3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 ついに対面するチーム<マナーロ>とチーム<シュート>。
 初戦を戦うダブルバトル2には共に1回戦で敗戦したチームがぶつかり合うこととなった。
 シゲルとセイヨはジムリーダーコンビの牙城を崩すことが出来るのか!?


PNTT Fighting! 準決勝 ダブルバトル2 シゲル&セイヨvsシャガ&ホミカ②

 ポケモンリーグに挑むとなればまず予選大会への参加がトレーナーたちの当面の目標となる。予選大会に参加するにはその地方内にあるポケモンジムを巡り、リーグ公認のジムバッジを8つ集めなければならない。

 原則としてジムリーダー側には挑戦者の力量に合わせて使用ポケモンやルールの調整を細かく行う義務はあるが、リーグ公式からもバッジ集めに適した行脚ルートの策定はある程度されている。基本的にはデビューした新人トレーナーの支援活動を行なっているポケモン研究所をスタート地点として近場のジムから順路に組み込まれるものだ。

 イッシュ地方においてはアララギ研究所のあるカノコタウンから旅をスタートさせる形になり、地理的な問題からシャガの任されるソウリュウジム、ホミカの任されるタチワキジムなどは原則終盤に訪れるようルート設定がされており、必然的に彼らが地方予選前最後の関門、イッシュの誇るトップジムリーダーとして扱われる形となっていた。

 

 

 

 シャガはソウリュウシティの市長を、ホミカはバンドグループのミュージシャンをそれぞれジムリーダーの傍に兼任する立場であり、顔の下半分を埋め尽くす勢いの顎鬚から口元が読めないのもあって厳格なイメージの拭えないシャガとラフな衣装にギターを抱えるホミカの取り合わせは、一見ミスマッチな印象を見るものに与えもした。だが、当人同士としてはさほどやりにくいということもなかった。さながら厳しい父と放蕩娘を思わせながら元よりどちらも二足の草鞋を履くジムリーダー同士、公認として扱われるだけの人格者であるのが大きい。

 

「まずはクリムガン、ハッサムを捉えよ!」

 

「ッ!ピカチュウ!」

 

「ぴっか!」

 

 ハート型の尻尾を風に靡かせながらピカチュウがハッサムとクリムガンの間に飛び込む。割り込んできた黄色い影に遮られ、クリムガンの射殺すような眼光…へびにらみはかわされる。

 

 

 

「でんきタイプはまひ状態にならず、まひを促す類の技も効果がなくなる。上手いわね、あの子。」

 

 でんきタイプのエキスパートであるカミツレがセイヨの好判断を拾い上げ、自分でも同じ判断をしたと付け加える。

 

 

 

「まひが駄目ならどくだよ!!」

 

ギュオッ!

 

 滑らかな浮遊でピカチュウに迫る球体、ドガースだ。

 

「ヘドロばくだん!!」

 

ドドドドド!

 

 口から放たれるのは毒々しい色の爆弾。

 

「ハッサム!」

 

「はぁッ!!」

 

 今度はハッサムがピカチュウの前へ躍り出る。ヘドロばくだんの着弾を受けハッサムもまた、無傷。

 

「やるね!」

 

「ハッサム、バレットパンチ!」

 

「さむさむさむ!」

 

ドゴドゴドゴ!

 

「どがぁ〜…!」

 

 弾丸のように撃ち出される蟹ハサミの拳による返す刀のラッシュを受ければ、ドガースはあえなく空中へ逃れる。

 

「クリムガン!」

 

 その先へクリムガンが飛ぶ。空中で回転し、勢いをつけながら…

 

「よいなホミカ!」

 

「あいよ、おっさん!」

 

「ドラゴンテール!!」

 

「りむぁぁぁッが!!」

 

バッシィ!!

 

 

 

「あーッとクリムガン、回転の勢いを活かしてドガースに尻尾を打ち付けたーッ!!」

 

「ホミカちゃんのドガースのスピードにクリムガンのドラゴンテールによるスイングインパクトが加わっての、まさにノックアウト打法!」

 

 フウロは身を乗り出し、豊満な胸を揺らしながら戦況に見入る。一時期は『エアバトル』なる脳内シュミレートのみでジム営業を行なっていた彼女もすっかり真剣勝負の醍醐味を思い出していた。

 

 

 

「ぴッ!?」

 

ガツウン!!

 

「ピカチュウ!!」

 

 凄まじいクリムガンからの打球がピカチュウにヒットする。それだけではない。

 ドガースをぶつけられたピカチュウと、ドガース自身がそれぞれボールの回収光線にて引っ込められてしまったのだ。代わりに飛び出すのが…

 

「らっしゃいどうぞぅ!」

 

「だぁぁぁっすぅぅぅ!!」

 

 セイヨはゴローニャ、ホミカはごみすてばポケモンダストダスだ。

 

 

 

「おっと、セイヨ選手とジムリーダーホミカが揃ってポケモンチェンジ!これにはどういった狙いがあるのか!?」

 

「ドラゴンテールね。ドガースを通してピカチュウにも効果が適用されたんだわ。」

 

「あ、そっか。ドラゴンテールにはポケモンを強制的に交代させるから…。」

 

 ポケモン歴1925年、タマムシ大学のニシノモリ教授の投薬ミスで弱ったオコリザルが、体を縮小させて教授の老眼鏡ケースに入り込んだ事例から、教授は『ポケモンは衰弱すると体が縮み、かつ狭い場所に入り込もうとする性質がある』ことに気が付き、その性質が活かされたことでモンスターボールの開発が進んだという(一方で体を縮める機能すら覚束ない弱り切った個体に対しては、緊急措置としてポケモンを一旦光の分子に分解した上で収納するシステムもボールには組み込まれている。)。それに加えて、登録されたポケモンの不慮の失踪を防ぐ目的のオートマチック回収機能も実装されており、一部のポケモン交代を促す技はこの機能を意図的に刺激するために開発されたといっていい。

 

 

 

「シゲルくん、ひと足お先に。」

 

「了解。」

 

「おっさん、先いかせてもらうよ。」

 

「分かった。頼む。」

 

 

 

「おっとぉ、セイヨ選手もジムリーダーホミカもそれぞれポケモンをモンスターボールへ戻します!ドラゴンテールで引き摺り出されたポケモンでのバトルを嫌ったかー?」

 

「いいえ。この流れは…。」

 

「ぶっとびダイマックス!!」

 

 フウロにカミツレはうむ、と頷いた。

 

 

 

「タイミングを合わせたか。」

 

 ほっほ、とアデクはセイヨの立ち回りに声をあげる。ハッサムが後方に下がるのも見逃してはいない。

 

 

 

「いくわよゴローニャ!銀河にその威容知らしめる巨星となりなさい!」

 

「アンタらの理性、今から盛大にブッとばす!ダストダス!」

 

「ダイマックス!!」

 

「キョダイマックス!!」

 

 ダイマックスボールをそれぞれ空へ投げるセイヨとホミカ。

 

「ら゛っ゛し゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛い゛!!」

 

「だぁ゛ぁ゛ぁ゛ずぅ゛ぅ゛ぅ゛!!」

 

 開かれた中から出てくるのはダイマックスしたゴローニャ。

 対するダストダスはただ巨大化したのみならず、ゴミ山状に肥大化した下半身に足が完全に埋もれ、身体のあちこちから玩具のビルや船に電車、ピッピ人形やコイキングのような骨といった様々な物体が溢れ出したキョダイマックスの姿となる。

 

「りぁぁぁむ!」

 

 

 

「クリムガンは搦め手を捨てたか。」

 

 ハッサムがダイマックスしたゴローニャの足元に隠れる形になったのをクリムガンが走り込んで接近するのを見ては、へびにらみからの戦術は通じない…なので肉弾戦に切り替えるシャガの妙だとナンテは推察する。ダイマックス対決が始まる足元で、シゲルとシャガの応酬も本格化していくのだろう。

 

 

 

「ハッサム!」

 

「クリムガン!」

 

「「アイアンヘッド!!」」

 

「はっさむ!」

 

「りむぁ〜!」

 

 ガン!ガン!とハッサムとクリムガンは硬質化させた頭部をぶつけ合い、額を擦り合わせ、

 

「ら゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

「だぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」

 

 彼らの頭上ではゴローニャとダストダスががっぷり四つの形。ゴローニャがダストダスのゴミの塊で形成された両腕を掴み上げている。

 

「くらいな!キョダイシュウキ!!」

 

ブシュウウウウウ!!

 

「ら゛ら゛ら゛ら゛ら゛!?」

 

 ダストダスの蛇腹状のホースを起点としてゴミが集まる左腕から噴出される強烈な毒素がゴローニャを襲う。効果としては今一つだが無論それだけで収まりはしない。

 

「毒がッ!」

 

 みるみるうちにゴローニャの顔色が悪くなってゆく。

 キョダイシュウキ…キョダイマックスにより強化されたダストダスの体のゴミから作り出されるどくエネルギーにより相手陣営をまるごと毒状態に陥らせるのだ。相方のハッサムには効果がないのでまだマシではあるが…。

 

「クリムガン、ほのおのパンチ!」

 

 シャガの命に応え、クリムガンが右拳に赤熱の炎を纏わせる。

 

「ハッサム、スピードスター!」

 

 むし、はがねの2タイプを持つハッサムからしたらそんなもので殴られてはたまったものではない。すかさず飛び退きながら星型のエネルギー弾を放つも、それで進撃を止めるクリムガンでもない。

 

「セイヨさん、僕に構わずダストダスを!」

 

「んッ!」

 

 擬似的なタイマンの様相を呈して来た中、シゲルが話しながら2回ウインクしたのでセイヨは頷く。美貌がキリリと際立つ。

 

「負けないでゴローニャ、ダイアース…パンチ!」

 

「ら゛ッ゛じゃ゛い゛!!」

 

 ゴローニャの岩石から生え出た右拳に強力なじめんエネルギーがチャージされる。それでそのまま、

 

ボカアッ!!

 

 

 

「ダイアースのパワーでダストダスを殴り付けた!!」

 

 ハウが快哉する。長身をベンチで飛び跳ねさせてはガツンと天井に頭をぶつけるのはご愛嬌だ。

 

「いいぞ。わざエネルギーの流動活用をしっかりマスター出来ている。」

 

『ポケモンの技とはタイプエネルギーの流用であり、名称の違いはその多寡を表すものでしかない』というのはナンテの持論であった。ポケモンが有するエネルギーを上手く流動、変換させられるよう鍛えるのがポケモントレーナーの役割、その真髄だとしてチームメイトに技術や理論を惜しみなく提供した。それを戦術として組み込むかどうか、どう組み込むかは選手個人に委ねたが。

 

 

 

「だぁ゛ぁ゛ぁ゛…!」

 

 ダストダスの体がさながらじめんエネルギーのグローブで殴りつけられた形としてよろめく。

 

ボットォ!

 

 

 

「凄まじいゴローニャのダイアースが炸裂!あッと、キョダイマックスダストダスのボディに張り付いていた大きなピッピ人形が切り離され、落下した先にな、なんとぉ〜ッ!!」

 

 

 

「ぬぅッ!」

 

「今だ、ハッサム!」

 

「はぁッ!!」

 

 ほのおのパンチを両手に肉薄するクリムガンをハッサムが巴投げの要領で真上に投げ飛ばす。そう、落下してくるピッピ人形めがけて…。

 

「(このタッグ、やりおるな!)」

 

 一連の流れが決して偶然でないことをシャガは確信した。シゲルとセイヨは、まんまと連携してクリムガンをハメたのだ。

 

ドッパァァァァァ!!

 

「キョダイマックスしたダストダスのボディに付着するのは、あくまでダストダスの思念から影響を受けた猛毒の塊に過ぎないッ…!そんなピッピ人形が炸裂すればクリムガンはひとたまりもない!」

 

 

「アイアンヘッド!」

 

 どくの塊に飲まれたところにシゲルがハッサムを飛びかからせたのは、はがねのボディに毒は平気であるのもそうだが、ハッサム自身が直接的にトドメを刺すのを好む性質であるからだ。

 

「はッ、さむッ!!」

 

 両足を踏み込み、頭から一直線にジャンプしてクリムガンへ迫る。

 

「むざむざとやらせはせぬぞ!クリムガン、ほのおのパンチ!!」

 

「りむぁぁぁがぁぁぁ!!」

 

 毒が体中に回り、瞬く間に体力が削り取られていきながらもクリムガンは腹でハッサムを受け止め、

 

ドッボォ!!

 

 両拳の文字通り燃えるパンチをハッサムの両脇腹に差し込んだ。

 

「ブッ飛ばせダストダス!ダイソウゲンだァ!!」

 

「だぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ゛ず!!」

 

 2体の頭上、よろめきながらもダストダスは体内から大きな種子を2個放ち、ゴローニャへ付着させる。

 

シュルルルル!

 

 種子が瞬く間に根を伸ばしてゴローニャに纏わり付き、

 

ドッゴオオオオオン!!

 

「くぅッ…!!」

 

 大きな爆発の中に岩石を飲み込んだ。

 




『ホミカ』
 17歳。イッシュ地方タチワキジムのジムリーダー。
 キャッチコピーは『ポイズンライフ ポイズンライブ!』。バンドチーム『ザ・ドガース』でもリーダーを務める。
 どくタイプの専門家でお気に入りはバンド名から分かる通りドガース。サトシがイッシュ時代最後のバッジをかけて戦い、たった3体でサトシのフルメンバーを追い詰める実力を見せ付けていたよ。
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