3年E組の剣豪   作:ファヴキール

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今回から原作に入っていきます。

第一話って文字にするとこんな長かったんですね、まぁジャンプ漫画の新連載第一話ってのはどれも長めではありますが。

「「「「「メタいよ!」」」」」


本編
暗殺の時間


 

ーーーーー

 

僕の名前は潮田渚。椚ヶ丘中学校に通う3年E組の生徒兼殺し屋だ。

 

もう一度言う。僕らは 『殺し屋』。

 

「HRを始めます。日直の方は号令を。」

 

「起立!」

 

「気をつけ!!」

 

「れーーーーーい!!!!」

 

その瞬間クラス全員が目の前の担任…もとい黄色い超生物にエアガンを発砲する。しかしその弾はどれもあたることなく先生は全てかわしながら出欠をとる。

 

「おはようございます。発砲したままで結構ですので出欠を取ります。磯貝くん。」

 

「…」

 

「すみませんが銃声で聞こえないのでもっと大きな声で。」

 

「はい!!」

 

「岡野さん」

 

「はい!!」

 

 

「片岡さん」

 

「はい!!」

 

「勝田くん」

 

「はい!!」

 

 

◇威武樹視点ー

 

「遅刻なし…素晴らしい!先生とても嬉しいです!」

 

どうやら出欠は全員分取り終わったようだが、俺含め全員、今日も一発も当たらなかった。散らばったBB弾をみんなで片付ける。

 

「残念ですねぇ、今日も命中ゼロです。目線、銃口、指の動き、一人一人が単純すぎます。もっと工夫しましょう。そうでないと最高時速マッハ20の先生は殺せないですよ。」

 

「本当に全部避けてんのかよ先生!どう見てもこれただのBB弾だろ?当たってるのに本当は我慢してるんじゃねーの!?」

 

「「「「そうだそうだ!」」」」

 

前原が皆が思っていそうなことを口にする。確かにそうだな、こんなもの本当は当たっているのを痩せ我慢しているのかもしれない。

 

「では弾をこめて渡しなさい。」

 

そういうと先生は岡野が弾を入れた銃を受け取る。

 

次の瞬間『パン!』という音を鳴らして自分の右触手を自分で撃ち、破壊された触手がまるで打ち上げられた魚の様に床で跳ねていた。この弾は有効であることが改めて確認出来たとはいえ流石に少しショッキングな光景だ…近くにいた片岡や前原も顔が引き攣っているし。

 

 

「これは国が開発した対先生特殊弾です。先生の細胞を豆腐の様に破壊出来る。ああ、勿論数秒あれば再生しますがね。だが君たちも目に入ると危ない。先生を殺す以外での目的で屋内での発砲はしないように。」 

 

「殺せると良いですねぇ。卒業までに。」

 

そういうと先生は顔に緑の縞模様を浮かべた。どうやらこれはこっちを舐めている表情らしい。

 

ーーーーーーー

 

3月某日。月が七割型蒸発してこれから先の未来、三日月しか見えなくなるというニュースが流れた。

 

「初めまして。私が月を爆った張本人です。来年には地球も爆る予定です。皆さんの担任になるのでどうぞよろしく。」

 

「「「(((まず5、6ヶ所ツッコませろ!!)))」」」

 

クラス全員の思考が一致した瞬間である。

 

黒いスーツ姿の若い男性が口を開く。何処かで会ったことがあるような気がする男性だ。

 

「防衛省の烏間という者だ。単刀直入に言う!この生物を君たちに殺して欲しい!!」

 

全員が呆然とした中で三村が言った。

 

「…え、何スか?そいつ攻めてきた宇宙人かなんかですか?」

 

「失礼な!生まれも育ちも地球ですよ!」

 

どうやら地球生まれらしく三村の意見を否定していた。でも確かに宇宙人ってタコみたいな姿でよく描かれるよな。火星人とか特に。

 

「じゃあ…海洋生物の新種ですか?」

 

「違いますよ!私、陸生まれですから!」

 

俺も気になったので聞いてみたらこれも違うらしい。だって一見すると黄色いタコじゃん、進化した軟体動物かと思うじゃん。

 

そして烏間さんはこの生物を秘密裏に殺すーつまり暗殺をしようと各国が努力しているが兎に角早く、上手くいかないことを眉毛を手入れされながら説明してくれた。この時点でも疑問や謎が山程あるが、次の一言でそれらは全てかき消された。

 

「成功報酬は100億円!」

 

「「「「「「「「「「¥!?」」」」」」」」」」

 

クラス全員があまりの金額の多さに驚愕する。

 

「当然の額だ。暗殺の成功は冗談抜きで地球を救う事なのだから」

 

「幸いなことにコイツは君達をナメきっている。見ろ、緑のシマシマになった時はナメている顔だ。」

 

「「「(((どんな皮膚だよ!?)))」」」

 

またもやクラス全員の思考が一致した。

 

「当然でしょう。国が殺れない私を君たちが殺れるわけがない。」

 

「この前最新鋭の戦闘機に襲われた時も…逆にワックスがけしてやりましたよ。」

 

「「「(((だから何故手入れする!?)))」」」

 

3度目の一致、このクラスやっぱ一体感あるよなぁ。

 

「その隙を君達について欲しい。君たちには無害でコイツには有効な弾とナイフを支給する。君たちの家族や友人には絶対に秘密だ。地球が消えれば逃げる場所などどこにも無い!」

 

「そういうことです。さぁ皆さん。残された一年を有意義に過ごしましょう!」

 

ーーーーーーー

 

〜昼休み〜

 

キーン コーン カーン コーン とチャイムが鳴った。

 

「昼休みですね。先生ちょっと中国の四川省まで麻婆豆腐食べに行ってきます。暗殺希望者は電話で連絡してください。」

 

そう言って先生はひとっ飛びで中国まで飛んで行った。

 

「マッハ20だから…えっと…」

 

「麻婆の本場四川省まで10分くらい。」

 

「確かにあんなもんミサイルでも落とせんわな。」

 

磯貝、原、前原の3人がこんなことを話している。最高速度だと巡航ミサイルでも撃墜出来ない生物を俺らは殺そうとしているのか、そう考えると益々殺せる気がしない。

 

「しかもあのタコ飛行中に採点してやがんだぜ。」

 

「マジ!?」

 

「うん。俺なんかイラスト付きで褒められた。」

 

「てかアイツ教えるの何気に上手くない?」

 

「わかるー私放課後に暗殺行ったときついでに数学教わってさぁ、次のテスト良かったもん。」

 

倉橋はどうやら暗殺そっちのけで勉強を教えてもらっていたようだ。

 

「…ま、でもさ俺ら所詮E組だしな。」

 

「頑張っても仕方ないけど。」

 

ーーーーーーーそう。以前にも話したが俺たちE組はこの名門進学校、椚ヶ丘学園中学校で落ちこぼれや問題児の烙印を押されたクラスだ。全てにおいて下の扱いを受ける。当然ながら部活動や校内活動にも参加することは出来ないし、学食も利用することは不可。何なら中高一貫なのにA〜D組はエスカレーター方式でそのまま上がれるがE組生徒のみ内部進学は無し、おまけに本校舎の生徒や教師からはまるでゴミを見る目で見られ、毎日の如くクズの様な扱いを受ける始末だ。

 

 

「…みんな俺と一緒か。」

 

 

そう呟いて俺も昼飯のおにぎりを食べているとE組No.1の可愛い系男子、潮田渚きゅんに空き地の土管の上で歌ってそうなガキ大将系男子、寺坂竜馬とそのマブダチである吉田大成と村松拓也が何やら絡んでいる様だった。台詞からしてカツアゲやイジメ等ではなく何やら暗殺の計画を進める様であったが、この3人の雰囲気と渚の雰囲気からしてそれらをしそうな感が凄い。

 

 

◇渚視点ー

 

昼休み、僕は寺坂君達に呼び出された。表情の観察をしていたことを説明していたがそれよりも、時間的に油断しているところの隙を突いてナイフで刺せということらしい。

 

「落ちこぼれの俺らが社会に出たって、この先100億稼ぐチャンスなんてこの先一生回ってこねぇぞ?殺るんだよ、例え…どんな手を使ってもな。」

 

そう言って寺坂君は僕に何かが入った小さな袋を渡してきた。おそらく形状からして手榴弾の模型なんだろう、おそらく改造してある。至近距離からナイフで刺すのではなく、これを体に巻きつけて特攻しろ、という事だとわかった。

 

「しくじんなよ渚く〜ん。」

 

「ギャハハハハ。」

 

そう言って寺坂君達は去っていった。

その時、僕はあることを思い出していた。成績が落ちてE組に落ちたこと。その事で実のお母さんに罵詈雑言を浴びせられたこと。交友関係のあった殆どの同級生に連絡先を削除されたこと。当時の担任に呼び出され、上からの評価が下がり「唯一良かったのはもうお前の面倒を見なくて済む事だ。」と言われたこと。兎に角、嫌なことばかり思い出していた。

 

そんなことを考えていると何かを持った先生が帰ってきた。

 

「うわっ!おかえり先生…どうしたの、そのミサイル。」

 

「お土産です。日本海で自衛隊に待ち伏せされていまして。」

 

「大変ですね、標的だと。」

 

「いえいえ、みんなから狙われるのはー力を持つものの証ですから。さ、5時間目を始めますよ!」

 

「…はい。」

 

先生にはわからないよね。期待も見向きもされず、親にも教師にも失望されて、誰からも見限られた僕の気持ちなんて。

 

でもこの瞬間僕はこう思った。『殺れるかもしれない。』だって、この怪物にも僕の姿は見えてないから。

 

 

◇威武樹視点ー

 

5時間目、国語の古典なのだが丁度昼飯後で眠くなってくるタイミングだ。

 

「お題に沿って短歌を作ってみましょう。ラスト七文字を『触手なりけり』で締めて下さい。書けた人は先生のところに持って来なさい。出来た人から今日は帰ってよし!」

 

「触手って季語?」

 

「さぁ…」

 

速水と岡島がこんな話をしているが確かにそう思う。仮に季語だとしても春夏秋冬どれだよ!

 

「先生しつもーん。」

 

「はい、何ですか茅野さん。」

 

「今更だけど先生って名前なんて言うの?先生だけじゃ呼び分け出来なくて不便だよ。」

 

「名前…名乗るような名はないですねえ。皆さんでつけてください。今は課題に集中ですよ。」

 

「はーい。」

 

俺も課題に取り掛かる。〜触手なりけり〜か…

「桜咲き ちと離れるは 旧校舎 教壇立つは 触手なりけり」

勝田威武樹

 

よし、これで行こう。字余りしている気がするがそこはより良く先生と一緒に手入れしよう。おそらく某格付け番組の様なダメ出しは喰らわない筈だ。席を立ち、前まで提出しようと思うと渚も立ち上がった。席が渚の方が前にいるので必然的に順番も渚が前になる。

 

「おや、もう出来ましたか渚君。勝田君も。」

 

 

◇渚視点ー

 

札にナイフを隠しながら僕は先生に近づいた。当然白紙のまま。

昼飯の後で僕らが眠くなる頃に先生の顔が薄いピンク色になる時がある。

茅野の先生への質問も少し遅れた。多分先生も油断しているんだろう。

 

この進学校で落ちこぼれた僕らは思う。「どこかで見返さなきゃ"やれば出来る"と親や友達や先生達を」"殺れば出来る"と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

認めさせなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どんな手を使っても。

 

 

 

 

僕は逆手でナイフを持ち先生に突き立てようとしたがそれが先生に喰らいつく事はなかった。なぜなら触手で止められたからだ。

 

 

 

「言ったでしょう。もっと工夫を…」

 

先生が言い終わる前に僕は先生に抱きついた。ごく自然に、笑顔で。

胸には紐で掛けてある手榴弾がある。

 

「(もらった!!)」

 

僕が先生に抱きついた瞬間、寺坂君が起爆スイッチを押した。

 

「ヤベェ!渚っ!!」

 

威武樹君がこちらに駆け寄ってきた。この距離だと巻き込んでしまうかもしれない、威武樹君に悪いなぁ………

 

◇威武樹視点

 

渚が先生に近づいた瞬間のナイフを突き立てる様を見て驚愕した。極限まで殺気を消したあの動きに俺は唖然としたが、先生に抱きついた時に渚が首に何かを掛けているのを見た。何かは分からなかったが、寺坂が立ち上がりスイッチの様なものを押した為に、物は不明だがそれが渚にとって良くないものであることはわかった。

 

 

「ヤベェ!渚っ!!」

 

 

 

渚が、仲の良い友達が危ない目に遭う。俺は体が勝手に動き、渚を爆破から庇おうと2人の合間に割って入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         \\バァァァン!!//

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間押されたスイッチが反応し、教室に閃光と轟音が鳴り響いた。

 

爆風が止んだ数秒後に寺坂、村松、吉田の3人が喜びながらこちらへ駆け寄ってきた。

 

「ッしゃあやったぜ!!百億いただきィ!!」

 

「ザマァ!まさかコイツも自爆テロまで予想してなかったろ!!」

 

「ま、勝田の野郎が巻き込まれるのは予想外だったけどな。」

 

「コイツ多分平気だろ!何しろ大剣豪の子孫なんだからよ!」

 

「寺坂それ理由になって無ぇよ!ギャハハ!」

 

「ちょっと寺坂!渚に何持たせたのよ!?近くにいた勝田まで巻き込まれてるし!」

 

 

茅野が怒りの表情を見せながら寺坂に問う。

 

 

「アァ?おもちゃの手榴弾だよ。ただし、火薬を使って威力を上げてる。300発の対先生弾がすげぇ速さで飛び散るように。」

 

 

「な…!」

 

 

「人間が死ぬ威力じゃねぇよ。俺の百億で渚の治療費、慰謝料、ついでに爆発に巻き込まれた勝田の分も纏めて払ってやらァ。」

 

 

寺坂の奴は自分のしたことを特に悪びれもせずそう言った。コイツ…自分達は危険を被らず渚にそんな危ない事させやがって…

 

 

「威武樹!?大丈夫なの!?ねぇ威武樹!?」

 

 

桃花が俺の名前を呼んでる、ごめんな。また危ないことしてお前を心配させてしまって…………………

 

 

 

 

 

 

 

…………………………あれ?至近距離で巻き込まれたのに熱くも痛くも無い…?恐る恐る目を開けて見れば渚もだ。

 

 

 

「う…」

 

 

俺のすぐ目の前で同じ様に横たわってはいるがおそらくは無傷だろう。

 

 

「(ん?無傷…2人とも火傷一つ負ってないのか?それになんだ、渚と勝田をおおうこの膜。タコの死体に繋がって…)」

 

「おい渚、大丈夫か?」

 

俺はそう言って立ち上がり、渚に右手を差し伸ばす。

 

「う、うん、威武樹君ありがとう。」

 

手を取って立ち上がった渚と共にふと意識を天井にやると、そこには先生が張り付いていた。

 

 

「先生は月に一度ほど脱皮をします。脱いだ皮を爆弾に被せて威力を殺した。つまりは月一で使える奥の手です。」

 

 

先生の顔色は見るまでもなく真っ黒。

 

 

ド怒りだ。

 

 

その表情を見て俺も身の毛がよだち、全身の血の気が引いた。

 

 

「寺坂、村松、吉田、首謀者は君達だな…?」

 

「えっ、いや…渚が勝手にっ」

 

「おいおいそりゃ無理だろ。」

 

成功したと思い3人で喜んでたんだ、流石に言い訳しようにも出来ないよな。刹那、先生は物凄いスピードで教室を出て、物凄いスピードで帰ってきた。

 

 

 

クラス全員の自宅の表札を持って。

 

 

 

「政府との契約ですから。先生は決して君達に危害は加えないが、次また同じ方法で暗殺しようとしてきたら、"君達以外には''何をするかわかりませんよ。家族や友人、いや…君達以外を地球ごと消しますかねぇ。」

 

クラス全員が五秒で悟った。地球の裏でも、何処に行っても逃げられないと。助かるためにはーーーーこの先生を殺すしか!!

 

 

 

すると恐怖で腰の抜けた寺坂が半泣きになりながらこう言ってきた。

 

「なっ…何なんだよテメェ…迷惑なんだよォ!!いきなり来て地球爆破とか暗殺しろとか…迷惑な奴に迷惑な殺し方して何が悪いんだよォ!?」

 

「そんなもん、渚を自爆テロの犠牲にしたことだろうが。」

 

寺坂の言い分も分かる。急によく分からない担任の生き物を殺せだとか国から言われると、ただでさえE組で差別されて嫌になっているのに余計ストレスも溜まるだろう。確かに中学3年生には重すぎる命令だ。

 

 

 

だが自分では無い誰か、渚を危険な目に遭わせたことが何よりも気に食わない。俺は正論を述べて寺坂の言い分を斬り捨てた。

 

 

「迷惑?とんでもない。君達のアイディア自体はすごく良かった。特に渚君、肉薄するまでの君の自然な体運びは百点です。先生は見事に隙を突かれました。」

 

先生は一瞬でいつもの表情に戻り、顔に○を浮かべてこう言った。

 

「…!!」

 

先生は渚の頭を撫で、撫でられた渚はどこか嬉しそうだった。

 

「ただし!寺坂君達は渚君を、渚君は自分を大切にしなかった。そんな生徒に暗殺をする資格はありません!」

 

今度はそう言って顔に×を浮かべた。

 

「…!!」

 

寺坂は何も言い返せず項垂れた。

 

「そして勝田君、君は間違いなく自分も爆発に巻き込まれると分かっていながら渚君を助けようと動いた。君の勇猛果敢さは賞賛に値します!が、今後あまり危ない事はしないように。どうか勇敢と無謀を履き違えないで下さい。」

 

褒められた。嬉しかった。だが危ない事をしたという点では、俺も渚と一緒で自分を大切にしなかったんだろうな。

 

 

「人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう。君達全員それが出来る力を秘めた有能な暗殺者だ。ターゲットである先生からのアドバイスです。」

 

◇渚視点

 

マッハ20で怒られて、うねる触手で褒められた。異常な教育が僕は普通に嬉しかった。この異常な先生は…僕等の事を正面から見てくれたから。

 

「…さて問題です渚君。先生は殺される気など微塵もない。皆さんと3月までエンジョイしてから地球を爆破です。それが嫌なら君達はどうしますか?」

 

当然だが暗殺なんてしたことないし、僕等は他にすべきことが沢山ある…けど思った。

 

この先生なら…殺意さえも受け止めてくれるって。

 

「…その前に先生を殺します。」

 

僕は不敵な笑みを浮かべながら返した。先生への宣戦布告のつもりで。

 

「ならば今殺ってみなさい。殺せたものから今日は帰って良し!!!」

 

僕等は殺し屋。先生は標的。

 

「殺せない…先生…あっ、名前『殺せんせー』は?」

 

「良いですねぇ、呼びやすさも親しみやすさもあるのでそれにしましょう。」

 

茅野が先生の名を思いついた。確かに呼びやすくていいかもしれない。

 

殺せんせーと僕らの暗殺教室。始業のベルは明日も鳴る。

 

「(今撃っても表札と一緒に手入れされるわ。)」

 

「(帰れねえ…)」

 

「(誰が帰れるんだよこんなもん!)」

 

ーーーーーーー

 

◇威武樹視点

 

さて、流石に終業のベル鳴ったし皆帰るよな。俺も烏間さんに聞きたいことがあるし聞きに行こうと思っていたらいなかったので明日にしよう。

今日は稽古する気もないし、帰ってもなぁ…殺せんせーが教室に戻ってきて、その後で渚が俺に声を掛けてきた。おそらく5時間目のことだろう。

 

「おや勝田君、まだ残っていたんですか?」

 

「ちょっと烏間さんに尋ねたいことがあって、まぁいなかったんですけど。」

 

「威武樹君!」

 

「ん?どうした渚?」

 

「威武樹君、さっきは本当にありがとう。爆発から僕の事を助けてくれようとしてくれたんだよね。」

 

「あぁ気にするな、それよりも俺はお前に自爆特攻させたあの3人のバカ共の事が気に入らないんだがよ。」

 

「まぁ殺せんせーの脱皮のおかげで僕も威武樹君も無事だったし、もうその事は気にしなくていいよ。」

 

「お互い5体満足で良かったな。」

 

「本当だよ!!」

 

「「「?」」」

 

「渚君を助ける為とはいえ威武樹があんな危ない事するなんて…無事だったから良かったけど、本当に心配したんだからね!」

 

そう言って俺に駆け寄って怒ってきたのは桃花だった。

 

「あの時の桃花ちゃん、本当に威武りんの事心配してたんだよ?」

 

桃花の横には倉橋もいた。成る程、迷惑かけてしまったな…

 

「いや…ごめん。渚を助けなきゃって思ったら、頭で考えるより先に身体が勝手に動いてて…」

 

「そんなトップヒーローが学生時から名を残している時の話で片付けられないよ!」

 

"君はヒーローになれる。''とか言ってくれよ、前は俺に''私のヒーロー''とか言ってくれたくせに。なんて思ってるといつの間にか桃花が涙目になっていた。

 

「わー!泣くなって!!…わかったよ…心配かけて悪かったな。」

 

俺は女の涙に弱い、特に桃花の。否、最早桃花に弱い。

ここで不思議がっていた渚が口を開いた。

 

「口挟むようで悪いけど、威武樹君と矢田さんってどういう関係?」

 

「俺と桃花は幼馴染なんだよ。しかもお互い生まれて以来の。」

 

「私達、幼馴染だけど幼稚園小学校中学校と全部一緒なんだ!しかも家も近所だし、ここまで同じだと何だかすごくない?」

 

「私は知ってたよ、前に桃花ちゃんから聞いたんだ〜」

 

「ヌルフフフフフ。成る程成る程、勝田君と矢田さんは幼馴染で二人の仲はとても良いっと…」メモメモ

 

このタコがピンク色になって何やらメモを書いているのが気になるが今は考えないことにした。

 

「それより渚、今夜良かったら一緒に晩飯食いに行くか?」

 

「いいの?今日は僕も何も用事無いし、お言葉に甘えてご一緒していい?」

 

「じゃあ行くか!今夜6時に椚ヶ丘駅で待ち合わせな。」

 

渚と飯を食いに行くのは初めてだし純粋に楽しみだ。新しい友達が出来る時は幾つになっても嬉しいものだな。

 

「ねぇ威武樹。」

 

「どうしたよ桃花?」

 

「私達も行っていい?」

 

「今日は俺と渚が男同士で飯を食うんだ。」

 

「僕は別にいいよ?」

 

「だから今日はちょっと」

 

言い終わる前に桃花は急に俺に身を寄せてきた。

 

ムニュ

 

当たってる!!当たってるって!!

 

潤わせた目を上目遣いにし、俺に近づいてきてこう言った。

 

「一緒に行きたいなぁ…?」

 

ヴッッッッッ!!!!!!!

 

あまりの威力に心臓が破裂しそうだった。

 

いや吐血しかけた。

 

マジで危なかった。

 

 

だってめっちゃ桃花の顔近いもん!!!!

桃花の胸についてる大きくて柔らかい二つの突起物は完全に俺の体に当たってるって!!!!!!!

 

 

倉橋は両手で口塞いで「キャー♡」なんて黄色い声上げてるし!

 

渚は年相応に顔赤らめてこっちから目を逸らしてるし!

 

殺せんせーは…

 

「『剣豪男子中学生、涙目でお願いしてくる幼馴染の女子中学生に萌え死!』これは先生、新任早々過去類を見ない程の傑作が書けます!!」

 

とか言って何処からか出した原稿用紙に、万年筆で一心不乱に何かを書いていた。

今日だけで殺せんせーに怖いとか色々と思い、まだまだ謎も多いがどうやらこの先生は相当なゲスだ。

しかもこういう話が大好きな!!

 

「死ね!このゲス担任!」

 

ポケットに入れていたエアガンを一発撃つがやはり当たらない。

 

「ねぇ威武樹、一緒に行こ…?」

 

桃花は桃花でまだ俺から離れる気配が無いし!!

 

ヤバい!ヤバい!!ヤバい!!!

 

俺の脳内でずっと警報音が鳴っている!!!!

 

流石にいい加減離れてもらわないとゴリゴリの男子中学生の俺は確実に理性が飛ぶ!!!!

 

桃花の両肩を掴んで必死でこう叫ぶ。

 

「わかったわかった!!桃花も倉橋も来ていいから!!」

 

そう言うと桃花は漸く俺から離れてくれた。本当に危なかった……

 

「じゃあ心配かけたし、今日は威武樹の奢りね!」

 

「またかよ!」

 

「やった!威武りんありがと〜♪」

 

 

きっと女子2人分はデザートも奢らされる事決定だ。さようなら、今週貰ったばかりの俺の小遣い今月分。

 

「やれやれだぜ…因みにちゃんと渚の分も奢るからな。」

 

「あ、ありがとう。威武樹君も大変だね…」

 

「でも桃花は弟想いで優しくて頑張り屋さんだし、俺のことだってよく気にかけてくれるし、俺には勿体無いくらいの幼馴染なんだよな。ハハっ!」

 

意識せずにこんな事を言ってしまった。

 

「………/////」

 

「桃花ちゃん?顔真っ赤だよ?」

 

「えっ!?そ、そんな事ないよ!?行こ陽菜ちゃん!」

 

「「さようなら殺せんせー。」」

 

「えぇ、さようなら。」

 

そう言って桃花は足早に、倉橋と一緒に帰った。耳がやけに赤かったな…

 

「俺らも帰るか?渚。」

 

「そうだね。せっかくだし威武樹君と色んなこと話してみたいなぁ。昔の話とか…趣味の話とか?」

 

「じゃあ俺の昔の話をしてやる。俺が生まれたのは約15年前の10月4日だった。3203グラムの元気な赤ん坊で…」

 

「誰も生い立ちから話してって言ってないよ!?」

 

「色々話してみたいっていったの渚だろ?」

 

「そこから話すって普通思わないよ!!」

 

「ごめんごめん、ちょっとやってみたくてさ。」

 

こんなやり取りをしながら教室を出る。やはり渚のツッコミはキレがあって面白い。

 

「「殺せんせーさようなら。」」

 

「さようなら。渚君、勝田君。」

 

「じゃ、俺の母方の家系の話でもする?父方は剣豪だけど、母方は実は忍者でさ…」

 

「えっ、凄く聞いてみたい!!」

 

渚はまるで目を星のように輝かせて興味津々に聞いてくる、幾つになっても、男の心にあるのはやっぱり少年心なんだよな。渚も渚で見た目通りに可愛い奴だ。

 

 

 

ん?思えば俺って少年の憧れ2つの家系なんだな。その辺は俺って男の子として幸せに恵まれてたりする?

 

 

 

 

 

 

 

「…(あぐり、貴女の生徒は青春を謳歌していますよ。)」

 

 

 

 

 

話をしながらその後渚と別れ、夕方6時に駅で全員で待ち合わせたのだが何故か殺せんせーまで来ていた。しかも違和感のある変装で。その巨体は流石に人間にしてはデカ過ぎんだよ。

 

「…誰か殺せんせー呼んだ?」

 

「誰も呼んでないよね?」

 

「うん。少なくとも私は…」

 

「僕も呼んでないなぁ…」

 

「そういう事だし、殺せんせーは呼んでないから帰ってよ。」

 

「にゅやっ!?勝田君酷い!あの時教室にいた5人で何で先生だけ仲間外れなんて!アレですか!?新学期早々、先生イビリですか!?」

 

「人聞き悪いな!大体、誘っても無いのに何で来るんだよ!」

 

「良いじゃないですか!先生、一度生徒とご飯一緒に食べてみたかったんですよ!」

 

「まぁまぁ、親交深めるって意味でも良いんじゃないかな?殺せんせーの事も知れそうなこと多そうだし。」

 

渚がこんな事を言ってきた。まぁ言われてみれば確かにそうか。殺せんせーは全てにおいて不明な点が多い為、会話していく中でそのベールを少し剥がすことに繋がるかもしれない。

 

「じゃあ良いけど、俺は先生の分は奢らないよ?」

 

「…はい勿論です!生徒に晩御飯を奢ってもらうなんて生徒の面目丸潰れですから!」

 

「「「「(凄く奢ってもらえる事期待してそうだったけど!!)」」」」

 

そんな訳で無事、3人分の夕飯とデザートを奢らされました。

 

お財布は無事、すっからかんになりましたとさ☆

 

 

「寂しくなったなぁ、俺の財布…」

 

 

 

俺は腹を満たせて満足そうな3人の後ろで1人項垂れましたとさ…

 

 

 

「「「「めでたしめでたし。」」」」

 

 

 

「めでたく無い!!」




ご覧いただきありがとうございます!

書いてて思ったんですがめっちゃ長いな…

ヒロインの矢田桃花ちゃんがしっかりヒロインムーブしてます。書いてる時は自分でも「これでOKかな?」なんて思いながら書いてました。今の今までずっと読み専だったのでわからなかったですが、一話書くというのは相当に時間がかかるもんなんですね。

今更ですがこれまで執筆された方々、そして現在執筆されている書いている全ての方々に敬意を表します。

次回、威武樹が遂にある物を入手します。そう、日本人ならみんな大好きなあの武器です。威武樹の最も得意とする、あの武器です。

威武樹の家族紹介

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