3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 メロメロでキョダイマックスリザードンを退けたシゲルとセイヨ、しかし、それでもダンデは強かった。
 ドサイドンの圧倒的なパワーと、ダンデと入れ替わりでキョダイマックスを発動させたキバナのジュラルドンの前に2人は押し切られてしまった…。


PNTT Fighting! 第1回戦 ダブルバトル1 ハプウ&スイレンvsカブ&シャクヤ

「これよりダブルバトル1!チーム<マナーロ>しまクイーンハプウ&スイレン選手vsジムリーダーカブ&シャクヤ選手の試合を行います!!各種試合方式、レギュレーションはダブルバトル2と同様です!!」

 

 

 

「シャ、ク、ちゃあああああん!!イケてるパパがついてるぞおおおおお!!」

 

 

 

「チョーありがた迷惑!なんですけど!」

 

「いいことじゃあないか。家族が応援してくれるなんてさ。」

 

 客席から飛ぶ父の声…ガラルのトレーナーからすればレジェンドである先代チャンピオンの親バカ丸出しな姿にカブは爽やかな笑みを浮かべる。

 

「カブっちは、ホウエン出身だっけ。」

 

「うん。」

 

「じゃ、勝って、家族にいいとこ見せなきゃね。」

 

「手伝ってくれるかい?」

 

「もち!」

 

 見た目そのままにギャルであり、時折特異な言動(ギャル語)に困惑させられるものの、根は心優しい少女であるとカブはシャクヤを認識していた。なおも大声を張り上げて応援するピオニーからそれはそれは目一杯の愛情を受けて育ったに違いない。

 

「出陣じゃ〜!」

 

「いっけ!オニシズクモ!!」

 

「ぬおーん?」

 

「くもももも…!!」

 

 

 

「スイレンのオニシズクモは…あの子、じゃあないよな?」

 

「あぁ。スクール時代に知り合ったのとは別個体だ。そいつも今では立派なオニシズクモで、自分の縄張りを作ってるぞ。」

 

 3年前、スイレンは巣立ちしたすいほうポケモンシズクモと仲良くなっていた時期がある。どちらかといえば、シズクモ側から一方的に同族認定されていたようなものだが。

 

「ハプウはヌオーが先発ですか。ナンテさんからの指示で?」

 

「いいえ。自分からは何も。」

 

 デントにナンテは首を横に振る。監督業を行う中で試合のオーダーこそ決めているが、その際の戦術面においては当人たちに丸投げしていた。

 監督の仕事は勝てる相手にぶつかれるよう戦う場を整えることであって、実際勝つためにどう動くかを考えるのは選手の仕事、というのがナンテの持論だ。

 

 

 

「よし、ゆけッ!」

 

 カブが投げ込んだボールから飛び出したのは、9本の尻尾を持つきつねポケモンキュウコン。ほのおタイプの通常種だ。

 

「こぉーん…!」

 

 フィールドに降り立つキュウコンは、全身からエネルギーを発すればそれをそのまま空高く打ち上げる。

 

 

 

「キバナさん同様、『ひでり』での晴れ状態からスタートさせるつもりですね。」

 

 キュウコンから打ち上げられたパワーボールが、そのまま擬似太陽として日差しを降り注がせる。

 天候をコントロールして優位に立ちにかかるダブルバトルの妙をしっかり抑えているとサイトウは短いコメントの中で評した。

 

 

 

「いっくよ〜…!マックスダイ巣穴に潜りまくってゲットしたアタシのチョーお気に!レッツら、ゴー!!」

 

 シャクヤも続けて軽いノリでボールを放り投げれば…

 

 

 

「シャクヤの奴、いきなり"あの子"を出す気だ!」

 

「やれやれ…また暑苦しいことになりそうだ。」

 

 鼻息荒く興奮するホップにビートは呆れ顔をフィールドへ向けたまま。

 

 

 

「ぴかぴッ!」

 

「この、気配はッ…!」

 

 ただならぬ波導…波導の心得のないものからすれば覇気に、感知したナンテも思わず立ち上がる。

 

 

 

「ひよおおおおおおおッ!!」

 

 シャクヤのボールから飛び出したのは紛れもない、伝説の鳥ポケモンの一角、ファイヤーであった。

 

 

 

「火の鳥降臨ッッッ!!シャクヤ選手の先発は、伝説のポケモンファイヤーだぁぁぁッッッ!!」

 

「も、問題は、ちゃんと扱えるか、です。」

 

 オニオンの指摘はもっともな話であるとサイトウも認める。

 ポケモンとはボールに入りすればトレーナーに自身の全てを無条件に明け渡すほど従順とは限らない。主人の力量が自分を扱うに見合ってないと判断すれば平気で反抗するし、酷い場合には契約の大元であるボールを壊して出奔することだってある。

 こと伝説のポケモンともなれば、彼らの持つ凄いパワーから、心服させるのも容易ではなかろう。

 

 

 

「ハプウちゃん。」

 

「応よ!」

 

 火の鳥の燃え盛る翼に圧倒されながらも、黄金ペアの方針は変わらない。相手が取った天候アドバンテージを奪い返すのだ。

 

「ヌオーよ、雨を降らせよ!あまごいじゃあ!」

 

「ぬお〜ん。」

 

 ヌオーがずんぐりとした体を揺らして珍妙な舞を踊れば、たちまち空は曇天となり、雨雲が擬似太陽を包み込んで消し去る。

 

「んッ!オニシズクモ!」

 

 降り出した雨により、相手方の晴れ戦法を潰せた…と喜んではいられなかった。

 あまごいの直後であるヌオーを狙い、火の鳥が迫るのでスイレンはカバーとして合間にオニシズクモを滑り込ませる。

 

「迎え撃つよ、アクアブレイク!!」

 

「くぉもおおおおおッ!!」

 

 頭部と、6つ足の関節部に膨らませた水泡を肥大化させ、1つの巨大な水のドームをオニシズクモは自身を中心に形成する。

 

「水の中に閉じ込めれば、如何に伝説のポケモンでも…!」

 

ビュオワアアアアア!

 

「くもも!?」

 

 タダでは済まない、そう言い終える前に戦慄がスイレンを支配した。

 オニシズクモの水のドームが、一瞬にして霧散させられたのだ。

 

「し、しくじったーッ!!」

 

 ハプウが叫ぶ。

 ファイヤーは、自身を荒れ狂う風のバリアの中に包み込み、その突風が水のドームを消し飛ばした。

 それは、皮肉にもヌオーが呼んだ雨風であったのだ。

 

「コレはまた…凄いものだね。」

 

 カブは舌を巻く。この試合の空気を完全にシャクヤが支配していた。

 カブとて激戦区のエンジンシティにて後任ジムを預かるジムリーダーだ。彼女の父親が以前ジムを預かっていたはがねジムを相手にメジャークラスを勝ち取った自負もある。

 聞けばシャクヤは、今回のPNTTが本格的なポケモンバトルの世界に参戦という初心者だと言うのだ。

 

「まさに秘蔵っ子、か。」

 

 相手方の視線がファイヤーに釘付けになっているところに、キュウコンを走らせる。

 

「ヌオーよ、がんせきふうじで壁を作るのじゃ!」

 

「させないよ、キュウコン!」

 

「こーんッ!!」

 

 ハプウの対処策は、カブの予想通りであった。側面を突いたキュウコンの双眸が怪しく輝けば、元より緩慢な動きのヌオーが、ピタリと制止させられる。

 

「お、おのれ!かなしばりかーッ!!」

 

「カブっちナイス!いっけーファイヤー!!ぼうふうアターック!!」

 

「ひよおおおおおおおッ!!」

 

 ファイヤーが飛来し猛スピードで横切れば、強烈な風の圧がオニシズクモとヌオーを襲った。

 

「くもんがッ!?」

 

「ぬおーん…!」

 

ズガガン!

 

 突風に撒かれ、左右両サイドのフェンスまで吹き飛び叩き付けられる2体はそのまま倒れ伏し、どちらも目を回していた。

 

「ヌオー、オニシズクモ、戦闘不能!ファイヤーの勝ち!!」

 

 

 

ハプウ、残りポケモン2体。ダウン可能数残り1体。

 

スイレン、残りポケモン2体。ダウン可能数残り1体。

 

シャクヤ、残りポケモン3体。ダウン可能数残り2体。

 

カブ、残りポケモン3体。ダウン可能数残り2体。

 

 

 

「雨風を物ともしない火の鳥の羽ばたきが、面前の障壁を瞬く間に吹き飛ばす!!チーム<マナーロ>黄金ペア、双方ともに先発がダウンです!!」

 

「ハッキリ言わせてもらえるなら、桁が違いますね。」

 

 サイトウもオニオンも唸るより他にない。言うことを聞くのか、など全くの杞憂であった。

 シャクヤはファイヤーを完璧に制御出来ている。そこに彼女自身の才覚と、このガラルの地で頂点に立っていた男のDNAを感じずにはいられなかった。

 

 

 

「いいぞ〜シャクちゃあああああん!!パパ、もう感激して涙が、涙がちょちょぎれて、うおおおおおおおん!!!」

 

 

 

「えーマジ?あのオヤジガチ泣きしてんだけどー…。」

 

「それだけきみの活躍が嬉しいんだよ。」

 

 相変わらず最前列で騒ぎ立てる先代チャンピオンが、無双するシャクヤのテンションを僅かに減退させる。

 そんな彼女の肩に手をポンと置くカブを、シャクヤは『そんなもんなの?』と言うように見上げればカブは爽やかな笑みで首肯した。

 

「今の展開で確信したよ。この試合の主役はきみだ。僕は援護に回ろう。」

 

「それって、どゆこと?」

 

「好きに暴れてくれ、ってことさ。」

 

 カブの慣れないウインクが不覚にも可愛らしく見えたシャクヤは、思わず噴き出してしまった。

 

「おンのれぇ〜!ファイヤーはもちろんじゃがあのキュウコンも厄介じゃ!」

 

「そうだね。ハプウちゃん、あのキュウコンを中心に乱戦に巻き込もう。」

 

「なるほど…ファイヤーの過大な力を逆用するのじゃな。確かにあれな規模の技は味方がおる中ではそうそう放てまいて!」

 

 こちらは一気に追い込まれたハプウとスイレン。すぐに打開の策を導き出せば次のボールを投げ込む。

 

「ゆけぃ、バンバドロ!!」

 

「ランターン、お願い!!」

 

「ばんひひひぃぃぃん!!」

 

「んたぁ〜ん!」

 

 バンバドロが着地すれば軽く地響きを起こし、ランターンは空中を泳ぐ。

 

「突っ込めバンバドロ!10まんばりきじゃ!!」

 

「ひひぃぃぃん!!」

 

 試合再開となれば、バンバドロの巨体が爆走してキュウコンに迫る。

 

 

 

「ファイヤーを無視するのか!?」

 

「いい作戦だね。ビート、分かるかい?」

 

 ホップが驚く中、涼しい顔のままポプラは愛弟子を見る。

 ビートは鼻で笑って見せる。

 

「同士討ち狙いでしょう?ファイヤーは強大なパワーを持つポケモンだ。ダブルバトルという性質上、下手に技を垂れ流せば味方を巻き込みかねない。」

 

「そっか。伝説のポケモンは、その生態から周りの環境を簡単に変えちゃえる程のエネルギーを持ってるもんな!流石ビートだぞ!」

 

 ホップが気安く肩を叩くので煩わしげに距離を離すビート。

 その横顔に若干のまんざらでもなさを見たポプラは優しく笑みを浮かべる。そこには愛弟子と友人でいてくれるホップへの感謝があった。

 

 

 

 ファイヤーの規格外な戦闘力を抑えるための乱戦策、それを読めないカブではなかった。

 キュウコンに迫るバンバドロの影にランターンが続くのを確かめれば、ニヤリと笑う。

 

「主役の座は譲るけど…!」

 

 バンバドロがキュウコンを跳ね飛ばさんとする直前にカブはボールを構え、

 

「ぬううッ!?」

 

「僕の見せ場も確保はさせてもらおう!」

 

 紙一重のタイミングで回収してみせた。

 

「ぶるぅ〜!?」

 

「くッ!交代か!!」

 

「違う!ダイマックス!!」

 

 カブの手元のキュウコンのボールが肥大化するのをスイレンが指差す。

 

「熱い心に不可能はない!キュウコン、ダイマックス!!」

 

「ごぉ゛ぉ゛ぉ゛…ん゛!」

 

 カブの瞳に炎が宿り、ボールを放り投げれば中から巨体と化したキュウコンが、九尾を優雅にたなびかせて見せた。

 

 

 

「ジムリーダーカブ、ここでキュウコンをダイマックスだーッ!!」

 

「カブさんと言えば、切り札のマルヤクデによるキョダイマックスが印象的ですが、流石プロフェッショナル。チームの勝利を最優先している。」

 

「憧れ、ちゃいます…。」

 

 勝利をリスペクトし、全力で邁進するカブの在り方は、10代のまだまだ若きジムリーダー2人にも強く突き刺さる。

 

 

 

「ランターン、ハイドロポンプッ!!」

 

「ぼしゅしゅしゅうーーーッ!!」

 

 ランターンはダイマックスしたキュウコンへ口から強烈な水流弾をぶち当てて見せる。

 雨は、みずタイプエネルギーを活性化させて技の威力を高めた。

 

「ぐごッ…!」

 

 それでもキュウコンを倒すに至らないのは、ダイマックスによる体力倍増の恩恵からだ。

 

「よし、よく耐えた!キュウコン、ダイバーン!!」

 

「ごごお゛お゛お゛お゛お゛ん゛!!」

 

 キュウコンが巨大な火の玉を空高く打ち上げる。すると雨雲が霧散し、再度擬似太陽が日差しをフィールドへ降り注がせた。

 

「シャクヤさん!あとは任せたよ。」

 

「オッケーカブっち!!」

 

 引き立て役の仕事を完遂する燃える瞳のカブの隣で、シャクヤの瞳が爛々と輝く。

 火の鳥が、太陽を背にシャクヤの瞳と同じ輝きに身を包んでゆく。

 

 

 

「ん…まずい!ハプウ!スイレン!バンバドロとランターンを離れさせるんだ!」

 

「ぴかぴか〜!」

 

 サトシがベンチから叫ぶので2人は現状の不味さに気付く。

 キュウコンを狙って連携して動いていたせいで、2体は程近くに重なり、そこをファイヤーが狙っている…。

 

「ぬうううッ!!」

 

「しまったッ…!!」

 

「ファイヤー!ソーラービームッ!!」

 

「ひいいいよおおおおおッ!!」

 

 2人が気付いたところに、間髪入れず放たれた太陽エネルギーより変換されるくさエネルギーの奔流が、バンバドロとランターンを飲み込んでゆく。

 

「ぶるぅぅぅ〜〜〜!」

 

「んたぁ〜〜〜!」

 

 両者共に効果は抜群、ひとたまりもなかった。太陽光線を放ち終え、火の鳥が確信と共にフィールドに舞い降り、着地する。

 審判がチェックに入れば、迷いなくコールをかけた。

 

「バンバドロ、ランターン、戦闘不能!ファイヤーの勝ち!!よって勝者、チーム<シュート>ジムリーダーカブ&シャクヤ選手!!」

 

 

 

ウオオオオオオオ!ウオオオオオオオッッ!!

 

 

 

「やったやった!カブっち、やった〜!!」

 

「ははは!やったねシャクヤさん。」

 

 完全勝利の喜びのまま、シャクヤはカブに飛び付けばカブは受け止めくるくると回って見せる。本当ならば彼女の気が済むまでやってあげたかったが、客席からの『オヤジ』からのプレッシャーが凄いので3回回したところでシャクヤを下ろした。

 

 

 

「いいぞーカブ!シャクヤ!ナイスファイト!」

 

「これであと1つ勝てば初戦突破、ベスト4進出だぜー!」

 

 チームの2勝目に気をよくしたダンデとキバナは肩を組み、良い気分のままにラインダンスをし始めれば、ホップも混ざりに行き男3人無駄にキレキレに足を上げて踊り出す。

 男子のノリについていけず呆れ顔のマリィに頷いて見せたルリナがふとベンチの片隅に陣取るポプラ監督を見やれば、次のシングル3に出る愛弟子を呼び出したのか、直立不動の彼を前にしていた。師弟ならではのやり取りに口を挟む道理もないルリナは、特に気にしないことにした。

 

 

 

「カカカ!いやぁ派手にやられてしもうたわい!流石は伝説のポケモンと、それを十全に扱ってくるつわものよ。」

 

「相方のジムリーダー、カブさんも凄く巧みなポケモン捌きだった。次は勝とうね、ハプウちゃん!」

 

「うむッ!」

 

 敗北し、ボールにバンバドロを戻した直後のハプウの顔をスイレンは見た。悔しさでいっぱいで、不覚を取った自分を許せないでいる顔だった。それをおくびにも出さず笑い飛ばしながらベンチに引き上げて見せたのは、シゲルとセイヨに啖呵を切った手前のことだろう。

 そんな意地にタッグパートナーとして乗らない訳にはいかないスイレンだ。努めて共に明るく振る舞って見せた。

 ひと月近く行動を共にするチームメンバーたちも、2人を責めることなどあり得なかった。

 




 PNTT第1回戦 ダブルバトル1
 ハプウ&スイレンvsカブ&シャクヤ
 ダブルバトル 3C2Dルール

 ハプウ    スイレン    カブ     シャクヤ
 ヌオー● オニシズクモ● キュウコン  ファイヤー◎
 バンバドロ● ランターン● ファイヤー◎

 勝者 カブ&シャクヤ
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