3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 分かれ道を前に、真新しいスニーカーが眩しい少年は立っている。相棒のねずみポケモン、ピカチュウとともに。

「どっちに行こうか。」

「ぴか、ぴっかぁ〜!」

 分かれ道を眺める少年に、ピカチュウは道端の小枝を拾い渡す。手に持つ枝を少年は空高く放り上げた。
 枝は程なく落ちてきて、その指し示す方角に少年とピカチュウは走り出す。その門出を祝うように虹が掛けられていた。

 これは、少年がマサラタウンにさよならバイバイしてから、3年の月日が経った後のお話。
 少年の夢も、バトルに命をかけるポケモントレーナーたちの情熱も、まだまだまだまだ燃え盛っている、熱い熱い時代の物語。


3 years later〜虹の向こうに〜





PWCS開幕戦 因縁の対決!サトシvsアラン①

「全国のポケモントレーナー及び、ポケモンバトルをこよなく愛する皆さん!3年の沈黙を破り、ついにまたPWCS…ポケモンワールドチャンピオンシップスが開催されます!本日は、その同時開催の二つの開幕戦のうち、シュートシティのシュートスタジアムにて、私ジッキョーが生中継させていただきます!試合解説には、ポケモン評論家のナンテ氏、スペシャルゲストに、カロス地方のポケモン研究第一人者プラターヌ博士をお招きしてお送りしたいと思っております!お二方、本日はよろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いします。」

 

「ソフィー!コゼット!見てるかーい!」

 

 度のキツイ丸眼鏡をかけた出っ歯の男が、その出っ歯をものともしない明朗なトークを回している。

 黒髪短髪のスーツ姿の青年はトークに短く返事を返して会釈をし、壮年前期の白衣のプラターヌ博士は、カメラに向かって愛しの助手に呼びかけている。

 それをテレビ越しに見る呼びかけられた当人2人がため息を吐いたのは言うまでもない。

 

「ここ最近やたら浮かれ気味で一昨日から研究所を空けてたけど、コレが理由だったのね。全く、サトシくんとアランの試合だってのに自分だけ一番いいとこで観に行っちゃって。」

 

「コゼット、とりあえず帰ってきたら博士は一発シバきましょう。」

 

「あ、あはは…。」

 

 コゼットの肩に手を置きソフィーが話すのを聞き、プラターヌ研究所で働くマノンは苦笑いを隠せないでいた。

 

 

 

「さて、今年開催される運びとなりましたPWCS、ここに至るまでには、ガラルチャンピオンダンデ氏が代表者の失踪したガラルリーグ委員会と、そのスポンサーであるマクロコスモスの運営をどちらも引き継ぐというパワープレイから始まったと報道にはありました。そのチャンピオンダンデ氏もまた、本日開催の開幕戦としてナックルシティのナックルスタジアムにて、イッシュチャンピオンアイリス氏との試合に臨むことになっています。PWCSの公式試合は、全てドローンロトムにより撮影されポケチューブ公式チャンネルにて動画が随時投稿されますので、是非チャンネル登録して世界中の強豪トレーナーのバトルをお手持ちのスマホロトムにてチェックしてみてください。それではこちらシュートスタジアムもいよいよ選手入場の時間が近づいて参りました。ナンテさん、今回の対戦はどう見てますでしょうか。」

 

「今回の対戦カード、3年前にも実現しているのですよ。舞台はカロスリーグ地方予選の決勝戦。その時にはアラン選手が当時まだ無冠であったサトシ氏に勝っています。そのすぐ後に、サトシ氏はアローラリーグを制覇し、アラン選手は休息期間に入ったのか、表だった活動はなく、そこからPWCSマスターズトーナメントにて互いに同じ舞台に立ちこそしましたが、アラン選手はダンデ氏に敗れ、そのダンデ氏をサトシ氏が破り、同氏のPWCS絶対時代に終わりを告げました。結局のところ、両者の直接対決は公式記録としてはカロスリーグ以降ないのが実情で、そこからどれだけお互いレベルアップしているかが非常に楽しみな一戦ですね。」

 

「なるほどー。ナンテさんはそう言えば、チャンピオンサトシと同じマサラタウン出身だとか。何か関わりとかあったりするのでしょうか?」

 

「本人との関わりはありませんが、実家が向かい同士で、オフシーズンにオーキド博士主催のキャンプの引率をしていた折、思い返してみたらそれっぽいような少年もいたなー、という経験はありましたね。」

 

「そうでしたか。続きましてプラターヌ博士、アラン選手はトレーナーデビューする前は博士の研究所にて助手をしていたと同氏のプロフィールにありましたが、助手時代の彼の印象はどんな感じでしたか。」

 

「とても真面目で働き者だったね。ポケモンたちの細かいところにもよく気づいて僕に伝えてくれたのさ。旅に出て色々あったようだけど、それらも彼が人として大きくなるための糧となってくれるなら僕としては言うことはない。ただ支えになってあげたいと思っているよ。」

 

「素晴らしい師弟愛を見た思いでこのジッキョー、中継早々涙ちょちょぎれますなぁー!おっと、選手入場の時間となりました!会場のボルテージも急上昇!!3年間の沈黙を破り今またポケモントレーナーたちの熱き闘いの日々が幕を開けます!!」

 

 

 

 放送席と観客席の眼下のスタジアム。彼方より姿を見せるのは黒一色のコーディネートに青のマフラー。

 キリと結われたような真一文字の口には強い決意を携える。

 

「青コーナー!カロスリーグ地方予選優勝!PWCS前回大会最終ランク8位!!カロス地方ミアレシティ出身!アラン選手入場ォォォー!!!」

 

ワァァァァァ!キャー!!

 

 主に飛ぶのは黄色い声援。端正な顔立ちだ無理もない。

 それにアランはピクリとも反応はしない。ただスタジアムの真ん中まで歩みを進め、目の前に現れるであろう相手を待つ。

 かつて自分が最も憧れた相手すら破り、今やバトル世界一の称号を持つ、かつて自分が破った相手…。

 

ドワォォォォォォォォォォ!!!

 

 アランの入場の際の歓声も決して小さいものではなかった。

 しかし彼を迎える歓声を前にしてはどうしても霞む。同時にアランが全身で感じ取るその覇気は、3年前のダンデのそれと比較してすらまるで別次元であった。

 

「(どこで、そこまで鍛えた…!?)」

 

 幾度か対戦したが故に感じる以前との決定的な違い。彼は、間違いなく進化を重ねている。アランは戦慄を押し隠した。

 

 

 

「赤コーナー!アローラリーグチャンピオン!PWCS前回大会最終ランク第1位!!カントー地方マサラタウン出身!サトシ選手入場ォォォー!!!」

 

「ぴぃかぁ〜。」

 

「相変わらず凄い観客だなぁピカチュウ。」

 

「ぴかぁ!」

 

「また始まるんだ。ダンデさんと今度はおんなじ条件でバトルして勝つための日々、PWCS!!」

 

 真新しかったスニーカーの底はすっかりすり減った。服など何度新しくしたかわからない。

 それでもこの日をずっと待ち侘びていた。

 肩に乗るピカチュウと共に、両手を上げて歓声に応えながらサトシは入場をする。しかしてその語る目標に対して目の前に立つ相手への意識を手放してはいない。手放せるはずがない。

 

「今度こそ俺たちが勝つぜ。アラン。」

 

「きみたちがあの日から…カロスリーグ決勝から信じられないくらい成長したのは知っている。だからこそ、もう一度俺が勝つことに大きな意味があるのも知っている。」

 

 両者スタジアムの真ん中で正対、固く握手をする。そして同時の宣誓…。

 

「いい勝負をしようぜ。」

 

 

 

「両者健闘を誓い合う握手の後、トレーナーサークルへ散ります。ここで、今大会より採用される新規ルールの説明に入ります。今大会では去年よりポケモンリーグ公式大会でも採用されている『CD(チョイス・ダウン)方式』にて試合は執り行われます。この新ルールについて発案者のナンテさん。説明お願い出来ますか。」

 

「はい。近年持ち上がっているポケモン愛護の観念と、ポケモンバトル本来の醍醐味である戦略性の両立を意図として、このCD式は組み上げられています。C…つまりチョイスとはポケモンを選ぶこと。例えば3Cという場合は従来ルールにおける使用ポケモン3体という意味で、D…つまりダウンとは従来ルールにおける戦闘不能。例えば1Dという場合はポケモンが1体戦闘不能になればそこで試合終了となります。」

 

「今大会は例外として、今日の開幕戦から前半期まではランクに問わず、ルール周知の為に、後半期からはノーマルからスーパーランクまでの試合方式が3C1Dルール、要するに使用ポケモンは3体で、1体戦闘不能にされたら負けってことだね。ナンテくん。」

 

「はい、プラターヌ博士。」

 

「お二方解説ありがとうございます!さぁ両者トレーナーサークルに入り審判がスタジアムインとなります!」

 

 

 

 両選手がトレーナーサークルに入るのを確認した審判が、ギルガルドに乗りスタジアム中央へ向かう。

 両サークルに目配せすればサトシ、アラン共に審判に対して頷いて見せ準備良しの旨を伝える。

 

「これよりPWCS公式戦、チャンピオンサトシ対アラン選手の試合を行います!試合方式は3C1Dルール!試合中メガシンカ、Zワザ、ダイマックス、テラスタルの使用はそれぞれどれか1つのみ可能です!ドローンロトム、試合開始準備を!」

 

「リョウカイ。オーディエンスホゴバリアフィールド、テンカイ。ジンコウガラテラリュウシ、サンプ。」

 

 

 

「ナンテさん。この保護バリアフィールドと人工ガラテラ粒子の開発とドローンロトムへの搭載は近代のポケモンバトル史に大きな1ページを刻んだのではないでしょうか。」

 

「そうですね。元来激しい公式戦の余波に巻き込まれて怪我をする観客と、トレーナーやリーグ委員会の間で訴訟にまで発展する事例は枚挙に暇がありませんでしたからね。そんな悲劇の防止に繋がる設備の開発は、トレーナーにとってもバトルを愛する人たちにとっても素晴らしいことだと思います。」

 

「僕も同感だね。人工ガラテラ粒子も、元来土地に左右される現象をその土地の縛りから解き放つことにより、トレーナーの可能性もまた縛られることがなくなったと言えるよね。いやはや流石はシルフカンパニー、デボンコーポレーション、マクロコスモスと、全国を代表する三大企業が手を取り合って開発を進めただけあるよ。」

 

「さぁ、試合が始まりますよ。見せてくれたまえよ…"後輩くん".。」

 

 放送席から眼下にサトシを捉え、ナンテは誰ともなく呟いていた。

 

 

 

 アランはボールを構え、サトシはピカチュウと顔を見合わせ頷き合う。

 審判の合図と共に先発ポケモンが飛び出した。

 

「ピカチュウ、キミにきめた!!」

 

「ぴっかぁ〜!!」

 

「いけ、リザードン!!」

 

「ぐるぅぅぅああ!!」

 

 サトシの肩からピカチュウがスタジアムに降り立ち、アランの投げたボールからリザードンが現れる。

 トレーナー、ポケモンともに不敵な笑みを携え睨み合う。

 そして試合の、熱い時代の火蓋が、今また切られた。

 

「試合、開始ィィィィィ!!!」

 

 

 




 『ジッキョー』
 想定CV 太田真一郎さん
 30代から40代。度のキツイ丸眼鏡をかけた出っ歯の男。
 ジョーイさんやジュンサーさんのように、全く同じ容姿をした一族であり、放送席からの試合実況を生業としている。
 ポケモン競技に挑む者たちの熱いドラマを盛り上げることに至上の喜びを感じる性格。
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