ショタと遊びたい。
(合法的かつ健全に)オトコのコと遊びたい!
そう思った同志諸君、カードゲームをやれ。
「え……誰だ、こいつ?」
ある日のことだ。
アタシの目の前には、容姿端麗な女の子がいた。
そいつは鏡に映っていて、あまりにもアタシらしくなかった。
だけど、そんなモンがモテる秘訣にならないくらいには、美貌ってのが没個性的だ。
もうひと押しの、美貌や身だしなみ以外の魅力が必要になっちまう。
……「カードゲーマーらしさ」だ。
カードゲームは頭を使う。
たとえ負けても努力を惜しまない根性も必要だ。
対面した対戦相手への礼儀作法やコミュニケーション能力も要求される。
つまり、人間力が磨かれるゲームだ。
そいつが発揮されることは、カードゲームを遊ぶ間だけに限らない。
誰もが身だしなみやテーブルマナーを気にしちゃいるように、カードゲーマーであれば、さらに「誰かと共に楽しむ」という心のイケメン
ようするに。
カードゲームが
カードの遊び方がダサい、もしくは「おもしろくない」というのは減点モノだ。
対戦相手を退屈させる「つまらない」という印象に繋がってしまう。
なのでモテないと自覚すれば自覚するほど、その表情は暗くなって然るべきなのさ。
昔のアタシなんか、特にそのはずだったんだ。
だった、んだが……。
そのはずだから、だろうな。
アタシは、自分を地味だと
そう、地味のハズなのに、日に日に妙な自信と違和感が湧いていた。
鏡の前の自分は地味だったはずなのに、やけに鏡の中の自分は自信たっぷりだった。
自分が思う自分よりも、どんどんと鏡の中の自分が別人みたいに変わっていく。
自分に魅力を感じないはずなのに、女としての魅力が高まっていく。
いや、女の魅力が高まっていると認識できてしまっていた。
それはありえないと、心のどこかで思ってはいるのに。
カードゲーマーとしての魅力のほうが恋愛の大部分を占める社会で、性別を意識した魅力ばかりを高めても意味がないのに。
化粧に意味があると思える自分が不思議だった。
それなのに飽きもせず身だしなみを整えていたときに、ふと思った。
「このアタシって、アタシなのか?」
そう疑って、……くらり、と視界が揺らいだ。
ぐるり、と世界が回った。ばたんと倒れた時には、アタシは自分を思い出した。
なぜアタシは、意味がないと思えた自分磨きを繰り返せたのか?
簡単な答えだった。
カードゲームが恋愛と関係ない世界。
そんな異世界で生きたカードゲーマーが、アタシの前世だったから。
ただし、前世での性別は「男」だったけどな。
その男の感性はアタシからすれば独特なもので、カードゲーマーでなくとも女は輝ける、いや男を色気で堕とせるのだという、異世界の常識ありきのもんだった。
アタシには、男としての前世がある。
つまり、
これは強みだ。
この世界のどんな女も持たない、アタシだけの。
そうだと自覚してからが楽しかったさ。
その日から、より自分を磨いた。
自分が女だったらこうする。
自分が女になれたらこうしてみたい。
でも、自分の見た目は男らしいのだから、化粧なんかしても「オネエ」なだけ……!
そんな諦めを抱いていた元・美男子が、いざ美少女になるとどうなるか?
「もうちょっと、イケるんじゃね?」
めっちゃ化粧に興味がわいた。
これでもかと美容に意識を割いた。
せっかくだから仕草もオトナな感じにしよう!
なんて思って映画やらなにやらを見まくって、とにかく真似を繰り返した。
「……体のラインが気になるな」
まだまだ足りないと筋トレで腹筋を割った。くびれも作った。
胸筋を鍛えて胸を大きく見せたりして、バストや腹を強調した攻めのファッションを選んだ。
カードゲームがすべてを決めるはずの世界で。
自分への
その結果、
「この程度じゃあ、アタシは熱くなれないぜ?」
今日のアタシがある。
悪いコをカードで叩きのめす、それはそれは綺麗で強いお姉さんになれたのさ。
「なんで僕が負けたんだ……?
闇のカードを手に入れたのに!」
「暗黒を照らし、夜を暖める。
そいつは光だけじゃあないぜ、ボウヤ。」
そんなアタシの趣味は、だな。
現実に害を与える危険なカード「闇のカード」を使う人間をブチのめし、相手の闇のカードを回収する……って名目で、ショタと遊ぶことだ。
カードゲームはいいぞ。
どんな動機であれ、カードで遊ぶだけなら不審者でもなんでもない。
ただのカードゲーマーとして、ショタと対等に遊べるんだ。最高だろ?
「夜を、暖める?
光だけじゃないって、どういう意味だよ!?」
きっ、とアタシを睨みつける悪いコは、中学生くらいの
闇のカードを手に入れて暴行事件を起こすカードゲーマーにも種類はあるが、ショタの場合は家庭環境や学生生活に問題を抱えていることが多い。
それら自分事の問題に対する欲求不満を、闇のカードの力で爆発させる……年頃の
児童相談所が解決に努める案件だとは思う。
そうは思うんだが、そこはカードゲームがすべてを決める世界。
ゲームの勝ち負けがきっかけで児童相談所や警察が手出しできなくなる事例もあって、外部のカードゲーマーがゲームで勝つしかない案件も往々にして起こるのだ。
そんな時ほど。
ショタに現実を
「闇を照らすのは、いつだって
アタシみたいな人間にも依頼が来るのだ。
警察には不可能な案件なら探偵に調査を依頼し、警備会社に警備を依頼するように。
カードゲーマーにも、公的機関とは別の民間企業や個人事業主に依頼をする案件がある。
フリーランスのプロカードゲーマー。
それがアタシの
「炎……その火属性のカードのことっ!?
たかが四属性のひとつのくせに、そんな力があるわけがない……!」
ほら、生意気にも。
カード単体の力が重要だと思っている。
歴戦のカードゲーマーほど、そんな単純な考えは鼻で笑うものだ。
カードも人間も、自分ひとりの力だけですべてが解決するわけではない。
カードゲームがすべてを決める世界、とは。
世界の真実のすべては、カードゲームが教えてくれる世界だということだ。
「
「……は?」
とんとん、と。
ショタの胸をノックする。
「
熱くなれないゲームなんて、退屈じゃないか」
もう一度言おう。
ショタと遊びたい。
(合法的かつ健全に)オトコのコと遊びたい!
そう思う同志諸君、カードゲームをやれ。
ショタはいいぞ。
カードゲームをやるショタは特にいい。
カードの強さや勝ち負けで一喜一憂する姿が可愛い。
自分より強いはずだ、と思っていた年長者相手に勝てると思った瞬間に、チョーシこいて馬鹿にしてくる生意気さだってある。
そんなメスガキならぬ、オスガキと化したショタの姿も可愛い。
劣勢を逆転して楽しませてやると、その驚く顔が特に可愛い。
もちろん、ひとを馬鹿にするショタがいい男になるわけではない。
とはいえども、その生意気が可愛いで収まるのがショタというものだ。
全自動オスガキ製造ゲーム。
それがカードゲームだと言っても過言では……過言だなウン。
「ハートの、……熱さァ?
そんなもの、カードの強さと関係ないだろっ!」
ショタの生意気な口へと人差し指を近づけ、「しーっ」と黙らせる。
「ゲームに勝ったのはアタシ。だろ?」
「うっ……!」
「それじゃ、お楽しみの時間だ。
勝者は敗者にひとつ命令をする。
さあて、どんなお願いごとを言おうかね……?」
「……なに、もったいぶってんだよ。どうせ!
『闇のカードを渡せ』って僕に言うんだろ!?」
まあ、それがアタシの受けた依頼だし。
だとしても、ちょっと今回は物足りない。
「ボウヤが自分から渡してくれるなら、もっと別の頼みごとができるんだけどな」
「なんだよ、それ?」
「アタシと遊ばないか?」
不満そうに唇を尖らせたショタが、目を丸くさせた。
「次は闇のカード抜きで。
遊ぶ場所は、アタシ行きつけのバー。
……おとなの遊び場だな」
バーの店長の名刺を渡す。
「場所は検索すればわかるぜ。どうする?」
闇のカードと名刺を交互に見比べ、物惜しむように闇のカードを見つめるショタ。
ほんのすこし歯噛みをすると、アタシに闇のカードを手渡した。
「……本当に、くるの?」
「くるさ。
予定は空けておくぜ?
ボウヤのためだけに、特別にだ」
よし、闇のカード回収完了。
ついでにショタと遊ぶ約束も取り付ける。
パーフェクトだ!
「アタシの名前は
明日の午後6時、その名刺をもって入ること。
いいな?」
「……いいけど、」
よし、帰るか。
アタシはカードを掲げた。
カードが
「でも、僕の名前はボウヤじゃなくて―――!」
「
「っ、……!」
バイクに
「いい男に
残る依頼に向かって、アタシは走り出す。
次の対戦相手は隣の地区の
野球をコンセプトとしたカードの使い手……
「こりゃあ、一筋縄では解決しないな」
アタシはアクセルペダルを強く踏み、夕暮れの街を駆け抜けた。
アンケート、ここすき、感想お願いします。
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