Skibidi_Toilet Multiverse〜Alternative〜 作:犬社長
おまたせ〜〜。
待たせた分、今日は少し長めです(当社比)
ゆっくりしていってネ。
荒廃した街に、低く重々しい声が轟く。
「SKIBIDI SKIBIDI SKIBIDI」
声の主は、勿論『デスクロー・ギガトンスキビディトイレ』だ。
ーーーー突如として降臨したヤツは、まるで何かを探しているかのようにゆっくりと首を回している。
「…まさか、俺を探してたりはしないだろうな…?」
隠れている瓦礫の間からその様子を見つつ、俺は小さく呟いた。
すると、不意にヤツの頭部についている半透明のバイザーが、紫色に妖しく発光する。
そして、バイザーから放たれた紫の光が、恰もサーチライトの様に瓦礫の山を照らし出し始めた。
そのまま、ゆっくりと舐めるような動きで光が此方へ向かってくる。
「…!やべぇ…!」
俺はアイボを小脇に抱えると、瓦礫の更に奥へ体を押し込むように隠した。
ーーーーさっきまで俺が居た位置で、ピタッと止まるサーチライトの光。隠れていなければ見つかっていただろう。
しかし、今度は光がそこから動かなくなった。……バレている筈は無いだろうが、此方をジッと見つめられている気がする。
(ーーーーちょ…早く違う所を見ろ…!見ろって!!此処には誰も居ないって!!)
心の中でそう必死に念じていると、やがて警戒を解かれたのか、サーチライトの光が違う方向へ逸れていった。
そして、地鳴りのような音と共にギガトンスキビディトイレは別の方角へ動き始める。
その巨体故に、ただ動くだけでアスファルトがバキバキと砕け、移動に巻き込まれた小さな建物が崩れ落ちて行った。
「SKIBIDI SKIBIDIーーーー」
巻き上がる大量の粉塵と共に、遠ざかっていくギガトンスキビディトイレ。
その後ろ姿を見ながら、俺は張り詰めていた緊張の糸がフッと切れるのを感じた。
「はぁ…はぁ……。」
この身体に心臓など無い筈だが、胸の動悸が止まらない。
(ヤベェぞアイツ…。デカ過ぎるし、何か変なオーラみたいなの纏ってるし……アレは正面切っての戦闘は無理だな……。)
そもそも、あのサイズの相手にこんなちっぽけな日本刀は通用しないだろう。
中々にヤベェ奴が居たものだ。…今の自分には、アレに打ち勝つビジョンが思い浮かばない。
「……クゥ〜〜ン??」
「アイボ……。」
「大丈夫?」とでも言っているように、アイボが俺の足に前足を乗せて鳴く。
その仕草を見ると、少し心が落ち着いた気がした。
「…大丈夫だ。ーーーーありがとな、アイボ。…さぁ、俺を目指すべき場所へ連れて行ってくれ。」
アイボの頭を軽く撫ぜてから親指を立てて見せると、アイボは嬉しそうに尻尾を振った。ーーーーそして、隠れていた瓦礫の中から飛び出すと、また俺を先導して歩き始める。
こうして、思いもよらぬ強敵との遭遇を何とかやり過ごした俺は、再びアイボと共に移動を再開するのだった。
◇◆◇
そんなこんなで歩く事、数十分。
依然として、アイボは荒れ果てた街を歩き続けていた。ーーーー時折、ちゃんと俺が付いてきているか確認する様に、此方を振り返って見てくる。
「ワン♪ワン♪」
「元気だなぁ。………機械に言うのも変な話だけど。」
「こっち♪こっち♪」と言っているかの様に吠えるアイボを見て、俺はポツリと呟いた。…まぁ、かくいう俺も今は機械なワケなんだが。
(にしても、荒れ果てた街をこんなに長々と歩くだなんて、生身の人間なら結構大変だっただろうな。)
俺は心の中でそう独りごちる。
幸いにも、今の体は疲れ知らずの機械の体だ。疲労で動けなくなることは無い。有るとすれば、トイレとの戦闘でダメージを受けたときぐらいだろうが……
(そういえば、トイレを見ないな。街中に居るのとばかり思ってたが、意外と沢山は居ないのか??)
ふと、俺はそんな事を思う。
……それがフラグだったのだろうか。ーーーー突如として、アイボの行く手を阻む様に、幾つかの黒い影がわらわらと出現した。
……トイレ軍だ。しかも、初戦の時より数が多い。
「ーーーーちっ、噂をすれば影だな!?アイボ!下がれ!!」
「ワフン!!」
俺は日本刀を抜刀し、臨戦態勢に入る。アイボは、一目散に俺の後ろへ駆け寄って来て隠れた。アイボに戦闘機能は無いらしい。
「 SKIBIDI SKIBIDI SKIBIDI SKIBIDI 」
「dop dop !!! yes yes!!!wwww!!!!」
「SKIBIDI!!! SKIBIDI!!!」
ニヤニヤとした笑みを浮かべながら、俺たちへ迫ってくるスキビディトイレ達。
その数は13体。……中々多い。
更に、初めて見る個体もちらほら混じっていた。
皆一様に便器が黒く、便器の正面に丸い砲身のような物が付いている。
【個体名:ミニレーザーキャノン・スキビディトイレ
状態:正常
戦闘シュミレーション結果:勝率88%】
自動スキャンが、黒いトイレ達の情報を視界に写し出してくれた。
「レーザーキャノン…?ーーーー遠距離攻撃持ちか。」
近接武器である日本刀は、若干不利かもしれないーーーーーーそう俺は思考を巡らす。
「……先ずはノーマルトイレから片付けるか!」
数はノーマルトイレが8体に対し、レーザー持ちは5体。…俺は先に数の多い方から倒す事にした。
(物量で押し切られる可能性は捨てきれないからな!!)
ダンッ!と大地を蹴って、俺は大地を走る。
同時に、ノーマルトイレが俺に向かって首を伸ばしてきた。
「フッ!!」
「SKIBIDI!!!」
最初の1体の攻撃を避けつつ、勢い良く切り捨てる。そのまま、後ろへ回ってきた2体目を、左足を軸に繰り出した回し蹴りで空高くかっ飛ばし、飛び掛かってきた3体目の眉間を刀で刺し貫いた。
ーーーーと、此処でレーザースキビディトイレ達の遠距離攻撃が始まる。
「SKIBIDI!!!!!」
「ーーーーッ?!」
便器に付いている砲身に黄色い光が宿ったかと思えば、大気を灼いて一条の光線が此方へ飛んできた。
「くっ!!」
ソレを、体を捻って何とか回避する。俺が避けたレーザーは、真後ろの廃墟の壁に当たり、爆発と共に大きな穴を穿った。
「あっぶねぇ!!」
ーーーー息付く暇も無く、2射目3射目が俺に迫る。
ソレをなんとか避けつつ、俺は勇気を出して前に出た。…このまま後ろへ退き続けていたとしても、レーザー攻撃は止まらない。…止める為には、撃ってくるアイツ等を倒すしか無い。
「「「SKIBIDI dop dop yes yes!!!!」」」
俺の動きを止めようと、ノーマルトイレが束になって挑んで来る。
「退けぇ!!」
俺は手前の1体を素早く斬り伏せると、振り下ろした刀の切っ先をクルリと上向きに回転させ、跳ね上げるように刀を振るった。
「ーーーーSKIBIDI !?」
鋭い斬り上げを食らった2体目のノーマルトイレが、勢い良く吹き飛んでいく。
コレで全部で5体目。
「SKIBIDI!! !SKIBIDI!!!」
「……残り3体!!」
俺はカウントしながら、ノーマルトイレ目掛け刃を振るう。空を切って放たれた横薙ぎの切り払いが、更にもう1体斬り倒した。
「6体目!!」
そう言いながら追撃しようとした時、割って入るようにレーザー攻撃が飛んで来る。
「ーーーーッ!!!」
ーーーー5体のミニレーザートイレによる同時攻撃だ。迫るレーザーの弾速は速く、視界が黄色い閃光で埋め尽くされる。
(マズい!避けきれないか?!)
攻撃から次の攻撃へ移るタイミングで仕掛けられたせいで、反応がほんの僅かに遅れた。
(当たるーーーーーーーーーー)
ーーーー俺が被弾を覚悟した時、突如としてアイボの声が聞こえて来た。
「ワオーーーンッ!!!」
「アイボ?!」
俺の目の前に、後ろに居た筈のアイボが飛び出して来る。そのまま、俺を庇うかのようにレーザーの前に立ちはだかった。
「ッ?!ダメだ!アイボ!!」
思わず手を伸ばす俺。しかしその手は届かず、アイボの身体がレーザーに貫かれ………
ーーーーなかった。
「ーーーーワン!!!」
「は?」
気合の入った吠え声と共に、アイボの顔の瞳が青く光ったと思えば、3×3メートル位はありそうな、半透明の青く光る壁がアイボの眼前に出現する。
そして、それに当たったレーザーが次々と爆発していった。…勿論、アイボは無傷だ。
「盾…!?ーーーーエネルギーシールド的な?!」
アイボにまさかの防御機能。コレにはかなり驚いた。
「SKIBIDI!?」
相手も驚いているのか、全員が口を大きく開ける。ーーーーしかし直ぐに立ち直ると、またレーザーを放ってきた。
だが、アイボのシールドは壊れない。しっかりと5本のレーザーを受け止め、耐え続けている。
「凄いぞアイボ!!ナイス盾!!」
「バウバウ!!」
盾を展開したまま、誇らしげに吠えるアイボ。しかも、盾を前に出したまま、なんと走り出したではないか。
「盾出したまま動けるのか!最強かよ!!」
このチャンスを活かさない手は無い。俺はアイボの後に続いて走り出した。
「「「SKIBIDI SKIBIDI!!!」」」
レーザートイレ達が叫びながらレーザーを乱射してくるが、そんなモノはもう怖くない。
「斬り捨てるッ!!!」
気迫を刃に纏わせ、俺は近くのレーザートイレを一刀両断した。悲鳴を上げて、爆発四散するレーザートイレ。
その爆炎を潜るようにして、俺は他のレーザートイレ達へ斬り掛かる。
「S、SKIBIDI!!」
「ーーーーもう遅い。」
レーザートイレ達も応戦はするものの、肝心のレーザーを発射するまでに少し溜めが必要なせいで、チャージして撃つより先に俺に斬り倒されていく。
噛みつき攻撃の速度はノーマルトイレよりも遅く、近接戦闘慣れしていない事は明確だ。
(遠距離からのレーザーは脅威だが、やはり近付かれれば脆いな。アイボに感謝だ!)
シールド役を務めてくれたアイボに感謝しつつ、俺はレーザートイレ達を次々と倒していく。
そして残ったノーマルトイレ2体も倒し、コレでトイレ達を全滅させる事が出来た。
あとに残ったのは、レーザーによって破壊された建物の残骸と、地面に転がる13個の便器のみ。
「……ふぅ。終わったか………」
訪れた静寂の中で、俺は刀を鞘に納めて一息つく。
…体は疲れないが、精神はそうもいかないようだ。
「ワン。」
「お疲れ」と言うようにアイボが吠えた。既にシールドは消してあり、目の光は元に戻っている。
…若干、目が眠たそうな雰囲気を纏っているが、大丈夫だろうか?
「…大丈夫か?アイボ。なんか、眠たそうだけど。」
「クゥーン…。」
前足を器用に動かして、顔を擦るような動作をするアイボ。
ソレを見ていると、スキャン能力が自動で起動し、アイボをスキャンした。
【報告:[aibo]の内部電力 残り50%
(電力回復の為には、専用の充電ステーションが必要です)】
「……電池が少なくなってきたのか。もしかして、シールドは電力をかなり消費するのか?」
「ワフ。」
肯定するようにアイボが頷く。
………ソレは困った。この、可愛くて頼りになる案内人(案内犬)が起動停止してしまった場合、何処に行けば良いか分からなくなる。
「…あと50%で、お前の目指す場所には着きそうか?」
「ワン!」
訊ねてみると、意外と自信に満ちた声が返ってきた。……どうやら、残存電力だけで辿り着けるらしい。
「そうか。…なら、頼むぞアイボ!」
「ワン♪ワン♪」
俺の声にアイボは尻尾を振ると、再び歩き始めた。俺もそれを追って歩みを進める。
ーーーーーーーーそして、1人と1匹の姿は廃墟と化した街の中へ消えていくのだった。
◇◆◇
「………SKIBIDI。」
ーーーーブレーダーカメラマンとアイボが立ち去ってから、暫く経った後。
レーザートイレ達と戦闘が繰り広げられた場所に、黒い影が1つ降り立った。
便器から首が生えているだけでは無く、手や胴体も付いているスキビディトイレーーーーいわゆる、【ミュータント・スキビディトイレ】だ。
しかも、普通の【ミュータント・スキビディトイレ】とは違い、【デスクロー・ギガトンスキビディトイレ】の様な紫色のヘルメットとバイザーを着用し、背中からは先端に鋭い3本の爪が付いた、長い金属製のアームが飛び出している。
「………………。」
『彼』は、落ちているスキビディトイレ達の便器を無言で見下ろし、そっと労わるように便座の部分を撫でる。
そして、ブレーダーカメラマンの去って行った方角を見つめ、ゆっくりと後を追う様に歩き始めた。
「SKIBIDI DOP DOP Yes Yes……」
低い呟きの後、『彼』の両目を覆うバイザーに、妖しい紫の光が宿るのだった。
読了謝謝茄子。
アイボは唯の相棒じゃ御座いません。
なんせ、あのシークレットエージェントから送られてきた存在ですからね。
シールド機能以外にも、いくつかのサポート用機能があるんで、またコレからお披露目出来たら幸いです。
そして、そろそろ他のカメラマンも登場させたいね。もう五話なのに、未だに味方陣営と合流してないって言う()早く合流してもろて………