3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 シゲルがポケモンハンターMを相手に鮮やかに立ち回る中、リーリエが仲間たちを引き連れて参戦。
 Mがまとめて繰り出したアローラゴローニャは、生徒たちの中にいたウパーによりだいばくはつを封殺されるのだった。


スカーレットアドベンチャー チオンジェン防衛戦④ 進撃のバンギラス

 ウパーの特性として認知されているのはしめりけとちょすい。ちょすいは、みずタイプの技を受け付けず、逆に体力を回復するもので、もう1つのしめりけは、じばくやだいばくはつといったいわゆる自爆技の発動を封じるもの。

 ポケモンバトルにおける優先度はどうしてもちょすいに軍配が上がりがちになるものの、今この場においては、しめりけが1つのミラクルを起こした。

 

「ナイスだ、ノボウくん!」

 

 シゲルからのサムズアップに、首を傾げたままの少年とウパーはなんとなくで頷いて見せた。

 どちらもボーッとした顔のまま、自分たちの何がナイスなのか理解しきれてはいないようである。

 

「逆に、完全に、助けられちゃったな。」

 

 一時的とは言え先生として、生徒たちを、学校を守る責務のために矢面に立って、その守るべき生徒たちに助けられる…。

 そこに対して不思議と恥の概念が湧かないのは、決してシゲルがおざなりで仕事をしていたからではない。

 生徒たちが自主性でもって共に立ち、危地をひっくり返して見せたその勇気が誇らしいと思えたのだ。

 こんな素晴らしい教え子たちに応えて見せねば、自分は漢ではない…!

 

「カメックス!ハイドロポンプ!!」

 

「がぁめぇ!」

 

 シゲルの指示に、カメックスは跳躍する。

 甲羅を背負った重量感あるボディとは裏腹に、両足の脚力で空中へ飛ぶカメックスに、アローラゴローニャたちの視線は集中する。

 

「馬鹿め!いい的だ!!」

 

 Mはほくそ笑んだ。だいばくはつこそ封じられたものの、みずタイプはでんきタイプに弱いという相性の有利に変わりはないのだ。

 

「ゴローニャたち、でんじほうで撃ち落とせ!!」

 

「「「「らっしゃいしゃい!!」」」」

 

 アローラゴローニャの胴体にある2対の岩の柱の間にでんきエネルギーが砲弾として充填されてゆく。

 バチバチ、と大きくスパークするそれは、1発でも命中すればカメックスにとって致命傷であろう…。

 

「シゲル先生!援護します!」

 

「まだ大丈夫!危なくなったらこちらから言うからその時頼むよ。」

 

 駆け付けてくれたリーリエたちの勇気に配慮しながらシゲルはやんわり手出し無用、と告げる。

 この状況を突破出来るという、確信あってのことである。

 

「いけーッ!フルバースト!!」

 

「がめぇぇぇ!!」

 

ボシュシュシュシューーーーッ!!

 

「な、なにぃーっ!?」

 

 カメックスが両手足を甲羅の中に引っ込めれば、その手足部分の出し入れ口から水流弾が発射され、4条の水流弾は、それぞれにアローラゴローニャへと着弾。

 効果抜群の直撃を受けたアローラゴローニャたちは、たまらずチャージしていたでんきエネルギーを霧散させ、目を回して倒れてしまった。

 4体揃って仲良く戦闘不能である。

 

「なん…だと…!?」

 

「がめ。」

 

「ナイスだカメックス。」

 

 ハイドロポンプの一斉射でアローラゴローニャ4体を一網打尽にするカメックスをシゲルは大いに誉めては、カメックスも腕を組み得意げだ。

 

「シゲル先生、生徒の皆さん!」

 

「クラベルさん。」

 

 そこに新たに、復活したウェーニバルを引き連れたクラベルが、アカデミーの教師たちと共にグラウンドに出てくる。

 

「皆さん、危ないですよ。避難して下さい。」

 

「そうしたい者は既にそうさせている。この場にいるのは自らの意思で戦う決意を決めた者だけだ。」

 

 クラベルが避難を促せば、コルサがすぐさま返す。

 その言動に『覚悟』が見えていては、クラベルら大人たちも頭ごなしに押し通し切れないところがあった。

 

「そろそろお縄につく覚悟は出来たかな?」

 

 シゲルがMに呼び掛ける。これ以上の抵抗は無意味だ、と。

 クラベルや教師陣がこの場に乗り込んで来れたということは、外部に展開していたMの仲間たちも皆対処された後なのだろうとシゲルは推測していた。そして、その推測は当たっていた。残るはMただ1人なのだ。

 

「ふふふふふ、この俺が…ポケモンハンターJの跡目を継ぐ為に育てられたM様が、ジュンサーの世話になるだと?ふざけるなよッ!!」

 

 Mの怒気が強まる。追い詰められた悪党の遠吠え、と切って捨てるにはどこか不穏さが拭えない。

 

「それだけの腕があるなら、ポケモンハンターなんかしなくたっていくらでもやっていける!罪を償ってやり直すんだ!」

 

 それは、これまで戦ってきたシゲルとしての実感であった。

 このMと言い、3年前に対峙したJと言い、悪事に手を染めてなおポケモントレーナーとしての実力の高さを認めたが故のことだ。

 

「貴様らには分かるまい!生まれつき恵まれた環境で育った者どもには!俺はやらねばならないんだ!"ここ"しか、俺に居場所はねーッ!!」

 

 Mが絶叫し、6体目のボールを取り出せば、それがみるみる肥大化し、発光してゆく。

 

「むむむ、あれなるはダイマックス!?何故このパルデアで…!?」

 

 コルサの疑問は至極真っ当であった。ダイマックスの発動にはガラル粒子の存在が必要不可欠である。

 ここパルデア地方においては、原則扱えるものでもない。

 

「あらあら?」

 

「リーリエさん、アレをッ!」

 

「ドローンロトム!」

 

 カエデがふと上空に何かを見つけ、それに反応したサワロが目を凝らせば、ビシ!と指差す。

 その先にいたドローンロトムが、人工ガラテラ粒子をばら撒いていたのだ。

 

「いけぇぇぇぇぇ!!バンギラス!!!」

 

「ばぁうがぁぁぁぁぁ!!!」

 

 Mが放り投げたボールより飛び出したのは、よろいポケモンバンギラス。

 それもダイマックスにより通常種の何倍も巨大化している。しかも巨大化しているのは、体躯だけではない。

 

ズザザザ!ビュオワァァァァァ!!

 

「なんだ!?うわ〜ッ!?」

 

「す、すなあらしだぁ〜!!」

 

 バンギラスを中心に、グラウンド中に砂嵐が巻き起こる。特性のすなおこしによるフィールド作用効果だ。

 

「くッ…!シゲル先生、これは…!」

 

「えぇ…!これはただのダイマックスとは明らかにパワーが違う…!」

 

 多数の教師や生徒が砂嵐によって吹き飛ばされてゆく中、歴戦の経験を持つシゲルとクラベルはどうにかその場に踏みとどまり、難を逃れる。

 

「きゃあっ!」

 

「ぬおお、リーリエさんッ!」

 

 華奢な体のリーリエは砂嵐の勢いに負け両足が浮き、吹き飛ばされそうになるも、その手をサワロが掴む。

 彼の隆々たる胸板にはパチリスが張り付き、砂嵐に耐えていた。

 

「くッ…不味いな。飛ばされた連中を救助せねば…手伝え、カエデ!」

 

「はい〜。」

 

 砂嵐を耐え抜くコルサとカエデは、あちこちに飛ばされた生徒や教師たちの救出に動くべく走り出す。

 後ろ髪引かれる思いはあったが、この場はシゲルやクラベルに任せることにした。

 

 

 

「ばんがぁぁぁぁぁ!!」

 

 砂嵐を撒き散らしながらバンギラスは咆哮する。

 その圧倒的なパワーを前にMは完全に自信を取り戻していた。

 

「ハハハハハァ!いいぞぉ!もはや援軍など待つ必要はない!今のお前のパワーで、逆らう奴らをこの世から消し去ってしまえ〜!!」

 

 眼下の標的をバンギラスが捕捉すれば、カメックスとウェーニバルは素早く身構える。

 

「あのバンギラスがダイマックスする際の人工ガラテラ粒子…おそらくは公式大会で運用されているものを遥かに超えた濃度で使ったはず。」

 

「つまりこのダイマックスバンギラスは…。」

 

「えぇ。ガラル地方にあるワイルドエリア…そこに巣食う野生のダイマックスポケモンと同じか、それ以上に…。」

 

 ガラル粒子に適応度の高い一部の野生ポケモンは、地下に巨大な空間を形成し、そこを根城として活動する。

 その野生のダイマックスポケモンへの対策がガラル地方ワイルドエリアを管理する際に最大限配慮している点である、とシゲルは聞いたことがあった。

 

「厄介だな…。」

 

 野生であるが故の高い知性と、ダイマックスによる自然界にとっての脅威的な暴力、それに今目の前にいるバンギラスには、Mというトレーナーの指示すら加わっているのだ…。

 

「シゲル先生!」

 

「我らも戦いますぞ!」

 

 砂嵐による難を逃れたリーリエとサワロが駆け寄る。

 

「じゃあ、お願いしちゃおうかな。」

 

 2人を見るシゲルは、大きく頷いて見せた。

 リーリエとサワロは、それにパァァッ、と表情を明るくする。シゲル先生に頼られるという充足感で胸が熱くなった。

 

「たった4人で…勝てると思っているのか!!」

 

「勝てるさ!!勝ってみせる!!」

 

 ダイマックスしたバンギラスを前に勝ち誇るM。そこに対峙してシゲル、クラベル、リーリエ、サワロが並び立つ。

 

「がめぇ。」

 

「うぇーい!うぇーい!」

 

「頼みます、シロン!」

 

「こぉん!」

 

「頑張りますぞ、パチリス!」

 

「ぱちぃ!」

 

 カメックスは腕を組み、ウェーニバルは変わらずエキゾチックなステップでノリノリだ。

 そこにシロンとパチリスと合流し、バンギラスを見上げる。

 

「クラベルさん!リーリエさん!サワロくん!ほんの少しだけでいい。バンギラスの注意をカメックスから3人で引きつけてくれないか?」

 

「策がおありなのですね。」

 

「一撃で仕留める格好のイイ奴がね。」

 

 クラベルにシゲルは不敵な笑みを浮かべてみせる。

 どんなピンチでも余裕な態度は崩さない。それは、シゲルの勝負師としての流儀であった。

 その策の証拠として、3人の前でシゲルは左手首に腕輪型のデバイスを装着する。

 無論、ただのアクセサリーではない。キーストーンが埋め込まれた、メガリングだ。

 

「分かりました!ゼンリョクで頑張ります!」

 

 シゲルからの作戦指示にリーリエは全身を使って頷く。そうしてから改めてバンギラスへ向き直る。

 

「無駄な作戦タイムは済んだようだな!」

 

「ウェーニバル!」

 

「うぇーい!!」

 

「ばんぎぁぁぁぁぁ…!!」

 

 クラベルに応え、ウェーニバルが強靭な脚力を活かして跳躍。先鋒を務める腹積りだ。

 

「僕たちの研鑽し続けた絆、今こそ見せようカメックス!」

 

 シゲルはキーストーンに口付けを落とし、メガリングを起動させる。進化を超えたメガシンカ…輝くエネルギーが繭となり、カメックスを包み込む。

 

「ゆくぞッ!メガシンカッ!!」

 

「がめぇぇぇ!!」

 

 繭から出てくるは甲羅に装備された2門のキャノンが統合され、1門の巨大なものになり、両腕を覆うように小型のキャノンが装備されている甲羅が発生したメガカメックス。

 

「カメックス、キミの波導を高める力…それを使うんだ。」

 

 メガカメックスは、両手を空に掲げる。するとそこに、少しずつエネルギーが蓄積され始めていく。

 メガランチャー…カメックスがメガシンカしたことにより変化して得た特性。

 波導の力に目覚めたのを活かして、決着のための一撃を放つべくパワーを集めようというのだ。

 




 『ドローンロトム』
 こちらの世界同様ドローンの技術があり、さらに機械の中にロトムが入り込むことでより精密なフライトを実現している。
 その恩恵同様、問題点もこちらの世界と同じように転がっているのが実情だ。
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