横から口出しするだけの簡単なお仕事です   作:シリアルナンバー

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魔術師の裏技(1/4)

「ほい絵柄が揃ったので俺の勝ち」

「マジかよトール、早すぎるだろ」

「そうだそうだ、あと一手番くらい待ってくれよ」

「待ちません、ほれ金は没収だ」

 

 数日後の昼。俺はまたしても酒場で飲んだくれていた。が、今日は珍しく人が多い。そんな中で俺は近くにいた知り合いの冒険者たちと賭博をしていた。賭博、といっても法に触れない程度の少額ではあるが。遊んでいるのはトランプ的な何か。絵柄がこの世界の英雄だとか神とかなのが大きな違いである。にしても、と俺は周囲の奴らを見渡す。

 

「お前ら暇しすぎだろ」

「うるせえな、お前にだけは言われたくない。それに次の任務までの待期期間なんだよ。嵐が来るから船が出せねえ」

「さすがはB級、儲かってるな」 

 

 冒険者はAからEまでの等級に分かれている。これは実力と信用度を意味しており、例えばE級は街のごろつきとそう変わりはない。一方A級まで至ればもはや貴族からも一目置かれる、英雄の類として扱われる。面倒ばかりでもあったけどな。俺がからかうと向かいに座る冒険者は俺の足を軽く蹴る。

 

「元A級が何言ってるんだよ」

「今じゃB級さ。それで、海を渡るのか?」

 

 この街の近くには川が流れており、下っていくと海にたどり着く。そこから少し離れたところに港があり、商人や冒険者が多用していた。そしてそこから船で進めば他の大地や沈んだ海底遺跡に辿り着くというわけだった。

 

「おうよ、少し北に行ったところに海底遺跡が見つかってな。それの調査団というわけだ!」

「俺に言ってもいいのかよ。先に言って荒らされるかもしれないぞ」

「いやいや、それが位置が悪くてワイバーンの巣の近くなんだよ。だから遺跡荒らしも手を引いてしまい、未だに手付かずというわけなんだ。まあお前なら余裕だろうがな」

「さすがにワイバーンは面倒なのでパスさせてくれ」

「だろうな」

 

 俺たちはガハハと笑う。そう、ワイバーンは本当に面倒なのだ。ずっと飛んだまま降りてこないモンハンのモンスターを想像してみて欲しい。最悪なのはわかっていただけるだろう。

 

 そしてしばらくして一緒に卓を囲んでいた冒険者の一人が「そういえば」と呟いた。

 

「今回の任務、『暁の鋼』が参加していなかったな」

「珍しいな、あそこは実力派だし金にがめついし、こういう依頼には絶対に参加するはずなのにな」

 

『暁の鋼』というのは、この街でも名を知られている老舗の冒険者パーティーの一つだ。ドワーフ3人にエルフ1人という異様な構成で、タンク兼攻撃役のドワーフが殴り、エルフが遠距離から魔法で支援するという超攻撃型パーティーだ。

 

 その性質上、非常に殲滅速度が速いことで知られている。特に蜂蜥蜴の討伐は下手な大規模パーティーよりも素早いのだ。初めて見たとき本当にびっくりした。たった4人のパーティーなのに桁違いの量狩ってくるとは思わないだろ。

 

 その理由はぽろりと別の冒険者から漏れ出した。

 

「ああ、あのパーティー後継者選びに失敗したらしい」

「後継者選び?」

「エルフの奴が家の事情で故郷に戻るらしくてよ。そこで他の魔術師を代わりに入れたらどれも上手くいかない、背中を誤射する無能だらけだったらしい。それでしばらく動いてないんだとよ」

 

 魔術師。地域によっては魔法使いとも呼ばれるその職業は、大気にあるマナを利用し特殊な術を発動することができる人々を指す。例えばセラの精霊魔術はマナの塊を生命と見立てて、一種の使い魔のような形にして操り、現象を引き起こす。

 

 故に遠距離から高い火力で魔物を殲滅できる、ということで人気なのだ。とはいっても魔術を使うには詠唱や儀式が必要で隙が大きく、また回数制限もある。さらに特殊な才能も必要なため、そもそもの絶対数も少ないのだ。

 

「まあ魔術師は引っ張りだこだし、仕方がないさ」

「その通りだな、あんなやり手の魔術師を手放してしまった『暁の鋼』が悪い」

 

 そうやって話をしていた時だった。ギルドの入り口から給仕服を着た少女、カリンがやってくる。彼女の手にはバケットが握られており、何やら買い物をしてきた後のようであった。

 

 てっきりそのまま厨房にいくのだろう、と俺はスルーしていたのだが、彼女は真っすぐ俺の方に向かってくる。そして挨拶も無しにいきなり彼女は問いかけてきた。

 

「トールのおっさんってさ、魔術使えたっけ」

 

 突然の問いかけに俺は戸惑う。そもそも急に何を聞いているんだという話だし、魔術師は恐らくカリンが思っているより希少だ。つまり俺の返す言葉とは。

 

「上級魔術まで使えるぞ、どうした」

「「「嘘だろ……?」」」

 

 カリンと周囲の冒険者が一歩後ずさる。失礼な、元A級冒険者だぞ。全魔法の上級魔法くらい使えないとやってられないに決まってるだろ。

 

 気を取り直したカリンはこほんと咳払いし、ギルドの扉を指し示す。そこには一人の若い青年がいた。

 

「『暁の鋼』の人が、魔術師の人に教えを請いたいって。暇そうにしてるおっさんにはぴったりの依頼じゃない?」

 

 噂をすればなんとやら。俺と冒険者たちは顔を見合わせるのであった。

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