【完結】俳優、女子中学生になる~殺された天才役者が名家の令嬢に憑依して芸能界に返り咲く!~   作:朱音ゆうひ

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15、アプリがあった。消えた

葉室王司ちゃんを応援するスレ!part15

 

022:名無しのファン 

『100年に1度の天才シンデレラガール誕生の予感!? かつてやらかした令嬢、毒親化していた――14年間の虐げられた日々……』

記者がいい仕事してくれた

 

023:名無しのファン

>>22 こんなの読んだら推すしかないよね

 

024:名無しのファン 

1スレ目を建てた最古参勢俺、ニワカファンにドヤ顔である

 

025:名無しのファン 

おいこのゲーム実況者→ttps://zzz.webtube.com/watch?v=SeBaDeviStation

葉室家の執事名乗ってるんだが

   

026:名無しのファン 

>>25

執事という痛い脳内設定奴じゃないですかーーー!

 

027:名無しのファン 

>>25 カタコト外国人の執事ごっこ可愛いやん

 

028:名無しのファン 

おい動画、王司ちゃん来たんじゃね?

 

029:名無しのファン

は?は?は?本物? 

 

030:名無しのファン 

声がガチっぽい可愛い

 

031:名無しのファン  

お嬢様!?

 

032:名無しのファン

夜中に執事の部屋にくるお嬢様!?

 

033:名無しのファン 

偽物だろ訴えられろ

 

034:名無しのファン 

会話ちょっと聞こえる

 

035:名無しのファン 

母親の話してる?

お母さんに姉か妹がいるらしい

 

036:名無しのファン 

そこしかわからんね

 

037:名無しのファン

偽物に騙されるなよお前ら

そんなことよりネットニュース見ろよ

スタープロモーション所属発表、ドラマオファーもきてるってさ

 

038:名無しのファン  

声フェチの俺が思うにこれは本人だ 

明日から王司お嬢様と呼べお前ら 

 

039:名無しのファン  

>>37

ドラマ楽しみだな!何の役するんだろう

 

040:名無しのファン

>>39 ドラマはまだオファーされただけで決まってないだろ

 

041:名無しのファン

>>40

断る理由がないだろ

 

042:西園寺麗華

王司の話なら西園寺麗華も配信でしてるNOW!

 

043:名無しのファン 

あ、西園寺麗華だ

 

044:名無しのファン 

>>42 こういうのってなりすましに思えるもんだけど西園寺麗華は本人にしか思えない俺

 

045:名無しのファン

堂々と名前書いてるのに本人扱いされると否定するんだぜ  

 

046:名無しのファン

王司ちゃんのドラマ楽しみだな 

 

047:名無しのファン

ドラマはまだ決まってないだろ!

 

048:名無しのファン

>>47

お前はなんで怒ってるんだよ

 

 

「別に怒ってはないんだが?」

 

 匿名掲示板に書き込んでいた手を止めて、佐久間(さくま)はハイボールの缶を開けた。

 

「……あ。動画消えた」 

 

 カタコト外国人執事のゲーム実況は見れなくなってしまった。

 掲示板では「消したということはやっぱり本物の王司お嬢様だったのでは」という推理大会が始まっている。

 

「まあ、この程度。……ゴシップにはならんよな別に」

  

 それよりもオファーの件だ。

 どいつもこいつも「ドラマ」「ドラマ」と。

 

「別にドラマが羨ましいなんて思ってないんだからな。こっちは企画書を通して八町大気の最新作に映画制作交渉中なんだからな。くそぅ…………やっぱ、ドラマに取られちゃうよな……お嬢様」

 

 業界のタブーなんて、破ってしまったらいいんじゃないか。

 酔いが回る頭で、佐久間はそう考えた。

 

 

   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆

 

 

 ――【王司視点】

 

 連続死亡事件のせいで、葬儀場は予約がいっぱいらしい。

 おばあちゃん、江良(えら)、田中君と、告別式は連続した。

 

 

 江良のお別れ会では、大勢のファンや関係者が泣いてくれた。

 ファンの中には顔を覚えている人が何人もいる。

 デビュー当時から応援してくれていたファンが赤ん坊や幼児を連れていて、年月を感じた。

 

 自分の死を悼んでもらえている。

 それは嬉しいような苦しいような気分だった。

 顔を覚えているファンや仕事関係者が泣いているのを見ていると、涙があふれて止まらなくなってしまった。

 

 そんな会場で大声で騒いでカメラの注目を集めているのは、江良の親友。

 作家兼映画監督の八町(やまち) 大気(たいき)だ。46歳になったばかりの彼は、誕生日に江良が贈った腕時計をしている。

 白髪交じりの黒髪は天然パーマでくしゃっとしていて、縁のない眼鏡をかけた端正な顔は悲しみに歪んでいた。

 

「江良君……なんで死んでしまったんだ……っ」

 

 八町は周囲が心配するくらい痛々しく泣き崩れ、「新作の原稿は出版しない」「映画も作らない!」と叫ぶ。

 彼はよく当て書きをしてくれて、新作の主人公も江良を想定して書いていたらしい。嬉しいが、もう演じることができないのがつらい。

 ごめんよ、八町。

 

 八町の周囲では、関係者が慌てふためいている。

 

「しっかりしてください八町先生!」

「先生……!」

「ちょ、ちょっと。僕に映画を制作させてくださいよ先生! 企画書通ったんですよ先生!」

「佐久間君ごめんね。だって江良君がもういないから……っ」

 

 ……八町が当て書きしてくれた新作は、世に出ないのか。

 

 この体では、オーディションがあっても、応募自体ができない。

 

 女子中学生になることで、できなくなった役もある。

 それを痛感して、何ともいえない気持ちになった。

   

「おい。あれが気になるのか?」

「へ?」

 

 じーっと八町を見ていると、声がかけられた。

 聞き覚えのある傲岸不遜な声だ。

 

「げっ」

「お前、今俺を見て『げっ』と言ったのか?」

「ひぃ……」

 

 まさかと思って振り返ると、なんと二俣(にまた)夜輝(よるてみ)円城寺(えんじょうじ)(ほまれ)が並んで立っていた。

 

 あまりに驚いたので衝動的に逃げ出しそうになったが、なんとか踏みとどまった自分を褒めたい。

 

 なんでいるんだ、この二人。

 実は江良のファンだったのか?

 いつも一緒にいるのか? ニコイチか?

 青春アミーゴとか歌ったりするのか? 世代が違うか?

 

 動揺を心の中で押し殺していると、二俣はしかめっ面をした。

 

「八町の小説が読みたいなら、出版社がうちのグループ傘下だから出させてやる」

「えっ。いえ、変な圧力とかかけないであげてください」

「誉の家も圧力をかける」

「だからやめてくださいって」

 

 権力者は恐ろしい。

 やめろと念を押したけど、果たして八町は大丈夫なのだろうか。

 

 田中君の告別式では、連続死亡事件の情報が少し判明した。

 

 参列していた生徒たちが噂しているのが聞こえたのだ。

 

「田中君のスマホ、赤リンゴアプリ見つかったって」

「えー? それで警察が隅っこにいるんだ?」

「家とか学校でガードが堅くて事情聴取できなかった子に話を聞くチャンスだと思ってるんじゃないかな?」

 

 生徒たちの話によると、スマホの赤リンゴアプリというのがSNSで都市伝説的に噂されていたらしい。

 

 選ばれた人しかアプリが現れない、とか。

 選ばれる条件はよくわからない、とか。

 代償を自分が決めてアプリに捧げると、願いを叶えることができる、とか。

 

 実際には存在しない怪談みたいなものだと思って面白がっていたら、とあるVtuberが配信中にアプリがあると言い出して、配信してみせたとか……。

 

 掴みどころのない話だが、それを信じるなら、江良が被害者扱いされているのはスマホにアプリがあったからなのだろうか?

 しかし、そんなアプリを見た記憶も触った心当たりもないが。

 

 ……ちなみに、王司は?

 

『田中たけし:俺やっぱアプリみつからねーけど』

 

 田中君のあのチャットは、「王司はアプリを見つけたが、田中君はアプリが見つからない」ということを意味するのでは?

 そしてその後、田中君はアプリを見つけた……?

 

 ――心臓が早鐘を打つ。

 

「あ…………」

 

 なんとなくスマホを確認して、ぎくりとした。

 

「あった…………?」

  

 これまで注視していなかったが、スマホのアプリ一覧の中に、赤いリンゴのロゴアイコンをしたアプリがあったのだ。

 赤リンゴというのだから、このアプリなのでは?

 

「葉室王司さん、ですね?」

「えっ」

 

 アプリのアイコンを見て固まっていると、ぽん、と肩が叩かれた。

 心臓がドキッとして、悲鳴をあげそうになった。肩を叩いたのは警察だったのだ。

 

 考えてみれば、田中君のスマホがチェックされているのだから、王司は重要参考人としてマークされていて当然だ。

 『田中たけし:俺やっぱアプリみつからねーけど』という怪しすぎる発言があるのだから。

 

 警察は王司のスマホを押収し、調べようとした。

 悪いことをした覚えはないので大丈夫だとは思ったが、さすがに緊張して冷や汗をかく。

 周りの目も痛い。

 これはゴシップ記事をまた書かれてしまうのではないか――とハラハラしていた時、警察は叫んだ。

 

「アプリが消えた!?」

 

「えっ……?」

  

 その日、王司のスマホには、怪奇現象としか言いようのない謎の事態が起きた。

 

 警察が触れる前に、スマホにあった赤リンゴアプリがスゥッと消えてしまったのだ。

 

 スマホは返されることなく、私は知っていることを話すようにと言われて「記憶があまりなくて、アプリのことは今日初めて知ったのですが」という我ながら不審なことを喋ったあげく、ママに回収された。

 

 ママは警察にぎゃんぎゃんと噛みつき、スマホを取り返して家に帰らせてくれた。

 

 なかなかのホラー体験だった。

 しかも、その日以来、連続死亡事件は止まった。

 

 その日、同じ時間帯。

 アプリは王司のスマホだけでなく、アプリがあった人全員のスマホから消えてしまったらしい。

 

 SNSで検索するとみんなして「謎すぎる」と言っていて、おそらく時間が経過するにつれて「本当にあったの?」と言われるようになる気配がした。

 

 世の中、よくわからない。

 




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