3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 メタモンのプロフェッショナルであるお笑い芸人イミテによるセレモニーが終わり、遂に両陣営が睨み合う。
 最初の対決は新旧サトシのライバルが入り混じるダブルバトル2からだ!!


PNTT Fighting! 決勝戦 ダブルバトル2 シゲル&ハウvsシンジ&ジロウ①

 両陣営スタジアム中央よりベンチまで引っ込めば、初戦を戦うダブル2の4人はトレーナーサークルにて改めてフィールドへ向き直る。

 

「これよりダブルバトル2、チーム<マナーロ>シゲル選手&ハウ選手vsチーム<セキエイ>ジムリーダーシンジ&ジムリーダージロウの試合を行います。」

 

 

 

「あら?あの子…。」

 

「どうかしたのセイヨさん?」

 

「あぁ、彼は確かクラスメイトの…?」

 

「えぇ。ジュンくん。そっか…審判になったんだ。」

 

 シンオウ代表の罰金が口癖なそそっかしい彼ではない。

 審判サークルに入り、ハキハキと進行してゆくポケモンゼミを去っていった元級友の現状を思わぬところで知り得たセイヨはほっこりと笑みを浮かべる。

 関わりがある中でサトシは彼のことは完全に忘れており、思い出したのはタケシだ。

 可愛さと性格の悪さが同居するセイヨだが、それは決して酷薄と言うわけではない。同じ釜の飯を食う同級生たちの写真を学生時代からずっと肌身離さず持ち歩いているほどには人情家なのだ。

 

 

 

「あらまぁー、立派になっちゃって。」

 

「お知り合い?」

 

「サトシたちと旅してた頃にちょっと。ポケモンゼミにいたんですよあの子。」

 

「そう。」

 

 ネクストサークルでカンナにカスミも説明する。そう言えば3年前にポケモンゼミを訪れた時出会った面々がこの場に大体いるのか、と妙な感慨を抱いた。

 

 

 

「シンジさん。作戦の方は…。」

 

「打ち合わせ通りのままでいい。」

 

 簡潔にジロウに告げるシンジの後ろ姿をベンチから見るのはキクコと、最終戦を任されたヒロシだ。

 

『カルネさんに勝った奴を差し置いて美味しいところだけを持っていこうなんて観念は持ち合わせていない。監督の言う通りシングル1はお前でいい。』

 

 決勝まで温存されていたシンジに関しては満を持してのシングル1起用かな、と薄々予測していたのがチーム<セキエイ>や彼らの事情を知る者たちであった。

 そんな空気をシンジは入場前のミーティングで一言、あっさりと払拭した。ぶっきらぼうな物言いながらもキクコの弟子という立場を笠に着ることなくチームとしての実績を重視する姿勢を見せたのだ。

 

 

 

「シンジって、ダブルバトルできるようになったのかな?」

 

 テレビで中継を見るヒカリはポツリ呟く。そのきっかけとしては3年前、ヨスガシティ名物のタッグバトル大会にサトシやタケシと参加した時のこと。

 

『シンジも参加してたのか。』

 

『よりにもよってサトシのパートナーだなんて…。』

 

『決まったのなら仕方ない。だが!俺の足は引っ張るな?』

 

『おい!それがタッグを組む相手に言う言葉かよ!?』

 

 事前に配られたナンバーカードによる無作為なタッグ決め、その運命のイタズラでサトシとシンジは初手から一触即発な空気をバチバチに放ちながら大会参加となった。そんな中でまともな連携などは望むべくもない…。

 

 

 

「でもあのタッグ大会がなかったら、きっとあの出会いもなかったのよね。」

 

 サトシとシンジの確執は悪いことばかりでもなかった。それまでシンジはゲットしていたこざるポケモンヒコザルの育成に執心であったが、ついにはこの大会中に見限り、逃がすことでトレーナー契約を解除した。

 そこを拾い上げる形でサトシがゲットし、今では立派なゴウカザルとしてサトシ軍団ではエース級の一角を担うほどに成長している。

 この世の縁とは不思議なもの、とシロナが常々語っているのを思い出しながらヒカリは夏風邪でダウンしたケンゴにお見舞いメッセージをポケラインから送るのであった。

 

 

 

「いけぇリククラゲ!!」

 

「ジュナイパー、頼んだよ!!」

 

「くらららぁ〜い…!」

 

「じゅなッぱッ!」

 

「ボスゴドラ、バトルスタンバイ!!」

 

「頼むぞ、ハガネール!!」

 

「ごっどぅあああああ!!」

 

「はがねぃッッッ!!」

 

 

 

「さぁー、チーム<マナーロ>はジュナイパーとリククラゲのくさタイプでコンビを組み、チーム<セキエイ>はボスゴドラとハガネールで超重量級ポケモンを並べました!ダンデさんにカルネさん!この対面、どう見ますでしょうか?」

 

「はがねタイプには相性上くさタイプの技は効果今ひとつ、だがはがねタイプのポケモンは結構な割合でくさタイプに弱いいわやじめんを併せ持っていることが多いからダメージレース的に見るならばそこまでチーム<マナーロ>側が遅れを取るとも考え辛いな。事実、ボスゴドラはいわ、はがねタイプでハガネールもはがね、じめんタイプだからさ。」

 

「ボスゴドラに関してはメガシンカすればタイプははがねだけになっていわタイプが消えるわ。まぁ、リククラゲもジュナイパーもくさ技しか能がないわけではないけれどね。」

 

 ダンデとカルネが話すのはあくまでもタイプ相性を主に置いてのことに過ぎない。

 ポケモンバトルとはタイプの優劣のみで決まるものではないが一般大多数の認識に合わせてトークする技術もメディア進出するには必須なのだ。

 

 

 

「いくぞ、ハガネール!」

 

「がねぃあッ!」

 

 早速ジロウがシャツを脱ぎ、鍛え抜かれた上半身を露わにする。本気モードとなるその腕に巻かれているのは、キーストーン煌めくメガリング…。

 

「硬く、どこまでも硬く!ハガネール、メガシンカだ!!」

 

「がねるるるるるぁぁぁぁぁ!!」

 

 両腕を胸の前でクロスさせ、メガリングを起動させる。キーストーンから放たれた光がハガネールを虹色の繭へと包み込み、

 

「めぇぇがはぁがぁぁぁぁぁ!!」

 

 下顎には両側に3つずつ外側へ伸びた突起が現れ、下顎を全体的に覆うように装甲が追加。胴体は元からあった岩の柱と尻尾の末端が結晶化したメガハガネール…首の周囲にはいくつかの光沢が目立つ破片が回転している。

 青の虹彩が対峙するリククラゲとジュナイパーを見下ろしていた。

 

「でっけー!」

 

「いきなりメガシンカとは…リククラゲ、キノコのほうし!」

 

「ぶっしゅあああ〜!!」

 

「そうはさせない!ハガネール、すなあらし!!」

 

「ねぁあはッが!!」

 

ブビュウオワアアア!!

 

 リククラゲが胞子を相手方頭上から降りかかるように放てば、ハガネールはじめんエネルギーを変換させ強烈な風で砂と土を巻き上げさせてゆく。

 足元に置いたジロウのシャツが風に飛ばされ、先に撃ち上げられたキノコのほうしもボスゴドラたちに届く前にあえなく霧散してしまう。

 

「くッ!」

 

「オーケー、狙いは付けた!!」

 

 ジュナイパーは既に矢羽を翼弓にセットし、射る態勢に入っている。

 

「じゅなー…。」

 

「多少の視界不良くらいならジュナイパーにはないも同然…ッ…!?」

 

ゴツァッ!!

 

 必中の念を込めたが故の反応の遅れをハウは呪った。

 気付いた時にはジュナイパーは左脇腹を抉られるように振り抜く一発でスタジアム中央部、審判真後ろのフェンスへ叩き付けられる。

 その時ハウは、青い虹彩と目が合った…!

 

「シゲル!」

 

「間違いない、ハガネールハンマーだ!リククラゲ!!だいちのちから!!」

 

「くぉらん!!」

 

 リククラゲは黄色い触手をフィールドに叩き付け、その衝撃波をエネルギーの奔流として発生させ放つ。

 

「跳べ!ボスゴドラ!!」

 

「ごどぅぅぅらぃ!!」

 

「「なッ!?」」

 

 だいちのちからをかわすべくボスゴドラが跳躍を果たしたカラクリとしてはシンプルな理屈だ。

 纏う鋼の鎧、その重量を犠牲にしてのボディパージで強引に素早さを高めたのだ。それでも従来のパワーに翳りはない…!

 

 

 

「ボスゴドラジャンプだーッ!!メガハガネールを片手に持ったまま、リククラゲの上を取っているーッ!!」

 

「カルネさん。ハガネールって確かメガシンカしたら重さが倍近く増えたんだったよな?」

 

「えぇ。元の400kgから倍近くの740kgに増してるわ。それを軽々持ち上げ、振り回すだなんて…。」

 

 シンジのボスゴドラはチャンピオン2人から見ても相当に鍛え込まれている。こう言うより他になかった。

 

 

 

「させるもんか、ジュナイパー!!」

 

 審判のジュンが吹っ飛んだジュナイパーの容態確認するまでもなく試合の続行をさせたのは、シンプルに振り抜かれたハガネールによる殴打一発で倒れてはいないと確認していたからだ。

 フェンスに叩きつけられてすぐにゴーストタイプ共通の透過能力で影に隠れ、ボスゴドラの影に飛び移っているのも見えていた。

 

「ほぁぁぁッ!」

 

 影から飛び出し、ボスゴドラの真下より弓を引くジュナイパー。

 シンジに止まるつもりは、ない。

 

「ごどぅあああああ!!」

 

「止めるんだジュナイパー!」

 

 ビシュウ!とジュナイパーが矢羽根を放つ。が、キィィン!という金切り音とともにボスゴドラの鎧の前にあえなく弾かれてしまう。

 

「な、なにィッ!?」

 

 誤算であった。ボディパージで身軽になった分防御面の能力も低下したとばかりハウは考えていた。

 

「装甲の厚さだけじゃあない…アレはきんぞくおん!」

 

 シゲルの推察がズバリと刺さる。ボディパージで犠牲にした分の防御を体内からのきんぞくおんで補っていたのだ。

 

「構うなボスゴドラ。そのまま振り下ろせ!」

 

「ねぃぃぃぃぃ!!」

 

 ボスゴドラが振り下ろすハガネール、

 

「リククラゲ、受け止めてキノコのほうしをくらわせろ!!」

 

 それを真剣白刃取りの要領でリククラゲが触手を構え受け止め…

 

ズッガァァァァン!!

 

 切るには至らなかった。

 圧倒的な質量の暴力の前にリククラゲは押し潰され、フィールドには彼のいる位置を中心に巨大なクレーターが出来上がった。

 

「く…ハウ!ボスゴドラを狙うんだ!まだ空中にいる今のうちに!」

 

「もち!ジュナイパー、矢継早連撃でいくよ!!」

 

「ほぁぁぁぁぁッ!ほ!ほ!ほッ、ほッ!ほッ!」

 

「吹き飛ばせボスゴドラ!ラスターカノン!!」

 

「ごどぅぁぁぁ…づあッ!!」

 

ズバギュウウウ…!!

 

「うッ…!」

 

「ほぐぁッ!?」

 

 ボスゴドラの口が開かれ、放たれたはがねエネルギーの光線が矢羽根ごとジュナイパーのお腹に突き刺さる形で直撃。

 

「ふん…。」

 

 そのまま起きたエネルギー爆発を見ながらボスゴドラはドシン!と悠々着地し、ハガネールを肩に担ぐ。

 審判がフィールドインすればポケモンチェックに入り、

 

「リククラゲ、ジュナイパー、戦闘不能!ボスゴドラ、ハガネールの勝ち!!」

 

 ジュン少年は手早く、しかし確実に容態を確認からのジャッジ。コールを飛ばした。

 

 

 

シゲル、残りポケモン2体。ダウン可能数残り1体。

 

ハウ、残りポケモン2体。ダウン可能数残り1体。

 

シンジ、残りポケモン3体。ダウン可能数残り2体。

 

ジロウ、残りポケモン3体。ダウン可能数残り2体。

 

 

 




 『ジュン』
 13歳。ポケモンリーグ所属の審判。DPに出てきた罰金が口癖の彼ではない。
 3年前はポケモンゼミナールの学生だったがカリキュラムやシゴキが肌に合わず自主退学。その後旅を経て審判になったんだ。
 今でもゼミのマドンナであるセイヨさんに憧れたままだよ。
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