3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 『ポケモンナショナルチームトーナメント』…略してPNTT。
 全国の地方の精鋭たちが集う戦いの夢舞台にサトシは心躍らせるも、肝心のアローラ代表メンバー集めは難航していた…。


PNTT Fighting! 探し出せ!アローラ代表メンバー

 アローラきっての秀才イリマがカロス地方の代表メンバーとして加わった事実は、サトシはもちろんアローラ側の人々にとってもショッキングな事態であった。

 ククイ博士としても、本人が自分の意思でオファーを受けた以上、栄達を求める教え子を教師の立場的に引き止める理由を見出せなかったのだ。

 

「ならハウは?あいつもすっげえ強いし!!」

 

 3年前のアローラリーグ第1回大会、決勝トーナメント2回戦をサトシと争った少年ハウは、メレメレ島のしまキングハラの孫でもあり、まさにアローラ期待の若手と言えた。

 が、これもサトシ以外は暗い表情をする。

 

「ぴかぁ?」

 

「あー…ハウなんだがなぁ…。」

 

「もしかして、ハウも別のチームに?」

 

「いや、あいつはお前が3年前、マスターズトーナメントで優勝した後にアローラを出たっきりで、師匠にも連絡をよこしてないらしいんだ。だから…リーグとしてどこにいるかも掴めてない。」

 

「そんなぁー…。」

 

 またもアテが外れてサトシは項垂れる。

 それでもハウのことだ。どこかで強くなるために修行を積んでいるのだろうから、姿を見ないというわけで心配するでもない…というのが彼を知る人々にとって共通の認識であった。

 何より我らがアローラチャンピオンは、ろくに地元におらずあちこちフラフラしているのだし…。

 

「サトシ、グラジオとリーリエはこっちに呼べないのか?会ったんだろ、パルデアで。」

 

「無理じゃないかなぁー…2人とも、アカデミーでみっちり勉強するって言ってたし。」

 

 カキにサトシは首を横に振る。

 サトシがアローラを発った後の第2回大会を制したグラジオの力は大きなものであるし、リーリエも決して弱くはない。

 グラジオに関しては、自らも戦った経験からカキは問うたのだが、こちらもアテが外されてしまった。

 

「多分マオちゃんは出ないだろうし…。」

 

「すっかり店の看板娘が板についたからな。」

 

 サトシたちの級友である少女マオは、メレメレ島のアイナ食堂で働いている。

 明るく面倒見のいい性格で、グループのいいまとめ役に収まっていた彼女は、実家でもある食堂経営こそが第一であり、店を空けてでもチームに参加、などという話にはならないであろうことは想像に難くなかった。

 

「マーマネは、ホウエン地方に行ったまま?」

 

 恐る恐る尋ねるサトシに、カキとスイレンは力なく首肯する。

 マオと同じく級友の少年マーマネは、宇宙飛行士の夢を叶えるべく活動の舞台を全国随一の宇宙センターがあるホウエン地方トクサネシティに移しており、ポケモンスクールの授業カリキュラムも、スマホロトムを使ったリモート参加でこなしていた。

 これも自らの目標に一直線で、大会参加のために勉強を中断させて呼び寄せるわけにもいかなかった。

 

「アセロラは?」

 

「クチナシさんの代理で興行を結構な回数こなしてるのが"四天王経験者"の条件に引っ掛かっちまってる。」

 

「マツリカさんは?」

 

「2年前に画家として放浪の旅に出てそれっきりじゃのう。」

 

「そうだ!カヒリさん!!」

 

「大会期間の8月がゴルフのツアーと丸かぶり。」

 

 サトシがアローラで出会った人たちを思い付く限り挙げていけば、ククイ博士が、ハプウが、スイレンが、それぞれ参加NGの理由を挙げてその度にサトシは項垂れる。

 代表の看板を背負って戦うメンバーとしては、相応に地方に愛着があることもさることながら、やはり実力も求められてくる。

 

「選手兼監督がアリなら俺も頭数に入れられるんだがなぁ…。」

 

 ククイ博士がコレは困った、と頭をかく。

 代表とは別に配置される監督が選手を兼任可能というルールはない。あくまであと4人、よさげな精鋭をかき集めねばならないのだ…。

 

グゥ〜。

 

「あっ、ごめん。鳴っちゃった。」

 

「ぴかぴ〜。」

 

 再びの沈黙を、腹の虫が破る。

 サトシが申し訳ないと頭をかけばククイ博士は相変わらずなものを見る力ない笑みを、残る3人は真剣な空気をぶち壊すのでジト目をそれぞれ向ける。

 

「まぁ、エントリー締め切りは来月の15日だ。今は6月の23日だから、それまでになんとかしよう。」

 

 腹が減っては戦はできぬ、ならぬ、いい考えは浮かばぬ。

 期日までにどうにかまとめていこう、と話を切り上げ、この場は解散となった。

 

 

 

「ただいま!バーネット博士!」

 

「ぴっか〜!!」

 

「お帰り、サトシ!それにあなたもお仕事お疲れ様。」

 

「ありがとう、バーネット。」

 

 マナーロスタジアムを後にして、ククイ博士とともに帰り着いた『自宅』にて、彼の伴侶であるバーネット博士が出迎える。

 

「がぉあん!」

 

「にいちゃ!にいちゃ!」

 

「みんな久しぶり!それにレイも、おっきくなったな〜!」

 

「ほぉー…。」

 

「わぅ!」

 

「め゛〜ん…。」

 

 モクロー…ルガルガン…ガオガエン…メルメタル…。サトシのタイトル獲得の際に直接アローラリーグを戦い抜いた精鋭たちだ。

 ガオガエンがククイ博士とバーネット博士の愛の結晶であるレイを肩に乗せ、モクローはお気に入りのスポットとしてメルメタルのお腹の空洞にすっぽり収まり、ホッコリとした表情を見せている。

 ひとまずは、『この世界』にいる『家族』が皆揃っての夕飯となった。

 

「大っきくなったら、ちゃんぴおん!ちゃんぴおん!」

 

「おっ、いいじゃん。たくさん鍛えて強くなるんだぞレイ。俺、待ってるからな。」

 

「ん?レイ、お前昨日はロイヤルマスクになるって言ってなかったか〜?」

 

「ろいやるますくにもなるの!!」

 

「はっははは!こりゃあ参った!未来のチャンピオン・ロイヤルマスクⅡ世、ってか?」

 

 暖かな食卓を、朗らかな笑いが彩っている。

 久しく味わう家族の温もりが皆を癒す。ありふれた光景、これこそが何より尊いのだ。

 

「大会のメンバー集めはどんな感じ?」

 

「サトシが参加を決めてくれたからあと4人だ。正直、サトシが無理だったら諦めてたまである。」

 

「そうなの?」

 

 サトシに首肯しながらククイ博士はタブレットロトムを操作し、全員に液晶画面を見せる。

 そこには、各地の代表チーム選抜事情がネットニュースとして上がっていた。

 

「大会の告知動画が投稿されたのは3日前。昨日の段階で、ウチとカントーを除く全地方の現役チャンピオンがチームへの参加を表明してる。」

 

「カントーは?」

 

「あそこは未だ"聖域"のままだ。」

 

 ポケモンリーグの全体を統括する総本部が置かれているカントー地方セキエイリーグ。その王座は、現在のチャンピオン制に移行したポケモン歴1985年の時よりずっと空位のままであった。

 制度施行の際、当時のNo.1トレーナーとして君臨していた『霊魂始祖(ゴースト・オリジン)』キクコのみ、唯一座することを認められるも、彼女はこれを固辞。あくまで四天王の一角としてその椅子の前に立ち続けた。

 今もなお、"聖域"は主人を迎えることなく在り続けている。

 

「まぁカントーはカントーとして、こっちの話だ。他が揃って現役チャンピオンが出張って来るってのに、こっちが同じ立場のお前を出せないのは礼を失してるようなもんだ。」

 

 そもそも勝ち目がなくなるしな、とククイ博士は食後のエネココアを啜りながら笑みを浮かべる。

 

「バーネット博士。ザオボーさんは出られないの?」

 

 サトシがここでまた候補を思い出す。

 エーテル財団で働いている元研究部のチーフであったが、こちらの世界と異世界とを繋げる異空間『ウルトラホール』と、そこを介してやってくる特殊かつ強力なポケモン群『ウルトラビースト』に関わる騒動を引き起こした元凶として、現在はヒラのスタッフという身分で現職場に居続けている。

 いわゆる『禊』を済ませてからは自身の高い技術力とユニークな人となりで少しずつだが周りからも憎からず認識されていき、サトシとも紆余曲折ありながらアローラリーグの決勝大会で戦った良きライバルと言えよう。

 

「それが先月までに溜まってた有給休暇を全部使い果たしちゃってて、まとまった期間職場を離れるのは無理なんですって。」

 

「ぴかぁ〜…。」

 

 またも空振り、ピカチュウも意気消沈だ。

 

「(あいつら…は、ないな。うん。)」

 

 一瞬浮かびかけたラブリーチャーミーな敵役2人のことを、サトシは首を左右に大きく振って頭の中から消した。

 ロケット団とは、互いに利害が一致しての一時的な共闘こそやぶさかではないが、だからといってこちらから公式な舞台に誘うのは話が違うのだ。

 正直言って、ガッツは認めるもののトレーナーとしての素の実力も、ギリギリ良く言って甚だ疑問…と言うところが実際の評価であるのだし…。

 

「あっ。」

 

 お騒がせチームのすぐ後に浮かんだ顔が、ストンとサトシの中でちょうどいいところにハマる感覚がした。

 

「どうした?」

 

「もしかしたら、1人いけるかも!」

 

 口にしてから、サトシは次第に自身の中で浮かんだ相手へのスカウトがナイスなものであると高揚感を覚える。

 それはまさに、根拠のない自信であった。

 

 

 

「本当にスクールにいるのか?」

 

「あぁ!間違いないよ。」

 

 翌日、サトシは例によって寝過ごし気味な朝を迎えてから、家に迎えに来たカキとスイレンを引き連れて母校であるポケモンスクールへ向かっていた。

 勝手知ったるグラウンドでは、褐色肌で赤と茶髪が混ざった髪色の少女がクラスメイトと授業の一環としてポケモンバトルをしていた。

 

「ヒトカゲ、はじけるほのお!」

 

「かげぇ〜!」

 

 少女のヒトカゲが口から吐く火の玉の拡散弾が対峙するゴーレムポケモンゴビットに直撃、ゴビットは大きくよろめいた。

 

「ホシ〜〜〜!」

 

 それを見るカキの顔がみるみるとろけてゆく。

 

「カキは相変わらずホシにメロメロだな。」

 

「ここはむしろ3年前より悪化してるかも。」

 

 カキの実家の牧場を手伝う健気さを見せていた妹のホシは、3年の成長を経てポケモンスクールに通うようになっていたのだ。

 

「そこまで!2人とも指示の出し方が上手になったね。」

 

「先生!」

 

「みんなも、バトルで頑張ってくれたポケモンたちに"ありがとう"を忘れないようにね。」

 

「「「「「はーい!」」」」」

 

「おーい!シゲルー!」

 

「サトシ。」

 

 生徒たちが元気よく返事をする中サトシが『先生』に手を振り、近づいてゆく。

 特徴的なトゲトゲとした茶髪を麦わら帽子に納め、ピンク色の下地に青い星型のプリントがされた派手なアロハシャツ、赤い短パンというビーチスタイルの色男は、昨日別れてからのあまりにも早い再会に苦笑する。

 

「むむむ…!」

 

 カキは見逃さなかった。シゲルの苦笑をとろけ切った顔で見つめる最愛の妹の姿を。

 あれは、『女の顔』なのだ…。

 




 『スイレン』
 13歳。ポケモントレーナー。
 ポケモンスクール時代のサトシのクラスメイトで、メレメレ島屈指の釣り名人。
 バトルの方も実力者であり、みずポケモンを好んで運用するよ。
 
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