3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 サトシはオコリザル改め、コノヨザルを仲間に加えた日のことを語り出す。
 それは3年前、バトル世界一となってしばらくしてからの再会劇であった。


PWCS開幕戦 打ち上げ おいしんボブ③

「(オレ、ツヨクナッタヨ)」

 

 サトシと別れてからの、オコリザルの日々が視界に飛び込む。

 アノキのシゴキを受けて時に怒り、挫け、マナミに励まされて、その度にサトシのことを思い出し、立ち上がってまた厳しい鍛錬に身を投じている。

 

 

 

「(カクトウチャンピオン、ナッタヨ)」

 

 ジャイアント高田とサワムラー…虎噴射ジン…。

 数多のポケモンプロレスラーやレスラーポケモンとの試合を重ね、遂にはP-1グランプリの統一王者の座を勝ち取り、果てはポケモンボクシングチャンピオンのカシアスと繰り広げた異種格闘技戦も乗り越えて、アノキとリングの上で称賛を受けている。

 

 

 

「(コレデオレ、サトシノチカラニナレルカナ)」

 

 サトシはハッとする。

 格闘技が性に合ったのは嘘ではないにしろ、オコリザルは誰のためでもない。

 トレーナーである自分のために側を離れてでも強くなる道を選んだのだ。

 いつかまた、会う日のことを胸に抱いて。今度は自分と出会った頃の記憶が流れ込んでくる。

 

 

 

「むきゃ!むきゃ!」

 

「俺はチャンスを逃さないのさ、いけっ!マンキーゲット!」

 

 思い返せば、オコリザルとのファーストコンタクトはあまりよろしくはなかった。

 野生のマンキーであった頃にゲットしようと、食事中にボールを投げ込んだのは完全にサトシの自業自得とはいえ、怒りを買ってボコボコにされた。

 その上、お気に入りの公認キャップを奪われた挙句にピカチュウを付け狙うロケット団の毎度の襲撃のせいでオコリザルに進化してしまったのだ。

 

 

 

「燃えろヒトカゲ!かえんほうしゃだ!!」

 

「かぁぁぁ〜!!」

 

 帽子を取り戻すのも兼ねた総力戦。ゼニガメも、フシギダネも歯が立たない。

 土壇場で新しい技を覚えたヒトカゲの脅威的な粘りの末に、どうにかゲットまで漕ぎ着けたオコリザル。そこまではよかった。

 ただ、ゲットしてからも生来の暴れ癖を、当時のサトシではとても制御できるものではなかった。

 

 

 

「オコリザル…大丈夫か?」

 

「きぃ〜っ…。」

 そんな中で迎えた転機が、アノキを止めてほしいとの娘のマナミの懇願がきっかけのP-1グランプリへの参加。

 対戦相手のワンリキーにリング外へ投げ飛ばされた際、サトシが下敷きとなり大怪我を防いだ。

 それが、オコリザルの心を開かせたのだ。

 例によってロケット団の妨害がありながらも、新しい絆を結んでサトシとオコリザルは大会を制する。

 俺たちの旅はこれからだ、そんな矢先での、別れ。

 オコリザルは本当は自分と一緒にいたかったのでは?それを突き放したのは自分の都合からではないのか?そんな思いが去来する。

 

 

 

 サトシの手がルカリオの方から離れれば、見るべきものは見終えたものとルカリオも波導の投影を止めた。

 サトシは、寝ているオコリザルの側に改めて寄り添った。

 

「オコリザル、俺、本当はまだ心のどこかでお前のこと怖がってたのかも知れない。だから、アノキさんのところで頑張ってるなら、それでいいって思ってた、思うようにしてた…。」

 

 両膝をつき、ルカリオの肩に触れていた手が、オコリザルの頬を撫でる。

 

「でもお前は、いつか俺とまた一緒に戦いたいって、思ってくれてたんだな。そんなお前の気持ちを、俺…分かってやれなくって…俺…!俺…!」

 

「こぉるぅ…。」

 

「ぴか。」

 

 言葉を紡ぐサトシの目から溢れる、涙。

 ルカリオが駆け寄ろうとするのをピカチュウが待て、とばかりに制止する。溢れた涙が、オコリザルの顔に落ちる。

 

「むきゃ…?むきゃ…!?むきゃ!!」

 

 何かが顔に溢れ落ちている。

 そんな感覚に、ゆっくりと目を覚ますオコリザルの視界に映るのは、ずっと待ち焦がれた自分のトレーナー。

 ずっと、会いたかった、自分のトレーナー。

 目に涙を溜め、たまらずサトシに抱き付いていた。

 

「むきゃきゃ!むきゃきゃきゃ!!」

 

 そこに怒りや拒絶など見えようはずがない。

 それは、波導を見るまでもなかった。

 

「オコリザル…オコリザル〜!!ごめんよオコリザル!俺のオコリザル〜!!」

 

「むきゃ〜〜〜!!」

 

 互いに抱擁、大粒の涙を流しながらの再会。

 ピカチュウも、ルカリオも、アノキとマナミの父娘も貰い泣きせずにはいられなかった。

 

 

 

「それでアノキさんとこの事務所からオコリザル、じゃあなかった。コノヨザルを引き取ってまた一緒に旅する仲間として迎え入れたって訳。あれ?」

 

 時を戻そう。サトシの話す経緯への反応は様々であった。

 いの一番は、アイリス…。

 

「ばかーっ!ちょくちょく様子見に行ったげなさいよ!!このばかばかばかーっ!!」

 

「痛い痛い痛い!!なんでアイリスが泣いてんだよ!?」

 

 涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔でポカポカとサトシを叩きまくる。言ってることはド正論なのでそれ自体に返す言葉はなかった。

 

「そうか。あのオコリザル、サトシのポケモンだったのか。」

 

 長年リーグチャンピオンをやっているダンデには、様々な方面からの付き合いがひっきりなしである。

 その中に、P-1やポケモンプロレスの関係者もいたらしく、オコリザルの存在も既知であったようだ。

 

「よかったねぇ〜オコリザル!いやコノヨザル!実にマーベラスな再会劇だよ!」

 

 アイリス同様話のムードに呑まれて顔をぐしゃぐしゃにしているプラターヌ博士に鼻をチーン、とかませるアラン。

 

「うん。それはそれとして、コノヨザルはオコリザルが憤怒、つまりは激しい怒りの力により進化を迎えるポケモンらしいんだ。」

 

「急に冷静にならないでください博士。」

 

「てことはやっぱり俺がずっとほったらかしにしてたからそれで?」

 

 急に研究者スイッチが入り仮説に入るプラターヌ博士に、サトシが投げかければ、博士はそれに首を横に振る。

 

「ううん。オコリザルは、強くなってもサトシくんと一緒に戦えない、サトシくんの力になってあげられない、そんな自分自身に憤怒したんじゃあないかな。それが、進化のエネルギーになった。」

 

「でもそれって結局巡り巡って原因はサトシよね。」

 

 博士の説をしてアイリスはなんだかんだサトシがオコリザルを寂しがらせたのが悪い、と断ずる。

 これもまた事実であるので誰も言い返せはしなかった。

 

「しかしだなー。コノヨザルは今こうやってサトシについてきてる。離れ離れだった分の時間はこれからお互いいくらでも埋め合わせできるんだしそれでいいじゃあないか。」

 

 そうだろ?とダンデが話をまとめればみんな頷かされる。

 この辺りは、この場の現役トレーナーの中で一番キャリアとカリスマを併せ持つからこそ出来る荒技であった。

 その言には周囲を納得させる力が宿る。無敵のチャンピオンの面目躍如である。

 

 

 

 オコリザル改め、コノヨザルとサトシの再会話で盛り上がってるのはあくまで人間側の都合である。

 一方のポケモンたちはというと、ピカチュウのワンマンショーであった。

 

「ぴか、ぴかぴか、ぴーか〜!」

 

 サトシとの旅の中で培ってきた顔真似と形態模写で、他のポケモンたちの爆笑をかっさらっていた。

 

「ぴぃ〜か、ぴぃ〜か。」

 

 ひと通り持ちネタを消化したピカチュウがいやぁありがとう、ありがとう、とでも言うような手先の動きとともにステージ代わりにしていたメタグロスから降りる様はコメディアンのそれである。

 ひと休み、とばかりに座り込みポケモンフーズをまた摘もうとしたところでお店の制服を着たやけに小柄なスタッフ…?がピカチュウに近寄ってくる。

 

「いやぁお客さん実に芸達者でございますニャ。流石はワールドチャンピオンのエースポケモン様!コレ、当店裏メニューの特製ケチャップですニャ、ぜひぜひピカチュウ様に味わってほしいのニャー!」

 

「ぴかっちゅ!?」

 

 ピカチュウはケチャップに目がない。

 ぜひ味合わせてほしい、とフーズの皿を差し出すもそのボトルの口はピカチュウに向けられている。

 キョトンとした表情でボトルの口にピカチュウの視線は向く。そして…。

 

「ぴぃかぁ〜!?」

 

「ニャハハハハ!ケチャップボトル型捕縛用ライフル効果抜群だニャー!!」

 

 口から放たれた無数のロープにより、ピカチュウは捕らえられてしまったのだ。




 『アノキ』
 57歳。旧闘魂ジムにして現新ポケモンプロレスの創始者。通称『燃える闘魂。』
 元々はエビワラーと共に戦っていたが、サトシのオコリザルの才能を見出し、レスラーポケモンとしてスカウト、彼を預かっていた。
 
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