3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 マナーロ・アイランド中至る所に住み着いたナマコブシたちを海へ投げ帰してゆくサトシたち。
 それぞれに作業を進める中ピカチュウがロケット団に捕まってしまうのだった…!


PNTT Fighting! 投げろ!ナマコブシ③

「ちゅうううううッ!!」

 

バチバチバチバチバチィ!ガン!ガン!ガン!

 

「ニャはははは!無駄無駄!ピカチュウ対策はバッチリの対電撃&対衝撃特化特製ネットだニャー!おみゃーの10まんボルトもアイアンテールもでんこうせっかも、もちろんエレキネットも中から破るには役に立たないのニャ!!」

 

 勝ち誇り、高笑いするニャースをピカチュウは睨む。

 

「それだけの技術力があるなら世のため人のために使うべきだと思うけどね。やれ、リククラゲ!」

 

「くぅ〜らッ!ぱっぱっぱっ!!」

 

 ド正論を吐きながらのシゲルがリククラゲをけしかけ、ドサイドンロボへ種子の形のくさエネルギー弾を発射させる。

 命中するもロボにさしたる損傷は見られない…。

 

「「なーっはっはっはーい!」」

 

「見た目がドサイドンなだけで中身はゴリゴリのメカなのよ!」

 

「強固なプロテクターが機体をガッチリガードするよう設計してあるのさ〜!」

 

「くッ…!」

 

 痛手を与えるにほど遠い結果にシゲルは苦虫を噛み潰す表情を見せる。

 

「おっと、お喋りはここまでだ。じゃあなジャリボーイたち!煙幕弾、発射!」

 

 ロケット団からすればピカチュウを奪えばこの場の目標は達成。長居する理由もない。

 ドサイドンロボは左掌の穴からサトシたちの足元へ向け、黒い球を撃てば、

 

「ゴホゴホ、くっそ、ピカチュウ…!」

 

 球は地面に着弾後すぐに黒煙を撒き散らす。

 

「それじゃあここらで…。」

 

「「「帰る!!」」」

 

 サトシたちの視界を奪い、ドサイドンロボは両足裏からジェット噴射で上昇、飛び去っていってしまう。

 

 

 

「なんだアレ?空飛ぶ…ドサイドン?」

 

「サトシのピカチュウ!」

 

 頭上を飛び去るロボを見上げるのは海辺を回っていたスイレンとギラだ。

 

「待てー、ロケット団!!」

 

 そこにロボを追うようにサトシたちが走り込んで来るのでスイレンは事態を把握する。

 

「あっちの方角は…メレメレ島か!」

 

 島単位の移動の後、空港からピカチュウを連れ逃げ去る算段か、とシゲルが読み取った。

 となればメレメレ島に辿り着かれては厄介であった。人混みに紛れられては探すのも困難だからだ。

 

「おーいサトシ!!」

 

「博士!!」

 

 波打ち際から苦々しく遠ざかる機影を眺めていたところにククイ博士が半球型の水上レース用カートに乗って駆け付けてくる。

 カート自体に推進能力はなく、紐で括り付けたみずポケモンが泳いで進む仕組みだ。

 

「すまん、コレしか用意できなかった。」

 

「ありがとう博士!ワニノコ、キミに決めた!」

 

「わにわにわ!わにわにわ!」

 

 ロケット団を取り逃してすぐシゲルから打診を受けたサトシはククイ博士に連絡を取り、海上での移動手段の用意を頼んでいた。

 もっと高性能なクルーザーなどがあればと悔やむ博士をよそにサトシはルアーボールから出したおおあごポケモンワニノコに、エンペルトから渡されたカートとの連結用装具を取り付けていく。

 

「ずいぶん手慣れてるな。アルトマーレ式の旧モデルなんだが。」

 

「3年前に行ったことあるからね。」

 

 サラリとアルトマーレへの渡航歴を話すサトシ。基本的に人に過去の来歴を話すことのないサトシだ。

 ククイ博士もサトシの旅の話の全容を把握しているわけではない。今こうして新たな情報が出されたが、状況がその深掘りを許してはくれなかった。

 

「頼むぜワニノコ、いっけーッ!」

 

「わにゃ〜!」

 

 装具を取り付けてサトシはカートに乗り手綱を握る。海に飛び込んだワニノコはカートを引っ張りながら凄まじいスピードで泳ぎ始める。

 

「待て〜〜〜ッ!」

 

 水上カートが勢いよく大海原へ漕ぎ出されていく。事態を静観するよりなかったギラの周囲をスマホロトムが飛び回り、幼馴染が囃し立てた。

 

「今こそだよギーくん。マルチな海の男の本領発揮して、我らがチャンピオンをお助けだ〜。」

 

「チャンピオンを追いかけて、飛んでったやつに追い付かせればいいんだな。」

 

 イライズが急かすまでもない。ボールから出すのはサーフライドでその身を預ける相棒…扁平な胴体から翼のように伸びた大きなヒレと、布のように薄い尾ヒレが特徴のカイトポケモンマンタインだ。

 

「もぁ〜ん。」

 

 ダークブルーの背面に飛び乗るギラは、軽く足踏みしてマンタインに合図を送る。するとギラを乗せたまま水面へダイブしたではないか。

 

「ギラさん!?」

 

「微力ながらチャンピオンに助太刀してくる!海の男の端くれとして出来ることを、ってな!」

 

 

 

「ぴかぴ〜!!」

 

「あん?オイ、ジャリボーイ追いかけてきてるぞ。」

 

「相変わらずしっつこいわねぇ〜どうする?」

 

 どうする、っつったって、とコジロウは眉をひそめる。

 このドサイドンロボ、確かに耐久性と飛行能力に優れてはいるが、反面外敵への妨害機能はそこまで充実させていなかった。先程逃走のために使った煙幕弾1発分しか左掌の装弾スペースには装填出来なかったし、右掌はピカチュウ捕獲用特製ネット射出装置を兼ねているので飛行モード中はこちらからの手出しは出来ようがないのだ。

 

「まぁー気にすることないニャ。どうせそのうち波に呑まれて追いつけなくなるニャー。」

 

「そぉぉぉぉぉ、なんッすッ!!」

 

「狭い狭い狭い!」

 

 2人と1体用に設計したコクピットの中で急にボールから出てくるソーナンスをムサシはすぐボールへ戻した。

 

 

 

「くそー!近づけてるようで距離が縮まらない!」

 

 ドサイドンロボを追いかけるサトシ。ワニノコのスピードを信じ水上カートから手綱を握り続けるもイマイチ射程に捉えきれない状況が続いていた。

 

「おーい、チャンピオン!」

 

「ギラさん!?」

 

「俺が先導する、マンタインの後の軌道にワニノコをなぞらせてくれ!」

 

「はいッ!」

 

 波導ではない、直感であった。ギラを信ずるべきだという第六感をサトシは信じた。

 簡潔に先導を申し出たギラが前に出れば、サトシはそのピタリすぐ背後につく。そうしてマンタインの泳ぎ進むコースをトレースし始めた。

 

「すっげー!さっきまで全然近付けなかったのに!」

 

「真っ直ぐ突き進むばかりが最短距離とは限らないのが海なのさ。そうらッ!!」

 

 マンタインを巧みに操り、ギラは波から飛び上がれば空中で右、左、右、上と回転を加えるスターミートルネードを披露。着水と同時にさらに加速してゆく。

 流石にカートでジャンプアクションはできないサトシであったが、ギラのコースを忠実になぞり追従していた。

 

 

 

「見て!サトシたち、ぐんぐん距離を詰めてる!」

 

「流石はギラだ。選手権で優勝しただけあって海をよく知ってる!」

 

 サトシは一刻も早くロケット団の真下につこうとひたすら真っ直ぐワニノコを進ませるのみであった。それが為に波の流れに逆らい、本来出せるはずのスピードに乗り切れていなかった。

 だがどうだ?ギラが先導を始めてからはみるみるうちにドサイドンロボへ近づいていった。

 

「うーむ、そろそろかな。」

 

 シゲルがポツリ呟きながらドサイドンロボを見る。その頃ロケット団側には異変が起きていた。

 

 

 

「ちょっと、なんか飛ぶスピード落ちて来てない?」

 

「燃料切れはないはずだぜー?」

 

 キテルグマの巣から抜け出し、アローラの島中を転々としながらバイトに打ち込んで作り上げた『メカドサイドンくん』なのだ。マナーロ・アイランドからメレメレ島までの燃料はじゅうぶん積んでいた。それが段々とメーターが指し示す飛行速度は低下していく…

 

シュルルルルッ!

 

「な、なによなによコレ!?」

 

「つ、ツタ!?どこからこんな!?」

 

 

 

 側から見れば異変は一目瞭然であった。ドサイドンロボのボディに絡まるようにツタがあちこちから巻き付いてゆく。

 

「よーし、作戦大成功。」

 

「そうか、やどりぎのタネだな。」

 

 タケシにシゲルはフフ、と笑みを向ける。御名答という意を込めながら。

 

「ひと目見て真正面から装甲を抜くのは面倒だと思ってね。攻めるフリをして搦め手を使わせてもらったのさ。」

 

「「「「「「賢い!賢い!シゲル〜!!」」」」」」

 

「いやぁありがとう、ありがとう。」

 

 ガールズを制しながらシゲルは水平線を走るサトシに後を託す。お膳立てはした。あとは決めるだけだ、と…。

 

 

 

「なんだかよく分からんがチャンスらしいな!いけっ!!」

 

 ボディ全体がツタに襲われているドサイドンロボに近付けば、ギラがボールを投げ込む。

 

「おーーーん…。」

 

「ネイティオだ!」

 

 サトシがすぐに反応する。せいれいポケモンネイティオは先端部を赤と黒のツートンに染めた白い翼を広げ、羽ばたきはせずとも飛行を問題なくこなす。サイコパワーを用いて飛んでいた。

 

「ネイティオ、ねっぷう攻撃だ!」

 

バサァ!バサァ!バサァ!

 

 文字通り高熱の風を吹かせるので初めてネイティオは翼を羽ばたかせる。

 

シュルルル…ボワァ!

 

「「「あちゃ!あちゃ!あちゃちゃちゃちゃあ〜!!」」」

 

 ギラの狙いは単純明快、やどりぎのタネが発芽して伸び放題のツタを熱し、火を付けたのだ。

 

ボワァ…ブチリ!!

 

「あぁっ、ピカチュウが!ちょっとニャース、特製ネットじゃあなかったわけ!?」

 

「あ、あくまであのネットは対ピカチュウ特化であって、それ以外の攻撃に対しての耐久力はそうでもないんだニャー!!」

 

 やどりぎのタネを通して火だるまになるドサイドンロボ、その右掌から伸びたネットにも引火すれば、あっさりとピカチュウごと海へ落下してゆく。

 

「ピカチュウーーー!!」

 

「ぴかぴーーー!!」

 

 空中でピカチュウはロボから切り離されたネットを振り払い、主人の胸へダイブする。

 相棒をしっかり受け止めるサトシはピカチュウを左肩へ運び、詰めの一手を打った。

 

「ピカチュウ、10まんボルト!!」

 

「ぴぃぃぃ、かぁぁぁ、ちゅうううッ!!」

 

バチチチチチィィィ!!

 

「「「あばばばばば…!!」」」

 

 ツタが機体内外問わず侵食し、さらにそこから着火されては如何に頑丈につくられたメカドサイドンくんでもどうしようもなかった。

 

ドッカァァァァァン!!

 

 シャットアウト出来ない電撃を浴び、機体も盛大に爆発四散。ロケット団は吹っ飛んでゆく。

 

「あーあ、なんだかんだで今日も失敗しました、って訳ねー。」

 

「ん?おい、なんだアレ?」

 

「なにか飛んでくるニャ…ってアレは〜〜〜ッ!?」

 

「くぅぅぅ〜!!」

 

 キラリと光が走り、巨体を空中に踊るように迫り来るはピンク色の頭に黒いボディ…キテルグマが両腕を前に突き出したポーズで飛んで来ては、吹っ飛ぶロケット団をキャッチしてサトシたちの視界から去ってゆく。

 

「「「な、なにこの感じ〜〜〜?」」」

 

「そぉぉぉぉぉ、なんすッ!!」

 

キラリ

 

 剛腕に抱かれるロケット団はげんなりしながらこう呻くよりなく、キテルグマはそのまま水平線の彼方まで消えていった。

 

「キテルグマって、そらをとぶを覚えるのか?」

 

「多分あんなことできるのはあのキテルグマだけだと思う…。」

 

「ぴぃかぁ…。」

 

 呆気に取られたのはサトシとギラだけではない。

 一部始終を見守っていたスイレン、タケシ、シゲルにスマホロトム越しのイライズも予想だにしない幕引きに、開いた口が塞がらない、といった様子であった。

 

 

 

 サトシとギラが海上より戻って程なく夕方となり、ナマコブシ投げ大会は終了時間を迎えた。マナーロスタジアムに参加者たちは再度集合している。

 

『はーい。皆さんのおかげでマナーロ・アイランド中に大量発生したナマコブシのおおよそ8割が新しい餌場へとお引っ越ししてくれました〜。』

 

 残りちらほらいる2割はエーテル財団やアルバイトの方々に任せる方針であると頭上を飛び交うスマホロトム越しにイライズは説明する。そして…

 

『本日1番ナマコブシ投げを頑張ってくれたのは、925体もぶん投げてくれたヒロキさんでした〜200万円獲得、おめでとうございま〜す。』

 

「やったぜユカ〜!」

 

「お前さ〜ん!」

 

「アツアツだね。」

 

「そういえばあの2人、卒業してすぐに婚約したんだったな。」

 

 結婚資金に充てる大金を手にした学友たちの喜びようをスイレンとカキが見ている中、サトシとギラは固く握手を交わしていた。

 

「ギラさん。助けてくれてありがとうございました。おかげでピカチュウを取り返せました。」

 

「ぴかぴかちゅう。」

 

「余計なお世話だったかもしれないが体が勝手に動いてたんだ。やっぱり地元のヒーローだもんな。きみは。」

 

 サトシとピカチュウが頭を下げれば、とんでもないとそれをギラが制する。

 

「決勝戦、頑張ってくれよ。応援してるぜ。」

 

「はい!」

 

 大会が終われば用は済んだ、とギラはスタジアムを後にする。

 その背中をイライズのスマホロトムが追いかけていくのを見送り、サトシは振り返れば、チーム<マナーロ>のメンバーが揃っていた…ジェニーを除いて。

 

「あれ?ジェニーさんは?」

 

「サトシたちに先に合流してるとばっかり。」

 

 スイレンに合流したマオも辺りをキョロキョロ見回すがジェニーの姿は見られない。

 

「「ボス〜!た、大変でさぁ〜!!」」

 

 そこに走り込んで来たのはバイトのスカル団2人。

 

「どうしたのそんな慌てて?」

 

「あ、姐さんが胡散臭い野郎と一緒に…!!」

 

 報告を聞いたサトシたちは、ジェニーを追いかけ慌ててスタジアムを後にするのだった。

 

 

 

「サトシ、どう見る?」

 

「分かんない、多分、ジェニーさんと一緒にいるのは意図的に気配を消してるんだ。」

 

 サトシの波導を読み取る技術により、ジェニーが港にいることを掴んだ一行は全力で急行していた。シゲルが尋ねた事柄に対しては、むしろ『気配を消していること』そのものが、相手が只者ではないことを示していた。

 もっとも、ロケット団の襲来でその『気配を消している胡散臭いやつ』の感知が遅れた事実に変わりはないのだが。

 

「やはり、ジェニーさんを連れ戻しに来たポケモンハンターとかか?」

 

「そうであったらば妾がギッタンギッタンにしてジュンサーさんに突き出してくれるわ!」

 

 カキの予測にハプウは激発する。そうして辿り着いた港にて、

 

「あっ、あそこ!いたッ!」

 

 目敏くジェニーの姿を見つけるスイレン。その隣にいる『胡散臭いやつ』は、サトシとタケシからすれば知己であった。

 

「「ハ、ハンサムさん!」」

 

 サトシとタケシの顔が青ざめる。むしろポケモンハンターズギルドの残党だった方がマシであったというくらいに。

 それは、考える限り最悪の巡り合わせと言えた。

 




 『国際警察』
 ポケモン世界において地方を股にかけて活動する警察組織。
 世界中あちこちにエージェントを派遣しており日夜危ない組織や犯罪者の影を追いかけている。
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