3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 組み合わせ抽選会の翌日、ナンテにセッティングしてもらった練習試合に挑むサトシ。
 その対戦相手メロンの手練手管によって白熱してゆく試合にとてもハッスルしていた。


PNTT Fighting! ジ・アイスが来る!サトシvsメロン②

「本格的に夏を冷やしちゃおうかね!いくよッ!!」

 

 メロンが投げたボールから飛び出した影が、主人同様ふくよかで、むっちりとした巨体をフィールドに舞い降りさせてゆく。

 

「きゅ〜!」

 

「来た!ラプラス!!それならッ!」

 

 僅かに遅れてサトシが投げ入れたボールからは、文字通りの黒い影…。

 

「げんげぇ〜ん!」

 

「チャンピオンはゲンガー…メロンさんはラプラス…。」

 

 この後のバトル展開が、ナンテの脳裏に薄々浮かぶ。それを補強するように、サトシもメロンも、それぞれ繰り出したボールをすぐまた構えていた。

 

「ふふっ、お揃いだね。」

 

「ガラルの人を相手ならやっぱ、ね!」

 

「ぴっかっちゅ〜!!」

 

 サトシはゲンガーを、メロンはラプラスをボールへ戻してゆく。

 そのボールが手首に巻いていたダイマックスバンドからのエネルギーを受けて2人の頭の倍ほどの大きさへ肥大化していた。

 

「いっくぜ〜!」

 

「さぁキョダイマックスなさい!辺りを全て凍て付かせるのよ!」

 

「ゲンガー!キョダイマックス!!」

 

 肥大化したボールを、サトシもメロンも後方へ振り向き上空へ勢いよく放り投げる。空高くのボールから…。

 

「げろげろばぁぁぁ〜〜〜!!」

 

「くぉぉぉぉぉ…!!」

 

 キョダイマックスしたゲンガーとラプラスが姿を現した。

 ゲンガーが下半身を陰に沈め、大きな口から舌をベロベロ突き出し挑発するのを、背中の甲羅がより人を乗せるのに特化した形に変質したラプラスは冷めた視線で見下ろしている。

 両陣営同時のダイマックスにより、コオリッポが呼び込んだ雪雲は霧散してしまっていた。

 

「先手必勝!ダイアシッド!」

 

「べろべろべろべろ〜!!」

 

 爛々と輝く双眸が輝けば、どくタイプエネルギーの塊がさながら噴水のように地面より打ち上がり、ラプラスに降りかかってゆく。

 

「くぅぅぅ…!」

 

「ダイマックスしての撃ち合いならガラルっ子の専売特許!ラプラス、ダイストリーム!!」

 

 毒エネルギーのシャワーを浴びながらもラプラスは、その首長竜の如き長い首を伸ばしてゲンガーを改めて見下ろす。

 開かれた口にエネルギーをチャージ…

 

「こぉぉぉぉぉ!!」

 

 大質量の水流弾をゲンガーの大きく開かれた口めがけ発射した。

 

「ごぼぁ〜!?」

 

 大量の水が一気に口の中まで流れ込んできては、キョダイマックスによって体力が大幅に増加した以前の問題である。

 

「ゲンガー!?」

 

「げほ!げほ!」

 

 たまらず巨大な咳き込みと共に吐き出されるゲンガーの飲み込んだ水と、ダイストリームによるみずエネルギーによってフィールドは今度は雨状態となっていた。

 

「ほうら、もう一丁!ダイストリーム!」

 

 体勢を崩しているゲンガーにラプラスからの容赦ない追撃。

 再度放たれる水流弾は、降り出した雨から力を吸収し先程より威力を増していた。

 

「くッ!」

 

 先手必勝のつもりがカウンターで返された形にサトシは思案をすぐ巡らせて対応する。

 

「ダイウォールでやり過ごすんだ!!」

 

「げぁ〜ん!!」

 

 ダイマックスエネルギーを消費し、ゲンガーは全身に強固なバリアを展開、水流弾を防いでゆく。

 

「(キョダイマックスゲンガーのウィークポイントを射抜き、ダイストリームの連打で今度はラプラスの得意な雨のフィールドに作り変え、攻めの盤面を整えた、とするなら最後の3発目は…。)」

 

「パートナーの得意技が、あなたを氷点下の世界に誘うわ…!」

 

「(やはり、2発目にダイウォールを使わせてからの、守りの盤面を固めに来たか!)」

 

「守ったら負ける…攻めるぞゲンガー!!」

 

 ダイマックスバトルでの駆け引きは流石に年季の差と言えよう。メロンの采配がサトシを押し込む。

 が、それで引き下がるではワールドチャンピオンの名が廃る!

 

「キョダイゲンエイ!!」

 

「キョダイセンリツ!!」

 

 ゲンガーの周囲にゴーストエネルギーが浮かび上がり、それらはさまざまな家具の形へ姿を変えれば、ラプラスは今度はこおりのエネルギーを口の中へチャージする。

 

「げぇんががががが〜ん!!」

 

「こぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

ドドドドドド…!!

 

 ポルターガイストと、絶唱が衝突する。

 

「さて…。」

 

「らいちゅ。」

 

 降り続く雨と、キョダイマックス技同士のぶつかり合いで発生する衝撃波の中、ナンテとテディは腕を組んだまま仁王立ち。

 その結果と、バトルの行方を具に見定めていた。

 

「ゲンガー!連続シャドーボール!!」

 

「げががががががが…!!」

 

ズッドドドドドドド…!

 

 キョダイマックスが終了し、先に動いたのはサトシのゲンガーだ。

 両手に生成した暗球をひたすらにラプラスめがけ連射していく。

 

バチチチチチッ!

 

「ぴかぁ!?」

 

「壁だ!」

 

「やはり、オーロラベール…。」

 

 シャドーボールは、ラプラスのボディに到達する前にこおりのエネルギー障壁によって弾かれてしまった。

 ダイアシッドによるパワーアップを受けてのゲンガーの攻撃ですら通さないオーロラベール…こおりタイプの防御陣は、『ジ・アイス』と異名を取るメロンの象徴である。ふくよかなる熟女は、ほくそ笑む。

 

「ハイドロポンプ!」

 

「こぁぁ!!」

 

 それは、先程のダイマックスバトルでのやり取りの縮小版と言えた。

 空を取り、連続シャドーボールを好き放題撃ちまくっていたゲンガーのボディど真ん中めがけて、ラプラスの水流弾が直撃する。

 

「げぁが…!」

 

「ゲンガー!」

 

 サトシは、一瞬思案する。

 キョダイゲンエイによるメロン側の交代縛りを消してもよいものか?そしてすぐに答えを出した。

 

「戻れ!」

 

 ゲンガーをボールに戻す。

 結論としては、交代あるのみ。ラプラスから攻撃を受け過ぎたのが不味かった。さりとて長期戦はメロンの思う壺、ゲンガーで無理押しすれば…負ける。

 

「オーロラベールごと、一気にやるしかない!」

 

 帽子のツバを、真後ろに回す。本気モードで視界はクリア、目と腰に力を入れ直す。

 

「(トレーナー冥利に尽きるねぇ。)」

 

 ワールドチャンピオンの全力が、来る。

 肌で感じ取るサトシからの圧に、メロンも覇気を放って応えて見せる。

 

「いっけーッ!!ネギガナイト!!」

 

「がんもぉッ!!」

 

 黒き影が退き、入れ替わりで飛び出すは純白の騎士…かるがもポケモンネギガナイト。

 ネギの茎を槍とし、分厚い葉を盾として戦場へ躍り出た。

 

「らいららいらい!」

 

「おぉ!マスターズトーナメントを制覇したパーティー同士による、まさにワールドチャンピオン・ホットライン!」

 

「近づかせやしないよ!ラプラス、かみなり!!」

 

「こぉぉぉ…!!」

 

 ラプラスの美声が雨雲を刺激し、頭上めがけ落ちる稲光に、サトシもネギガナイトも一瞥もくれない。

 

「ネギガナイト、盾を放り投げるんだ!」

 

「がも!」

 

 ネギガナイトが盾を真上に投擲。それがそのままかみなり攻撃を防ぐ。

 

「盾を捨てたね!」

 

「きあいだめだ!」

 

「がもぉぉぉ…!!」

 

 狙いは1発必倒、ネギガナイトは全身に気合を込めてゆく。それだけではない。

 キリッとした凛々しい眼差しは、とある一点を捉えていた。

 

「ラプラス、ふぶき!!」

 

「らぷしゅううううう!!」

 

 雨粒すら凍結させてのブリザード攻撃がネギガナイトを襲う。しかし、その眼差しには些かの曇りもない。

 

「翔べ!ネギガナイト!」

 

「がもッ!!」

 

 かみなりに打たれて黒焦げになり、ふぶきによって氷漬けな盾が落着したと同時にネギガナイトは跳躍する。

 如何に厳しい吹雪でも、熱い闘志を凍て付かせることは出来ない。

 

「それなら撃ち落とすまで!ラプラス、ハイドロポンプ!!」

 

 雨足からもうじき雨が止むことを察知したメロンが、パワー増量状態の水流弾による狙撃を狙ったのは至極当然の流れであった。

 

「らぁぁぁ…ッ、がッ…!?」

 

 しかしその時だ。

 長い首周りに発生した黒いモヤが、ラプラスの咽頭を圧迫する。ハイドロポンプは…撃てない。

 

「ゲンガーののろわれボディがここで来たかーッ!」

 

 思わずナンテは握り拳を作る。

 押し込まれ、引き下がってなお、主人の、チームの勝利のためにゲンガーは爪痕を残していたのだ。

 

「パワー全開でいこうぜネギガナイト!」

 

「がもぉ!」

 

「スターアサルト!!」

 

 白き騎士が、黄金の気を纏う。自慢の槍を構え、ラプラスめがけ一直線に急降下してゆく。

 

バチチチ…!

 

「ぴーかちゅぴかちゅ!」

 

「構うもんか!いっけぇぇぇぇぇッ!!」

 

 オーロラベールに槍が突き刺さる。

 

「まだよ!至近距離ならッ!」

 

 ふぶきをくらわせてやる、と吠えるメロンの視界では、ラプラスを守る障壁が、徐々にヒビ割れていき…

 

パシィィィ…!

 

 完全に砕け散ってしまった。これではブリザードを作るのは間に合わない。

 

「がもぉぉぉぉぉッ!!」

 

 オーロラベールを破ってなお渾身の打突の勢いのまま、ネギガナイトは自慢の槍をラプラスへ叩き付ける。

 効果は抜群、これが致命の一撃となった。

 

「きゅ、ら、がぁッ…!」

 

「ラプラス!」

 

 脳天にスターアサルトの直撃を受け、ラプラスの首が地に伏せる。

 ネギガナイトは目を回して倒れる敵を一瞥し、槍を自らの顔の前に構え、暝目。確信と共に勝ち名乗りを待つ。

 

「ラプラス、戦闘不能!ネギガナイトの勝ち!よって勝者、ワールドチャンピオンサトシ!」

 

「らいちゅ〜!」

 

 ナンテのコールによる勝ち名乗りを受け、ネギガナイトはメロンに一礼してから振り向く。

 そこで、放り投げた盾を拾ってくれた敬愛する主人を見上げた。

 

「お疲れ様、ネギガナイト。ナイスだったぜ。」

 

「がもッ。」

 

 サトシは盾をネギガナイトに渡す。酷くズタボロではあるが心配はない。次のご飯どきに手入れをすればいいのだから。

 

「お疲れ、ラプラス。ありがとうね。」

 

 メロンがラプラスをボールに戻し、ツカツカとサトシに歩み寄ってゆく。

 

「いやぁ、見事にやられちゃったもんだよ。これだけされちゃ、むしろ清々しいくらいさ!」

 

「メロンさん。」

 

「ん。」

 

 サトシが差し出す右手に、メロンは答え両手で包み込む。

 その温もりは、どこかマサラタウンにいる母のものを思わせた。

 

「アンタほどの強者なら、この先ウチの息子ともやり合うかもしれない。遠慮なくボコボコにしてやってよね。」

 

「ありがとうございました。俺、もっともっと強くなります!あれ?でもマクワって人は…。」

 

「PNTTのガラル代表にはいませんね。」

 

 ナンテも合流する。

 

「そうなのよ!あの子ったら、チームの選考会当日に40度越えの酷い高熱出して寝込んじゃったらしくってねぇ?ホーント、肝心な時にポカやらかすのもあたしに似ちゃったみたいで、アッハッハ!」

 

「せっかくだし、バトルしてみたかったなー。」

 

「ぴかぁ…。」

 

「らいてう。」

 

 豪快に笑い飛ばすメロンに、ナンテは苦笑いするより他なかった。

 




 サトシvsメロン

 クワッス→ゲンガー コオリッポ→ラプラス

 ゲンガー(ダイマックス使用)→ネギガナイト
           ラプラス(ダイマックス使用)

 ネギガナイト◯ ラプラス●

 勝者 サトシ
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