【完結】俳優、女子中学生になる~殺された天才役者が名家の令嬢に憑依して芸能界に返り咲く!~ 作:朱音ゆうひ
ドラマのタイトルは『鈴木家のお父さんは死にました!』。全9話だ。
おおまかなストーリー構成は、以下の通り。
1、2話……メインとなるのは「
妻や子供とうまくコミュニケーションが取れず、家に居場所がないお父さん(主人公)が、製薬会社の新薬『仮死状態になって生き返る薬』の被験者となる。
「みんなにパパが死んだドッキリを仕掛けてやる。悲しんでくれるかな?」とワクテカしていたら、実験が失敗。本当に死んでしまう。
死後のお父さんは幽霊となり、幽霊仲間と交流しながら家族に付きまとう。
家族の様子を見ていると、みんな知らない一面があったり問題を抱えていたりする。
3~7話……お父さんは自分の家族や幽霊仲間の抱える問題に向き合い、順番に解決していく。
生きている人たちは、死者に気付いてくれたり気付いてくれなかったりする。
8~9話……そんな中、お父さんは製薬会社の暴走にも気づく。
この会社の暴走を野放しにしていると大変なことになる――そこに至るまでに関係性を築いた家族や幽霊、全員が団結して企業の暴走を止める。
家族は人間的に成長したり未来に向けて歩き始めて、幽霊たちは成仏していく……。
「と、こんな作品です。皆でいい作品を作りましょう!」
この日は、顔合わせ、作品や役に対する認識の擦り合わせと、雰囲気を掴む軽い読み合わせが同時に行われた。
番組プロデューサー、脚本家、監督を始めとしたスタッフやオールキャストが一堂に会して自己紹介し、番組の狙いや意気込みを伝える。
その後に続き、ひとりずつ立ち上がって挨拶する役者たちは「この役を演じます。役の解釈はこうです」と話した。
最初は、お父さん役の
「鈴木家のお父さん、
身長が低め、小太り体形で、愛嬌のある顔立ちのおじさんだ。
江良の時も何度か共演している。
続いて、お母さん役の
「鈴木家の妻、
気が強そうな凛々しい眉と目力の持ち主だ。江良の時も何度か共演している。
次はお兄ちゃん役の
「鈴木家の長男、
火臣打犬の妻が別の男と作った子を火臣の子だと騙して育てさせた。托卵だ。
托卵に気づいた打犬は別の女性と自分の子を作った……最悪の家庭じゃないか。
役は17歳、本人は現在19歳。
金髪長身イケメンで、指にも耳にもアクセサリーが大量についている。「ビジュアル系」「パリピ」「ホスト」という単語が脳裏をよぎった。なんか派手。遊んでそう。
完全に初対面で、ここまで一度も目が合ってない。
普通に考えて嫌われてそう。
父親が直前に大炎上して、さぞ迷惑しているだろうな。
次は私の番だ。
立ち上がってぺこりとお辞儀すると、年長組の
不倫で産まれた炎上キッズとして嫌われてたりする?
嫌わないで? せめて表向きは友好的にして?
私はスマイルを浮かべ、明るい声で挨拶をしてみた。
「鈴木家の長女、
スタッフさんが笑ってくれているが、
「なんて健気……明るく振る舞って……大人たちの金稼ぎの道具にされちゃってるのに……頑張ろうとしてる……くっ……」
あっ、ハンカチで目元を押さえてる。
「
「少々取り乱しました。失礼……ふぅ」
どうやら嫌われてはいないみたいだ。気にしないでおこう。
ところで、共演者の中に
「
麗華は目が合うと小さく手を振ってくれた。
「葉室王司ちゃんとは同じ事務所で、姉妹と言ってもいいと思ってます。仲良しです! よろしくお願いします!」
姉妹だって。嬉しいな。
その後は幽霊役の人たちの挨拶が続き、スタッフの人たちが一部退室してから台本の読み合わせがされた。
「これだ……これで家族にドッキリを仕掛けてやろう」
「そこのセリフは、もう少し小物っぽく。コミカルに」
「これだぁっ。これで家族にドッキリを仕掛けてやろう!」
「カシヤクの実験は失敗だ! 被験者が生き返らない!」
「仮死薬のイントネーションが違います」
「仮死薬の実験は失敗だ! 被験者が生き返らない!」
「なんでこんなことに……」
「悲しそうに、と書いているのに、それだと悲しんでいるように見えません」
「なんでっ……、こんなことに……っ」
ひと通り読み終わったところで総評がされ、
「
「はっ――?」
おい。人をageる時に別の人をsageるな。
これ、翔太の演技をこき下ろすのが本命でこっちはダシに使われてるだろ。
おそるおそる
……いや、よく見ると頬が引きつっている。
嫌そうな表情をしないように努力しているのではないだろうか?
「炎上中の役者の息子が下手だとアンチは大喜びするだろうなぁ。ありえないほど下手だと話題になったら、君の下手さを楽しむために皆が視聴してくれるよ。君の役割はソレかな!」
胸を
悔しいよな。グサグサ来るよな。
こういうの自分にも経験がある。わかるよ、その気持ち。
「ひとりだけ下手クソで恥ずかしい思いをするのが嫌なら、台本読んで役作りしてきたらどうかな。メモを取ったりしてみるのもいいかもしれないね。みんなの台本と自分の台本を見比べてごらん。地力はすぐに身に付かないから仕方ないにしても、今の自分にできる最大の演技をしようって気持ちで演じたら、視聴者にその姿勢が伝わるかもしれない」
止めようとしていた人たちが無言になって顔を見合わせている。
そして、
「面白いとか続けたいと思えたら、今後はレッスンもサボらずに受けるといいね。君のパパがよく嘆いていたよ、息子のやる気がないってさ。今回の作品では下手クソと言われて黒歴史を残すかもしれないが、続けていけば『この頃はこんなに下手でした。でも上手くなりました』って言えるようになる。努力と成長が皆に認められたら、楽しいだろうな」
こうして顔合わせと読み合わせは終わったのだが、
「……うぜー」
うざかったらしい。