3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 カキとの熱いバトルをきっかけに、シゲルは闘志を呼び起こされる。
 改めてのスカウトを受け、アローラ代表にシゲルが仲間として加わった!


PNTT Fighting! アイナ食堂、再会と驚愕

 新たなチームメンバーとしてシゲルの勧誘に成功したサトシたちは、そのまま夕食兼シゲルの歓迎会兼今後の作戦会議…と極めて雑多な目的のもとアイナ食堂に集まった。

 

「サトシ久しぶり〜!!」

 

「マオ!!久しぶり!!」

 

 食堂を実家に持つ看板娘である褐色の少女マオが、3年前と変わらぬピンク色のエプロン姿でサトシたちを出迎える。

 彼女の相棒であるフルーツポケモンアマージョもお揃いのエプロン姿だ。

 

「ぴっかぁ〜!」

 

「アハハ!ピカチュウも元気そうだね〜!」

 

 飛び付くピカチュウを抱き留めながらマオは頬擦りする。

 

「ククイ博士とバーネット博士は?」

 

「後から来る。先に座っちまおう。」

 

 各々再会の喜びを分かち合うのもそこそこに、サトシ、スイレン、カキにシゲルの4人は事前に予約しておいたテーブル席につく。

 それからすぐにククイ、バーネットの博士夫婦がレイを連れて合流した。

 

「サトシの思い当たる候補がシゲルとはな。」

 

「説得してくれたのはほとんどカキなんだけどね。」

 

「改めてみんな、よろしくお願いします。」

 

 スクールでの熱戦が、少なからず自身の中の燃え残った闘志に火をつけた事実はある以上シゲルからして否定することもない。

 席を立ち、一礼して見せるのをサトシたちは拍手でもって応えた。

 

「サトシが訪ねて来た時と、ここに来る道すがらで大体話の事情は把握しましたが、残りのメンバー選定にアテはあるんですか?」

 

「あぁ。サトシが参加してくれる、ってなったからとりあえず残りを募る舞台は作れたよ。」

 

 ククイ博士がタブレットロトムを操作し、テーブル中央に提示すればみんなで画面を覗き込む。

 

「"リーグチャンピオン主催・アローラ代表チーム<マナーロ>加入メンバー選考会"?」

 

「今月末にマナーロスタジアムを借り切って、そこに集まったトレーナーたちのバトルを見てこれは!ってなったやつにスカウトをかけるんだ。」

 

「面白そう!」

 

 サトシは目を輝かせ、シゲルはふむ、と顎に手をやる。

 

「なるほど。チャンピオンであるサトシの名義で開催することで、アローラ代表は今回の地方対抗トーナメントに対して、相応にやる気を出して臨むぞって意思表示にもなっているわけですね。」

 

「そうだ。だからこそサトシが来てくれなかったらこの手は使えなかった。サトシがいない中で選考会なんてやったところでこちらの本気は伝わらんからな。」

 

「アローラの地方予選は、他と比べてレベルが低いって言われてるんだよな。実際新興で、現地民には島巡りの延長としか思われてないところがあるのは事実なんだろうが…。」

 

 カキが苦々しく語る。それは、チャンピオンリーグを経験し、全国の舞台を知ったが故のリアルな批評であった。

 

「だが、その分チャンピオンリーグ進出を目指すトレーナーたちからしたら狙い目として認知されてもいる。その中の強豪たちが、地方予選に弾みをつける目的で参加してくれるかもしれない。」

 

「参加条件の時点で、トーナメント大会と同じになってる。」

 

 その辺りに抜かりはない、とククイ博士がスイレンに頷けば、スイレンも首肯を返した。

 

「これ、俺も出たい!」

 

「主催者のお前が参加してどうするんだよ。」

 

「えー?」

 

「いいんじゃあないんですか?」

 

 目を輝かせながら挙手するサトシにククイ博士は苦笑する。

 そのごもっともなツッコミに対してサトシに助け船を出したのはシゲルだ。

 

「参加者同士で総当たりよりは、実際の参加メンバーが審査員として手合わせして実力を測る方が早いでしょう。」

 

「なら俺たちもやるぞ!」

 

「腕が鳴るね、ナギサ!」

 

「ぶーい!」

 

 シゲルの申し出にカキとスイレンも同調する。

 ククイ博士も少しの思案ののち…。

 

「分かった。お前たちには審査員として頑張ってもらうぜ!」

 

 その申し出を受け入れた。

 シゲルとしても一時的にとはいえ現役トレーナーへの復帰である。少しでも勘を取り戻す為の機会を確保したかったのが本音と言えた。

 

「おまちどうさま〜!アイナ食堂自慢のスペシャルフルコースだよ〜!」

 

「まぁじょ〜ん。」

 

 ある程度話がまとまったところでマオとアマージョがそれぞれ人間用、ポケモン用の料理を運んでくる。

 

「みんなまだまだ食べるよね?」

 

「もちろんだぜ!」

 

「ぴっかぁ!」

 

「オッケ〜!!」

 

 食べ盛りの10代の仲間たちやたくさん食べて大きくなるべしなレイを見て、マオは満面の笑みを浮かべながら厨房に引っ込んでゆく。

 身を翻す際にエプロン越しにも分かる、前はもちろん若干横にはみ出た胸の膨らみのたゆんとした揺れが、他の客にいる野郎の視線を悉く奪っていた。

 

「久しぶりだなぁ〜マオの飯食べるの。」

 

「僕もだよ。ここはボリュームの満足度が違う。」

 

 ポケモンスクールにて臨時講師を勤めている時分にはシゲルも常連であることがマオから特にリアクションのない要因と言えた。

 トレーナーたちが食事を始める中、その足元でもポケモンたちが腹拵えながらの宴に入っていた。

 

「サトシ、ピカチュウの隣にいるのってクワッス?」

 

「あぁ。パルデアから出る前にもらってきたんだ。そう言えば、リーリエたちも初心者ポケモンもらってたのかな?」

 

「アカデミーからのポケモン支給を受けるかどうかは任意だからね。一緒にいて見なかったのなら今いる子たちの育成を優先して断ったんじゃあないかな。」

 

「そっか。」

 

 リーリエたちアカデミーで出会った仲間たちが初心者用ポケモンを連れていない理由にサトシはすんなり納得する。

 シゲルからすれば、サトシにポケモンを半ば無理やり送り付けたのはアカデミー側の恩を売る行為とも見えたが、当のサトシがクワッスを大事に育てる旨をハッキリさせている以上はそこに水を刺すようなことは言うまいと記憶の中から消すことにした。

 

「ご注文はなににするッスカ〜?」

 

 時間は夕暮れ時。ここから仕事終わりの人々がやってきてかき入れどきとなるのだろう。

 店内を慌ただしく駆け回るのは、いつかのゴロツキ集団のしたっぱたち…。

 

「あいつら、マオの店で働くようになったんだな。」

 

「ここだけじゃないぞ。ウチの牧場にも何人かいる。」

 

「わたしのとこにも漁に出る中にいたよ、スカル団。」

 

 サトシがしたっぱたちを見れば、カキとスイレンもそれぞれの実家にもスカル団の連中が出入りしていることを話す。

 彼らのボスのグズマがアローラを飛び出し、全国を舞台にした戦いへ身を投じるならば、そこに応援に駆けつけるための旅費が入り用となる。

 つまらない悪事を働く暇があるなら働いて路銀を稼ぐべし…いつしかスカル団の面々はそれぞれ真面目に働くようになり、煙たがられていた人々にもそれなりに受け入れられ始めたようであった。

 

「おっ、きたきた。おーい!」

 

 店内が繁盛してゆく中でククイ博士が入り口を向き手招きする。

 それに導かれてやってきた青年が一堂に深々とお辞儀をしてから顔を見せる。

 

「遅れて申し訳ありません。」

 

「ナンテさん!」

 

「おや、ワールドチャンピオン。」

 

 予期せぬ再会にサトシもナンテも目を見開く。

 

「このナンテくんには、チームのマネージャーとして裏方からみんなをサポートしてもらいたくて招聘したんだ。」

 

「マサラタウンのナンテです。アローラ代表の優勝のため、粉骨砕身する所存であります。どうぞ皆さんよろしくお願いします。」

 

 改めて自己紹介をするナンテ。

 ハッキリと『優勝』の一言を口にしての所信表明は、チームメンバーや監督のククイ博士には好印象となった。

 サトシとしてもさいやくポケモン救出作戦の一翼を担った同士、相応の信頼はすでに寄せている。

 

「らいちゅ。」

 

「ぴか。」

 

 サトシのピカチュウは、元来自身の進化系であるライチュウに対して強い対抗心を持っている。

 それが自然と敵愾心へ繋がり強張った態度に結び付くことも少なくないのだが、ナンテのライチュウが殊勝にペコリと頭を下げてくるのには流石に無碍に出来なかった。

 

「ちょっとやめてよおじさ〜ん。」

 

「ええやないかええやないか、ワシの膝座ってお酌してぇな〜。」

 

「ウチそーゆーお店じゃないの知ってるでしょ〜?」

 

 カウンター席がにわかにザワついていた。赤ら顔の中年おやじがマオに絡んでいたのだ。

 マオは柔和な表情を崩さないままやんわり拒んでいるが、そのところどころに生理的嫌悪が垣間見えた。

 

「いかんな…。」

 

 止めに入ろうとカキが立ち上がり、サトシが続こうとするもマオが首を横に振りながら視線で訴える。

 手出し無用だ、と言うのだ。

 

「マオちゃん…。」

 

「友達といえど客は客…ってことかな。」

 

 スイレンも心配そうにする中、シゲルはサトシたちに配慮するマオの優しさを垣間見ていた。

 

「ちょいちょいおっさん困るッスカら、勘弁してくださいよ〜。」

 

「マオちゃんはウチの看板娘なんスカら〜。」

 

 そのうちバイトのスカル団したっぱたちがおやじを止めに入る。

 店側の人間として、迷惑客の対処は店のスタッフで行うというところが徹底していた。

 

「あ゛ぁ゛?おどれらチンピラども誰にモノ言うとるか分かっとんか?」

 

 マオたちの応対からして、普段ならばこうして宥めてかかれば穏便に済んだのだろう。

 しかし、今日に限っては違ったようだ。

 

「がぉう!!」

 

「「いだだだだだ…!」」

 

 おやじの腰のボールから出てきたガオガエンが、主人の両サイドから宥めにかかるスカル団の2人の頭を掴み上げ、ギリギリと握力を強め出したのだ。

 レイが満腹になって、バーネット博士の膝の上から既に夢の中へ意識を旅立たせていたのは不幸中の幸いと言えたかもしれない…。

 

「ワシゃあ楽しくマオちゃんと飲みたいだけやっちゅうねん!なんでおどれらチンピラ風情に偉そうにされなあかんのじゃボケ!!」

 

「「ううう…!」」

 

「ワシゃあな!メレメレからポニまできっちり試練を済ませて島巡りをちゃんと終わらせたんじゃ!!おどれらのように途中で投げ出して、世間様に迷惑かけるゴミとは人としての格が違うんじゃ!!真面目に働いて更生?笑わせんなカスぅ!!」

 

 アローラ地方に伝わる風習『島巡り』。

 子供たちが文字通り、地方を形成する4つの島を渡り歩いて様々な試練に挑み、大人への階段を登るための儀式である。

 この風習と真摯に向き合い、大きく成長したサトシやポケモンスクールの仲間たちが光の産物とするならば、理由はどうあれドロップアウトの憂き目に遭い、道を踏み外したスカル団は影の産物といえよう。

 

「がぁう…。」

 

 ガオガエンがしたっぱからパッと手を離す。

 これで勘弁…という流れではない。

 

「ゴミカスはずっとゴミカスのままなんじゃワレぇ!!」

 

 床に蹲るしたっぱたちに、ガオガエンは鍛え抜かれた両腕を振るわんと追撃するのだ。

 

「ちょっとおじさん!」

 

 これにはいかに常連客相手といえど完全に『ライン』を超えている。

 

「まぁじょ、ま!?」

 

 マオも怒ってくってかかり、アマージョが凶行を止めんと飛び出そうとする中、それより先に入り口の方角から一条の白い糸が放たれ、ガオガエンの両手を結んでしまった。

 

「な、なんだァ!?」

 

「おが!?」

 

 両手が白い糸でぐるぐる巻きにされたガオガエンは目をパチクリさせ、どうにか糸を振り解かんともがく。

 相棒に起きた異常事態に親父も動揺していた。

 

「アレは、いとをはく攻撃…。」

 

 おやじのガオガエンを襲った技をシゲルがすぐに看破する。

 

「シゲル!シゲル!!」

 

 そんなシゲルの肩を揺らしながらサトシは入り口から視線が釘付けになる。

 

「なんだよ急に…って、えっ…?」

 

 手荒に呼び掛けられたシゲルがサトシの視線を追えば、そこにいた人物にサトシ同様思考がフリーズしてしまった。

 彼らのポケモンであるピカチュウ、ブラッキー、カメックスもまた完全に警戒モードに入っている…。

 

「あ、姐さん…。」

 

「お帰りなさいッス〜…。」

 

 床に寝転がるままのしたっぱたちに『姐さん』と呼ばれるのは、外側に跳ねた銀髪のショートヘアに見るものにキツい印象を与える眼光…しかして間違いなく美女であると分類できるのは顔面やヘアスタイルだけではない。

 あしながポケモンアリアドスを従える彼女はアイナ食堂の制服であるエプロンを着け、黒一色のTシャツとショートパンツで、マオ以上の胸と尻の膨らみが大きく主張している。

 

「まったく、出前を済ませて帰って来たらコレだ。」

 

 美女は、大きなため息を吐く。

 

「マオ…コレはもう流石に"出禁"でいいな?」

 

 大事なスタッフにポケモンを使って危害を加えるのは、いくら常連といえど許せることではない。

 

「うん…お願い、ジェニーさん。」

 

 マオは、ハッキリと頷いた。

 

「「ジェニー…さん?」」

 

 その口から出た名前に、サトシとシゲルはギョッとした表情のまま互いを見る。

 ジェニー…そうマオに呼ばれた美女の顔は、彼らの記憶に残るポケモンハンターJそのものであったからだ。

 




 『マオ』
 13歳。アイナ食堂で働く女の子。
 ポケモンスクール時代のサトシのクラスメイト。実家のお店の切り盛りに情熱を燃やしている。
 パートナーのアマージョとはお揃いのエプロン姿でお店を華やかに彩ってるよ。
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