「おはようございます」
「おはよう、良い天気だね。流石のボクもこんな日は家を出るのに少し気分が
「あら、おはよう、二人共」
「お、おはようございます。ありすさん、飛鳥さん…もう…そんな時間…だったのですね…」
「いや、集合時間までは間が有るよ。先程も言ったとおり、今日は
「わたしは…その、久しぶりに五人集まれたので、嬉しくて」
ありすの言葉に文香は思わず微笑んでしまう。「皆に会えるのが嬉しい」など、以前のありすなら決して口にしなかっただろう。しかしそれが悪意に基づくものでないのならば、素直な喜びを
「まあ、周子はいつも通りギリギリの時間でしょうけどね」
「状況に左右されずに己を貫くというのも一つの美徳さ。実に彼女らしくてむしろ喜ばしいと思うね」
「それも…そうですね。でも、ありすさんが…私たちに会うのを楽しみにしていてくれたというのは…とても嬉しい事です」
「文香さん…!はい!脚本の中で気になっている部分が有るんです。相談に乗ってもらえますか?」
「ちょうど…私も脚本を読み直そうとしていた…ところです。どの
「割と仕事に関しては優等生の文香にしては珍しいわよね、台本よりも私的な読書を優先していたのは」
「文香さん、今はどんな小説を読んでいるんですか?」
奏が茶々を入れたことで話題がずれたが、文香としては自分の趣味にありすが興味を示してくれたのが嬉しい。意気揚々とストーリーを語ろうとしたところで、先程自分が読むのを中断した場面の事を思い出してしまう。
「い、いけません!ありすさんには早すぎます!」
とてもあんな場面をありすに読ませるようなことが有ってはならないと思い、思わず叫ぶような口調で拒絶してしまった文香を、
「私には…早いって、何ですか…?」
「あの…ありす、さん…その、そういう事では…」
「他に何だって言うんです⁉私には文香さんが読むような小説は難しいって事でしょう⁉文香さんが…よりによって、文香さんがそんな風に思ってるなんて、知りませんでした!」
裏切られたという怒りを全身から噴き出して文香を怒鳴りつけたありすは、自分の態度に傷ついたような表情を浮かべると、そのまま立ち上がってドアを乱暴に開けて部屋を飛び出していった。
「文香さん、今のはボクも感心しないな」
「飛鳥さん…」
「ありすが言葉だけではなくて、毎日心と体を尽くして大人とは、子供とは何かという事を考え抜いていると、その一番の理解者があなただと思っていたよ。あんなことを言うなんて、正直失望したと言わざるを得ないな」
「誤解です!その…小説の内容が…」
「小説が子供向きじゃないというんだろう?読み慣れた文香さんにとってみればそうなんだろうね」
そういうと、飛鳥は走る事こそなかったが決然とした態度でありすが開けっ放しにした扉から部屋を出て行った。ちょうど予定の集合時間に近づいており、今日の最後の客…周子とすれ違う事になる。
「ああ、周子さん…ちょっと外の空気を吸ってくるよ。しばらく待っていてくれたまえ」
「へ?」
擦れ違いざまの飛鳥の言葉に小首をかしげた周子は、部屋の中の重苦しい空気に気付いて、こんな時でも余裕ありげに素直な感想を告げる。
「…一体、何なん?」
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