天候だ。体育館は他の部活が使うという特性上使用は不可、悪いが自学研鑽としてくれ」

 

「…分かりました」

 

この雨は止まず今日の訓練は中止となった。俺は家に帰ってから稽古場へ行って剣術の鍛錬をしようと思い、鞄を背負って校舎を出る。

 

「…帰るか」

 

暫く歩いていた時、前を見ると渚、茅野、杉野、岡野が歩いていたので声をかけて一緒に通学路を歩く。

 

「おーい、一緒に帰ろうぜ」

 

「あ、勝田。烏間先生との訓練は?」

 

「雨で中止になった。だから今日は真っ直ぐ帰って、家で3時間素振りしようかと考えてる」

 

「…威武樹君って生まれる時代間違えたんじゃって感じる時、偶にあるよ」

 

「いや間違えてるでしょ…現代社会に生まれる才能じゃ無いって」

 

そんなにか?と首を傾げると杉野と茅野が何やら話している。

 

「なー、上に乗ってるイチゴくれよ」

 

「ダメ!!美味しいものは最後に食べる派なの!!」

 

杉野の冗談混じりの発言にキレる茅野。無いと思うけど、それで取ったらボコボコにされるだろう。いつの時代も食べ物の恨みは恐ろしい。

 

すると前を歩く岡野が他クラスの女子と歩く前原を目撃。

 

「…!ねぇ、あれ」

 

「あ、前原じゃんか」

 

「一緒にいるのは確か…C組の土屋果穂」

 

「はっはー、相変わらずお盛んだね。彼は」

 

「ほうほう、前原君駅前で相合い傘…と」

 

木の陰にいたのはカッパを着て何かのメモを取る殺せんせー。メモ帳には何故か♡が描いてあり、きっと以前俺と桃花との関係を記録したものと同じであるに違いない。

 

「相変わらず生徒のゴシップに目がねーな殺せんせー」

 

それな。俺なんて何度被害に遭ったか分からねぇよ………

 

「ヌルフフフフ、これも先生の務めです」

 

「何が務めだ。殆どプライバシーの侵害だろ」

 

「3学期までに生徒全員の恋バナをノンフィクション小説で出す予定です」

 

なんだそのカプ厨が大歓喜しそうな本は。

 

「第一章は杉野君の神崎さんへの届かぬ思い」

 

「…ぬー…何としても出版前に殺さなければ」

 

「第一章からお前の失恋話とか面白そうじゃん。悲恋のバッドエンド確定で」

 

「俺は面白くねぇんだよ!!」

 

すごい剣幕。

 

 

「因みに第二章は勝田君と矢田さんの幼馴染ならではのラブコメです」

 

うん。斬ろう。何としても卒業までに、この下世話教師を斬り殺そう。

 

「……じゃあ、前原君の章はきっと長くなるね。モテるから、結構しょっちゅう一緒にいる女変わってるし」

 

いつか刺されないか心配になりつつも、前原は確かに成績も良いし、スポーツの出来る男前な奴だ。この学校では落ちぶれたが他校ならきっと今以上にモテる人気者だろうな。

 

と、その時聞こえたのは女子の名を呼ぶ声。生徒会員であり五英傑の1人、瀬尾智也だ。近くには荒木もいるが…?

 

「あれェ?果穂じゃん。何してんだよ」

 

「あっ!!せ、瀬尾君!!」

 

「生徒会の居残りじゃ…」

 

「あー、意外と早く終わってさ。ん?そいつって確か…」

 

「ち、違うの瀬尾君。そーゆーのじゃなくて…たまたま傘が無くてあっちから指して来て…」

 

「今朝持ってたじゃん」

 

「が、学校に忘れて…」

 

前原の元を離れていく土屋。その様子はまるで二股を掛けて先ほどまでの自分を取り繕い、瀬尾に対して言い訳しているように見える。その様子を見て前原も気付いたようで、土屋に対して今までの行動を問い詰める。

 

「あー…そういう事ね。最近あんま電話して出なかったのも、急にチャリ通学から電車通学に変えたのも、で、新カレが忙しいから俺もキープしとこうと?」

 

「果穂お前…!」

 

「ち、違うって!そんなんじゃない!!そんなんじゃ…!」

 

その瞬間俺たちが見たのは先ほどまでと態度を180度変えて醜く変貌する土屋。

 

「あのね、自分が悪いってわかってるの?努力不足で遠いE組に飛ばされた前原君。それに、E組の生徒は椚ヶ丘高校進めないし、遅かれ早かれ私達接点無くなるじゃん」

 

「E組落ちてショックかなと思ってさ。気遣ってハッキリ別れは言わなかったけど、言わずとも気付いて欲しかったなァー。けどE組の頭じゃわかんないか」

 

「はははは」

 

「…お前なぁ、自分のこと棚に上げて…」

 

あまりの理不尽。詰め寄る前原に対して次の瞬間飛んで来たのは瀬尾からの前蹴りだった。

 

「わっかんないかなぁ?同じ高校に行かないって事はさ、俺達お前に何したって後腐れないんだぜ?」

 

「オラ、ちゃんと礼言えよ。果穂に。同じカサに入れてもらったんだからよ」

 

「アイツら…!」

 

「いい、杉野。俺が行く」

 

「「「(((は、速い!?)))」」」

 

周りの荒木や他の連れも一緒になり前原を足蹴にする。止めようと杉野が身を乗り出すが、俺は既に駆け出して連中の前に出た。突如として現れた俺に全員が目を見開く。

 

「お前ら何やってるの」

 

「か、勝田!?」

 

「大丈夫か、前原」

 

「勝田…」

 

「騙して非を被せた挙句、寄ってたかって暴力を振るうか…」

 

「そ、それがどうした!俺達はA組でお前や前原はE組!わからないのか?椚ヶ丘学園では成績が序列!お前らE組は俺ら上位者に発言権は無えんだよ!!」

 

「だがここはお前らが天下の椚ヶ丘学園では無く公共の道だな、そんな場所で椚ヶ丘の制服を着ている奴らが同学校の生徒に対して集団で暴力を振るうなど学校に通報されてみろ、暴力事案発生でお前らもE組に来る羽目になるぞ?」

 

コイツら最早天竜人みたいになってやがる。

 

「……ッ!上等だ!テメェのその生意気な口の利き方が前から気に入らねーんだよ!!」

 

「シュッ…」

 

足を振り上げて俺を蹴ろうとするが、素人の蹴りなど軌道が見えている。こんな物に当たったら一族の恥だ。

俺は避けた矢先に瀬尾の右足を掴み掛かり、膝を破壊しようとする。

誰かを足蹴にするような足は折ろうか。

 

「お前二足歩行辞めとくか」

 

「は、放せっ!(何だコイツの力!?)」

 

瀬尾の足がミチミチと音を立てる。関節を極める一歩手前まで来た時に突然、俺達を制止する声が聞こえた。辺りには俺を引き剥がそうとした荒木達がいる。

 

 

 

「やめなさい」

 

 

 

前に止まっていた黒塗りの高級車。窓が開くとそこにいたのは………俺の兄弟子でもある椚ヶ丘学園理事長、浅野学峯。

 

「「「…!!」」」

 

「りっ…理事長先生!!」

 

「ダメだよ暴力は…人の心を…今日の空模様のように荒ませる」

 

傘もささず歩いて来た理事長の気迫は凄まじいものであり、俺も極めようとした瀬尾の足をいつの間にか離していた。

 

「は、はいっ…」

 

地べたにへたり込む前原に歩み寄り、片岡膝をついてハンカチを手渡す。

 

「これで拭きなさい。酷いことになる前で良かった

 

危うくこの学校にいられなくなる所だったね。君が」

 

ここの"君が"とは前原の事だ。

何故か加害者では無く被害者である前原に向けてのこの発言。何か深い意味がありそうだが、今は気にするところではない。

 

「じゃあ皆さん足元に気をつけて。さようなら」

 

「は、はい!!さようなら!!」

 

「…さようなら」

 

別れの挨拶をした後、車に乗り込んで去っていく理事長。

 

「理事長先生に免じて許してやるよ」

 

「感謝しろよ」

 

今にも殴り掛かりたくなるが、桃花との約束があるのでここは抑える。

 

「…嫉妬して突っかかってくるなんて、そんな心が醜い人だと思わなかった。二度と視線も合わせないでね」

 

どの口が言ってやがる。このアマ…

 

「「「「ははははは!」」」」

 

奴らを呆れながらも遠目に見、前原に手を差し伸べると、杉野達4人が駆け寄ってくる。

 

「大丈夫か?前原」

 

「あぁ、さんきゅな。勝田…」

 

「前原!!へーきか!?」

 

「…おまえら、見てたんかい」

 

「上手いよなあの理事長。事を荒立てず、かといって差別も無くさず、絶妙に生徒を支配してる」

 

「そんな事よりあの女だろ!!とんでもねービッチだな!!」

 

連中の言動に憤りながらも前原に傘をさしてあげる杉野は本当に優しくて良い奴だ。

だがすぐに冷静になり、うちにもビッチがいると言う。

 

「いやまぁ…ビッチならうちのクラスにもいるんだけどさ」

 

「違うよ」

 

すぐにそれを否定したのは渚。

 

「ビッチ先生は職業としてのプロだから…ビッチする意味も場所も知ってるけど、彼女はそんな高尚なビッチじゃない」

 

高尚なビッチとかいう聞いた事のない言葉。

 

「…いや、別にビッチでもいいんだよ」

 

「いいの!?」

 

いや良くないだろ。そんな尻軽の女郎。

 

「好きなやつなんて変わるもんだしさ、気持ちが冷めたら振りゃいい。俺だってそうしてる」

 

「まだ中3なのにどんだけ達観してんのよ…」

 

呆れながらも前原にタオルを手渡してあげる岡野。

 

「けどよ…さっきの彼女見たろ?一瞬だけ罪悪感で言い訳モードに入ってたけど、その後ですぐに攻撃モードに切り替わった。

「そーいやコイツ、E組だった」

「だったら何言おうが、何しようが私が正義だ」ってさ。あとはもう逆ギレと正当化のオンパレード。醜いとか恥ずかしげも無く撒き散らして」

 

「…なんかさ、悲しいし恐えよ。ヒトって皆ああなのかな…相手が弱いと見たら…我が身可愛さに俺もああいう事しちゃうのかな…」

 

前原はかなり堪えたようであり、目に涙を浮かべている。そしてこの時、この場の誰もが思った。「もし自分がE組じゃなかったら、E組にどう接していただろう」と。

 

だが今はそれをじっくり考える時ではない。今の俺が前原にしてやれることは心の傷を少しでも和らげてやれる励ましだ。

 

「…少なくともだ」

 

「…?」

 

「少なくとも俺は、そうやって考える事の出来る前原を相手が下の立場というだけで見下していじめる様な奴だとは思わないけどな」

 

「勝田…へへっ、ありがとな!やっぱお前っていい奴だわ!」

 

少しばかり明るい良い表情になり、俺に肩を組んでくる。

 

「兎に角今は身体ふけ。風邪引くぞ」

 

 

 

 

「ねぇ茅野っち、やっぱり勝田って」

 

「うん。辛い時に痛みを和らげてくれるバファリン系男子だね」

 

 

俺って実はそう呼ばれてるのか。なんて思いながら、ふと目を横にやると殺せんせーがとんでもなく膨らんでいた。怒りなのか血管?のような物を浮かべながら。

 

 

「うわっ!?」

 

「殺せんせー膨らんでる!膨らんでるって!!」

 

「どうした殺せんせー!?」

 

「仕返しです。理不尽な屈辱を受けたのです。力無きものは泣き寝入りをする所ですが…君達には力がある。気づかれず証拠も残さず標的(ターゲット)を仕留める暗殺者(アサシン)の力が」

 

「……ははっ、何企んでんだよ殺せんせー」

 

「屈辱には屈辱を。彼女達をとびっきり恥ずかしい目に遭わせてあげましょう」

 

雑巾のように顔の水分を絞り、目を光らせて口角を上げる。この場にいるほぼ全員が同じように妖しく光る悪い目をしていらぁ。

 

勿論、俺もである。やはりハンムラビ法典しか勝たん。

 

 

 

こうして殺せんせー主導で俺達の復讐劇が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

ーーー

ーー

 

「ねぇ勝田」

 

「どうした岡野」

 

「あんた瀬尾と喧嘩しかけてなかった?」

 

「え」

 

「矢田っちと約束したんじゃなかったっけ?もう喧嘩しないって」

 

「いやあれは…前原を助けるために仕方なく」

 

「下手したらアイツの足折ってたじゃん」

 

「そうでもしないと更に被害が…」

 

「格闘技やってない奴の蹴りなんてたかが知れてるでしょ」

 

「……今回は前原助けた事に免じてくれ。結果的には喧嘩しなかったんだ」

 

「………理事長来たからだけど…わかった。矢田っちには内緒にしとく」

 

「何卒ご内密に」

 





ご覧いただきありがとうございました!感想、評価等大変励みになります。

思えばE組って緩い版アサシンギルドですよね。3-EL……

次回はオリジナル回の予定です。ではまた!!
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