3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 シロナが長年チャンピオンとして培ってきた必勝パターンをアイリスは真っ向から打ち破って見せる。
 若きチャンピオンの急成長を認めながらもシロナは決して譲らない。無論、アイリスとてそれは変わらない。
 2人の女帝が奪い合うはただ1つ、勝利の栄光あるのみだ…!


PNTT Fighting! 第1回戦 シングルバトル1 シロナvsアイリス③

 メガシンカしたガブリアスと、テラスタルしたオノノクスのドラゴンエネルギーは、もはやそれそのものがまるで意志を持つようにフィールド中に渦巻き、ぶつかり合っている。

 

ガガァッ!!

 

 その互いのエネルギーが、同じ極の磁石のように互いを強く弾き飛ばした。

 

「オノノクス、サイコカッター!!」

 

「ガブリアス、もう一度きりさく!!」

 

「おのぁぁぁ!!」

 

「がぁぁぁぶぁ!!」

 

ガキン!ガキン!ガキキキキ!!

 

 弾き飛ばされた2体が再度交錯すれば、オノノクスのサイコパワーにより延長された紫爪とガブリアスの片腕が激しくぶつかり合い、鍔迫り合う。

 互いの腕が激突するたび、ドゥン!といく轟音とともにフィールド中に圧縮されたエネルギーが飛散し、バリアフィールドを刺激し続ける。

 

 

 

「両者スタジアム中央で熾烈な打ち合いーッ!!どちらも一歩も引きませんッ!!」

 

「ここまで気迫、伝わってきてマスよーッ!!」

 

 オーッホッホッホ、とメリッサのテンションは青天井に上がり続けたままだ。

 

 

 

「3年前、アイリスがシロナ殿に遅れを取ったは、経験の差以上に明確な有無がある。分かるかレンブよ。」

 

「はい。あの時のアイリスには、シロナ殿が扱っているダイマックスやメガシンカのようなバトルシステムが戦略として組み込まれていませんでした。」

 

「左様。PWCS参加を打診した段階でダイマックスバンドこそマクロコスモスより支給はあったが、あの時のアイリスにはチャンピオン就任直後のゴタゴタもあってその習熟に至るまでの時間的猶予はなかった。」

 

 イッシュリーグの頂点にいたアデクと、彼を師と仰ぐレンブからすれば、アイリスはまだまだ成長途上。3年前の時点であと一歩まで追い込んでいたシロナなどは、そう遠くないうちに追い越し、飛び越えてゆく相手でしかないのだ。

 そうしてイッシュ地方のポケモンバトル界は、アイリスを頂点として長く新たな発展の道を進むという確信が彼らにはあった。

 

 

 

「シロナの奴、焦ってやがる!」

 

 萎れた状態から復活したオーバは、自分たちの総大将の窮地を具に感じ取っていた。

 自分もシロナも、まだまだ伸び代の存在を疑ってはいない。ただ、より大きな伸び代を掴んで見せたアイリスの爆発的なパワーの前には、円熟の域に達したシロナの平静が掻き乱されるのも無理のない話と思えた。

 

 

 

 シロナは、トレーナーデビューしたポケモン歴1978年のうちに当時のリーグチャンピオンを倒し、新たなチャンピオンとして戴冠を果たした。

 それから22年間、趣味の考古学の研究をしながらシンオウリーグの王座を守り続けている。その途上で王座返還、引退を匂わせるヒステリーを起こして周りを引っ掻き回したのも1度や2度ではない。

 それでもこの22年には、シロナなりの自分というものがあった。

 

「負けられないわよねガブリアス…!」

 

「がぁぶ!!」

 

ギギギギギ…!

 

 生まれ故郷のカンナギタウンにて幼少期の頃に親からもらったタマゴからの付き合いである相棒が、両腕同士鍔迫りながらオノノクスと額を擦り合わせる。

 彼女もまた、追い縋ってきた面前の小僧に対抗心を剥き出しにしている。

 

「がぶぁ!!」

 

 ガスッ!と技ですらないヤクザキックをオノノクスに突き刺す。

 

「まだまだ"小娘"にはッ!!」

 

 シロナは叫ぶ。両者のボディが離れれば、アイリスはすかさず次の手を打つ。

 

「ワイドブレイカー!!」

 

「おんのぁ!!」

 

 蹴り出されたオノノクスがそのまま勢いよく回転し、尻尾を鞭のようにしならせて振るう。

 

「迎え撃ってガブリアス!!」

 

「がんぶぁ!!」

 

 鏡合わせのようにガブリアスも回転。

 

バッチィィィ!!

 

 今度は尻尾同士で鍔迫り合いを起こし、互いのドラゴンエネルギーがスパークしていた。

 

「「おおおおおッ!!」」

 

 シロナもアイリスも咆哮する。

 

 

 

「なんだってんだよ〜!シロナさん全然クールじゃあないぜ〜!!」

 

 ジュンがハラハラするままに頭をくしゃくしゃかき乱す。彼にとってシロナとは、情熱こそあるがお淑やかなイメージが先行するクールビューティーであったようだ。

 

「オーバ、どうなんだ?」

 

 シロナの『焦り』を感知したオーバにデンジが問えば、オーバは不敵な笑みを返す。

 

「まぁ、そうだな。確かにシロナは焦ってる。だがな…なにもそりゃあ悪いことばかりとも言えないんだぜ。」

 

 平静を崩して戦うことが危惧でなくてなんだというのか、とチーム<スズラン>のメンバーたちは首を傾げる。オーバは沈黙を貫いていた監督のキクノを見やれば、彼女はフッ、と鼻で息を吐いた。

 

「あんたたちが思っているよりあの娘はお行儀がいい訳じゃあない、ってことさ。」

 

 簡潔に言葉を述べる。『焦り』『苛立ち』『嫉妬』…女神のように尊敬を集めるシロナとはおおよそ対極に位置するこれらの要素こそが、彼女の本質的な力の源である、とキクノは語る。

 

「3年前にあの嬢ちゃんが追い込んだシロナは、あくまでエネコ被ってたに過ぎねえって訳だ。」

 

 オーバにキクノも頷く。『本来のテンション』に立ち戻るシロナの底力を、近頃の若いトレーナーたちはまだまだ知らないのだ。

 

 

 

バチン!バチン!グググググ!!

 

 互いに開店を繰り返し、尻尾をぶつけ合い、鍔迫り合わせる。

 

「がっぶぁ…!」

 

 先によろけたのは、ガブリアスだ。

 

 

 

「竜の尻尾チャンバラは、オノノクスに軍配だーッ!!」

 

「ワイドブレイカーという技として放っている分の差が出てマース!!」

 

 ジッキョーに負けじとメリッサもテンション高くトークをし、唾が飛び交う。

 

 

 

「勝機ッ!」

 

 アイリスに呼応し、すかさずオノノクスがサイコパワーで両手の爪を延長させながら迫る。そこに突き刺さるは、殺気がギラリ!

 

「震地動天の神技!今こそ見せましょう!!はあああああッ!!」

 

「がぁぶあああ!!」

 

 ここにきてシロナの覇気がより洗練され、天へと昇る。

 ガブリアスも主人のテンションにアテられ、さらなるポテンシャルを解放する。

 

ドオン!!!

 

「虚空を打ち付けた!?」

 

ミシミシ…バキ!!バキバキバキ

 

 ガブリアスの鎌腕が左右の空間を殴りつければ、空間そのものにヒビ割れが起き、すぐにスタジアム中に異常が現れる。

 

グラグラ!!

 

「おのぁ!?(地震だ!?)」

 

 スタジアムだけではない。スズラン島そのものが激しく揺れている。激しい揺れを前に、攻め手であったはずのオノノクスの足が止まる。

 今度は、そこにガブリアスが飛び込んだ。

 

「マズイッ…!!」

 

 アイリスの背筋が凍る。今しがた見せた震動撃を、ガブリアスが今度は直接オノノクスにぶつける気なのだ。

 

「あたしのガブリアスのじしんは、天をも破る!!」

 

「く、オノノクス!」

 

「砕け散りなさいッ!!」

 

「がぁぶぁぁぁぁぁ!!」

 

ビキ…!!

 

「お゛、ん゛の゛…!!」

 

 鎌腕が、両サイドからオノノクスの首筋に叩き込まれる。

 

ビキビキ…

 

 周囲の空間にまたヒビ割れ。即座に2体の周囲のフィールドが崩壊。

 地脈のエネルギーが割れた天へと昇り、激しい地震のあおりを受けてスズラン島全体の電気系統がストップしてしまった。

 

 

 

「うわ、暗くなった、と思ったら眩しー!!」

 

 コテツが1人慌てふためく。停電から即予備電源に切り替わり照明が生き返ったのだ。

 

「バトルはどうなったの…?」

 

 揺れを前に体を屈めるしかなかったラングレーがフィールド中を見回す。

 

ガコンッ!!

 

 地面から丸ごとひっくり返されたフィールドの中より地盤をかき分けて姿を見せるのは…メガガブリアス。

 

 

 

「ガブリアスの戦闘続行可能確認!オノノクスは…!」

 

「邪魔よ!!」

 

 ポケモンチェックに入った審判は、怒気のこもったシロナの圧に飛び退くようにフィールドから出てゆく。この荒々しさこそが彼女のトレーナーとしての本質なのだ。

 ジャッジなどまだ必要ない。アイリスは両手を水平に伸ばしている。空を見上げれば、そこに『竜星』はあるのだから…。

 

 

 

「あの嬢ちゃん、"逃げ"も上手ェ〜!!」

 

「まったくだね。」

 

 キクノもオーバも、正直なところガブリアスが距離を詰めた時点で決着を予想していた。電気系統が破天のじしんによって吹っ飛んだ間の出来事だ。おそらく空中を飛び交うドローンロトムも記録し切れてはいまい。

 

 

 

「咄嗟じゃったろうのう。」

 

「はい。流石はアイリス。竜の声を聞く者。」

 

 一連のやり取りをバッチリ視認できたのはチャンピオンであったアデクに四天王であるキクノ、オーバ、レンブくらいのものであった。

 オノノクスはガブリアスの渾身の一撃を叩き込まれながらもヤクザキックで距離を無理矢理離し、フィールド崩壊を尻尾のバネを活かしたジャンプでやり過ごしていたのだ。

 そしてそれは、直接対するシロナからすればむしろ出来て当然の話と言えた。

 

 

 

「そうよね…3年もあれば出来るようになってるわよね。それくらいは。」

 

 シロナはアイリスのオノノクスを、進化前のキバポケモンキバゴの頃から知っている。

 アイリスと心を通わせ続け、成長を重ねた先に竜の奥義を会得していることなどは、容易に想像出来ることだ。

 

「叩き潰してあげるッ!!」

 

 で、あるからこそ手を抜く道理などはない。アイリス同様、シロナも両手を水平に突き出す。

 

「がぁぁぁぶぁぁぁ…!!」

 

 ガブリアスもまた、メガシンカで強化されたドラゴンエネルギーを物質化させ、数多の『竜星』を周囲に展開する。

 

 

 

「おっと、強烈なじしん攻撃の影響を受けての停電から電気系統がようやく回復しました。ってあーっと!こ、これはーッ!!」

 

「ワーオ…!」

 

 いつの間にやら対決の様相が変わっているのでメリッサも言葉を失う。その目は、幼き日に見たダンサーの姿に衝撃を受けた、爛々とした輝きに満ちていた。

 全身を震わせ、瞳を揺らす。鳥肌も立っていた。

 

 

 

「オノノクス!!」

 

「ガブリアス!!」

 

「「りゅうせいぐんッ!!!」」」

 

「おんのぉぉぉぉぉ!!!」

 

「がっぶぁぁぁぁぁ!!!」

 

 オノノクスは眼下のガブリアスへ、ガブリアスは頭上のオノノクスへ、それぞれ狙いを定めて生成した『竜星』の群れを撃ち放つ。

 

ガガガガガガガ…!!

 

 それまで一部の達人にしか見えなかったシロナとアイリスの覇気のぶつかり合いが、ここにきて可視化されたりゅうせいぐんとして顕在化する。

 互いの『竜星』がいくつも衝突し、対消滅して行く中を掻い潜り急降下するのは、自らも星としてガブリアスへ襲いかかるオノノクスだ。

 

「ガブリアス!!」

 

「んがぁ!!」

 

 ここに来てマッハポケモンの分類通り、または、シロナの与えた口上通りにガブリアスは天空へと舞い翔ける。その身でもってオノノクスと激突する算段だ。

 

「オノノクス!!テラスタルパワー全開!!げきりん発動!!!」

 

「ガブリアス、メガシンカ・フルパワー…ギガインパクト!!!」

 

「おのぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「がぁぁぁぶぁぁぁぁッ!!!」

 

 竜の王冠、テラスタルジュエルを激しく輝かせるオノノクスと、全身からメガシンカのエネルギーを発散させて輝くガブリアスが空中でぶつかり合う。

 

ズッッッ…ドドオオオオオ…!!

 

 この試合1番の震動、衝撃がスズラン島を襲った。

 

 




 『キクノ』
 57歳。シンオウリーグ四天王。
 プライベートでは自身の肩書きを使わないタイプで、容姿がよく似ているセキエイリーグの四天王キクコを姉貴分として慕っている。
 じめんタイプのエキスパートでドサイドンやカバルドンのような重量級の扱いを得意としているよ。
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