3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 ポケモンハンターJそのものといえる美女ジェニーは、アイナ食堂で真央と一緒に働く良きスタッフであった。
 いつか記憶が戻るかもしれない…そんな懸念をサトシとシゲルは共有して静観するよりなかった。


PNTT Fighting! マナーロ選考会 集まれ!つわものたち

 雑多な目的のディナーから1週間ほどが経過した6月末日。場所はマナーロ・アイランド。

 地方予選のシーズンとなる10月までは基本的に無料で開放されている特設スタジアムにはこの日、特別便やライドポケモンに乗ってアローラの腕自慢たちが集結していた。

 無論、残り3つの代表チームメンバーの席を狙っているのである。

 

「ハプウ、島の方は大丈夫なのか?」

 

「うむ。正直妾も今日は行けぬであろうと覚悟はしておったのだがのう…。」

 

 一昨日から昨日にかけて、ハプウの住むポニ島には台風が直撃しており、その被害の確認や復興作業の為しまクイーンとして当初ハプウは選考会への参加を見送るつもりであった。

 なんならメンバー辞退すら視野に入れていた。しかし…。

 

「ハプウちゃんよ、村のことは気にすんなべ!しまクイーンとして立派にお勤めしてくんれよ!」

 

 島の人々の熱い後押しを受け、感極まりながらゴルーグにライドしてマナーロスタジアムまで送り出されたのだ。

 

「"しまクイーンとして"…こう言われてしもうては皆の気持ち、汲まずにはおれまいて。妾もチームの一員として、ビシバシまだ見ぬ仲間を吟味いたす故安心せい!」

 

「すげぇ気迫だなハプウ!」

 

「流石はしまクイーン。俺たちもこの闘志は見習わなくてはな。」

 

 意気込みを見せるハプウにサトシとカキが触発される中、スタジアム内の控え室に集まっていたサトシたちチームメンバーの下へ、ナンテを引き連れたククイ博士が合流する。

 

「みんな集まってるな。ハプウは、大丈夫か?」

 

「サトシたちにも話したが心配無用じゃ。」

 

 開口一番ククイ博士もサトシと同じように気遣えば、カカカとハプウは笑い飛ばして見せた。

 それを受け詮索も無用、と頷いて返すのだった。

 

「よし、みんな聞いてくれ。今日のスケジュールを説明するぞ。」

 

 ククイ博士のアイコンタクトにナンテが頷けば、5人にそれぞれペーパーシートを複数枚配ってゆく。

 

「選考会に来てくれたのは全部でちょうど50人。エントリーを打ち切ってから、ナンテくんがある程度参加者のトレーナー経歴を洗い出してくれた。今配ったのはその資料だ。」

 

「詳しく追えたのは事前予約してくれた方々が大半で、当日受け付けの方はちょっとデータがなかったりぼやけちゃったりしてますが。」

 

「だから1人7、8枚ずつなんですね。」

 

「でもこんな早くにこれだけデータを集めるのは簡単なことではなかろう。」

 

 ナンテは申し訳なさげに頭をかく。それぞれ渡されたペーパーシートをペラペラとめくって情報を確認する。

 

「この人、去年の予選に出てた!」

 

「あぁ。ウラウラ島のF(フィッシュ)・タケナカさんだな。あの人のカマスジョーは厄介だった。」

 

 カキとスイレンはリーグで見知った顔を見つけ…。

 

「このアキヤマって人、お笑い芸人トリオの?」

 

「そうだね。同じグループのヤマモトさんなら顔パスで合格にしてもいいくらい強いんだけど。この人もなかなかの腕前だって聞いているよ。」

 

 サトシとシゲルはテレビの向こうで見たことある顔を見つける。

 各々が確認したシートを見せ合いながら情報を交換してゆく。それなりに名の知れた猛者の参加も確認される中…。

 

「ハプウがジェニーさんとバトルするのか。」

 

「なんじゃ、変わった方がよいか?」

 

「いや、大丈夫。」

 

「アイナ食堂のスカル団もジェニーさんと同じハプウさんが相手、だね。」

 

「ハプウで良いぞ、色男よ。」

 

「なら僕のこともシゲルで頼むよ。ハプウ。」

 

 サトシとシゲルが気がかりなジェニーはちゃんと参加しており、ハプウが受け取ったシートの中に顔写真があった。

 もっとも、ペーパーシートには名前以外一切書かれていない白紙状態だったが。

 

「よし。1人10人ずつ、計50人の参加者をどんどん捌いていこう。」

 

 メンバーがシートを確認し終えたのを見計らい、ククイ博士がスタジアムへの移動を促せばサトシたちはそれに従い控え室を出るのだった。

 

 

 

 スタジアムには、既に代表の座を狙う猛者たちが今か今かと選考会の開始を待っていた。

 

「アイナ食堂、ファイトー!」

 

 アローラリーグ公認のイベントとはいえ、リーグの公式戦ではないため観客席にいる人の数はまばらだった。

 そんな最前列では、マオが食堂で働くメンバーの応援を張り切ってしていた。バイトのスカル団たちはマオに手を振って応え、ジェニーは腕を組みながら瞑目して佇んでいる。

 その目が開かれた時、猛者たちは気配を感じ取り、一様に視線を向けた。自分たちとは反対側の入場口から、強い力の持ち主がやってくるのを…!

 

「おっ、来たぞ来たぞ!」

 

「壮観だなぁ…。」

 

「初回大会からコンスタントに好成績を挙げ続ける強豪トレーナー…人呼んで"水霊策士"スイレン!」

 

「そのスイレンを去年決勝で破り、地方予選突破を成し遂げた"アーカラの歩く活火山"カキ!」

 

「電撃的な現役復帰、オーキド・ユキナリのDNAが火を吹くのか、"最強の遺伝子"シゲル!」

 

「四天王枠にはポニ島が誇るポケモン自慢、しまクイーンのハプウ!」

 

「そして!!アローラリーグ初回大会の覇者にてPWCSでもその武名を全国に轟かせた大英雄!!チャンピオン枠にチームリーダーとして、マサラタウンのサトシ!!!」

 

 サトシの右にハプウ、左にシゲル。

 外側右にスイレンで外側左にはカキ。横一列で歩くアローラ代表メンバーの勇姿を目の当たりにして、度の強い眼鏡をかけたいかにも『りかけいのおとこ』然とした観客がスタジアムに姿を見せる代表メンバーを朗々と紹介してゆく。

 誰に頼まれたでもない、口先が勝手に動いているのだろう。

 

「おぉ!そして代表チームの監督に就任したククイ博士!!」

 

 メンバーの後からククイ博士も入場し、傍らに控えるナンテがマイクのスイッチを入れてから博士に手渡す。

 

「ん゛ッ、ん゛!アローラの猛者諸君、今日は選考会に参加してくれてどうもありがとう!俺たちチーム<マナーロ>が欲しているのは強い奴だ!!己が為でもいい!誰かの為でもいい!その力を存分にアピールし、貪欲に代表の席を狙いに来てもらいたい!!」

 

 バトルロイヤル施設『ロイヤルドーム』にて不動のチャンピオンレスラー、ロイヤルマスクとして活動しているのもあってマイクパフォーマンスは手慣れたものであった。

 ククイ博士の言が、猛者たちの闘志をかき立ててゆく。

 

「サトシ!」

 

「えっ、俺!?」

 

「一応きみが主催だからね。この選考会。」

 

 シゲルが隣で呟く。

 ククイ博士から投げ渡されたマイクを、サトシは慌ててお手玉のように手先でもたつき、落としかけながらもどうにかキャッチする。

 

「何か一言頼むぜ、チャンピオン。」

 

 困惑ながらククイ博士を見れば、至って真剣な眼差し。

 サトシもそれに倣い、コクリと頷いた。

 

「みんな!俺たちもすっげぇ楽しみにしてたんだ!!今日は目一杯バトルしようぜ!!」

 

 簡潔なサトシのスピーチ。それが選考会の始まりとなった。

 そんなサトシを見る瞳の中に、見目麗しさを隠し切れない影があるのを、熱狂の只中にいる当の本人は気付けないでいた…。

 

 

 

「ランターン、いくよ!」

 

「んらぁん!」

 

 

 

「スイレンはランターンをゲットしてたのか。」

 

「スイレンは趣味の釣りを活かして多くのみずポケモンをゲットし、自分だけの軍団を作り上げたんだ。あのランターンは、お前のピカチュウ対策でもあるらしいぞ。」

 

「そうなのか、へぇー…!」

 

「ぴかぴかちゅう!」

 

 特性の『ちくでん』により対戦相手のじしゃくポケモンレアコイルが放つでんき技を吸収するライトポケモンランターンが、返しの1発のハイドロポンプでKOを奪えば、そのままスイレンは自身が担当の10人を瞬く間に倒してゆく。

 

 

 

「ファイアロー!フレアドライブで押し切れーッ!!」

 

「ひよぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 

「カキのファイアロー、速くてつえー!!」

 

「カキね、ヤヤコマをゲットしてからサトシの試合の動画をお手本にしてずっとトレーニングしてたんだよ。」

 

 

 

「おい!余計なこと言うな!!」

 

 ぶちパンダポケモンパッチールの不可思議な動きに惑わされることなく灼熱の突撃にてカキのファイアローが対戦相手を一蹴する。

 スイレンがサトシに育成秘話を打ち明ければ、カキは顔を真っ赤にしながら怒鳴っていた、が…。

 

 

 

「お兄ちゃん頑張れ〜!」

 

 観客席からの可憐な声…

 

 

 

「は〜い!頑張りま〜す!!」

 

 マオと一緒に応援に来ていた妹のホシからの声援にすぐデレデレになっていた。

 

 

 

「みんなお疲れ様〜!お昼からも頑張ってね〜!」

 

 朝の10時から始まった選考会は、最初にメンバーとしてバトルを行なったスイレン、カキのそれぞれ10連勝となった段階でお昼どきとなっており、一旦昼食タイムの休憩に入った。

 メンバーに応援席のマオやアイナ食堂組が交流すれば、晴天の空の下でスタジアムにシートを敷き、マオ特性のお弁当が一同に配られた。

 

「僕は午後の部最初に試合していくから、マオさんのお弁当だけを頂こうかな。」

 

「ならそっち俺にくれよシゲル。」

 

「どうぞ。」

 

 選考会の運営に携わっているエーテル財団が注文してくれていた、メンバー用のお弁当。そのシゲルの分をサトシがもらう。

 男性職員から受け取ったのと、マオのとの二択で迷わずマオのを選ぶあたり、シゲルの女好きは天性のものといえよう。

 

「どうだナンテくん。評価は?」

 

「はい。力を感じるけれどキラリと光る何かがもう1つ、またはその逆…が今のところの20人に対する所感ですかね。」

 

「メンバーとして迎えるほどのやつはまだいない、か。みんなはどうだ?」

 

「え、なに?博士?」

 

 食事に夢中なサトシたちはククイ博士とナンテの会話をまるで聞いていなかった。

 

「いや、なんでもない。」

 

 特に追及することなく、博士は話を切り上げる。

 午前中の時点ではまだ皆の琴線に触れる猛者はなし…とする他なかった。

 

 

 

「さて、僕の出番だね。」

 

 昼食の為の休憩時間を終え、選考会は午後の部を迎えた。

 代表メンバーから出向くのはシゲルで、次にハプウ、大トリとしてチャンピオンサトシ直々のバトルが続く形だ。

 

「大丈夫か?シゲル。」

 

「1週間もあればある程度理論的な勘というのは取り戻せるものさ。ここからは実戦的な…。」

 

 

 

「「「「「「キャーーー!シゲルーー!!」」」」」」

 

 

 

 トレーナーサークルへ出向くシゲルをサトシたちが送り出す中、黄色い声援が響く。

 その声色に、サトシは聞き覚えがあった。

 

「ぴかぴ!ぴか!」

 

「あぁっ!アレって…!!」

 

 観客席の最前列、その一角でシゲルの横顔をベストアングルから見れる位置に陣取るのは妙齢の美女6人…それに、ホシを加えて7人。

 

「ホシィィィィィ!?」

 

 ホシはともかくとして、彼女らはトレーナー時代にシゲルの周りを固めていた応援団の面々であった。

 

「やぁやぁ久しぶりだねガールフレンドの諸君!ホシさんも応援ありがとう!」

 

 シゲルはさも当然、というような憎たらしい態度とは裏腹に応援団に対して両手を振り応える。

 

「オーキド・シゲル、焼けぼっくいに火を付けて今回限りのトレーナー復帰、是非見守っていてくれたまえ!」

 

 

 

「シゲル先生素敵〜!」

 

 

 

「ガールフレンドたちも復活したのかよ…。」

 

「ホ、ホシ〜〜〜…。」

 

 サトシがげんなりし、カキは原型すらとどめない、この世の終わりのような顔をする中でシゲルの10連戦は始まった。

 




 『ハプウ』
 13歳。ポニ島のしまクイーン。
 豪放磊落な性格で、古風な言葉遣いは村のお年寄りの方々に囲まれて暮らしてきたため。
 パートナーは手塩にかけて育ててきたバンバドロで、凄まじいパワーを誇る。
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