Skibidi_Toilet Multiverse〜Alternative〜 作:犬社長
……戦いが終わり、静寂が最上階へ戻って来る。
ーーーーパチン、と俺の刀が鞘に戻ると同時に、俺の全身から真紅の光が失われ、同時に真っ白な蒸気が体から激しく噴き出す。
同時に凄まじい戦いを繰り広げた反動が、一気に俺へ襲い掛かってきた。
「ーーーーーっと…!?」
今にも地面に膝を付いて倒れ込んでしまいそうな感覚を覚えつつ、俺は刀を支えに何とか倒れ込まないよう耐える。
【報告:状況終了に伴い、〈機士廻生モード〉が自動的に解除されました。
全システムを通常モードへ移行します】
そして、そんなアナウンスが頭に木霊する。
「なるほどーーーーー使用後の反動って、コレかっ……!」
俺は思ったよりも強い反動に冷や汗をかきつつ、自分自身の状況をチェックした。
(ーーーーーにしても、だいぶボロボロになるまで追い込まれたもんだ…。)
身体全体に深刻な損傷が入り、内部機構も大部分がダメージを受けている。
更に、視界に映る体力残量は残り体力10%を示していた。唯でさえ体力が少なくなっていた所へ、諸刃の剣たる〈機士廻生〉を起動したのだ。
本当にあと一歩及ばなければ、確実に負けていただろう。…ギリギリで手繰り寄せた勝利だった。
(はは…吹けば飛ぶような体力だな…。)
軽く心の中で苦笑いしつつ、俺は激闘の痕が残る最上階を見渡す。
俺の目的は戦いに勝利する事だけでは無い。この最上階にあるアンチトイレバリア起動装置を動かす事が、最終的な目的なのだ。
「此処に、トイレバリアの起動装置があるって話だったが…何処だ??」
見渡して見た所で、ソレらしき物は見受けられない。
ーーーーーまさか、戦闘中に破壊してはいないだろうな……と俺が思った所で、不意に脳内に通信が飛び込んで来る。
ーーーーーブルースーツカメラマンからの通信の様だ。
『聞こえるかい??ブレーダー!!』
「ーーーーーん??おぉ…ブルースーツカメラマンか。ーーーーーハッキリ聞こえるぞ。」
俺は近くのひっくり返った机の上に腰掛け、彼からの通信に応じた。なんだか、久々に彼の声を聞いた気がする。
「バウバウ〜。」
俺が机に腰掛けると、アイボも側へトコトコと歩み寄ってきた。その金属製の頭を労うように撫でながら、俺は彼からの通信に耳を傾ける。
『ーーーーーよし、ソレは良かった!それで、此方は発電所の奪還に成功したぞ!!そっちは今どうなってるんだ?!』
通信の内容は、発電所奪還作戦成功の報告であった様だ。どうやら、彼等は上手くやり遂げたらしい。
「…さっき、デスクロー・ミュータントを倒した所だ。ボロボロになってやっとだったけどな。んで、今オレはタワーの頂上に居る。仲間達は下の階層でまだ戦ってるか、或いは終わって上を目指してる筈だ。」
通信の向こうで、ブルースーツカメラマンがガッツポーズを決めたーーーーー気がした。
『そうか!!良いぞ!!ーーーーーなら、今から電力をタワーへ送り込むから、先ずはエネルギータワーのメインシステムを起動して欲しい!頼んだよ!!』
「ーーーーーでも、その装置は何処にあるんだよ?最上階、俺滅茶苦茶にしちまったけど…。」
そう言いながら、俺は全ての窓ガラスが砕け散り、レーザー攻撃を防ぐ為の盾代わりに使用したデスクや椅子が散乱する室内へと、遠慮がちに目を向けた。
床にも穴がボコボコ空いてるし、コレは後で綺麗にするのが大変だと思う。
『め、滅茶苦茶?…まぁ、良いや。ーーーーー装置については問題ないよ。起動装置は普段タワー内部に格納されてるんだ。ーーーーー今から発電機を起動するから、直ぐに分かる筈さ!』
そんな彼の声が聞こえるなり、地鳴りのような振動が足下から伝わってきた。
「…!」
「ワフ…!」
次の瞬間、部屋の床に光り輝く巨大なカメラのマークが浮かび上がる。そして、部屋の中央の床が震えながら迫り上がって来た。
その下から、大きな筒状の機械が姿を現す。ーーーーーアレがメインシステムの起動装置なのだろう。
「………コイツが、起動装置か…。」
出現した筒状の機械を見上げ、俺はポツリと呟いた。
装置の表面は黒いパネルで覆われており、筒型のスパコンに見えなくもない。
そして、ちょうど手の届く位置に真っ赤なボタンがあった。
「そしてコレが起動ボタンだな?」
俺は躊躇う事無くボタンを押す。
すると電子音と共に、起動装置から床に向かって光り輝くライン模様が伸び始めた。
「おぉ…!」
「ワン!」
装置から床へ伸びた光る模様は、根の様に床全体を這って部屋へと広がっていく。
そしてその時俺は気付かなかったが、装置の起動と同時にタワーの全ての階に電気が点き、タワー全体が明るく光り輝き始めていた。
『…主電源接続ーーーー全回路正常…』
何処からか、ノイズ混じりのアナウンスが聞こえてくる。
『メインシステム異常無し。ーーーーー全天モニター……点灯失敗。投影部の損傷確認。メインアーカイブインベントリの破損を確認。バックアップデータを参照ーーーーーデータロスト。…ネットワークの断絶を確認。エラーコード705』
「うーん……なんか色々エラー出てる感じか…。」
「クゥ〜ン…。」
……流石に10年も沈黙していただけあって、上手く起動していない所も有るらしい。俺とアイボが見守る中、エネルギータワーは辿々しくもゆっくりと起動していく。
『ネットワーク再接続テスト実行……アライアンスメインサーバーMOTHERV3応答無し…スターネットワークシステムALBIREO応答無し…通信補助システムCASPER応答無し、MELCHIOR応答無し、BALTHASAR応答無し。サポートAI管轄システ厶M.E.G応答無し……
【ERROR】全ネットワークの断絶を確認。コレよりエネルギータワー管轄システムはオフラインでの稼働を開始します。尚、ネットワーク再接続テストは1時間ごとに再実行されます。復旧するまでの間、全てのオンラインシステムは使用不可となります。』
怒涛のシステムメッセージが部屋に流れた後、不意にそれらは沈黙した。
とりあえず、一連の起動は終わったらしい。
「ーーーーーあ〜…色々エラー吐いてたけど、これ大丈夫か?」
まだ通信が繋がっているブルースーツカメラマンへ、俺は一応問いかける。
『あぁ、問題ないよ。オフライン稼働は仕方ない。大事なのはアンチトイレバリアだ。ーーーーー起動装置に近付くとホログラムウィンドウが表示される筈だから、その表示に従ってバリアを起動して欲しい。頼んだよ!』
「…なるほどね。」
言われた通りに装置へ近付くと、真四角のホログラムウィンドウが空中に投影された。
そこには無数のエラーメッセージが重なっている。
「…コレは、どうすんだ…?」
「ワン!ワン!」
無数のエラーウィンドウ前に戸惑っていると、アイボが俺の足を突いてきた。
そして、抱っこをねだるように前足を上げてくる。
「…任してほしい…ってか?」
「バウバウ!」
頷いて吠えるアイボ。
促されるままに俺はアイボを抱き上げて、ホログラムウィンドウの前へとアイボを持ってくる。
すると、アイボは前足を器用に使ってホログラムを素早く操作し始めた。
「おお!すげぇ…!」
不要なウィンドウを消し、必要な物だけ残して次々とアイボはタスクを実行していく。
そしていつの間にかエラーメッセージは全て消え、ウィンドウの中心に大きなボタンマークが出現していた。
其処には、《アンチトイレバリア実行コード》の文字が書いてある。
「バウ!」
此方を振り向いて、オッケー!と言わんばかりにアイボは吠えた。……このボタンをクリックすれば、バリアが起動するのだろう。
「ワンワン♪」
『最後はご主人が押しなよ』とでも言っているかのように、アイボが光る目で催促して来る。
「良し……ありがとなアイボ。なんか美味しいトコロだけ貰うみたいになっちまって。」
俺はアイボへ礼を言ってから、ホログラムのボタンを躊躇いなく押した。
次の瞬間、システムメッセージが最上階に響き渡る。
『ーーーーーアンチトイレバリア実行コードがロードされました。……電力回路正常。エネルギー充填完了済み。ーーーーー
そしてエネルギータワーの頂上に、眩い群青色の閃光が宿ったーーーーーーーーーーーーーーー
「
発電所を目指して廃墟を進んでいたデスクロー・ギガトンスキビディトイレは、青々とした光が灯ったエネルギータワーを見て、驚愕に目を見張った。
夜の闇に煌々と煌めくエネルギータワー。……それは、アライアンスに発電所もタワーも、何方も奪い返されたと言う事に他ならない。
ーーーーーやられた。
その言葉が脳裏を過ぎる。
…あのラージカメラマン達の部隊に、まんまと時間を稼がれてしまった。
後悔すれど、時は戻らない。…彼等はやり遂げたのだ。立ち塞がるトイレ達を退け、十年の悲願を果たしたのだ。
ーーーーーそして、タワーの先端から青い閃光が迸る。
迸った閃光は、青く薄いシャボンの膜の如く全方位へ膨らみながら広がり、街を瞬く間に覆い始めた。…アレこそが、嘗てこの街を難攻不落の要塞としていた力、アンチトイレバリアである。
そして、そのバリアの表面に触れた街のトイレ達が、次々と悶え苦しみながら倒れていった。
………アンチトイレバリアは、トイレ達にとって有害な毒となる波長の光を帯びているのだ。
「
ギガトンスキビディトイレは視線だけで人を殺せそうな目付きでタワーを睨むと、両腕のクローに紫紺のスパークを纏わせて、広がるバリアを迎え撃つ。
ズドンッ!!と激しい衝撃波が生まれ、青と紫の閃光が街の一角で爆ぜた。
そして、街へ広がっていたバリアが其処で止まる。
………なんと、彼はたった1人で街全体を包み込もうとするアンチトイレバリアに抗っているのだ。
もっとも、完全に抗えている訳では無い。……バリアとせめぎ合うクローは常に激しい火花を噴き上げ、80メートルを超す彼の巨体は、ガリガリと大地を削りながら押し込まれ始めている。
(許さんぞアライアンス共!ーーーーー大人しく身を潜めておけば良かったものを!…この世界で貴様らが生き残れる可能性など無いのだ!!……ソレを知らずにーーーーー!!)
心の中で怒りを叫びながら、デスクロー・ギガトンスキビディトイレは、バリアを押し戻そうと足掻き続ける。
既に両腕のクローは半壊し、彼の身体をアンチトイレバリアの光が蝕み始めていた。
……バリアが拒むモノはトイレのみ。街の建物は壊さず、ただトイレだけがバリアに弾かれていく。
「
ーーーーーその時、ふとギガトンスキビディトイレは見た。
近くの高層ビルーーーーー自分の頭と同じ高さのビルの上に、
……艶のあるコート。黒い髪。両目を隠すサングラス。
ーーーーー
ソレを見た瞬間、ギガトンスキビディトイレは叫ばずには居られなかった。
「貴様ァ!!ーーーーーお前が仕組んだんだな!?エージェントォ!!幾ら発電所の設備が優秀でも、十年間も稼働していないのにこんなに直ぐに動くはずが無い!!タワーもそうだ!
その叫びを聞いて、エージェントの影はニヤリと微笑む。
『彼等の行く先は前途多難…。お前達スキビディトイレを滅ぼした先にある
「
叫ぶギガトンスキビディトイレは、今にもバリアに押し負けそうだ。
そんな彼に向かって、エージェントは敵意を込めた視線を送る。
『
ーーーーーバキバキッ!!!
「?!」
遂にギガトンスキビディトイレのクローが、バリアに負けて破壊された。そして、彼の身体はバリアに押し退けられて行く。
「おのれ!!!コレで終わると思うなよッ!?」
ギガトンスキビディトイレは、光り輝くタワーを睨んで叫んだ。
「
チープな悪役の様な捨て台詞を吐きながら、デスクロー・ギガトンスキビディトイレはバリアに弾かれ、街の外へと放逐された。そして、彼が街から弾き出されると同時にバリアの展開は終了し、街全体を包む半球状の構造となる。
ーーーーーこうしてアンチトイレバリアは完成し、全てのトイレ達はこの街から駆逐されたのだった………
ーーーーー空を覆っていた雲が晴れ、地平線が薄っすらと白み始める。
「………朝、か。」
ーーーーーエネルギータワーの頂上で、ブレーダーカメラマンは街を見下ろし、深い感慨と共に呟いた。……藍色に染まりだした空が、夜の深い闇を打ち払っていく。
それは多分昨日も訪れたであろう夜明け。
…しかし、今日は違う。
「ここからだ…。ココから、全てが始まるんだ…!」
彼は登り始めた眩い太陽へ手を伸ばす。
今日の夜明けは、まったく新しい夜明け。
ーーーーーまだ見ぬ夜明けだ。
都市奪還終了!!
…遂にアライアンスの手にこの街が戻って参りました。
ちなみにトイレ軍の上位階級のトイレ達は、大体エージェントの存在を知ってるって言う設定です。
あと皆気付いて無いかもだけど、コレ全部主人公君が転生して来てから、初日の内に起こった出来事なんですよ。
…どんだけ濃い1日なんだよ()
と言うことで今回はココまで。
次回は暫しお待ちを…