3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 苦戦する部下の後詰めで姿を現したポケモンハンターKとサトシは対峙する。
 危うく不覚を取りかけたところに助け舟を出したのは、普段ピカチュウを狙い襲ってくるいつものあいつらであった。


スカーレットアドベンチャー イーユイ救出戦④ ロケット団vsポケモンハンターK

 時を戻そう。

 ポケモンハンターKは忌々しげにロケット団を睨みながら倒れたボーマンダをボールへ戻す。次いで投入したのが…。

 

「どぅらぁぁぁぁぁい!!」

 

 ばけさそりポケモンのドラピオンだった。この子もまた、ボーマンダ同様Jを思わせる1体である。

 

「コジロウ!」

 

「おうよ!!」

 

 ムサシに応えながらコジロウは意気揚々とボールを構える。

 

「こうして、お前とまた一緒に戦えるなんて思わなかったなぁ…。」

 

「感慨に耽ってる暇はないニャー!」

 

「わかってらぁい!」

 

 ニャースは自らも前に出てハンターのしたっぱに唯一使えるみだれひっかきをお見舞いしている。

 

「頼んだぞサボネア…いや、ノクタス〜!!」

 

「のっくぅ〜!!」

 

「いだだだだ!!敵はあっちだ、あっち〜!」

 

 ボールから飛び出したカカシぐさポケモンノクタスが、すぐさまコジロウに抱き付く。

 全身の棘でそれはそれは痛いことになり、涙目になってドラピオンを指差すコジロウだが、その表情はどこか嬉しげでもあった。

 

「そのノクタスって、もしかして…!」

 

「ん。あぁ…帰ってきたのさ!サボネアが進化してな!」

 

 サトシからしてもロケット団のポケモンは相応に顔馴染みではあった。

 3年前、ホウエン時代に彼らの仲間となって以降、幾度となく争い合ったサボネアが、シンオウ地方のジムリーダーであるナタネの元に預けられお別れをしたのは、サトシもその場にいたので知っていた。

 それから月日が経ち、彼らは再び巡り会ったのだろう。公認ジムリーダーから悪の組織ロケット団の一員であるコジロウの手元まで帰ってきたそのルートは、サトシには想像つかない話ではあるが…。

 

「ドラピオン、シザークロス!!」

 

「どぅらぁぁぁ!!」

 

「のっく!!」

 

 その巨体に見合わぬ身のこなしから、ドラピオンが両腕をノクタスめがけ振り下ろす。

 くさ、あくタイプのノクタスにとっては二重に効果抜群の一撃、みすみす喰らってやる道理はない。

 両腕でガッチリガードを固めれば、振り下ろされたドラピオンの打撃は弾き返され、その腕にはノクタスの棘が突き刺さっていた。

 

「ニードルガードか!」

 

 強固な守りにサトシが唸る。ノクタスが、くさタイプのエキスパートであるナタネのもとで相当修行して来たのが伺えた。

 この強いノクタスが、今後はピカチュウゲットのために投入されると言う事実も、今のサトシにはどうでも良いことであった。

 

「ミサイルばり!!」

 

「のくくくくく!!」

 

チュドドドドド…!!

 

 ノクタスが続け様に全身の棘を発射し、ドラピオンへの爆撃を敢行。その威力にたまらず巨体が後ずさる。

 

「どらぃ…!!」

 

「今だ!ノクタス!!」

 

 コジロウの声にノクタスは走る。大地を踏み締め、また共にコジロウと戦える喜びを噛み締め、その拳を握りながら…。

 

「ドレインパンチだぁぁぁ!!」

 

「くぁたぁぁぁ!!」

 

 それは、3年越しの拳…自分たちだけでは終ぞ完成せず、涙を呑んだ別れの末に出来上がった一撃…。

 

ボガァ!!

 

「どぉあらぁ…!!」

 

 ノクタスの渾身の右ストレートが、ドラピオンの腹に突き刺されば、たまらず吹っ飛ばされてゆく。

 

「ドラピオンッ!!」

 

 サトシは見た。殴り飛ばされるドラピオンを押し留めんとその身を乗り出すKの姿を。

 そのまま60kgを越すポケモンの下敷きとなる有様は、私欲のままにポケモンの売買の為の違法捕獲に手を染めるポケモンハンターの姿からは乖離しているように見えた。

 

 

 

「たぁくん!サン!フィオ!フィルクス!」

 

「ぶぁ!」

 

「だーッ!」

 

「りふぃー!」

 

「ふぃ〜あッ!」

 

「ブイズ・カルテット!スクウェア・フォーメーション!!」

 

 ひばりが陸上選手のクラウチングスタートのような体制を取れば、ブースターのたぁくん、サンダースのサン、リーフィアのフィオ、ニンフィアのフィルクスは主人の屈めた背中を踏み台にして次々と跳躍していく。

 

「また何かする気だぞ!」

 

「奴を止めろー!」

 

「ぶいぶい〜!!」

 

「いずぅぅぅ!!」

 

 したっぱたちがひばりにポケモンをけしかけるも、その周囲をイーブイ夫婦がガードし、スピードスターで追い散らす。

 

「超必殺!ブイズ・ダイナミック・スペシャル!!」

 

「ぶいぶい!」

 

「い〜ずッ!」

 

 ひばりの号令にブイとイズも続く。

 空中で正四角形の陣形を取る4体はもちろん、ひばりのゲットしているイーブイフレンズだ。

 彼らは皆、皆ブイとイズの子供である。父母は、我が子たちに発破をかけていた。

 

「ぶぅぅぅわぁぁぁぁ!!」

 

「だぁぁぁぁぁしゅッ!!」

 

「りぃふぃふぃふぃふぃ!!」

 

「ふぃおおお…ああッ!!」

 

チュドオオオオオオオン!!

 

「「「のわぁ〜ッ!?」」」

 

チュドオオオオオン…!!

 

 たぁくんのかえんほうしゃ、サンの10まんボルト、フィオのリーフストーム、フィルクスのムーンフォースが一点集中でしたっぱたちを爆撃する。

 

「凄い…!」

 

 ひばりの指示と、その独自性に富んだ攻撃は、オモダカを感嘆させた。

 それは、ポケモンバトルという競技の世界に生きる訳ではない者の、自由な発想。

 手持ちのポケモンたちへの…イーブイフレンズへの特別な情熱が生んだ研鑽と言えた。

 

「ああいう力も、あるのですね。」

 

 競技の世界の真剣勝負に命を賭けることを美徳とはせずとも、決して非力な愛護者ではない。

 オモダカは、自分やサトシとは異なる性質ながら、ひばりもまた一流のファイターであることを知る。

 それは、25年近くののちに出会う、まだ見ぬ世代の子供たちに通じる煌めきであった。

 

 

 

「は、はうあ!!」

 

「俺たち、一体何して…?」

 

 オブジェにされていた角刈りとパンチパーマが元に戻る。

 コジロウが投げた薔薇が事前に突き刺さっていたのに加え、ドラピオンを受け止めて下敷きになった衝撃でレーザー光線発射デバイスが完全に破損したからだ。

 

「おのれぇぇぇ…!!」

 

 倒れたドラピオンをKはボールに戻す。

 

「ほらほら〜そろそろ年貢の納め時なんじゃあないのかしら〜ん?」

 

「俺たちロケット団を敵に回したことを後悔させてやるぜ〜。」

 

「ギッタギタにしてやるニャ〜!」

 

「そぉぉぉぉぉなんッすッ!!」

 

 そろりそろり、とロケット団がKへ近づいてゆく。メガボーマンダとドラピオンを倒したことで、完全に調子に乗っていた。

 

ビシュシュシュウ!

 

「危なッ!!」

 

 ムサシの足元目掛け、彼方より水流弾が放たれてはたまらず尻餅をつく。

 

「おいムサシ、今のって…!」

 

「あの時気球を撃ち抜いたのと同じ水の弾丸だニャ!!」

 

「うぉれぉぉッ!!」

 

「あれは…!」

 

 インテレオンがみだれづきの滝の高台より駆け降りて来たのか、猛スピードで接近してるのが見て取れた。

 Kの危機に狙撃ポイントを離れて救援に来たのだ。

 

「インテレオン!」

 

 Kは懐から取り出したドローンロトムを放り投げれば、プロペラ回転によって空高く舞い上がってゆく。

 

「ドローンロトム…!?」

 

 あらかたしたっぱを掃討したところでオモダカは、打ち上げられるドローンロトムから公式戦同様の人工ガラテラ粒子が散布されてゆくのを見上げる。

 Kの狙いにサトシもすぐに気がついた。

 

「まさか!?」

 

「ここから一網打尽だ!インテレオン!!キョダイマックス!!」

 

 馳せ参じたインテレオンをボールに戻し、そのままKはドローンロトム同様真上に放り投げた。

 

「ゔぉ゛れ゛ぉ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 開かれたボールから再び姿を見せたインテレオンは、キョダイマックスにより、40m台の尻尾を垂直に伸ばしながら体のすぐ下の尻尾はとぐろを巻いて足場として鎮座する。

 その指鉄砲は、既にターゲットをロックオンしていた。

 

「まずい!こっち狙ってる!」

 

「「「えぇッ!?」」」

 

 インテレオンの狙いを察したサトシが走り出せば、ギョッとした顔でロケット団も後に続く。

 

「キョダイソゲキ!!」

 

バッシュウウウーーーーーッ!!

 

「うわぁぁぁ!撃ってきた〜!」

 

「そ、ソーナンス!なんとかしなさいよ〜!」

 

「そぉぉぉぉぉなんッ、ぶッ!?」

 

 半狂乱なムサシの指示に応え、ソーナンスがキョダイソゲキを跳ね返しにかかるも、撃ち下ろされた瀑布を前に敢えなく呑み込まれてしまった。

 メガボーマンダのはかいこうせんを跳ね返した際に体力のほとんどを消耗していた為、反射に失敗したのだ。

 

「うっそぉ!?」

 

ドバッシャアアアアアン!!

 

「くぅッ…ロケット団ー!!」

 

 キョダイソゲキが着弾し、フシギダネを庇いながら体を屈めて耐えるサトシ。

 

「あーあー、あともうちょっとであいつらギタギタに出来たのに〜。」

 

「のく!のっく!」

 

「いだだだだ!まぁいいんじゃないの?あれだけやったら後はジャリボーイがなんとかするだろ。」

 

「ニャーたちはできることはやったニャ〜…てな訳で、次こそピカチュウゲットを掛けまして!」

 

「「「せーの!!」」」

 

「「「やな感じ〜〜〜〜〜!!」」」

 

「そぉぉぉぉぉなん、ッすッ!!」

 

キラリン

 

 ロケット団が吹っ飛んでゆくのを、サトシはただただ見ているしか出来なかった。

 いつもはピカチュウを奪いに来る邪魔な奴らだが、たまにこうして共闘するのもあり、どこか憎からず思っているのもまた事実であった。

 

「ぴかぴ!」

 

「サトシ!」

 

 キョダイソゲキの水流を浴びて全身ずぶ濡れになりながら立ち上がるサトシの下に、イーユイを守り切ったピカチュウとマメバッタ、したっぱを片付けたオモダカたちが駆け寄る。

 ポケモンハンターの軍団は、残すところKのキョダイマックスインテレオンのみであった。

 

「だねぁ!」

 

 皆がインテレオンを見上げる中、サトシの腕の中からフシギダネが大地に降り立つ。

 

「戦闘不能になったはずでは?」

 

「俺のフシギダネはガッツがすげーんだ。」

 

 メガボーマンダからの一撃を叩き込まれてなお些かも闘志のブレていないフシギダネにひばりは驚愕していた。

 

「だぁぁぁぁねッし!!」

 

 サトシの腕の中で、ほんの少しだけ体力を取り戻したフシギダネは左右の地面をスパンスパン、と叩く。

 Kに借りを返す一発をかます一発をかまさねば退くに退けぬ頑固者な心情が爆発していた。

 それこそが、個性豊かなサトシのポケモンたちの中でまとめ役を務め上げるに足りる最大の要因なのだ。

 

「ミヨ〜…。」

 

 イーユイがジッ、とインテレオンを見上げる。

 ここまでピカチュウとマメバッタのコンビに守られ続けていたその太極図を描くような勾玉に囲われた目玉に、Kたちポケモンハンターへの不愉快さが浮かんでいた。

 

「ミヨッ!!」

 

「ぴかぁ!?」

 

「ばったぁ!?」

 

 イーユイは怒ったまま、突如として跳ねるようにインテレオンのボディ目掛け飛んでいく。

 

「イーユイが!!」

 

 ポケモンハンターズギルドとの最後の戦いの火蓋は、まさかのイーユイが切ったのだった…。

 




 『ナタネ』
 27歳。シンオウ地方ハクタイジムのジムリーダー。
 シンオウきってのくさタイプのプロフェッショナルであり、コジロウのサボネアを預かり、才能を開花させた。
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