3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 ピカチュウ同士のミラーマッチをサトシが制する。懐かしい仲間との再会も果たしながらセイヨをスカウトすれば、ついに8人の精鋭が揃う。
 アローラ代表チーム<マナーロ>。本格始動の時はきた。


PNTT Fighting! 選考会、そして決起集会

 マナーロスタジアムでの選考会にてハウ、ジェニー、セイヨの3人を迎え入れたサトシたちは、メレメレ島に帰還しアイナ食堂にて正式なチーム発足記念と、今後の決起集会ということで宴会を開いていた。

 

「「「「「かんぱーーーーーい!!!」」」」」

 

「さぁどんどん作っちゃうからね〜!」

 

「マオ、私も手伝うから…。」

 

「ジェニーさんはいいの!それよりチームのみんなと仲良くならなきゃ!」

 

 貸し切りで場所を提供し、申し訳なさそうなジェニーを笑い飛ばしながらマオは調理場に立ち手を動かしている。

 姉のように慕う彼女がアローラ代表チームに選ばれたことは、マオにとって我が事同然に嬉しいのだ。

 拾われてから1年間、ずっとこの店で働いてきたジェニーからすれば、慌ただしく仲間たちが駆け回る中席にてジッとさせられているのもそれはそれで気が気ではなかった。

 ワーカホリックなのか?と自分で自分に問うジェニーである。

 

「あのポケモンハンターJがまさかこんなことになってるなんてな。」

 

「あまり刺激するなよ?何かの拍子で記憶が戻るかも知れない、ってシゲルも言ってたし。」

 

「分かってるさ。」

 

 マオやバイトのスカル団たちが動き回るのを落ち着きなく目で追っているジェニーの姿を見るタケシにサトシが耳打ちする。

 彼もまた、Jの悪行を知る1人であった。年上の美女に目がないタケシだが、お相手がいるならば素直に引き下がるし、何より悪人ならば話が違うと分別のつくところが好青年であるの所以なのだ。

 まぁ、引き下がる理由や分別をつけなくていい相手ならば所構わずナンパを仕掛けに行く悪癖は健在なのだが…。

 

「タケシは、ポケモンドクターの方はどうなんだ?」

 

「今年で高校卒業の資格が取れるから、その後にタマムシ大学の医学部を受験してみっちり勉強するつもりだ。」

 

「小卒大人法があるとは言え、大学受験に高卒資格は必要だものね。」

 

「あぁ。タマ大の医学部は新設されたばかりの学部だからかなり気合入ってて、オープンキャンパスでも気に入ってさ。今回お前たちのバックアップに参加するのも、どちらかと言えば面接試験の為のPR作りだな。」

 

 『この世界』は全国規模で『小学校卒業みんなが大人法(略称小卒大人法、別名10歳大人法)』 が施行されており、義務教育は10歳で修了する。

 それ以降はポケモントレーナーの免許が交付されれば原則大人と同じ権利と義務が発生する。

 それはそれとして、シゲルが語る通り大学受験に高等教育の卒業認定が要るのは、『こちらの世界』と変わらない。

 タケシはこの3年間、通信制の高校に通いつつ各地のポケモンセンターでアルバイトをしながらポケモンドクターになる為勉強をしていた。

 

「デントはS級ソムリエの試験合格おめでとう!昨日ポケライン見てビックリしたぜ!」

 

「ありがとう。その報告のポケライン、1ヶ月くらい前のなんだけどね。」

 

 苦笑しながらのデントにサトシはい゛ッ!?と表情を歪ませる。

 サトシがSNSで盛大に未読スルーをかますのはもう慣れっこな話なので、と仲間たちはそこには特に言及しない。

 

「まぁ、ランクが上がっても日々に変わりは特になくってね。実際自分のスキルでどれほどのことが出来るのか…そのために今回チームに参加させてもらったんだ。サトシから話を散々聞かされてるタケシの前でフードアドバイザー、なんてのも恐縮なんだけどね。」

 

「S級ソムリエが何を言うやら。」

 

「でも久々にタケシのシチューも食べたいなー。」

 

「機会があればな。」

 

 タケシとデントの間の席でサトシはやった、と喜ぶ。

 そんな中、ククイ博士は操作していたタブレットロトムの液晶画面を皆に提示した。

 

「各地方もそれぞれに代表チームを作って、大会に向け特訓を開始してるらしいぜ。」

 

「えっと、なになに…?"カントー代表チーム<セキエイ>、メディア公開の上でメンバー内の紅白戦によるトレーニングを実施"…あ、カスミだ。」

 

「おほぉ〜カンナさ〜ん!」

 

「チャンピオンの座が空位なカントーは、四天王枠のカンナさんがチームリーダーみたいだね。」

 

 液晶画面のネットニュースを身を乗り出しながらそれぞれ見れば、サトシは仲間の姿を見つけ、タケシはドストライクなお姉さんに悶えている。

 

「監督にはカンナさんと同じく四天王のキクコさん、と言うことは…サトシ。」

 

「あぁ。間違いない。シンジも出て来る。」

 

 サトシの公式戦を隈無くチェックしているシゲルも、シンジとのライバル関係は人並みには把握している。

 『サトシ最高のライバル』としての自負があるシゲルにとって、『サトシ最強のライバル』と呼び声高いシンジの存在は、密かに強く意識しているところなのは否めなかった。

 

「ワタルさんとシバ師匠はジョウト代表なのか!」

 

「ワタルさんはジョウトのチャンピオンとカントーの四天王、師匠はカントーとジョウトで四天王を兼任しているが、2人はジョウト側で参戦だな。」

 

 ジョウト代表の記事を見れば、サトシとタケシはシバの姿でテンションが上がる。

 カントーのリーグにて地方予選前に自主トレ中のシバのもとを訪れた時のことを2人は思い出していた。

 カキも彼の鋼のような筋肉に魅入っている。

 

「あっ!ミクリ様!」

 

「ホウエン代表ですわね。ダイゴさんは未だ行方知れずらしいし、まぁ当然出て来ると思ってたわ。」

 

「おっ、センリさんにマサト!親子で選ばれたんだ。」

 

 ホウエン代表の記事に移る。

 みずタイプのエキスパートとして高名なミクリの芸術的な写真にスイレンが目を輝かせる中、セイヨが残りのメンバー欄を見れば、一緒に覗き込むサトシが知った仲の名前をまた見つけた。

 再戦への希望に思いを馳せている。

 

「やはりシンオウ代表をまとめ上げるのはシロナさんだね。」

 

「いい人だったよ。別荘のお部屋使わせてくれて。」

 

「ハウ、お前シンオウ地方で修行してたのか?」

 

「ううん。色々行ってたけどシンオウ地方は違うよ。イッシュ地方にいた時に知り合って、別荘に招待されたんだ。」

 

「シンオウ、か…。」

 

 ハウの3年間の空白期間、その一部がサラリと話される中、オーバとデンジ…さらにはナオシを加えた手堅い編成に、シンオウ代表とも戦ってみたいとサトシは目を輝かせる。

 液晶画面を見るジェニーは、ここで初めてポツリと一言漏らした。ほんの少し、頭の片隅が疼いているのが気になるが、すぐに治った。

 

「あっ!カキ!この子スクールに来てたよね?」

 

「えっ、アイリスのやつ、アローラにも来てたのか?」

 

「あぁ。途中までだが島巡りにも挑戦して、大試練を突破もしてたぞ。気持ちのいいやつだったな。」

 

 イッシュ代表のチームリーダーとして見出しに載るアイリスの写真をスイレンが指差せば、サトシにカキは、彼女がポケモンスクールに出入りしていた頃の印象を率直に話す。

 それは即ち、十中八九アイリスはZワザも習得しているという事実を示していた。

 

「監督はアデクさんで、お孫さんのバンジロウも選手として参加、か。」

 

 ククイ博士も1人ごちるように記事を見る。修行時代、イッシュ地方にも縁があったのだろう。

 

「カロス代表にカルネさん…よくスケジュールの都合を合わせられたわね。」

 

「アランとかいう男もやはり出てくるか。」

 

 カロス代表の見出しはデカデカとしたチャンピオンカルネの大写真。

 その側に小さく載るアランを、同じリザードン使いとしてカキは強く意識していた。そして、同じリザードン使いとするならば…。

 

「そしてガラル代表の大将は、やっぱりダンデさん!!」

 

 ガラル代表のチームリーダーにして、発起人であるダンデ。彼が姿を見せないでは初回大会となるPNTTも画竜点睛を欠くというのが満場一致の意見と言えた。

 そんな意見、期待を決して裏切らないのが、『無敵のダンデ』の面目躍如と言えよう。

 

「お待たせ〜!まだまだ持ってくるからねッ!」

 

 マオたちが大皿で大量に料理を運んでくれば、そこから先は本格的な大宴会となった。

 次々とドカ盛りフルコースは運ばれて来るし、人間たちの足元ではポケモンたちも同じく一発芸大会に興じている。

 

「ぴかか〜!」

 

「けっ!」

 

 サトシのピカチュウの形態模写に、タケシのグレッグルがツッコミを入れる漫才スタイルがポケモン側で大盛況な中、人間側も人間側でどんちゃん騒ぎとなっていた。

 

「≪お≫≪ね≫≪え≫≪さ≫≪ん≫〜!」

 

 タケシがそれしかない十八番を熱唱し、場を盛り上げる中、赤ら顔のククイ博士が出口に向かうところにマオが駆け寄る。

 

「博士、大丈夫?」

 

「大丈夫、大丈夫。飲み会あっても、ちゃあんと帰ってやらないといかんからなぁ〜。」

 

 これでも小さい子供が家にいるから、と博士は店を出る。

 いい酔い方をしている、そうマオは直感していた。

 

「がぉ。」

 

「博士のことよろしくね。」

 

「「「あーはっはっはっ!!」」」

 

 ククイ博士のホルダーから出てきたガオガエンが頷けば、マオとサムズアップを送り合う。

 ガオガエンに肩を貸されながら酔いどれたククイ博士が家路につけば、残るみんなは盛り上がるままに騒ぎまくり、日付が変わる頃にはアイナ食堂の床で雑魚寝して翌朝を迎えるのだった。

 

 

 

 翌朝、日が昇る前よりククイ博士の自宅を物陰から見る3つの影。

 1組の男女の白いお揃いの衣装、その胸にデカデカとある真っ赤な『R』の字がこれでもかと主張をしていた。

 

「なんだかんだと言われたら。」

 

「聞かせてあげよう、我らが名を。」

 

「花顔柳腰・羞月閉花…儚きこの世に咲く一輪の悪の華、ムサシ!」

 

「飛竜乗雲・英姿颯爽…切なきこの世に一矢報いる悪の使徒、コジロウ!」

 

「一蓮托生・連帯責任…親しき仲にも小判輝く悪の星、ニャースでニャース!」

 

「ロケット団…参上!」

 

「なのニャ〜!」

 

 ブツブツと誰に言ってるのか定かでない口上とともにククイ博士の家を見るのは、ロケット団のお騒がせチームだ。

 

「ふっふっふ…食堂で飲み食い騒ぎして帰り着き、疲れて寝入ってるジャリボーイの寝込みを襲ってピカチュウゲットの大作戦。いよいよスタートだわね。」

 

「ジャリボーイもまさかメカや変装もせずシンプルに寝起きドッキリをかまされるなんて思ってもないだろうぜ。」

 

「ピカチュウゲットはしてくからドッキリでもなんでもないんだけどニャー。」

 

「そーーーーーなん、もごごごご…!」

 

 ムサシ、コジロウ、ニャースが家に抜き足差し足忍び込む中、ボールから出てきたソーナンスの大声を一斉に抑える。

 辺りを見回して、人の気配がないのを確認。ふう、と胸を撫で下ろした。

 

「お邪魔しま〜〜〜す…。」

 

 針金を使ったピッキングも慣れたものなのは、腐っても彼らが悪の組織ロケット団において幹部候補生に当たるエリート故であるからだ。

 そんな彼らの御宅侵入は、思わぬ形でそれどころではなくなる運びとなるのだが…。

 

 

 

「大変大変!みんな起きてーッ!!」

 

「う、う〜ん…なんだよマオ?」

 

「ぴかぁ…?」

 

 翌朝、アイナ食堂にて。

 この世界では10歳でトレーナー免許を持てば大人と同じ扱いを受ける。それは即ち、『18歳以上お断り』という概念は存在しないし、お酒や煙草にも制限はない。

 今日から始まる厳しい鍛錬の日々を前に、皆飲みたいように飲んで英気を養っての朝は、マオによって慌ただしく迎えさせられていた。

 開店の準備もあるのだ、至極真っ当だろう。そう体を起こすサトシたちだが、そのマオの様子が違っていた。

 

「く…ククイ博士が…病院に運ばれたって今、連絡が来て…。」

 

「えっ?」

 

 起き抜けに浴びせかけられた凶報に、皆酔いなど一瞬で消し飛んだ。

 




 『シバ』
 48歳。カントーとジョウトの四天王を兼任。
 かくとうポケモンに負けないほどの屈強な肉体と、いわポケモンの硬いボディを彷彿とさせる鋼鉄のメンタルを併せ持つ豪傑。
 サトシやタケシも未だ憧れている彼のエースはそのイズムを最も体現しているカイリキーだ。
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