3 years later〜虹の向こうに〜 作:nami73
『強くて硬い石の男』として今こそ兄から受け継ぎ、託されたものを示す時と迷いを振り切ったのだった…。
「アキラさん!今こそ"アレ"やりましょう!!相手にとって不足なしッ!!」
「よっしゃあああああッ!!」
ジロウにアキラも同調すれば、サンドパンは改めて気合いを発散する。
そこでまたしても打ち上げられるパワーボールの日差しが、砂嵐を掻き消してゆく。
「こうなりゃ一気に決めてやるぜッ!!」
ここまでの流れを経てのケンタの策はシンプルなものであった。
メガニウムがにほんばれのパワーボールが打ち上がり、日差しの強まった一瞬に最大パワーのふんか攻撃を叩き込む…心得たバクフーンは既に全開のほのおエネルギーをボディへ溜め込んでいる。
「な、なんだアレ!?」
ジュンイチの視線に倣えば同じく目を見開くよりなかった。
「な、なにィッ!?」
その光景は、ケンタの想像を遥かに超えていた。とんでもない、そのひとことに尽きた。
「ハンマー、コネクトォッ!!」
ブッピガァン!!
「あーーーッと!!こ、これはーーーッ!!サンドパンが、は、は、ハガネールを持ち上げているぞーーーッ!!」
ハガネールはその名と分類の通り、鋼色の岩が数珠繋ぎになってボディを形成している。
その尻尾の末端、槍の穂先を思わせる菱形の部位の1つ手前の岩をサンドパンは振りかぶり、バクフーンとメガニウムめがけ駆け出していたのだ。
「ガーハハハ!!いいじゃあないか、実にいい!!よく鍛え込んであるな、あのサンドパン!!それだけじゃあない。おそらくあれほどの集中力を高めてハガネールを持ち上げるには、きあいパンチの精神統一を利用してると見た!!」
「ハガネールの重さは400から470kg余り…砂嵐の中で相手を翻弄しながらサンドパンは徐々に気合を込め続けていたのですね。」
きあいパンチの応用はかくとうタイプのジムリーダーであるシジマに、ハガネールに関することは同種を愛用するミカンにそれぞれ深く突き刺さる。
端的に言えば、2人とも胸が踊らされていた。仕掛ける方はもちろん、受ける側の対応も気になった。
「ねぉあああ…!!」
「こうなったら真っ向からぶつかるしかないぞケンタ!!」
「言われなくてもそのつもりだぜ!!」
バクフーンの全身がほのおエネルギーによる熱で周囲から見るとボヤけて映る。
「これでもくらいやがれ!バクフーン、ふんか攻撃ーッ!!」
「ばぁぁぁっくふがぁぁぁぁぁッ!!」
ドオオオオオッ!!
バクフーンの後ろ首の発火機関から強烈な熱線が発射されれば、サンドパンは両手で持つハガネールをかざしてガードする。
仲間を盾にする行為、一見誉められたものではないように映るがそれはジロウも折り込み済みだ。
「バクフーン、いけッ!いけッ!!いけェェェェェッ!!!」
「ふがぁぁぁぁぁッ!!」
ケンタの声に応え、バクフーンの熱線が勢いを増していきサンドパンの歩みが若干弱まる。
「耐えられるッ!!兄ちゃんがイワークの頃から大事に育て上げていたハガネールなら…兄ちゃんや俺の意思を強さに!硬さに変えて戦ってきたハガネールなら!!」
両腕を胸の前でクロスさせたままジロウは確信を言葉にする。
事実、少し押し込まれながらもサンドパンに身を委ねたハガネールはジッとバクフーンとメガニウムを視界に捉えたままだ。
「ここが正念場だ、サンドパンッッッ!!」
「んぱんッッッ!!」
チュッ、ドオオオオオン!!
臨界まで高められたエネルギーが大爆発を起こし、フィールド中を包み込んでゆく。
「サンドパンとハガネールが凌いだか!?それともバクフーンのパワーが押し切ったかーーーッ!?」
「ううッ…!」
「やったか…!?」
モヤが晴れてゆく中でジュンイチが呟けば、直後、頭上のパワーボールが巻き起こる砂嵐により霧散し、長柄を持った小さな影が躍り出る。
サンドパンだった。
「ぱぁぁぁぁぁッ!!」
「「な、なにィッ!?」」
「あーーーッと!!サンドパンは無事です!バクフーンとメガニウムを間合いに捉えたーーーッ!!」
「いけェェェェェ!サンドパンンンンン!!」
「ぱんぱんぱんんんんん!!」
「そんなッ!?サンドパンはハガネールを持ち上げて動くだけで精一杯な、は…ず…ッ…!」
叫ぶ中でジュンイチはすぐに気付く。サンドパンがすなあらしを使えない状態ならば、今にほんばれを打ち消したのは当然…
「コレが、俺とハガネールの、"意思"の強さだぁッ!!」
「がぁねぁッ!!」
ジロウが腹の底から咆えた。ハガネールも、一緒に咆えた。
ガガガッ!ガガガッ!ガガガッ!!ガガガガ!!
「あのハガネール、間違いありません。特性は"がんじょう"です。タフなボディと精神でどんな強力な攻撃でも一撃は必ず耐えられるんです。」
それはそのままミカンがはがねタイプのポケモンを愛用する理由にも繋がっていた。決して折れることのない彼らの不屈の闘志に魅せられているのだ。
「ハガネェェェル!!!ハンマァァァァァッ!!!」
「ぱぁぁぁぁぁッ!!!」
ブオオオオオンッ!!!
サンドパンが右手側よりハガネールの巨体を薙ぐように振り抜いてゆく。
バクフーンは、渾身のふんか攻撃により硬直を余儀なくされていた。
そこに飛び込むメガニウム。味方をカバーする理想的な動きだ。
「メガニウム、リフレクターだ!」
「がぁぁーにぁッ!」
シャキン!と物理攻撃に対する防御壁を素早く展開する。ダメージを全て防ぎ切るのはハガネールの質量的に不可能として少しでも被害を少なくするための一手であった。
「ハガネール、サイコファングッ!」
「がぁ、ねぃぶ!!」
「なッ…!!」
そして、それはジロウとしても予測の範疇!
バリリリリィッ!
サンドパンのスイングで迫るリフレクターを、ハガネールはものの見事に砕き割って見せたのだ。
「がにぁ!?ぶッ!!」
ガガァッ!
リフレクターを破られ、400kgの質量のフルスイングが襲えば、その4分の1ほどの重さでしかないメガニウムはひとたまりもなかった。
「光にぃぃぃ!!なぁぁぁぁぁれぇぇぇぇぇッッッ!!!」
「メガニウム、吹っ飛ばされたーッ!!」
「ばッ!?くぁ〜ッ!!」
「バクフーンッ!!」
ドッカァァァッ!!
全開パワーのふんか攻撃による硬直中のバクフーンの左横腹にもハガネールのフルスイングが叩き込まれれば、メガニウム同様フィールド後方のフェンスに叩き付けられ、綺麗なクレーターを作る。
天候の奪い合いの中で砂嵐に吹かれて飛び交う石粒がジョウト側タッグの2体の身を打ち、その蓄積もダメージに繋がっていた。
審判がメガニウムとバクフーンそれぞれの元に走り込み、チェックする…
「バクフーン、メガニウム、戦闘不能!ハガネール、サンドパンの勝ち!!」
目を回しダウンしているのを確認してのコール。勝ち名乗りに2体の名を告げたのは、『ハガネールハンマー』をきちんと連携技として認識してのジャッジであった。
ケンタ、残りポケモン2体。ダウン可能数残り1体。
ジュンイチ、残りポケモン2体。ダウン可能数残り1体。
ジロウ、残りポケモン3体。ダウン可能数残り2体。
アキラ、残りポケモン3体。ダウン可能数残り2体。
ウオオオオオッ!!イェアアアアア!!
「2体同時撃破ですッ!!ジムリーダージロウ、アキラ選手と素晴らしい合体技を披露し、一気に試合のペースを掴んだーッ!!」
「うむ!コレはいいぞ。まさに目が覚めるような戦いっぷりよ!!」
「あらー、ホントに上手くいったわね。」
ネクストサークルにて待機するカスミとしては、合体技の話に対してハガネールがそのままぶつかりにいった方が効率的なのでは?と意見したこともある。
それに対してのアキラとジロウの返しは『ロマンが足りない』というものであった。
その返しに他の男性陣がこぞって乗っかり頷くのがなんとも不快であったが、元よりカンナとのタッグでオーダーを固定されてるカスミとしてはそれ以上特訓に対して特に口出しはしなかった。
今回実戦で初めて上手くいったのを見せられてはその破壊力に関しては認めるよりなかった。
『ハガネールハンマー』による豪快なダブルノックアウトは、そのまま試合の流れをジロウとアキラに掴ませた。
バクフーンとメガニウム、それぞれにエースを失いながらもケンタとジュンイチは踏み止まるが、一度掴まれた流れを奪い返すには及ばなかった。
「スピアー、戦闘不能!ドサイドンの勝ち!!よって勝者、チーム<セキエイ>ジムリーダージロウ&アキラ選手!!」
『ダブルバトル2決着ですッ!!序盤、鉄板の晴れ攻勢で押していったチーム<シロガネ>でしたが、やはりあのハガネールハンマーのインパクトは大きかったーッ!特性"がんじょう"で一撃を耐えたハガネールこそジュンイチ選手のゴルダックが倒すなど意地を見せましたが、抗戦虚しく押し切られてしまいました!チーム<セキエイ>がまずは1勝目!』
「タケシ、ジロウの奴やったな!」
「あぁ。あぁ…見事な勝利だった。」
何度も頷くタケシの目頭は熱くなる。
正直言ってジムリーダーとしては実力不足であった父ムノーと、ニビジム存続のために体を張るのはいいが奔放に過ぎる母ミズホに代わり大黒柱として幼い弟妹たちの面倒を見るためにその才を発揮するしかなかった3年前の自分の後ろ姿を、ジロウなりに噛み砕いてモノにしていたのを感じ取ることが出来て嬉しかった。
「お前なら、俺なんかよりよほど立派なジムリーダーになれるさ。」
画面越しにアキラと肩を組みながら観客に手を振って応えるジロウを見てタケシはまたジョッキを空にする。
今夜はいい夢が見れそうだ…そんな晴れやかな気分になった。
「それじゃあ皆さん、さっきの試合を見直していきましょうか。」
ナンテがミーティングを取り仕切る。アイナ食堂のテレビモニターは21時前の短いニュース番組に切り替わっていた。そこからほどなく予定通りに連続ドラマのアバンから始まる流れだ。
カントーvsジョウトという『伝統の一戦』は、その後の放送予定を変更することなく終戦していた。
「まさかあんなことになるとはな。」
カキが呟きながらスマホロトムを操作し、試合記録の動画を見つけて再生する。
パンッ
「はうあッ!?」
「ぴかぴ?」
シゲルは眠気まなこのサトシの鼻提灯にシャーペンを突き刺して夢の世界より連れ戻す。
テレビモニターのニュースも、先の試合の報道をしておりキャスターが原稿を読み上げていた。
「すみません、少しテレビ使わせていただいてよろしいですか?」
「はーい!」
「あまぁ〜ん。」
アマージョと厨房を清掃しているマオに許可をとってからナンテがスマホロトムの接続端子をテレビに差し込み、モニターをスマホロトム側の画面と共有させる。
その直前に映っていたニュース番組、その画面下部のテロップが、試合内容をシンプルかつ克明に伝えていた。
『PNTT カントー代表ストレート勝ち 決勝進出決定』
PNTT準決勝 ダブルバトル2
ケンタ&ジュンイチvsジロウ&アキラ
ダブルバトル 3C2Dルール
ケンタ ジュンイチ ジロウ アキラ
バクフーン● メガニウム● ハガネール◯ サンドパン◯
スピアー ゴルダック◯ ハガネール●
ゴルダック● ドサイドン◯
スピアー● ドサイドン◯
勝者 ジロウ&アキラ