3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 ついに始まった船上ダブルバトル。
 定石通りにコハルのイーブイが集中狙いされ、サトシがフォローに入る。
 サトシとコハルの反撃は、ここからだ。


それぞれの戦い 船上の再会、そしてバトル④

「存外やるなガールフレンドちゃん。しかしあのイーブイ、体力はあまり残ってないと見た。」

 

 船に並行する形で浮行させ続けるギャラドスに腰掛け、戦況を分析する。

 ナンテの推察通り、イーブイの体力が残り少ないこの現状では長期戦は望めない。

 

「(ハヅキさんもナオシさんも体力の限界が近いイーブイを先に倒して2対1に持ち込もうとしてくるはずだ。それなら取るべき作戦は一つしかない!)」

 

 一撃必殺、それがサトシの導き出した答えだった。

 ふとコハルの手元を見やればそこにあるものにサトシは目を丸くさせてから、輝かせた。

 

「Zリング!コハルもアローラで試練してたんだな。」

 

「え、あぁ。うん。調査と一緒にちょっとずつ、まだ途中だけどね。クリスタルも持ってるのはこれだけ。ここで使えるのかな…?」

 

 サトシに見つけられては、気恥ずかしくコハルは首肯しつつ手首に巻いたZリングをサトシに見せる。

 

「いいじゃんいいじゃん!そうだ!いいこと思いついちゃった!コハル、ごにょにょ、ごにょにょ…。」

 

「ええっ!?大丈夫なのそれ!?」

 

 サトシの耳打ちを受けて思わずコハルの声が上擦る。当のサトシは例のよからぬ笑みになっている。

 イーブイの体力の限界も近いのだ。どのみちこちらが折れるより他にない…。

 

「あーもー!どうなっても知らないからね私!」

 

「よーし、いくぜコハル!」

 

 腹は決まった。

 2人同時に向き直ればZクリスタルの輝きも2つ。

 コハルが両手を顔の前でクロスさせ、解き、Zの文字をビシリとなぞればサトシは拳同士を胸の前で打ち付け、両腕を前に突き出した。

 

「今度は俺たちの番だ!!ピジョット!!」

 

「イーブイ、お願い!!」

 

「ぴじょおおおおおッ!!」

 

「ぶーーーーーい!!」

 

 サトシとコハルのゼンリョクポーズが輝くZパワーを生み、ピジョットと、その背のイーブイを纏えば戦場の空気がまた様変わりする。

 メガバシャーモとコロトックは、どこからでもかかってこい!とばかりに身構えた。

 そこはリーグの世界を知る歴戦のポケモンたちだ、この後来るであろう大技を前に狼狽えたりはしない。

 

「あの構えはZワザだね。」

 

「ええ。おそらくはノーマルZとハガネZ、つまりは超絶螺旋連撃とウルトラダッシュアタック。」

 

 ハヅキの問いは、あくまで把握しているが故のあくまでの確認作業でしかない。それを承知のナオシは肯定、補足を加える。

 そんな中周囲ではちょっとした珍事が起きていた。

 

「しゅわっ!」

 

「けぁん!」

 

「な、なんだ?野生のシャワーズが海ン中から出てきたぞ?うわ、なんだよサンダース!?」

 

「もふる!」

 

「あらまぁワタクシのブースターちゃんたらどうしましたの?」

 

 シャワーズ、サンダース、ブースター…。

 

「ふぃ〜。」

 

「しゃらっき!」

 

「ちょっと、あんたのブラッキー、ボールから出てるよ?」

 

「お姉ちゃんのエーフィも出てんじゃん。」

 

 エーフィ、ブラッキー…。

 

「ふぃん!」

 

「こぉきゅるぅ〜。」

 

「あら?リーフィア、どうしたの?」

 

「おおお〜、グレイシアたん!」

 

 リーフィア、グレイシア…。

 

「ふぃー。」

 

「おや…。ということはあのイーブイのZワザはナインエボルブースト。」

 

「らいちゅ。」

 

 そしてナンテのボールからニンフィアが飛び出す。

 それぞれ姿を見せたのはイーブイの進化系たるポケモンたちである。それらが光を放ちその七色の光がイーブイの元へ集約。大きな力を分け与えてゆく。

 

「超絶螺旋連撃とウルトラダッシュアタックの二段攻撃ではない!?」

 

 ここにきてナオシが目を丸くする。

 イーブイZの存在は知らないでもなかったが想定からは外していたのだろう。

 刹那、ハヅキとアイコンタクトを交わし両者頷いてはメガバシャーモが駆け出してゆく。

 

「超絶螺旋連撃は撒き餌!ナインエボルブーストによる強化を受けたイーブイからの攻撃で僕たちを一網打尽にすると見た!!」

 

 先程の攻防により、全体攻撃のハイパーボイスがイーブイの技の中にあることを知ったハヅキの判断はあくまでイーブイを先に倒すことである。

 

「しゃあああも!!」

 

「メガバシャーモが来るよ、サトシ!!」

 

「ここまで来たら構うもんか!真っ向勝負だ、いっけぇピジョット!超絶螺旋連撃!!」

 

「ぴっじょおおおおお!!」

 

ゴオオオオオ…!!

 

「ぶぃぶぃ〜!」

 

 Zパワーエネルギーを纏ったままピジョットが急降下、錐揉み回転しながらの突撃を敢行すればイーブイは楽しげにしがみついている。

 そのイーブイが纏う七色の光もまた鋼の螺旋回転に追従していた。

 さながら巨大なドリルと化した質量肉弾が、そのままメガバシャーモに衝突する、と思われた直前…。

 

「みきりッ!!」

 

「しゃもッ!!」

 

 メガバシャーモは右へ、ピジョットから向かって左翼側へ全身をひねらせ回り込みを図ったのだ。

 

「まもるやみきりといった技の効果ではZワザの威力を完全には防ぎきれない、だがある程度のダメージ減殺は狙える!」

 

「なるほど、ガオガエンの巣にいらずんばニャビーを得ず。」

 

 かつてはサトシを下したほどの相手、それを納得させるだけの発想と、それを実行できるだけのポケモンのレベルの高さを兼ね備えた大胆なる一手をナンテは読み取った。

 

 

「バシャーモ!みきりで受け切ってからブレイズキックでピジョットとイーブイを切り離せ!!メガシンカのパワーならできるはず!!」

 

「しかし。」

 

 刹那の指示、もとよりダメージは覚悟の上。相手の連携を崩せばそこにナオシも付け入ってくれる。

 ハヅキの判断を当然ナオシも即座に察しコロトックも追撃の姿勢に入っていた。そして超絶螺旋連撃がメガバシャーモに命中する…。

 

ドゴォォ!!

 

「しゃもッ…しゃぁぁぁもぉ〜!?」

 

「バシャーモ!?」

 

 みきりでダメージを減殺し直後に背に乗るイーブイを蹴り出してピジョットと切り離す、それがハヅキの意図。だが、実際に広がる盤面は、それ以前の話であった。

 全身をみきりで逸らしてから反撃を試みるどころか、メガバシャーモはピジョットの錐揉み回転を受けてはそのまま呑まれ、ピジョットの左翼が背に叩きつけられていたのだ。

 

「なッ!?コロトック、うたう攻撃!!」

 

「くぉるるる、ぐぉッ!?」

 

「コロトック!?」

 

 メガバシャーモの迎撃策は失敗。ピジョットの突撃をねむり状態にして止めにかかろうとしたが間に合わない。

 催眠演奏前にコロトックは、右翼に捉えられていた。無論錐揉み回転に呑み込まれうたう攻撃どころではない。

 

「いっけぇぇぇ!これが俺の!」

 

「私の!」

 

「「ゼンリョクだぁぁぁーーーッ!!」

 

「ぴじょおおおおおッ!!」

 

「ぶーーーーーい!!」

 

ドゴォォォォォ…ン!

 

 ピジョットは2体を捉えて真上に急上昇、そこから真下に一気に急降下。

 さながら鋼のドリルのような凄まじいエネルギーの螺旋回転を叩き付けてはイーブイと共に離脱する。

 床面に残されたメガバシャーモはメガシンカが解除され、目を回していた。コロトックも然り。

 

「やったー!!ピジョット!!」

 

「はぁ〜…。なんとかなった、かな。」

 

 見事に決着。コハルはその場にへなへなとへたり込む。

 強豪トレーナー3人に囲まれてのダブルバトルの心労からすれば無理もなかった。

 

「ぶーい!」

 

 サトシが真横に伸ばした腕にピジョットは降り立てば、その背にいたイーブイはコハルの胸に飛び込む。

 たくさん頑張ってくれた相棒の甘えっぷりに疲れが吹き飛ぶ気がしたコハルであった。

 

パチパチパチパチ…ブラボー!おお…ブラボー!!

 

「イーブイのナインエボルブーストによるステータス上昇がピジョットにも流出していたんだ。それがみきりを発動させてなおメガバシャーモの体力を一気に奪い去るに至った。」

 

 白熱したバトルを繰り広げた4人に野次馬たちは歓声を飛ばしている。

 ナンテはギャラドスをボールに戻し、その喧騒の中船内へ戻っていった。

 

「いいものをみせてもらったな、テディ。」

 

「らいちゅう。」

 

 テディと呼ばれたライチュウはナンテの肩に飛び乗り、頷く。

 サトシがチラッと視線を寄越すも、ギャラドスの青年のいた場所には押し隠していたであろう僅かな波導の残滓しか感じ取れなかった。

 

 

 

「ゆっくり休んでくれバシャーモ。」

 

「コロトック、お疲れ様でした。」

 

 ハヅキとナオシはそれぞれ相棒をボールに戻し奮闘を労う。

 船にはポケモンセンターと同じように治療設備があり、ジョーイさんも常駐している。

 船旅中のこうしたポケモンバトルも想定の内なのだろう。で、あるからこそ全開の勝負に臨めたのだ。

 

「サトシくん。完敗だ。コハルちゃんと言ったっけ?きみもナイスガッツ!」

 

「分かっていましたが実際手合わせしてみるとイメージとは段違いでした。」

 

「ありがとうございますハヅキさん、ナオシさん!すっげー楽しいバトルでした!な、コハル?」

 

「えっ、あ、うん。はい。勉強になりました!それ以上にヘトヘトかもです…。」

 

「ぶーい?」

 

 サトシとしては最後の攻め手には上手くいくだろうというこの場では語らぬ実体験からの根拠はあった。

 それは3年前、ホウエン地方を旅していた際のこと。

 トクサネシティの双子のジムリーダー、フウとランを相手のジム戦にてサトシはピカチュウとオオスバメを繰り出し、バトルの最中にピカチュウのかみなり攻撃による膨大なでんきエネルギーの付与という奇策を敢行。これを成功させ見事双子ジムリーダーを打ち破って見せたのだ。

 当時としては、スバメ時代からピカチュウの電撃を何度受けても向かってくるひたすらタフなオオスバメあっての半ば強引な一手ではあったのだが。

 そしてコハルの方というと、本気で頂点を目指しているトレーナーたちのハイレベルなポケモンバトル、その熱量を体感した。

 させられた、というのが正しいか。

 コハルの意識的にはほとんどサトシのおかげとはいえ、凄い熱量のバトルに臨み、勝つことができた。

 それで生まれた胸の奥底の「熱さ」は、次の日起きるまで消えることはなかった。

 

 

 




船上ダブルバトル サトシ&コハルvsハヅキ&ナオシ
 
ピジョット○ バシャーモ●
イーブイ○ コロトック●

勝者 サトシ&コハル
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