横から口出しするだけの簡単なお仕事です   作:シリアルナンバー

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『紹介』するということ(2/3)

 冒険者、という職業の成立は数百年前にさかのぼる。当時は王国の雇う兵団が国家防衛と魔物の討伐、そして各種探索や採取を担っていた。しかし当時の財政難をなんとかするべく、国家防衛の任務以外を民営化することにしたのだ。

 

 結果として現在、冒険者という職業は魔物討伐や採取任務、探索や護衛など幅広い任務を取り扱う武力を売りにした何でも屋となっていた。

 

 でも兵士たち以外が武力を持つのって危なくないか、とも思うのだが、実は王国が隠し持つ特殊武装がかなり凄まじくて……なんて話はさておきとして。

 

「おいトール、魔の森での薬草採取任務でどうして何もしていないお前が10万ゴールドも持っていくんだよ!」

「何でそれを知ってる?」

「情報屋がこの依頼は本来20万ゴールドだって教えてくれたんだ! アタシたちには10万しか支払われない仕組みになってるのに!」

「おっさん、因みに一般的な採取依頼での中抜きはどれくらいなんだ?」

「通常の採取依頼は1/4~1/5、大体2万ゴールドくらいだな」

「ぼったくりじゃん」

 

 この都市アンバス周辺は魔の森と言われる地帯や迷宮、遺跡、そして湖ととにかく冒険者が活躍できる場所が広い。そのため、冒険者に対し特殊な素材を集めてきてほしい、なんて依頼はよくある話であった。

 

 そして今回は虫と獣系の魔物が溢れる、魔の森に生える薬草バルスモルの採取依頼が来たので、俺はこいつらに投げたというわけだ。

 

「ど、ドラム、落ち着いて。ほらお肉」

「はぐっ……セラ、アタシがこんなものではぐっ、だまされるわけもないはぐっ」

「お、お替りもあるから、一回落ち着こうね」

「やったー、さすがだぜセラ!」

「アホだ……」

「言うな、カリン」

 

 ドラムは筋骨隆々の10代後半ほどの女龍人だ。まさに戦士といった出で立ちで、背中には背丈ほどの斧を背負っている。竜人のため、基本は人間と同じなのだがところどころに鱗が生えていて、鎧の代わりをしてくれる。

 

 一方セラは、弱気そうなローブを着た少女だ。手には魔法の発動媒体である杖を持っている。猪突猛進としかいえないドラムを抑える、飼い主のような立ち位置の女である。

 

「トールのおっさん、この人たち何?」

「ああ、こいつらはC級冒険者のドラムとセラだ。まあ意外と能力があるんでな、俺はこいつらに依頼をする時があるんだ」

 

 俺はぴっと宙を叩く。すると俺以外の誰にも見えないウィンドウがそこに表示された。

 

 ────────────

 

 ドラム 

 筋力B 敏捷D 耐久A 器用E 反応D 知力G-

 特殊技能 ファイアブレス 

 鱗

 斧適正B

 ────────────

 

 

 ────────────

 セラ

 筋力E 敏捷E 耐久E 器用C 反応C 知力B

 特殊技能 精霊魔術 B 

 マイナススキル 戦闘硬直

 ────────────

 

 

 正式名称はアカシックうんたらかんたらとか言うらしく、世界の記録にアクセスして知覚可能な形に要約、出力する能力らしい。まあ俺はめんどくさいのでステータス表示とか読んでいる。

 

 ここで出てくるのは本人ですら知らない才能や能力の全貌である。これを利用し、俺は他人の指南をする時や依頼を投げる時の参考にしている。実はモンスター相手にも使えるので、初見の相手でも不意を撃たれにくいというメリットもある。

 

 ただ、実際は鍛えていないとこの性能通りにはならない。例えばセラは知力Bと出ているが、勉強していないセラと勉強しているドラムを比較すれば、この表示されたパラメーターを無視し、ドラムが勝つだろう。いや、G-はさすがにどうしようにもないかもしれないけど……。

 

「ドラムは頭が悪いがとにかく硬いし意外と手札も多い。セラはダメダメだが魔術が強いし、探索のサポートもうまい。そんなわけで今回、魔の森の薬草採取には最適と思って選んだ」

 

 ちなみに一般的な人間のパラメーターはすべてEだ。そうみるとドラムがどれだけ不死身かわかるだろう。多分溶岩に突き落としてもアイルビーバックとか言い出すぞ。

 

「えへへ……照れるぜ……」

「馬鹿なのが大変だがな。飼い主もなんとか手綱を握ってくれよ」

「も、申し訳ありません……でも」

「おっ?」

 

 意外だった。見た目通りこの少女セラは気が弱い。戦闘時は一瞬固まってしまうし、押されれば黙ってしまう。精霊魔術Bというぶっ壊れスキル持ちだからつり合いが取れているといえばそうなのだが、とにかく珍しい事態だったので俺は驚いた。

 

「わ、私たちは、冒険者としてリスクとリターンを考える必要があります! と、トールさんがお金を取り過ぎているならこ、抗議しないといけませんし、逆に20万ゴールドも貰える危険な任務を、10万ゴールドにすることでリスクを隠している可能性もあります!」

「そうだそうだ! 10万ゴールドもあったらお肉がいっぱい食べられる!」

「馬鹿は無視するとして、なるほどな……」

 

 少し考える。今ここでなぜなのかを懇懇と説明し、論破するのは容易だ。弱気と馬鹿相手であれば、俺のおっさん口車で一撃だ。

 

 しかしそれはよくない。弱気なセラが、自分たちの将来のために勇気を出して抗議してきた。ここで成功体験を得られれば、単なる駆け出し2人組から一歩成長できる可能性も高いし、複雑な依頼を頼める可能性もある。うまくいけば、戦闘硬直も改善するかもしれない。

 

「そこまで言うならいいだろう、やってみな。これが今回の依頼主の住所だ。つまり俺が間に入っていることに危機感を感じているんだろう? 依頼を直接受ければ俺に金が取られることもない」

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 その日の午後。

 

「なんで見守ってるんですか」

「むしろお前がなんでついてきてるんだよ、カリン」

 

 カリンは酒場の冒険者共仕込みの隠密術で、俺は昔王宮に忍び込んだ時の技術をふんだんに使い、指定した依頼主の住所を見張っていた。

 

 広大な敷地の中、石畳の道が玄関に続いている。建物の正面にある重厚な扉には、家紋が描かれていた。そうこの家はただの金持ちの家ではない。ピグルー男爵のものである。

 

「ここの貴族の人、どれくらい偉いの?」

「男爵だから領地は少ないが、れっきとした領主だ。ここから北の平地を領地をしているが、手続きや商談等の関係で月の半分くらいはこちらに滞在している感じだな」

「貴族の順序って公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、そして名誉騎士だったっけ」

「そうそう。名誉貴族だけは領地を持たない一代限りってやつな」

「功績があると貰えるんだよね」

 

 そうしている間に、ドラムとセラの姿が現れる。彼らは門番に向かって話しかけるが、すぐに言い合いになったようで次々に口調が荒くなる。

 

「ですから、男爵様ご用達の方を通して出ないと、依頼を受けて頂くことはできません」

「なんでだ、話してOKもらうだけだろ!」

「いいえ、お通しすることはできません。あなたは平民、事前連絡無しにお会いできるような身分ではありません」

「身分とか関係ないだろう、依頼を受ける、それだけの話にどうしてここまで面倒なことになるんだ!」

 

 門番は職務をしっかり果たし、見知らぬ冒険者を敷地に入れないよう淡々とシャットアウトする。そもそも貴族には金目当ての面倒な奴が纏わりついてくることも多い。だから大体はアポイントが無ければ、いきなり行っても話すことすら難しいのだ。

 

 ドラムについてはどうでもいいが、後ろのセラは流石にかわいそうである。相手が貴族だということを知り、完全に硬直してしまってる。今頭の中で様々な思考が駆け巡って何もできなくなってしまっているのだろう。流石にこれは可哀そうだ。というわけで俺は姿を現す。

 

「悪い、俺の連れだ。一緒に通してくれないか。男爵殿にお話ししたいことがあってな」

 

 俺が後ろから姿を表すと3人は驚いた表情になる。だがその中で最も驚いた表情を射したのは門番である。そして門番は俺に敬礼するのであった。

 

「王国名誉騎士、トール殿でしたか。これは失礼致しました」

「「「貴族だったの!?!?」」」

 

 失礼な、一応これでも最強クラスの冒険者だったんだぞ。名誉騎士の地位くらい持ってるに決まってるだろ。

 

「とっとといくぞ。何故10万ゴールドも取ったのか、この先で教えてやる」

 

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