魔法少女リリカルなのは~Amantes Amentes~ 作:鏡圭一
「貴方の持っているジュエルシードをこっちに渡してください」
背後にいる少女にジュエルシードと呼ばれる物を渡せと言われたけど、そもそも僕はジュエルシードのことについて分からないからどうしようもない。恐らくだけど、僕の持っている宝石の様な石がジュエルシードなのかもしれない。
「この石は君の物なのかい?」
僕は少女にその石を見せると、少女の表情が一瞬変わったことからこれがジュエルシードだということを理解した。
「……いいえ。ですが、私にはジュエルシードが必要なんです!」
「そうか。だったらこの石は交番に届けなければいけないな。僕は見知らぬ人に所有物でない物を渡すほどお人好しじゃないからね」
僕はそう言った瞬間、背後にいた少女から距離を取る為に走り出した。
「そうですか。……なら力ずくになりますが、ジュエルシードを頂きます!」
少女がそう言った瞬間、嫌な予感を感じ、後ろに避けるように下がると、僕の髪の毛が数本切れたのが見えた。
正直、かなりギリギリだった。もし僕が今の鎌の斬撃を避けていなかったら、上半身と下半身が両断されて死んでいたかもしれない。それに今の斬撃が見えなかった。恐らく今のようなマグレはもう起こらないだろう。
「もう一度だけ言います。ジュエルシードを渡してください」
「悪いけど、この石は君には渡さない」
「……そうですか」
少女は再び一瞬で僕の目の前に現れて小声で『ごめんなさい』と呟いて斬りかかった。ああ、僕はここで死ぬのか? ……いや、僕はまだ死にたくない!!
そう強く思った瞬間だった。あと少しで斬撃が僕に直撃する所で、黄金の槍が目の前に現れて、少女の斬撃を受け止めていた。
少女はこの槍が危険だと感じたのか、僕から距離を取って警戒をしてきた。
「なんなんだこの槍は?」
僕はいきなり目の前に現れた黄金の槍を手にすると、力が漲るような感じになった。さらに、
「
「
私がそう言った瞬間、聖約・運命の神槍は輝きを増した。この槍はイエス・キリストを殺した神殺しの槍として有名だ。そのような槍がどうして私の元に来たのかについての疑問があるが、今は目の前の少女に集中するか。
「私はラインハルト・ハイドリヒだ。卿の名前は?」
「……フェイト・テスタロッサです」
フェイトと呼ばれる少女は顔を赤くしながら私に言った。
「Fate……運命か。なるほど、確かに卿のようなかわいい少女に出会えたのは運命ともいえるな」
我ながら臭いセリフだったなと思っていると、フェイトはさっき以上に顔を赤くしていた。言われ慣れていない様な初心な反応なのは恐らくあまり男との交流はなかったのだろう。
「さあ全力で来るがいいフェイト! 私はお前の総てを愛してやろう!!」
私の言葉で正気に戻ったフェイトは鎌を構えて斬撃を繰り出そうとした瞬間、空腹を知らせる腹の音が聞こえた。
勿論、今の音は私ではない。フェイトの顔を見ると、恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしながら俯いていた。
「今日はこれまでだ。空腹の相手に勝負を挑むような無粋な真似はしない」
私は聖約・運命の神槍を下ろしながらフェイトのことを見ていると、普通の人では見つけることが出来ない鞭で叩かれた跡があった。さらにフェイトの体も少し痩せ過ぎているような感じだ。
「卿に一つ聞きたい。卿は何時も何を食べているのだ?」
「……イトです」
「ん? すまないがもう一度言ってくれないかね?」
「冷凍食品とカロリークリエイトです」
カロリークリエイト。その単語を聞いた瞬間、私の中にある何かがプツリと切れた。
「フェイト。卿はもう少し自分の体を大事にしたまえ」
「え?」
「ジュエルシードと呼ばれる宝石を探す為に1~2日カロリークリエイトを食すのは問題ない。だが、卿の体を見る限りでは殆ど毎日その生活を続けているのだろう?」
私の問いにフェイトは頷いた。
「僕の家に案内するから着いて来て。フェイトはしっかりした食事をしたほうがいいから」
何時の間にか周囲に商店街の人がいることやフェイトが黒いワンピースを着ていたことにも驚いたけど、この状況になったのかを後でフェイトに聞くことにしよう。
「あのラインハルトさん。そのデバイスはどこで手に入れたんですか? それと口調や髪の長さもさっきと違いますし」
「デバイスのことについては知らないけど、ロンギヌスについてはついさっき知ったばかりだよ」
「そうですか……」
「今度はこっちから聞くけど、君はどうしてジュエルシードを集めているんだい?」
「そ、それは……ごめんなさい。どうしてジュエルシードを集めなければいけないのかを母さんに聞いていないんです」
なるほど、つまりフェイトが暴力を振るわれていることについてもフェイトの母親に会えば分かるかもしれない。それに、フェイトを放っておくと後悔することになる可能性も捨てることができないからね。
「ここが僕の家だよ。さあ入って」
僕の家に到着して、フェイトを家の中に入れると、リビングには姉さんがいた。
「おかえりラインハルト。……ラインハルト。貴方ロリコンだったのかしら?」
「姉さん。誤解している様だから説明するけど、彼女はあまりまともな食事をしていないみたいだから、僕が料理を食べさせようと思っただけだよ。他意はないから安心してくれ」
「そう」
このままだと姉さんにロリコン扱いされそうだったから、この後1時間位かけてなんとかロリコン扱いされなくなり、3人で楽しく食事をすることになった。
ちなみに、フェイトはリスみたいに僕の食事を食べていたのをかわいいと思ったのはここだけの話だ。