Skibidi_Toilet Multiverse〜Alternative〜   作:犬社長

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お 待 た せ し ま し た !







36〈The TIME has come〜『時』は来た〜〉

 

 

 

 

試作型(プロト)()()()()()()()()

 

 

 

 ブルースーツカメラマンからそう呼ばれた〈7人の機士〉の1人は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、銀色に煌めく長剣を手に、映像の中のアライアンス達の前へ立ち塞がる。

 

 その出で立ちは神々しくすらあり、映像越しになのにも関わらず、俺達はとんでもないプレッシャーを感じていた。

 

 

 

「…時を操る…だと…??」

 

 映像を見詰めながら、俺はブルースーツカメラマンのセリフをゆっくりと反芻する。

 

「いや…時間操作とかチートじゃねぇか…。」

 

 俺の声に、全員が頷いた。

 

 なんだよ〈時間操作〉って。こっちは銃とか剣とかで必死こいて戦っているのに、そんな急に超能力バトル物みたいな設定お出しされて爆絶意味分かんねーよ。

 

「……つまり、今の高速移動も正確には()()()()()()()()()()()()()か、()()()()()()()()()()()の何方かと言う訳だな。」

 

 高速移動の絡繰に気付いたらしいプランジャーマンが、ポンと手を打った。

 

 時を止められては、それを観測する事など不可能。目にも止まらぬ高速移動も、止めた時の中で動いているのであれば納得出来る。

 

「こんなんどうやって勝つんだよ…?」

「…弱点はある。」

 

 俺の呟きに答えたのは、隣で腕を組むドクターだった。

 

「ーーーーー()()だ。…特別な物である必要は無い。クロックタイプは、我々アライアンスの中でもっとも繊細な機構を体内に有する。それは、僅かな磁気で直ぐに狂う。……時間操作の力も同じだ。」

「その通り。」

 

 ドクターの言葉を、ブルースーツカメラマンが継いだ。

 

「時間操作の力は〈磁石〉の磁気で無力化出来る。…もっとも、この時は誰も持っていなかったんだけどね。誰か一人でも持っていれば全滅は免れたかも………。」

「クロックタイプが敵に回るなど、予想しておけと言う方が酷だ。仕方のない事さ。」

 

 そう言って、プランジャーマンがブルースーツカメラマンの肩を軽く叩いた。

 

「…じゃあ、次戦う時は磁石は必須だな。」

 

 俺の呟きに皆が神妙な面持ちで頷く。ーーーーーそして、誰彼となく画面の映像へと視線を戻した。

 

 ……いずれ俺達と戦う事になるであろう〈プロト・クロックウーマン〉。…その時が来た時の為に、今は一瞬たりともこの戦いを見逃すわけにはいかない。

 

 


 

 

 

 ────時計の針を思わせる長剣が宙を舞い、白銀の剣閃が空を奔る。

 

 

 …その度にカメラマンが1人、また1人と首を斬られて死んでいった。

 

 戦闘開始から1分も経っていないと言うのに、既に半数以上のカメラマン達が殺害されてしまっている。────このまま戦い続ければ部隊は全滅してしまうだろう。なにせ、相手は時を操る能力持ち。対策も無い今、このまま戦い続けても無駄に殺られるだけだ。

 

 それはブルースーツカメラマン達も理解している。此処で全滅する事を避ける為には逃げた方が良い。──しかし、それでプロト・クロックウーマンが逃がしてくれる筈も無く、仲間達は次々と倒されていく。

 

 この非常に絶望的な状況を打破する為に動いたのは、片眼鏡(モノクル)のカメラマンだった。

 

 ────彼は指で部屋の奥を差すジェスチャーをすると、ブルースーツカメラマン達へ背を向けて武器を構える。拳銃では無く、警棒の様な鋼鉄の近接武器だ。

 

『アイツは俺が食い止める。お前らは先に行け。』──音声データは無いのにも関わらず、映像を見ていた俺達全員にそんな声が聞こえた気がした。

 

 ………この場からの逃走を成功させる為には、誰かがプロト・クロックウーマンを引き付けて、逃げる時間を稼がねばならない。

 

 ────その為の囮役を、彼は1人で引き受けたのだ。たとえ、それが無謀な行いであると知っていたとしても。

 

 そして、画面の映像が勢い良く動き出す。彼の意を汲んだブルースーツカメラマンが、部屋の奥目掛けて全力で走り出したのだ。

 他の仲間達も、同じ様に全力で部屋の奥を目指して走り始める。

 

 ……だが、時間を操る力を持つ者の前で『時間』を稼ぐ、なんて事が果たして出来るのだろうか?

 

 ────答えは否である。

 

 

 ーーーーー閃く剣閃。

 

 

 ブルースーツカメラマンの両側を走っていた2人のカメラマンが、首を斬り飛ばされて床に倒れ込む。

 

 そして、ブルースーツカメラマンの前にもプロト・クロックウーマンが立ち塞がった。

 

『……………。』

 

 長針と短針が回る、古びた懐中時計にも似た顔がゆっくりと彼の方へ向けられる。……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、顔全体が暗闇に呑み込まれているかの様にも見えた。

 

 そして、彼女は手に持っていた片眼鏡(モノクル)カメラマンの首を無造作に投げ捨てる。

 

 断面から火花を散らす彼の首が、白い床の上を滑ってブルースーツカメラマンへ転がって来た。

 ……もうその(カメラ)が、何かを写し出すことはない。彼は死んだのだ。恐らく、一瞬で。

 

 それを見たブルースーツカメラマンは、静かな怒りに震えながら中指を彼女へ向けて立てる。

 

 刹那、彼女が長剣を構えて一気に近付いてきた。

 

 …素早い動きだが、何故か今の彼女は時を止めていない。単純に高速で近づいて来ているだけだ。

 ──故に、ブルースーツカメラマンには回避と反撃のチャンスが訪れる。

 

 ────発砲。

 

 ブルースーツカメラマンが、接近してくる彼女目掛けてライフルを撃った。

 しかし、弾丸は斬って止められる。…フィジカルの差が、圧倒的だ。

 

 ────一閃。

 

 彼女が放った鋭い薙ぎ払いが、ブルースーツカメラマンの持つボルトライフルの先端を切り飛ばす。…コレで銃は無力化されてしまった。

 

 しかしブルースーツカメラマンは諦めない。

 

 彼は使い物にならなくなった銃を捨て、腰のベルトからナイフを取り出すと、クロックウーマンへ斬り掛かった。

 

 ────散る火花。

 ……彼のナイフとクロックウーマンの剣が激突し、鍔迫り合いとなる。

 

 そして、そのままブルースーツカメラマンは空いている方の手で、クロックウーマンへ拳を放つ────よりも早く、クロックウーマンがブルースーツカメラマンの足へ足払いを掛けた。

 

 映像の視界がグルンと回転し、ブルースーツカメラマンは床に叩きつけられる。

 

 そこへ真っ直ぐ迫る剣の切先。

 

 彼は顔面を狙うその一撃を横に転がって避け、バク宙で素早く起き上がった。

 

 そしてまたナイフを構えて彼女へと挑むが、ナイフが届くよりも早く、顔面にクロックウーマンの()()が迫って来て、映像が激しく乱れる。

 

 彼女は床に突き刺した剣を支柱として、腕の力だけで体を床に対し水平に浮かせ、更にそこから足を伸ばして飛び蹴りを放ってきたのだ。

 

 ────不意をつくような蹴りを浴びたブルースーツカメラマンの視界にヒビ割れが走る。

 

 そして彼が起き上がった時には、既にクロックウーマンは目と鼻の先まで来ていた。

 

 ──彼が咄嗟に放ったナイフの突きを避け、同時に彼の体を流れる様に斬りつけるクロックウーマン。

 

 映像がまだ酷く乱れ、後へ流れていく。…斬りつけられると同時に吹き飛ばされた様だ。

 

 そして、壁か何かに当たってブルースーツカメラマンは止まる。…かなり深く斬りつけられたのか、傷口から機械油が血の様に流れ出し、白い床に黒く広がっていった。

 

 …致命的損傷(クリティカルダメージ)一歩手前。まさにそんな状況になってしまった彼へ、クロックウーマンは悠々たる足取りで近付いて来る。

 

 映像(視点)が活路を探す様に左右へ揺れ動き、ふと直ぐ側の壁に取り付けられたエアダクトの通気孔を見つけた。

 ……通気孔は金網で塞がれているが、衝撃を加えれば直ぐに外れそうだ。

 

 それを見たブルースーツカメラマンは、手に持っていたナイフをすかさず投擲。──更に自分の破れたコートもクロックウーマンへ投げつけ、ナイフを弾き落とした彼女の視界を一瞬だけ塞ぐ。

 

 クロックウーマンは片手で彼のコートを払い除けたが、その時には既にブルースーツカメラマンはエアダクトへ駆け寄っていた。

 

 そして、走る勢いそのままスライディングしながら金網を蹴り破り、エアダクトの中へ飛び込む。

 

 飛び込んだダクトの中はかなり急な下り坂になっていて、まるで滑り台を滑り降りるかの如く、ブルースーツカメラマンの体は真っ暗なダクトの中を高速で落ち始める。

 

 

 ────その様にして自由落下を始める事20秒。……暗闇の先に微かな光が現れ、みるみる内に近付いた。──あれがエアダクトの出口に違いない。

 

 

 

 そして、ブルースーツカメラマンの体は激しい衝撃と共に、光の向こう側へ投げ出された──────

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ────そこで映像は止まった。

 

 

「ーーーーー以上が、私がインストールした彼の記録映像だ。…見たい物はコレで見れただろう。」

 

 そう言って、Dr.カメラマンがタブレットを回収する。

 

「……ありがとう、ドクター。」

 

 ブルースーツカメラマンは彼に向かって頭を下げた。

 そして、俺達の顔を見渡して言葉を続ける。

 

「────今観て貰った通り、僕を除いてサイバーシティ潜入組は全滅してしまった。……あの後ダクトから外へ出れた僕もトイレ達に追い掛けられたし、帰還用ヘリのある地点へ先回りもされていたけど、何とか街から脱出出来たのさ。…我ながらしぶとい奴だと思うね。」

 

 そう言って、彼は握り拳をギュッと握った。

 

「もちろん、僕がコレで諦める筈も無い。AI〈ミク〉を取り戻す為に戦って死んでしまった皆の無念を晴らす為にも、どうか手伝って欲しいんだ。頼めるかい?」

 

「勿論だ。──〈ミク〉の回収は、エネルギータワーの完全復旧の為にも、避けては通れない最重要目標。俺達は持ちうる全てを使って戦うつもりだ。」

 

 プランジャーマンが親指を立てながら力強く頷く。俺達も同じ様に頷きを交わして、彼の言葉に賛同した。

 

 

 ────次なる戦いの舞台は、スキビディトイレ達の街〈スキビディ・サイバーシティ〉。

 

 

 新たな戦いが始まる日も近い。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

〜数日後〜

 

 

 

 

 ────ブルースーツカメラマン復活から数日後。

 

 

 彼から齎されたサイバーシティの情報は、全アライアンスへ伝えられ、それを元に新たな作戦がプランジャーマンの主導で計画された。

 

 新たな作戦名は〈サイバーシティ強襲作戦〉。

 

 目的は、スキビディトイレ達の大都市である〈スキビディ・サイバーシティ〉へ()()()()()()()()()()()()()()()()()()で総攻撃をかけ、サイバーシティの破壊と、封印されていると思われるバーチャルサポートAI〈MIKU(ミク)〉を解放する事にある。

 

 

 

 

「ーーーーーこの作戦は、恐らく敵勢力との総力戦となる。」

 

 そうプランジャーマンは俺達を含むアライアンス全員へ告げた。コレは作戦実行前の最後の演説でもある。

 

「サイバーシティには我々の総数を上回るトイレ達が居る事に加え、()()()()()()()()一柱(ひとり)である〈機械王(サイバーロード)ジーニアス・サイエンティストスキビディトイレ〉がトップに君臨しているからだ。」

 

「────そして、洗脳された〈7人の機士〉試作型(プロト)・クロックウーマンも敵となるだろう。……正直、我々は数で劣っている。だが、ソレは言い訳にはならない。各々が出来る全てをこの一戦に賭け、ただ勝利を目指すのみだ。──そして、皆はそれが出来る最高のアライアンスであると、俺は信じている。」

 

 

 この彼の演説は、アライアンス達の戦意を高めるのに十分であった。彼らは皆、来たるべき戦いの為にこの数日間を過ごしていたのだ。──戦意の高まりは正にピークとなっている。

 

 そして遂にこの日が来たのだ。弱音を吐く者は誰一人としていなかった。

 

 

「やってやろうじゃないかアライアンス…!」

 

 すっかり司令塔としての貫禄がついてきたプランジャーマンは、俺達全員へ最後の発破を掛けた。

 

 

 

「────戦いを始めるぞ!!!」

 

 

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!」」」

 

 

 彼の声に合わせ、拳を突き上げるカメラマンとスピーカーマン達。

 

 

 

 

 そして、戦いの舞台はサイバーシティへと移る────

 

 

 

 








1章〈連盟都市編〉はコレにて終了です。

次回より2章〈スキビディサイバーシティ編〉が始まりますので、待たせてばっかりだけど、もうちょっとマっててください()

時間は掛かるけど、色々考えてるから……!ユルシテ…
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