3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 壮絶な相討ちから始まった最終戦。続けて繰り出すカビゴンでサトシはマスタードの2番手の連撃ウーラオスを撃破する。
 追い込まれたマスタードは一撃ウーラオスをキョダイマックスさせ立ち向かう。頂点同士の戦いを前に、天が割れていた…!


PNTT Fighting! 親善試合 シングルバトル1 サトシvsマスタード③

「ウーラオスよ!ダイナックル!!」

 

「迎え撃つぞカビゴン!メガトンパンチ!!」

 

「べあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

「かんび〜!!」

 

バッチィィィィィ…!!

 

 

 

「ああっ!こ、これは!?」

 

「拳が、"触れてない"…。」

 

 ウーラオスの巨大な右拳とカビゴンの右拳が放たれれば、その2つの突き出された拳同士が、接触することなく火花を散らす。

 互いの、そしてトレーナー同士の覇気の凄まじさが、拳の直接衝突すら叶わぬものとしていた。これにはS級ソムリエであるデントからしても理外の領域だ。

 

 

 

「ふはは!次はこいつよ!ダイジェット!!」

 

「べあ゛ぐッまッ!!」

 

 右拳の衝突は、互角。

 続け様にウーラオスが放つのは、竜巻を纏った左アッパーだ。

 

 

 

ビュオワアアアアア!

 

「うわ〜!吹っ飛ばされる〜!」

 

 その風量を前に、門下生たちは次々と飛んでいく有様だ。

 

「ぐううう…!」

 

「大丈夫かハプウ?」

 

「なんのこれしき!」

 

 体の小さいハプウは、ちゃっかりジェニーを風除けに使っている。

 

「マスタードさん、いろいろお構いなしだな…!」

 

「それだけ本気の本気、ということさ。」

 

 シゲルやカキたち他のメンバーも膝をつき、重心を低くして耐え忍ぶより他ない状況だ。

 そんな中でナンテは、腕を組んだまま仁王立ちで試合を注視する。

 

 

 

「スイクン!」

 

「ビリジオン!」

 

 連合チーム側は、ゴウとトキオのボールから飛び出して来た2体がそれぞれの覇気をバリア代わりに展開し、風を凌ぐ。

 ツルギもアサヒも、風量にたまらず目を細めながらどうにか凌いでいた。

 

 

 

「こんどはれいとうパンチだ!」

 

「かび!」

 

 フィールド全体を掬い上げるように放たれるジェットアッパーに、カビゴンは左拳へ冷気を凝縮させたストレートを合わせにゆく。

 

ゴアアアアアッ!!

 

「くぁんぶぃ〜!!」

 

「カビゴンッ!!」

 

 ここは年の功であろう。ウーラオスの左アッパーが、500kgに迫るカビゴンの巨体を空中へカチ上げる。

 

 

 

「カビゴンが…!」

 

「打ち上げられた!」

 

 体重の軽いポケモンだったらばこれだけで場外リングアウト負けにされてもおかしくないだろう。スイレンにセイヨは戦慄を禁じ得ない。

 重量級ポケモンのカビゴンだからこそまだ視界に収まる範囲で踏み止まれたのだ。

 

「あぁッ!あれ見て!」

 

 ハウが目敏く指差す先は、ウーラオスの左拳…。

 

 

 

「ぬぅ…!」

 

 周りの被害もお構いなしに拳を振るうマスタード陣営も着実に反撃でダメージを受けていた。

 アッパーカットを放ち、カビゴンを空中へ打ち上げた左拳が凍結しているのだ。れいとうパンチを合わされた後遺症である。

 

「(これしきの氷ならば、闘気によってすぐに溶かせるが…。)」

 

 マスタードはなおも『攻め』の為に意識を振り切った。

 異常を来す左拳の解消に回せるエネルギーも攻撃に振り向けねば到底倒し切れる相手ではない。それは、キョダイマックス状態のウーラオスの片腕を事実上封じたことからも明らかだ。

 

「ウーラオス、この一撃に全てを込めよッ!!」

 

「べあ゛ッ゛!!」

 

 ググ…と両足を地に付け、右拳を構える。自由落下に合わせてカビゴンに最大の一撃を見舞うのだ。

 

「受けてみよ!我が全身全霊のキョダイイチゲキを!!」

 

「それなら俺たちも、ゼンリョクだぁ!!」

 

 右手を胸の前に、左手を額の上に握り拳で運んだゼンリョクポーズ…ノーマルタイプのZワザに対応したそれを完璧にこなせば、サトシのZリングから膨大なエネルギーが空中のカビゴンへ注がれてゆく。

 

 

 

「ウルトラダッシュアタックをするには自由落下状態では…!」

 

 地を駆け、その勢いを活かして発動するウルトラダッシュアタック、当然その本領は空を庭としないひこうポケモンでもない限りは地上にこそある。

 Zワザをよく知るカキは、このままではサトシのZワザが上手く機能しないと指摘するよりない。

 

「いや、多分アレ…ウルトラダッシュアタックじゃあない!」

 

 ハウが叫ぶ。その根拠としては、カビゴンの双眸がギラリと輝くのを見たからだ。

 

 

 

 時は遡る。

 今年の1月、サトシがPWCSに向けた合宿で入り浸っているポニ島にやって来たのが、プロポケベース選手のオルオルであった。彼個人としては成績好調、シーズンMVPを獲得するほどの活躍を見せたが、所属するコイキングス自体はリーグ5位に沈み、かろうじてエレブーズとの最下位争いを凌ぐといった有様であった。

 来年のシーズンこそチームを優勝に導かんとオフに自主トレを敢行。そんな折にたまたまサトシと出会っていた。

 

「門外漢の立場で言うのもなんだが、サトシくんのカビゴンは2種類のパンチにのしかかるで肉弾攻撃、奥の手ではかいこうせんとバランスは取れてるんじゃあないのか?」

 

「でも俺、スクールの授業で見てからずっとオルオル選手のカビゴンの本気をすっげーなって思ってたんです!"アレ"を、俺のカビゴンでも出来たらなって。」

 

「ぴか!ぴか!」

 

 2人のカビゴンのお腹をトランポリン代わりにピカチュウは跳ね回っている。気分よく跳ねているのはいいが、どのタイミングで降りればいいかを図りかねてもいたが…。

 

「確かに、下手に球種を増やすよりはまっすぐのノビを強化した方がいい場合もあるしな。よし、いいだろう!そこまで熱く意気込まれちゃあ教えん訳にもいかないな!!」

 

「うひょ〜!!やったぁ〜!!」

 

「ぴ〜か〜ぴぃ〜!」

 

 完全にカビゴンのお腹トランポリンから降りるタイミングを見失うピカチュウを他所に、サトシとオルオルは瞳に炎を宿し、燃えに燃えていた。

 

 

 

「オルオルさん、俺はやるぜ!!カビゴン!」

 

「かんび〜〜〜!!!」

 

 Zパワーをその身に受け、全身から本気のエネルギーを発散させながらカビゴンは自由落下のままにウーラオスめがけ一直線。

 

「これが俺たちのゼンリョク!!ほんきをだす攻撃だぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「なんの!殴り抜けよぉぉぉ!!ウーラオス!!!」

 

「べあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛い!!!」

 

 ゼンリョクの肉弾攻撃に、ウーラオスの右拳によるイチゲキが打ち上がる。

 互いの覇気が、今また衝突する…!

 

 

 

「凄い衝撃波が来るよ!みんな伏せて!!」

 

 たまらずハウが頭を抑えながら縮こまれば、それぞれに重心を低く保つ。

 

ズッドオオオオオオオ!!

 

「オイイイイイ!?道場大丈夫かよコレェェェェェ!?」

 

「こんなこと、アリ・エナーイ!!」

 

 その予告に違わぬZワザとキョダイマックスのエネルギーの衝突。その余波がマスター道場の瓦を根こそぎ剥ぎ取っていくのでクララとセイボリーがたまらず叫ぶが今は皆それどころではない。

 

「ぬうううううッ!」

 

「いっけぇ!いっけぇぇッ!!いっけぇぇぇッ!!!」

 

 キョダイマックスの限界時間、それは、巨体のアドバンテージをウーラオスから奪うことに他ならなかった。

 その頭上には、本気モードの肉弾が降り注ぎ…

 

ズッシィィィィィン!!

 

 この日1番の衝撃波となりたまらずこの場の一同をひっくり返していた。腕を組み、仁王立ちで試合の一部始終を見ていたナンテを除き。

 

「よし…!」

 

 握り拳を作る。ナンテの視線の先には、デジャヴが広がっていた。

 

「かんび。」

 

 カビゴンが押し潰したウーラオスから退き、ニュートラルポジションへ戻ってゆく。

 覇気と覇気のぶつかり合いで吹っ飛ばされていた審判役が、折れた木の枝を杖代わりにどうにかこうにか自力で戻ってくれば、その役割として最後のコールを下した。

 

「う、ウーラオス、戦闘不能!カビゴンの勝ち、よって勝者…チーム<マナーロ>チャンピオンサトシ〜!」

 

「よっしゃあ!!」

 

「ぴっかぁ!!」

 

 勝ち名乗りを受け、サトシとピカチュウはガッツポーズ。

 カビゴンもそれに倣う。そしてそのまま…

 

ズゥゥゥン…。

 

 仰向けに倒れ込んでしまった。

 

「ぐぐぅ〜…。」

 

「寝てる…。」

 

「流石にウーラオス2体を相手にしたのでエネルギー切れみたいだね。」

 

 試合が終われば、みんなが駆け寄る。スイレンとシゲルが、カビゴンの様子を確かめていた。

 

「ふぅ…ふふ。よく頑張ったぞ、ウーラオスよ。」

 

 ウーラオスをボールに戻すマスタードに、ミツバが道着を差し出す。受け取る夫は、愛する妻に力なく笑みを向けた。

 

「すまんなミツバ。負けてしもうたわい。カッコ悪かろう?」

 

 道着を羽織る夫に、妻は慈愛を込めて抱き付いた。

 

「そんなことないよ。今日のダーリン、昔みたいにカッコ良かった。」

 

 慰めではない、本心だ。ミツバの優しい声色が、戦い疲れたマスタードの心身を癒してゆく。

 自室の窓から覗く視線と目が合えば、その主はササッと身を隠す。愛息ハイドも試合を見てくれていたのだろう。

 

「マスタードさん!」

 

 サトシが駆け寄る。戦い終えた後の、一番大事な儀式を済ませていないからだ。

 

「なかなかどうして、揺るぎない強さよ!このマスタード、感服致した!!」

 

「俺もです!ありがとうございました!」

 

 ガッチリと握手を交わす。マスタードは確かに感じ取る。この先のポケモンバトル界は、サトシを中心に回っていくことを。

 それは即ち、名実ともに愛弟子が時代の中心から外れるという事実も物語っていたが、今は面前の溢れんばかりの若き才覚との関わりを喜ぶことにした。

 

 

 

「本当にありがとうございました。これで本番も最高の状態で挑めます。」

 

「ワシちゃんたちも楽しかったよん!またいつでも遊びに来てね〜ん!」

 

 試合が全て終われば、チーム<マナーロ>の面々は荷物をまとめて道場を後にした。

 ツルギとアサヒが迎えに来たリサーチフェロー組は、すでに前の便でヨロイ島を出発している。次のリサーチ先へ4人で向かう為だ。

 

「らいちう。」

 

「うん、分かってる。それでは師範、また。」

 

 発車時刻だよ、とテディが袖を引くのでナンテはマスタードに一礼し、電車に乗り込む。行きにハプウの言っていた『駅弁食べたい』というのがチーム全体に共有されたことによる電車移動だ。

 ゆっくりと運行開始となれば、サトシたちは窓を開け、見送りに来ている門下生たちに手を振った。

 

「みんなー!また会おうぜ〜!」

 

「ぴかぴかぁ〜!」

 

「アローラの皆さ〜ん!頑張ってね〜!」

 

「絶対にビクトリーですぞ〜!」

 

 サトシたちとの関わりは、クララとセイボリーを始めとした門下生たちに大きな影響を与えてくれた。

 それが、マスタードとミツバの夫妻には嬉しく、何度も頷き合う。

 

「ワシちゃんたちは、サトシちんたちを応援しちゃおうねん!」

 

「ダーリンに賛成〜!」

 

 年甲斐なくはしゃぎながらハグしてくるミツバに、それを受け止めながらカカカと笑うマスタード。

 ヨロイ島での合宿は、最高の形で終わりを迎えたといってよかった。

 




 親善試合 シングルバトル1
 サトシvsマスタード
 シングルバトル 6C3Dルール

 サトシ   マスタード
 クワッス● ジャラランガ●
 カビゴン◯ ウーラオス(連撃)●
 カビゴン◯ ウーラオス(一撃)●
 (Zワザ使用) (ダイマックス使用)

 勝者 サトシ
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