ゆうしゃとなれ たとえ導きが壊れていても   作:藍色岬

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おんやぁ… 見覚えのある顔だ


どうにも商いは止められぬ

「ぬ──ん、しかのこのこのここしたんた…ん?」

 

 あれ、寝ちゃったのか。もうちょっと聴きたかったんだがなぁ。ん、眩しい。もう朝みたいだ。

ん?なんだこのにおいは…う──ん、これは…

 

「起きたか、勇者。ちょうど肉が焼けたところだ。食うか────?」

 

 肉。ニク。にく。素晴らしい。我ら食餌の時だ!

 

「食うか────!この世のすべての食材に感謝を込めて…いただきますッッッ」

 

 ………うん、美味しい!

 

「口の中に…肉のうま味が広がって…お」

 

「よし、じゃあ500ルーン」

 

「………………ちょっと待ってくれ。今吐くから…ゔっっっ」

 

「はっはっは。冗談だ………っておいおい大丈夫か!?そんなすぐ吐けるのかいやそういう特技なのか!?」

 

 ま、まずいッ!もう喉まで上がってきているッ!どうすれば……!ここでゆうしゃに電流走る!

 

「うっ……ん……ん……ぷはぁぁぁぁ!ごちそうさまでしたッッッ!!!」

 

 ふー助かった。このポッケにしまっといたシロップがなかったらどうなっていたか………ん?

 

「なんだか体が軽くなったような…HP満タンって

感じのゆうしゃだ!」

 

「勇者、それ聖杯瓶か?」

 

「えっ聖杯!?」

 

 そんな…もしかしてここ、特異…

 

「あぁ、知らないのか。それも、褪せ人に与えられる導きの一つさ。飲めば身体中の傷を瞬時に癒せる優れものらしい」

 

「…あぁそうなんだ。よかった…」

 

 びっくりした。零したら大火災が起きます、とか言われたらどうしようかと…。

 

「なんでも祝福の灯に触れれば自然と沸き出てくるらしい。どんな種があるのか、商人としては気になるが…あんたにはそれが必要だろうな」

 

 つまりこれは回復薬。薬草じゃないのか。残念だ。ならこの青い瓶は…MP回復薬だろう。青といえばMPだ。

 

「なぁ勇者。聞くまでもないが、ルーン。持ってないんだろう?」

 

「あぁ。持ってるのは夢と希望と使命くらいだ!」

 

 ルーンってのがこの地の通貨なのかな。でも今の所丁度いいくらいの敵も壺も見当たらない。どうやって調達するか…。

 

「俺たち放浪の民は皆が商人だ。商品を提供した分だけ対価を受け取る。それは俺たちの律だ。世界がおかしくなっちまっても、それだけは曲げられない矜持なんだ」

 

 あぁやっぱり、商人ってのは逞しいな。

 

「だからこそ、俺はあんたに提供する。寝てる間に採寸も済ませておいた。バッチリ嵌まると思うぜ、勇者さんよ」

 

 …どういうことだ。その装備を、オレに?

 

「待ってくれカーレ。オレはなんにも…」

 

「いいや、もう返品はできないぞ。取引は成立してる。それにな…」

 

「俺の演奏をあんなに熱心に聞いてくれたのは、勇者。あんたが初めてだったのさ。だから持ってけ」

 

「……!あぁ、大事に使ってやるさ、カーレ!」

 

 〔ゆうしゃは チェイン装備を 手に入れた!〕

 

「それから、この松明と盾も持っていくといい。この辺りは獣も多いし、正気を失くしたゴドリックの兵士どもが彷徨いてるからな」

 

 〔ゆうしゃは 松明と盾を 手に入れた!〕

 

「助かるよ。やっぱり、鍋の蓋では限界があってな。あと、できれば剣のようなものもあったりしないかなーなんて…」

 

「剣か。すまないが俺は取り扱ってないんだ。他の連中なら色々揃えてると思うが…」

 

「いやいやいいんだ!寧ろオレが謝るほうだ。図々しすぎるよなーアハハ………」

 

 ないのか剣。そっかぁオレ、ずっとひのきのぼうなのかなぁ………

 

「剣はないが、剣よりも便利な道具ならあるぞ。貴重なお客様には…いやあんたには、生き続けていて欲しいからな。持っていけ」

 

 〔ゆうしゃは ツール鞄を 手に入れた!〕

 

「この鞄があれば、簡単なアイテムを自分で製作できる。こんな地で戦い続けるなら、そういうことも必要なはずだ」

 

「それと…」

 

「ん、なんだ?」

 

「武器や防具は持っているだけじゃ意味がないからな。ちゃんと装備するんだぞ…。いや、あんたの顔見てたら無性に言いたくなってな」

 

「…………アッハッハッハッハ!カーレ、やっぱりあんたは最高だ!」

 

「あ、あぁ。そりゃどうも…?」

 

 早速お言葉に甘えて装備するか!

 

「よいしょ、よいしょ………どうだ?」

 

「勇者にも衣装…って奴だな」

 

「なんだよそれぇ褒めてんのかよく分かんねぇ!」

 

「はっはっは。……………はっはっは」

 

 沈黙が答え。現実は非情である。

 

「あ、そうだ。よかったらこのおなべのふた貰ってくれないかな?どうせ持っていけないし…」

 

「あぁ、それならルーンにして持っていけばいい。俺はあんまり使いたくないが、あんたには関係ないか。そら、こんな風に…」

 

 エッッッ!一瞬で蓋が消えた…だと?スタンドか?新手のスタンド使いなのか!!?

 

「ルーンってのは不思議でな。この地のあらゆる生命や道具に宿っていて、形を自由に変えられるんだ。今は物体を純粋なルーンに変えて体に宿してる。これなら幾らでも物を運べるのさ」

 

「へぇ、不思議だな〜〜。オレにもできるかな?」

 

「大切なのは想像力だ。今ルーンの鍋の蓋を渡したから、それを今度は物体に変えてみてくれ。そうだなぁ…水が氷に変わるような感じだ」

 

 なるほど。水があって、氷に変わる…この猛暑の中で…?いや関係ない。イメージしろ………

 

「うわ、でぇたぁ!」

 

「成功だな。ルーンにするのは氷が水になって水蒸気に変わるってとこかな。意識して使えば使うほど慣れていくだろう」

 

「ほんとだ…もう出したり消したりできるぞ!」

 

 ルーンの ちからって すげー!

 

「元々ルーンってのは黄金樹の祝福の力なんだ。褪せ人が大勢居た頃は『巫女』ってのが居て、ルーンを力に変える術を使っていたもんだが、俺たちにはこれくらいが精一杯だ」

 

 ヴァレーさんが言ってたやつだな。…待て、ルーンを力に…力…レベル?

 

「…それじゃあ、巫女の居ないオレは一生…レベル1なのか………?」

 

「…まぁ、弱者には弱者の戦い方がある。こうしてルーンで武器や防具を買ったり、アイテムを製作したり…工夫次第だな」

 

「…そうか。そうだよなぁ…」

 

 縛りプレイをするつもりはないんだが…でも仕方ない。レベル1でもゆうしゃはできる!ゆうしゃならそうする!

 

「…うん。色々と世話になったな、カーレ。その恩に報いる為にもオレ、進むわ!」

 

 鎧もある。盾もある。あとは勇気を力に変えるだけ、だな。

 

「ここから森を抜けて北へ進むとゴドリックの兵士どもの野営地がある。そこならあんた好みのお宝が眠ってるかもしれないな」

 

「この森だな。わかった!」

 

「…じゃあな。あんた…いや勇者。本当に、いい商いだったぜ」

 

「次会うときはもっと良くなるさ、商人!」

 

「…あっはっは!今後ともご贔屓に!」

 

 

 

歓声の響く、希望の朝の別れ。それは出逢いの対価。孤独な商人と勇者の交わした、最高の商いだったろうか。




〔ゆうしゃの ステータスが 更新された!〕

武器:ひのきのぼう ラージレザーシールド
   松明
防具:チェインヘルム
   チェインメイル
   ガントレット
   チェインレギンス
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