3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 過労が原因でダウンしてしまったククイ博士。彼からチームを託されたのマネージャーのナンテであった。
 メンバー集めから直前までトラブル続きのチーム<マナーロ>の明日はどっちか…それは、この3週間にかかっている。


PNTT Fighting! チーム合宿!〜鍛えよ勝つために〜

 ポニ島でのチーム合宿は、基本的には自主トレがメインである。

 朝、昼、夜の決まった時間にチームドクターのタケシによるバイタルチェックを選手とポケモン共に行い、それぞれ特訓に励む形だ。

 

 

 

 シゲルの特訓は、ポケモン以前に自らの体力をリーグに挑んでいた時期…即ち『現役時代』の物へと根本的に戻すところから取り組むことにした。

 海の民の村と、西に離れた位置にある離島ナッシーアイランドとの間をひたすら往復で遠泳、それに彼のカメックスとバンギラスが追従する形だ。

 

「はい、シゲル。」

 

「ありがとう。」

 

 ナッシーアイランドへ泳ぎ着き、応援ギャルからハイポトニック飲料を受け取ればシゲルはそれを飲み干してゆく。

 他の2人のギャルもオボンの実をカメックスとバンギラスに渡している。

 往復の反対側である海の民の村側にもギャルたちが待機しており、5分の休憩の合間の速やかなエネルギー補給を手伝っていた。

 

「いいのかい?旦那さんは放っておいて。」

 

「うふふ…あなたを応援してる私の姿に一目惚れから猛アピールして来たのがウチの人だって知ってるでしょう?」

 

「"推しの子"なりの配慮って奴さ。」

 

 休憩がてらにゴーグルを頭へかけたギャルと軽く談笑するシゲル。

 彼を応援するギャルたち…通称『シゲルガールズ』には、『シゲル相手には決して恋愛的な期待はしない』という意識が所体持ちであるゴーグルのギャルを始めとして自然と出来ている。

 そのプロフェッショナルな精神がシゲルにも好感であり、3年越しの召集にも相成っていた。

 

ピピピピピ…!

 

「時間ね。」

 

「もう1回往復したら今日はおしまいにするから、あがってくれていいよ。」

 

「了解。」

 

「いくぞ、カメックス!バンギラス!」

 

「がんめ!」

 

「ばぎゃ!」

 

 本格的なフィットネス水着姿でゴーグルをかけ直し、走り出すシゲルがカメックスとバンギラスを引き連れて海へ飛び込み、綺麗なフォームのクロールで泳ぎ出してゆく。

 

「「「ファイト!ファイト!シゲル〜!!」」」

 

 ギャルたちは自然とエールが口から出ていた。

 始まりはマサラタウンの町長直々のバイトであったのが、いつしかシゲル本人が雇い主に変わってのバックアップ。

 その中でただの仕事から、ウィットに富んだトークスキルやサトシへの対抗心から近いところで喜怒哀楽を示す彼は、彼女たちのハートをガッチリ掴んでいた。

 『推し』は、いつまで経っても眩しく輝いているのだ。

 

 

 

 まずトレーナー自体の体力を鍛えるべし、というところから始まったのはシゲルだけではない。

 ポニの原野にてマラソンしているのは、セイヨとジェニーだ。それも、ただ持久走による体力トレーニングをしているだけではない。

 

「全国346番のレベル32!」

 

「ユレイドルのいえき!全国688のレベル20!」

 

「カメテテのげんしのちから!」

 

 走りながら互いにポケモンの細かなデータ問題を出題し合っている。

 ポケモンゼミ仕込みのセイヨ流体力&知力同時トレーニングに、実力はともかくとしてトレーナーの根本基礎から頭に叩き入れねばというジェニーも参加していた。

 

「全国210番のレベル51!」

 

「グランブルのしっぺがえし!」

 

「がう?」

 

 マラソンしながらの問答を続ける美女と美少女を草むらから見ていた野生のようせいポケモングランブルが呼んだ?とばかりに首を傾げては、その前を2人は風と共に走り去る。

 汗で濡れたウェアが肢体に張り付き、それぞれたわわな実りの輪郭が浮き上がれば、ランニングの振動で激しく揺れる様もはっきりと見える。

 ただ、そんな眼福を拝める幸運な輩がいるほど、ポニ島の人口は多くないというのが現状であった。

 セイヨとジェニーの特訓もまだまだ続く。

 

 

 

「じゃうらぁぁぁ!!」

 

「はさはさ!!」

 

「仲間を呼んだかッ!」

 

 ポニの大峡谷、その奥まったところでポケモンバトルの特訓をしていたのはカキだ。

 峡谷一帯を支配する強大なぬしポケモンとして君臨するうろこポケモンジャラランガの咆哮に呼応して、その弱点をカバーするべくやってきたハッサムを…

 

「ガラガラ、フレアドライブ!!」

 

「がらぁぁぁぁぁ!!」

 

 カキのガラガラが全身に炎を纏った突撃で返り討ちにする。

 セイヨのとは違って黒っぽく、背中には背骨から骨盤を彷彿とさせる模様があるリージョンフォーム…アローラの姿だ。

 

「じゃあああ…!!」

 

「ぬぅッ!?」

 

 ハッサムをKOするガラガラの側面にジャラランガが回り込んでおり、全身のウロコを振動させ…

 

「らららららがぁぁぁ!!」

 

 全身から音の波を発射した。ジャラランガの得意技スケイルノイズだ。

 

「くッ、ガラガラ!骨を回してガードしろ!!」

 

 けたたましい音波攻撃にたまらず耳を塞ぎながらもカキはガラガラに指示を飛ばす。

 ガラガラはそれに従い、装備した骨を両手で激しく回転させ、スケイルノイズを防いだ。

 

「じゃらぁ…!」

 

 ジャラランガの不敵な笑み…その意味をカキはすぐ理解する。

 周囲には同じくうろこポケモンでジャラランガの進化前に当たるジャランゴがたくさん集まってきていた。

 スケイルノイズは、攻撃だけでなく、群れの招集の為にも使っていたのだ。

 

「面白い…!!」

 

 こうでなくては、とカキもジャラランガに笑みを返す。

 

「うおおおおおッ!!」

 

「がらぁ〜!!」

 

「じゃあッ、らぁぁぁぁぁッ!!」

 

 カキと、ジャラランガ、その群れたちの暑苦しい戦いは、日暮れまで続くのであった。

 

 

 

「なぁスイレンよ。」

 

「なに?ハプウちゃん。」

 

「妾たち、こんなことしててよいのか?」

 

「待つのも釣りの醍醐味。」

 

「ぶぅい。」

 

 ポニの荒磯と呼ばれている島の南東部にて、ハプウとスイレンは磯釣りをしていた。その目的としては、シンプルに強力なポケモンを釣り上げてトレーニング、あわよくばゲットまで漕ぎ着けようという算段だ。

 じめんタイプの使い手であるハプウは、弱点の1つであるみずタイプを好んで扱うスイレンに帯同して特訓する腹積りであったが、まさかの魚釣りということで面食らった。

 それでも後には引かぬと亡き祖父の釣り竿を拝借し、一緒に釣りにチャレンジする運びとなったのだ。

 そこからというもの、全くのボウズであり焦りに焦っていた。

 

ピクピクッ…

 

「来たッ!」

 

 海面に垂らした竿が僅か不自然に揺れるのを、釣り名人のスイレンが見逃すはずはない。

 すかさず竿を握り、リールを回して獲物を手繰り寄せる。

 

グググ…!

 

「ぶい、ぶーい!」

 

「スイレンよ!妾も助太刀するぞ!」

 

「ハプウちゃんも来てる!!」

 

「ほにゃあ!?」

 

 スイレンの視野は広い。ハプウの垂らした竿の揺れ、獲物の到来を目ざとく告げては引き続き自分の獲物との駆け引きを楽しむ。

 

「ぬぬぬぬぬ…!」

 

 ハプウもハプウで自分の竿を引き、スイレンの見様見真似でリールの回し具合を調整して押し引きする。

 

「たぁッ!」

 

ザパァァァァァ!!

 

「ぬぅぅぅしぁぁぁ!!」

 

 程なく駆け引きを制し、獲物を水面から引き摺り出すスイレンの前に飛び出したのは、8mを越す巨体の怪魚…こざかなポケモンヨワシの習性として、幾体もの個体がより集まった、『群れた姿』であった。

 

「ここから第2回戦!いくよアシレーヌ!!」

 

「るるぁん!」

 

 群れたヨワシの巨体を前にスイレンが立ち上がれば、ボールを放り投げ相棒のソリストポケモンアシレーヌを繰り出す。

 釣りの勝負の次は、ポケモンバトルで勝負なのだ。

 

「ほん、にょにょにょにょにょ…どあ〜ッ!!」

 

 一方ハプウも見様見真似のリール回しに、日々の農作業で培って来た足腰を活かし、ついに獲物を引き上げた。

 太陽を背に、彼女の前に姿を見せたのは…。

 

「ぬおん。」

 

みずうおポケモンのヌオーだった。

 

「なんじゃお主は。」

 

 ポニ島で生まれ育ったハプウからすれば、見たことのないポケモン。大方の予想としては、トレーナーに逃がされた個体なのだろう。さほど珍しい話でもない。

 

「ぬぉ〜ん。」

 

「だからなんじゃお主は。」

 

「ぬぉ〜ん。」

 

 その予想通りなのか、性格的な点からなのか、釣り上げられたヌオーはその場から一歩も動かず、ハプウをジッと見ていた。いや、そもそもハプウを見ているのかすらその間の抜けたような表情からは推し量れず、しばし両者ともに互いを見つめ合うのみで時間が流れていた。

 

「なんなんじゃ〜!?」

 

「ぬおん?」

 

 

 

「ダブルスを2つ、シングルスを3つ…どこで3本取りに行くか…うーむ…。」

 

 監督のナンテ(本人は『監督代行』だと主張したまま)は、選手から声がかからない限りはタブレットロトムと睨めっこし、時折操作で指を動かしていた。

 8人の選手を2回のダブルバトルと、3回のシングルバトルにどう配置するか…別タブから打ち上げられているドローンロトムより各選手の練習風景を軽くチェックしながらオーダーをいくつかのパターンを組み上げる。これ自体は、マネージャーとして招かれた時点で任されていた話だ。

 問題は、これの最終チェックをする役割の監督も兼任となったことである。責任重大だ。

 

「ダブルスは、やっぱりどっちかは固定したいんだよなー…。」

 

 ブツブツと呟きながらタブレットロトムをナンテは弄り液晶から視線は離さない。

 流石に合宿は序盤。具体的なチームの運用形態などはまだまだ見えてきていない。

 そんなナンテの近くでは、サトシとハウが背筋をまっすぐ伸ばし、胸を大きく開いて胡座で座り、深い鼻呼吸に集中していた。

 

「ぴー…かー…。」

 

「らー…いー…。」

 

 彼らの隣ではサトシのピカチュウと、ハウのライチュウ、アローラの姿もそれに倣っている。

 目を閉じて心を静め、精神のバランスを整えるマインドフルネス瞑想をサトシはナンテより提案され、それを聞いていたハウも一緒に実践する運びとなった。

 

『チャンピオンほどの実力者ともなると、下手に動き回るよりは一旦心を落ち着けて、クリアな精神に近づけた方が、より良いトレーニングの道筋に繋がるかもしれませんよ。』

 

 元来、静粛とは対極の位置にある性質を持つサトシからすれば、この20分の瞑想も無限に続いてるような錯覚さえしていた。

 

「ん…?」

 

 目を閉じ、暗闇の中にポツリと1人…そんなイメージの向こうに、なにやらヴィジョンが浮かぶ。それはさながら、長いトンネルを抜けた先に広がる景色…とするにはまだ薄暗い洞窟で、目を閉じての暗闇よりかは幾分か色があるだけマシ、という程度のものであった。

 そんな洞窟の奥に鎮座するのは黒と緑の体色に、背中にはトサカのような物が生えた巨大なコブラの如き姿をしているポケモンだった。

 身体中に水晶のような六角形の模様が、まるで自分を呼ぶように白く光るのが見えては、サトシは目を開く。

 

「プニちゃん!?」

 

「ぴかぴ?」

 

 瞑想を解き、立ち上がったサトシが慌ただしく走り出すのにピカチュウも続く。

 

「ん、早速なにやら見出したようですな。」

 

 それをナンテは、チラとタブレットから目を離して見送り、すぐまた思案の世界へと意識を戻す。

 一方、サトシの隣で一緒に瞑想していたハウはというと、意識をクリアにする過程で夢の世界へ旅立たせている。

 要するに、寝てしまっていた。

 

「らいらららい。」

 

 ハウのライチュウは駄目だこりゃ、とため息を吐いた。

 

 

 




 『ホシ』
 8歳。ポケモンスクール生。
 カキの妹でひたすらに溺愛されまくっている(若干煩わしく思う時もあるがそこまで悪い気もしていない。)。本人に自覚はまだないがいわゆる面食いのケが見え隠れしてたりする。
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