3 years later〜虹の向こうに〜 作:nami73
二の矢として放たれたりゅうせいぐんも跳ね返し、見事美男美女コンビが念願の勝利を挙げるのだった。
ウオアアアアア!!イエアアアアア!!
「やったー!シゲル先生が勝ったー!!」
「「「「「「キャー!凄い!凄い!シゲル!やった!やった!シゲルー!!」」」」」」
ホシたち少女隊がシゲルガールズ本隊に持ち上げられて宙を舞う。待望の勝利パフォーマンスである。
「凄い凄い!川柳の人のお孫さん!!」
「そうだな。あそこでミラーコートとは。」
ヒカリに頷くケンゴだが相変わらず引っ付いたままであるシゲルへの珍妙なニックネームには苦笑せざるを得ない。
「いいぞカメックス。よくやってくれた。」
「ありがとうピカチュウ。頑張ったわね。」
共にポケモンをボールへ戻し、整った端正な顔立ちを見合わせる。
「セイヨさんもナイスファイト。」
シゲルが差し出す手に、セイヨはガッチリ握手で応える。
「コレで1回戦の借りは返しましたわよ。」
「お互い様にね。」
握手を解き、爽やかな笑みを振りまいて観客に応えつつ、トレーナーサークルを後にしてゆく。これでチーム<マナーロ>が誇る美男美女コンビはお役御免といえた。
「よく頑張ってくれたなオノノクス。大儀であった。」
試合が終わり、ひと足先にトレーナーサークルを出たシャガは後方フェンスまで吹っ飛ばされたオノノクスを労い、ボールに戻す。
「シャガさん…。」
ベンチから身を乗り出すアイリスは、シャガからの厳しい視線に自然と背筋を伸ばす。
『チャンピオンたるもの表情を崩すな。』…1回戦に続いて敗戦となった自分の身を案じるアイリスの心優しさを知りながらあえてシャガはそう視線に含ませていた。
「お疲れ様ですホミカさん。」
「あぁ。頼んだよラングレー。」
「はいッ!」
「シケた顔してんなよバージル!」
ドガースを小脇に抱えたホミカがバージルの背をバチン!と叩く。
「ホミカさん…。」
「大丈夫、アンタの力を出し切ればどうにかなるって。そのために鍛えてきたんだ。今日は勝てるさ!」
割と強めに引っ叩いたのにリアクションが薄いバージルに『重症かもしれない』と思いながらホミカが激励する。
「2人でスタジアム中の理性ブッ飛ばして来な!」
1人なら困った話にもなるが幸いコレはダブルバトル…頼みの綱は相方のラングレーと言えた。
「よーしスイレン!次は妾たちの番じゃ!」
「うん、行こうハプウちゃん!」
ネクストサークルから飛び出すハプウとスイレンが入れ替わりのシゲル&セイヨタッグと拳を合わせてバトンタッチすれば、試合を終えた2人をベンチの皆で迎え入れる。程なく次の試合がシームレスで始まるのだ。
「これよりダブルバトル1、チーム<マナーロ>ハプウ&スイレンvsチーム<ヒガキ>バージル&ラングレーの試合を行います!!」
「さて、このダブル1はチーム<マナーロ>側はナンテ監督、ダブル2同様1回戦と全く同一タッグを投入。四天王ハプウとスイレン選手のいわゆる"黄金ペア"はチーム<シュート>戦のダブル1では、ジムリーダーカブが支援するシャクヤ選手の伝説の鳥ポケモンファイヤーの前に終始押し込まれての敗戦となっております。」
「あのファイヤー、ホント凄かったよね〜。」
ひこうタイプを専門とするジムリーダーのフウロからすれば無理もない感想だ。
「チーム<マナーロ>が誇る"黄金ペア"…その黄金、ってところの由来を是非見たいわね。」
カミツレがコメントを繋げる。
「対するチーム<ヒガキ>は初タッグ、チーム<スズラン>のコウヘイ選手に敗戦を喫したバージル選手と1回戦では控えに回っていたラングレー選手が今大会初の試合を迎えます。」
「ドラゴンバスター相手にわざわざドラゴン出すとも思えないけど…。」
コメントの合間にフウロは支給されたスポーツドリンクで喉を潤す。ペットボトルを握る左手に対し、空いた右手で飛行服の首元のチャックを掴み、ジー、と胸元を冷やそうと開けにかかったところでカミツレにチャックを上げ直されてしまった。
『はしたない。』そんなような意の込められた視線にフウロは苦笑いしながら小さく頷き、謝意を示すよりなかった。
「さぁフラージェス、出陣よ!」
「リーフィア、出動!」
「ふぉあああ…!」
「りぃ〜ん!」
青い花と一体化したような容姿のガーデンポケモンフラージェスをラングレーが、イーブイフレンズの一角で体の各所から草が生え、耳や尾が切れ込みの入った葉と一体化しているしんりょくポケモンリーフィアをバージルが投入。青々とした草と花の取り合わせは、見るものに爽やかな印象を与える。
「ゆくぞ、ヌオー!」
「ぬおーん。」
ハプウが繰り出すのはヌオー。相変わらずぽけーっとした顔をしている。
「いくよ…みんな、集まって!」
スイレンが上空、真上目掛けボールを放り投げる。
「なんですと!?いきなりダイマックスかよ?」
「いや、ダイマックスボールではない。普通のモンスターボールだ。」
素っ頓狂なリアクションのコテツにすぐレンブが返す。スイレンのオーバーなボール投入、その意味をすぐみんな理解する…
キラリン!
遥か上空で何かが光る。その波長に導かれ、彼方より数多の小さな影が寄り集まり、やがて大きな『魚影』を現していく。
「ぐおあああああ…!!」
「「な、なにィッ!?」」
「この子たちが、私の秘密兵器!」
巨大な怪魚がフィールドに降り立つ。こざかなポケモンヨワシ…同じ個体の仲間が200体近くの仲間と密集して形成した『群れた姿』であった。
「デカァァァァァいッ、説明不要!!スイレン選手の繰り出した群れた姿のヨワシが、フィールドの空気を支配しているぞーッ!!」
「天よ震えよ!大地に恵みを!ヌオー、あまごいじゃあ!!」
「ぬおーん。」
主人のテンションを受けても特にのほほんとした表情のままヌオーは珍妙な踊りで雨を呼ぶ。
曇天がヒガキスタジアムの開閉された屋根を覆うように包み込み、ポツリポツリと雨が降り出す。言うまでもなくハプウ&スイレン組に有利な盤面作りだ。
「不味い、リーフィア、パワーボールを!」
「りょ。」
ボッ…
すかさず反応するバージルに応え、リーフィアは全身を発光させる。そのまま全身の発光が空へ打ち上げられれば、
「はじけて、まざれッ!!!」
リーフィアのエネルギーを変換させた擬似太陽が曇天を瞬く間に打ち消してゆく。ダブルバトルとなれば定石である有利なフィールドの奪い合いだ。
「釣れたッ!」
そこにスイレンはほくそ笑む。刹那、輝くはZの光。
「ッ!?まさか、あまごいは最初から囮で…!?」
即座に天候を奪い返しにかかったのは悪手であったか、とバージルは目を見開く。
「はぁぁぁッ!」
顔の前でクロスさせた両手を折り重ねるように上昇させてから左右水平に伸ばし、そこから気をつけの形に前方へビシッと伸ばす。
ゼンリョクポーズをこなしたスイレンのオーラがZパワーとなり、ヨワシはそれを身に纏う。
「いけないッ!フラージェス、盾になるのよ!」
「そうはいかせるかぁ!ヌオー、がんせきふうじ!!」
「ぬおーん。」
ゼンリョクポーズからみずタイプのZワザではないと察したラングレーがフラージェスをリーフィアの援護防御に行かせようとするところに、ヌオーが四方を囲む石柱にて行手を阻む。
「くッ!」
ラングレーとハプウの視線が交錯する。フラージェスがジロリ、ヌオーを見据える。
「 天から静かに降り注ぐ雪…無数に煌めく氷の結晶…大地を覆う冷たきZよ!熱き我がソウルと共に、今再び天へと昇れ!」
怪魚の大口がガパと開かれ、急激に周囲が冷気で包まれる。
「レイジングジオフリーズ!!」
「よぉぉぉひょおおおおお!!」
「くっ、リーフィア、ま、まも…!」
ヨワシの大口から猛烈な凍気が放たれる。バージルの思考が僅かに遅れる。
「ふぃあ〜〜〜ッ!!」
それが致命的であった。
「Zワザが炸裂!効果は抜群だぁぁぁぁぁッ!!」
「バージルくん、指示出しが遅れたわね。」
「うん。ちゃんと防御体勢に入れてたら、あるいは…。」
事前に1回戦の試合記録を見ているカミツレとフウロからすれば、バージルの内面の焦りも分からないものでもなかった。
ドパァァァァァ…!!
「じぇッ!」
リーフィアを閉じ込めたZの凍気が一気に砕け、氷の破片ががんせきふうじの石柱にぶつかり、共に霧散する中、
「ぬおッ!?」
「な、なんじゃ!?」
新緑のエネルギー弾がヌオーへ直撃した。
「あーッと!Zワザ炸裂の直後にヌオーが被弾!カミツレさん、これは一体?」
「フラージェスの、おそらくはエナジーボールかしらね。審判がポケモンチェックの為フィールドへ入ろうかという一瞬のタイミングを突いての一発。」
「がんせきふうじで行手を塞がれた段階でラングレーちゃんはリーフィアへの援護から素早くヌオーへの一撃に切り替えたんだよ。」
一方のリーフィアはその場に倒れ込み、完全に目を回していた。
「リーフィア、戦闘不能!ヨワシの勝ち!!」
ハプウ、残りポケモン3体。ダウン可能数残り2体。
スイレン、残りポケモン3体。ダウン可能数残り2体。
バージル、残りポケモン2体。ダウン可能数残り1体。
ラングレー、残りポケモン3体。ダウン可能数残り2体。
ウオオオアアア!!
「あーッと!一撃で倒れてしまったーッ!!序盤から大変なバトルとなっております!!」
「ヌオーの方は、皮一枚繋がった、ってところかしらね。」
みずとじめんの複合タイプはその組み合わせから唯一くさタイプでしか弱点を突けない。それが故にくさタイプの技を叩き込まれればひとたまりもないのだが、そこを耐えるのは流石に四天王の役職を担うだけあるとカミツレはハプウを評価した。
「すっげー!スイレン、コオリZゲットしてたんだ!」
「ぴっかちゅ〜!」
「お前がアローラを飛び出してすぐの頃に氷の洞窟で釣りをしてたら一悶着あったらしく、その末に持ち帰ったんだとさ。」
詳しくは俺も知らないが、とカキがスイレン本人から伝え聞いた話にサトシも深く追及はしない。
いきなり相手のポケモンを1体、それもあのバージルのポケモンを破ったのだ。そのインパクトがなにより大きかった。
「しかし相手もタダでは転んでくれないみたいだね。」
シゲルが問題としたのはヌオーのダメージよりは、援護防御から即座に判断を切り替えたラングレーのトレーナーIQの高さである。
当たり前の話ではあるがこの試合、簡単に決しはすまい…。
「よいぞラングレー。よくぞその択を取れた。」
顎に手をやりながらアデクが呟く。倒せこそしていないがヌオーは間違いなく致命傷。相手の片方に切り札を使わせての実質的な1:1交換と考えれば盤面としてはそこまで悪いものでもない。
「あとはバージルさんさえ持ち直してくれたらなんだけど…。」
リーフィアをボールに戻すバージルの後ろ姿をアイリスはベンチから見守るよりなかった。
『バージル』
18歳。ポケモンレスキュー隊。
イーブイフレンズを従えて日夜非常事態となれば『チーム・イーブイ』の仲間たちと共に出動する。
イーブイ系列の扱いに関してバランス良く長けており、3年前のイッシュリーグヒガキ大会で優勝するほどの腕前だ。