万年見習い底辺絵師の俺でしたが爆乳少女たちをモデルにしてからバズりまくってます 作:青ヤギ
「だだだ、誰ですかあなた!? どうしてここに男の人が!?」
両手で目を覆いながら、脱衣所に入ってきた少女は叫んだ。
ま、まずい!
このままでは変質者として通報されかねない!
「ま、待て! 怪しいもんじゃない! 俺は今日、入居が決まったもんで……」
「そんな話、聞いてません!」
「いまさっき決まったんだよ! 璃里耶に聞けば、わかるから! 頼むから説明の余地を……」
「いいえ! 聞く耳持ちません! 言わずともわかります! あなた、変態さんですね!? いまからそのお姿で蘭胤荘を歩き回って、私たちに大声では言えないようなことをする気なんですね!?」
「そんなことするか!」
少女の頭の中ではとんでもない想像が広がっているようだった。
「変態さんは皆そう言って油断させるんです! するんですよね!? ハレンチなことを! その、その、立派なものを使って……チラ」
指の隙間から、なぜか俺の股間を再度見る黒髪の少女。
頭から湯気が出る勢いで、全身が赤くなる。
「きゃあああ! 私には刺激が強すぎますぅぅぅ!」
「わぷっ!?」
バスタオルと着替えを顔に投げつけられる。
慌てて手に取って、視界を回復する。
「た、頼むからいったん落ち着いて……ん?」
指に引っかかるものがあった。
ミントグリーン色のブラジャーだった。
「なっ!?」
とんでもない代物が指に絡まってしまった!
そして悲しき男のサガか、初めて間近に見る女性ものの下着に目を奪われてしまう。
というか……デッッッッカ!?
片側だけでも俺の顔を覆い尽くせそうなほどの、特大サイズのブラジャーだった。
改めて少女を見る。
白いブラウス越しでもわかるほどに大きな胸。
こんな大きなブラジャーを身につけるのも納得の膨らみの持ち主だった。
というか、その小柄な体にアンバランスな胸と、愛らしい美貌に見覚えがあった。
「え?
水無瀬
俺の通う学園の同級生で、『聖女』のあだ名を持つ、アイドル的人気を持つ少女だ。
いいとこのお嬢様らしく、実際に仕草や所作からは育ちの良さが窺える。
清楚な雰囲気とお淑やかな振る舞い、一方で暴力的な発育ぶりというギャップが人気を集め、多くの男子たちの心を射止めている。
青花は普通科なので、芸術科の俺と接点はないが、彼女の噂くらいは耳にしていた。
遠目から見たときは『聖女』というあだ名も大げさではないと思うくらいには、彼女の美貌に惹かれていた。
そんな密かに憧れていた少女が、まさかこんなボロアパートに住んでいるとは思いもしなかった。
そして俺はいま『聖女』と呼ばれるほどに清楚な少女の前で素っ裸となり、しかも彼女の下着を握っている。
なんとも最悪なファーストコンタクトだった。
「はっ!? それは私の下着! この一瞬で下着を盗むだなんて、やはり凄腕の変態さんですね!」
「いや、そっちから投げたんだろうが!」
「ああ~!! お父様~! お母様~! 青花の純潔はどうやらここまでのようです! 私、覚悟を決めました! やるなら、ひと思いにやってください!」
「お願い! ひとりで勝手に盛り上がらないで!」
「……なにしてるの、あなたたち」
騒ぎを聞きつけてやってきた璃里耶のおかげで、ようやく誤解は解けた。
「ごめんなさいね。『使用中』の札をかけるのを忘れていたわ。青花も悪かったわね。カケルのこと説明しようと思って部屋を尋ねたんだけど、行き違っちゃったみたいね」
「い、いえ。私こそ早とちりしてしまって……すみませんすみませんすみません!」
「いや、もう謝らなくていいから。とりあえず、扉を閉めていただきますとありがたいです……」
わかってもらえたのは良かったが、いつまでも女子の前で股間を隠している姿を見られたくはない。
顔を真っ赤にした水無瀬さんは「ど、どうぞごゆっくり~……」となるべく目を合わせないようにしながら扉を閉めた。
……学園のアイドルとこんな形で知り合いたくはなかった。
ブルーな気持ちになりながら着替えを下洗いして、洗濯機に詰め込み、やっと風呂に入った。
* * *
数日ぶりに温かいシャワーを浴びて汚れを落とすと、たちまち落ち込んでいた気分も回復した。「シャンプーやボディーソープは私のを使って」と璃里耶に言われたので、彼女の名前が書かれたボトルをありがたく使わせてもらう。
種類の異なるボトルセットは、四種類ほどあった。
恐らく、住民ごとに自分専用のものを用意しているのだろう。
璃里耶に、大家の未遥に、青花……そして『エル』と書かれたボトル。
蘭胤荘の住人は、これで全員なのだろうか?
そう考えると、随分と少ない。格安の家賃といい、これで経営は成り立つのか?
本当に家賃を先延ばしにしても良かったのかな……。
良心は痛んだが、しかしこうして雨風をしのげる場所で、温かい風呂に入れるのは素直にありがたかった。
念入りに頭と体を洗ってから湯船に浸かった。
久しぶりに入る湯船は、まるで天国のようで、いまにも心地よさで体が蕩けてしまいそうだった。
普段あまり長風呂はしないが、この日はじっくりと入ることにした。
洗濯がそろそろ終わる頃を見計らって、風呂から出た。
「ふ~ん、赤色のパンツとはなかなか大胆だねー」
脱衣所に、またしても少女がいた。
今度は薄紫色の長髪をサイドテールにした、派手な見た目をした少女だった。
ギャル風の少女は、洗濯機から衣服を抜き取り、なにやら品定めのように広げていた。
いま彼女の手には、俺のお気に入りの赤色トランクスが握られている。
「なにしてんの!?」
股間を隠しながら、俺は叫んだ。
「おっ、リリヤンが言ってた新しい入居者さんだねー。よろー」
何食わぬ顔で、ギャルは素っ裸の俺に挨拶をした。
「一〇三号室に住んでる
名前の響きからして、ボトルに書いてあった『エル』とは彼女のことらしい。
「あ、どうも。空野カケルです……じゃなくて!」
人懐っこい笑顔を浮かべる恵流につられて、ついお辞儀してしまったが、すぐに冷静になる。
「人の洗濯物漁ってるヤツと仲良くできるか! というか『使用中』の札かけてなかったか!?」
「うん、見たよー。でも手洗いとうがいしたかったしー」
ギャルのくせに真面目か。
「あと洗濯終わってたから、代わりに籠に入れてあげようかなと思ってー」
「結構だ! 自分でやる!」
「遠慮しなくていいよー。あーし家事とかめっちゃ好きだしー」
「いいから! とにかく出てってくれ!」
俺は素早く腰にタオルを巻いて股間を隠した。
大家の未遥さんといい、ここの女性陣に羞恥心はないのだろうか。
少女らしく初心な反応を見せた水無瀬さんを見習ってほしい。
「ふーん、なかなかイイ体つきしてんねー」
「なっ!?」
ギャル少女は出て行くどころか、間近まで近づいて俺の裸身をまじまじと見てきた。
「おー、結構鍛えてんじゃーん。筋トレとかしてるー?」
「まあ、嗜む程度には……」
とあるお気に入りのイラストレーターが「クリエイターは体が資本! クリエイターほど体を鍛えるべきです!」と言っていたので、室内トレーニングの動画などを参考にして体を鍛えていた。
芸術科は基本的にひょろひょろで不健康そうな肌色をしている男子が多い。
そんな中、運動部にも匹敵するほどの筋肉を有しているのが、俺のひそかな自慢だ。
「すご、腹筋割れてじゃん。かっこいいなー。ちょっと触ってみてもいいカケルン?」
「カ、カケルン!?」
「うん、空野カケルだからカケルン。あーしのことも気軽に恵流って呼んでいいよん」
異性相手にも遠慮のないこの気安い距離の詰め方は、やはりギャル特有のものなのか。
それとも……彼女の噂が真実だからなのか。
風見恵流。彼女のことも、少し知っていた。
水無瀬さんほどではないが、彼女もちょっとした学園の有名人である。
最も、『聖女』と持てはやされる水無瀬さんと違って、あまり良くない噂だが……。
「おー、腹筋カチカチだねー」
「ちょっ! 勝手に触るなって!」
恵流は許可もなく、俺の体をペタペタと触り始めた。
ただ、その手つきはイタズラしているというよりも、何か確かめるような感じだった。
「んー、この体型なら、どんなのが似合うかな……やっぱり体つきがわかる感じのが……」
ジッと俺の裸の上半身を見ながら、恵流は何やらブツブツ呟いていた。
あまりにも恵流が熱視線を向けてくるので、恥ずかしさでどうにかなりそうだった。
「か、勘弁してくれ。ていうか、男の体なんて珍しくも……」
「んー? あーしが『ヤリマンのビッチだから男の裸なんて見慣れてるだろ』って言いたいのー?」
「っ!?」
そんなつもりで言ったわけではなかったが、そう解釈されてもおかしくないことを口にしてしまった。
「カケルンも噂を信じてるクチー?」
「いや、それは……」
風見恵流は、男を取っ替えて遊びまくっている。
という良くない噂が学園で流れていた。
派手な化粧も必要ないほどの整った顔立ちに、男受けする体つき。どんな男子にも分け隔て無く接してくる屈託のない性格。
彼女の振るまいから勘違いしてしまう男子は数知れず。特に女子と縁の無い日陰者はありもしない想像を膨らませて、恵流にアタックを仕掛けているそうだ。
いつしか恵流は「男なら誰でもいいアバズレ女」と揶揄されているようになっていた。
くだらない噂だ、と俺は思っていた。
しかし、こうして男の裸を前にしても動じない恵流を見ていると、もしかして本当に……。
「カケルンは軽蔑しちゃう~? こういう女はー」
「……いや」
恵流の言葉で、俺は悪い想像を振り払った。
「根も葉もない噂を信じ込むのは、最低の人間がすることだ」
「え?」
「まだ良く知らないのに、勝手なイメージで人柄を決めつけるようなことはしたくない」
俺も悪い噂で散々苦しい思いをしてきた。
話を捏造されては、膨らんでいく悪評。
本当に苦しかった。
あの辛さを知っているからこそ、噂に乗じて相手を平気で傷つけるような無責任な人間の仲間入りをしてはいけない。
「君がどういう人かは、俺自身の目でしっかり見て、判断することにするよ」
「……へー」
恵流は猫のように丸い目を輝かせて、ニッコリと笑った。
「いい人だね、カケルン」
「え?」
「リリヤンが連れてきた人だから心配はしてなかったけど……良かった♪ 仲良く暮らせそー」
恵流はご機嫌にスキップして、脱衣場から出た。
「そろそろ夕飯の時間だから、着替えたらダイニングにおいでー」
「あ、ああ」
恵流の感情豊かな笑顔を見て、胸が高鳴るのを感じていた。
……なるほど。
あんな風に笑いかけられたら、どんな男子もコロっと恋に落ちてしまうだろう。