3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 ラス1対決までもつれこんだチャンピオンテスト。
 蒼眼極炎のグレンアルマの猛威を振り切り、ドドゲザンのテラスタルの翼が叩き込まれる。
 立ち上がるのはどちらか、勝者は…どちらか。


スカーレットアドベンチャー "ハロー マイドリーム"

「両者凄まじい勢いで正面衝突!!グレンアルマにドドゲザンは立てるのか!?バトルはまだ続くのかぁーーーッ!?」

 

 

 

「ど、げッ…。」

 

「み、みんな…!」

 

 それは、幻である。

 しかし、オモダカはその目で見た光景を真実として受け止めた。

 サイコショックを何発も叩き込まれ、今にも戦闘不能となりそうなドドゲザンの身体を、キラフロル…クエスパトラ…クレベース…ブリガロン…ドラパルト…、この試合に参加した仲間たちが助け起こしたように見えたのだ。

 ハッサクが立ち上がるドドゲザンに駆け寄り、容態をチェックする。

 彼と目が合い、オモダカは大きく頷いた。

 

「ドドゲザンは戦闘続行可能!グレンアルマは…。」

 

「ハッサク!」

 

 グレンアルマに駆け寄ろうとするハッサクを制止する声。トップチャンピオンのミシェリだ。

 

「もう、よい。」

 

「は…?」

 

「見よ。」

 

 ミシェリが指差せば、その先をハッサクはもちろん、オモダカや観客たちもジッと見る。

 そこには、ドドゲザン同様立ち上がっているグレンアルマの姿があった。

 

「な…ッ…!!」

 

 オモダカは空いた口が塞がらない。

 死力を尽くしてここまで繋げ、それでも届かなかったと言うのか…。全身から力が抜けそうになるのを必死に堪える。

 

「ハッサク。分かったろう。」

 

「は…はい。」

 

「宣告せよ。高らかにな。」

 

 ミシェリが瞑目しながら話すのに頷けば、ハッサクはコホン、と咳払いののち、審判としてコールをする。

 

「グレンアルマ、戦闘不能!ドドゲザンの勝ち!!」

 

「えっ…?」

 

 信じ難い一言、とオモダカの目が見開かれる。

 それを認めながらもハッサクは己が責務を真っ当し、彼女へ手を伸ばし、指し示した。

 

「よって勝者、挑戦者オモダカ!!!」

 

 

 

「し、審判の四天王ハッサクにより、グレンアルマの戦闘不能のコールが入りましたがシゲルさん!こ、これは一体!?」

 

「簡単ですよ。グレンアルマは、立ったままKOされている。」

 

 壮絶なる決着に、シゲルも一旦息を吐く。

 

「トップチャンピオンのエースポケモンとして、倒れ伏して負けを認めるのは性に合わなかったのでしょう。気位の高いミシェリさんのパートナーとして、最後に意地を見せたんだ。」

 

「なるほど…と、言うことは?」

 

「はい。」

 

「チャンピオンテスト最終戦!勝利の女神が微笑んだのは、挑戦者オモダカーーーッ!!」

 

 

 

「やったやった!兄様やりましたよ!会長さんがやりましたー!!」

 

「お、落ち着けリーリエ!分かった!分かったから!」

 

 ハッサクの勝ち名乗りを聞き、リーリエは嬉しさのあまりグラジオに飛び付き、グラジオは必死にリーリエを宥めていた。

 

「うおーいおいおい!やりおった、マジでやりおったぁ〜〜〜!!会長が"アレ"達成やぁ〜〜〜!!」

 

「団長、鼻水出てるッス。」

 

「あ、おおきに。」

 

 オモダカが勝ち、チリは感極まって号泣。端正な顔立ちを涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしてるのを、応援団員から差し出されたハンカチで思いっきり鼻をチーンとかむ。

 こんなに感動したのは、エレブーズが全国シリーズを制覇した時以来だとチリは思っていた。

 

 

 

「ヘッ。勝ったってのにスカしてねー奴だぜ。」

 

 勝ち名乗りを受け、呆然としているオモダカに軽く鼻を鳴らしてからグズマは踵を返す。

 

「ブラザー。いいのかい?声かけなくて。」

 

「否応なくアカデミーで会うからな。それに俺様、これでも怪我人だぜ?」

 

 右腕のギプスを見せてからグズマは歩き出す。途中立ち止まり、タイムに顔だけ向けた。

 

「いい胎教にはなったかよ?」

 

「もちろん。」

 

「そうかい。」

 

 タイムの返答にグズマはニヒルな笑みを向けてから、今度こそ立ち去って行った。

 態度にこそ出さないが、自分を慕う後輩の快挙に悪い気はしていないのだ。

 

 

 

「はぁ…はぁ…。」

 

 周囲の喧騒が聞こえる。だけど体が動かない。自分だけ、時が止まった世界にいるような感覚であった。

 長いフルバトルの中、集中力と思考力をギリギリまで絞り出した反動が一気に来たのだ。

 やがて、体のバランスが崩れ、仰向けに倒れ込んでしまう…。

 

「おっと!」

 

 倒れ込んだオモダカの体を支えたのは、セコンドエリアから飛び出したサトシだ。ピカチュウは足元から、心配そうに彼女を見上げている。

 

「サト…シ…。」

 

「すげーバトルだったぜオモダカ。おめでとう。」

 

 サトシは倒れかかっていたオモダカをお姫様抱っこで運び、セコンドエリアに連れて行き、パイプ椅子に座らせる。

 

「飲めるか?」

 

「はい…。」

 

 全身から汗が噴き出しているオモダカにタオルとスポーツドリンクを手渡す。

 オモダカは顔面の汗を拭い、頭にタオルを乗せたままペットボトルを空け、ひと口含み、喉を潤す。

 喉の潤いが全身に浸透するような爽快感がオモダカを満たした。

 

「ふぅ…生き返る…あっ、ドドゲザンは…。」

 

「ここじゃ。」

 

 サトシとオモダカが共に声のする方を見れば、セコンドエリア近くまでミシェリが来ていた。

 その隣には、ドドゲザンとグレンアルマが互いに肩を貸し合っている。

 

「ドドゲザン!」

 

「大した奴よのう。倒れた仲間の力を受けて、見事に勝ち切りよった。」

 

「あのッ…。」

 

 椅子から立ち上がろうとするオモダカをミシェリは座ったままでいい、と手先で制する。

 腕を組み、顎先を手で触れながらハッサクと暫し話し込んだ。

 

「しかし、PWTの試合記録でもそうじゃが、ちと肉体が虚弱に過ぎんか?」

 

「トップ。オモダカさんはまだ10歳。成長期の途上にて、体が出来上がっていないだけかと。」

 

「ふむ、それもそうか…おい、挑戦者。」

 

「は、はい!」

 

 ハッサクと意見を交わせば、ミシェリが改めてオモダカを呼ぶ。

 オモダカは、反射的に起立していた。

 

「そなた、今日から食う量を倍にせよ。ポケモンを鍛えるのと同様、卒業までにしっかり体を作れ。」

 

「わ、分かりました!」

 

「うむ!ではこれよりチャンピオンテストの結果を言い渡す!心して聞くがよい!」

 

 オモダカの返事にミシェリは満足げに頷き、両手を腰に置く。

 その際に豊満な胸も大きく揺れるが、それに反応するものはこの場にはいない。

 

「挑戦者オモダカ、そなたは面接試験、四天王試験、そして此度の最終試験を見事乗り越え、ポケモントレーナーとして類い稀なる才を示した!」

 

 一瞬表情が曇ったように見えたのは、ミシェリ自身が負けて悔しい、という気持ちを押し殺しているからだ。

 この勝負への貪欲さこそが、頂点の世界で戦うものには必須なのだ。

 

「その才覚を認め、トップチャンピオンミシェリの名において、新たなチャンピオンランクへ認可するッ!!」

 

ワアアアアアアアッ!!!

 

 

 

「お聞き下さいこの大歓声!!たった今、このパルデア地方に新たなチャンピオンランク保持者が誕生しました!オレンジアカデミーの1年生!今年トレーナーデビューしたばかりのルーキーでありながら、瞬く間にチャンピオンランクへの階段を駆け上がったその才女の名は、オモダカァァァーーーーーッ!!!」

 

「いやーめでたいね。本当におめでとう。」

 

 シゲルは心からの拍手を送る。

 その拍手は、彼女を支えきったサトシにも向いていた。

 

 

 

「ありがとうございますッ!」

 

「励めよ!新チャンピオン!」

 

「会長さーん!」

 

 オモダカが深々と頭を下げれば、その肩をポンポンと叩く。

 そこに観客席からオモダカの応援団が大挙して押し寄せた。

 

「会長さん!おめでとうございます!ほら、兄様も!」

 

「押すなリーリエ!さ、流石だな生徒会長。俺も負けてられないな。」

 

「リーリエさん、グラジオさん…。ありがとうございます。」

 

「うおーいおいおい!会長〜!よう頑張ったなぁ〜!チリちゃん感激や〜!」

 

「チリ!」

 

 リーリエとグラジオから労われ、返礼したところにチリが号泣しながら思い切り抱き付いてくるのをオモダカは彼女の背中に両手を回しながら応えた。

 

「チリ…あなた、こんな涙脆い人だったのですね。」

 

「コガネっ子はみんなこうやねん、嬉しゅうなったら思いっきり泣くんや〜!」

 

 親友同士抱き合ったオモダカは、チリの鼻をハンカチでチーンとかませてやってから離れる。

 感極まるほどに熱狂的な応援をしてくれていたことに、胸が熱くなった。

 

「よーしみんな!新チャンピオン誕生を祝って会長を胴上げや〜!」

 

「「「うおーーーす!!」」」

 

 チリの号令により、集まった皆々が気勢をあげるので、異様な空気をオモダカは感じて珍妙な表情になる。

 

「あ、あのですねチリ?別にそこまでする必要はないかと…?」

 

「大アリじゃろ。」

 

「トップ!?」

 

 穏便に断ろうとするオモダカにミシェリがピシリと口を挟む。

 

「儂も先代トップに勝った折、それはもう盛大にされたからのう。」

 

「トップ、不肖このハッサクも胴上げに参加したく…。」

 

「構わぬ。思い切りやれ。」

 

「ええッ!?さ、サトシ…。」

 

 たまらずオモダカはサトシを向く。

 彼ならばいい感じに皆を宥めてくれるはず…そんな淡い希望を抱きながら。

 

「ん?どうしたオモダカ。」

 

 制服の袖を捲り、準備万端な様子のサトシにオモダカは開いた口が塞がらなくなる。

 この場に味方は誰もいないのだ…。

 

「よーしみんなやるで〜!」

 

「ちょ、わ、わわわ!」

 

 チリの号令でオモダカの華奢な体が持ち上げられ、あれよあれよとバトルコート中央まで運ばれてゆく。

 こうなってしまってはオモダカにはどうしようもできなかった。

 

「「「そーれ、わっしょい!わっしょい!」」」

 

「わぁ〜!ひゃあ〜!」

 

 胴上げで、オモダカの体が宙を舞う。

 

「「「わっしょい!わっしょい!」」」

 

「う〜っ!ひぃ〜っ!」

 

 回数は6回。フルバトルを戦ったポケモンたちの数に因んでである。

 

「「「わっしょい!わっしょい!」」」

 

「ふふ、アハハ!」

 

 最初は困惑していたオモダカも、いつしか楽しくなって笑顔を見せていた。

 

「よっ、と。」

 

 胴上げを終え、サトシがオモダカをがっちりキャッチし、地に足付けて立たせる。

 オモダカはサトシに笑顔でペコリと頭を下げては、サトシも頷いて返した。

 

「やぁやぁ諸君、盛り上がってるね。」

 

「シゲル。」

 

 胴上げが終わったタイミングを見計らい、放送席から出てきたシゲルがやってきてサトシが反応する。

 応援団の生徒たちに道を開けてもらいながら彼は、オモダカにマイクを差し出した。

 

「チャンピオンテスト合格おめでとう。今後の抱負をお願いできるかな?新チャンピオン。」

 

「は、はい!」

 

 元気よく頷きながら、オモダカはシゲルからマイクを受け取る。

 誰かに言葉で語りかける…それは、アカデミーの生徒会長である彼女には得意分野と言えた。

 

「会場に集まってくださった方々、配信をご覧になっている方々、観戦ありがとうございます。私が今日、偉大なトップチャンピオンを相手に勝利を収めることが出来たのは、私自身の努力以上にポケモンたちの奮闘と、皆様の熱い応援、そして、これまで支えてくださった方々の協力あってのことと考えております。」

 

 自分1人では決して勝つことは出来なかった。

 特にセコンドとして後ろに控えていてくれたサトシには感謝を伝えても伝えきれないのが実感だった。

 

「私は、まだまだ未熟です。ポケモントレーナーとして、1人の人間として、今日の勝利に驕ることなく、これからも努力し続けることを誓います!」

 

 マイクを握る手に力が入る。

 そしてテンションのままに右手を天に翳し、人差し指を突き立てた。

 

「そしてこの私を産み、育んでくれたパルデアに、さらなる光をもたらしてみせます!!」

 

ウオオオオオオ!

 

ウオオオオオオ!!

 

ウオオオオオオ!!!

 

 バトルコートの歓声は止むことを知らず大きくなり続ける。

 新たなチャンピオンランクの誕生は、パルデア地方の更なる隆盛に繋がるだろう。

 誰しもがオモダカに、希望を見出した。

 オモダカの夢は、新たなスタートラインに立ったのだ。

 

 

 




 チャンピオンテスト ミシェリvsオモダカ

 試合方式 フルバトル

 後半戦スコア表

 ミシェリ     オモダカ

 グレンアルマ◯ キラフロル●
 グレンアルマ→キョジオーン

 キョジオーン● クレベース●

 サザンドラ● ドドゲザン◯

 タイレーツ● ドドゲザン◯
          テラスタル使用

 グレンアルマ● ドドゲザン◯
 テラスタル使用

 勝者 オモダカ
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