3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 カンナとカスミの師弟コンビがいよいよ本領を発揮した。
 プクリンを起点とした連携技の前にアシレーヌが倒され、追い詰められたスイレンはついにウーラオスを投入。
 ハプウのバンバドロとともに黄金ペアも全ての引き出しを総動員の構えを取った…。


PNTT Fighting! 決勝戦 ダブルバトル1 ハプウ&スイレンvsカンナ&カスミ④

「目にも止まらぬ連撃、残すは拳の痕のみ!!ウーラオスのすいりゅうれんだでスターミーダウーーーン!!コレでカントー師弟コンビも追い込まれましたッ!!」

 

「アレが秘伝のヨロイ…風の噂でしか聞いたことなかったけれど。」

 

 ダンデが喋らない以上場を繋ぐのは仕方ないとして、カルネから見て4つ年下の小僧が出て来たウーラオスの何を以て意識をトリップさせているのかは皆目見当もつかない。

 そこに飛び込むのはチャンピオン同士としても、カロス人の流儀としても、カルネには思いもよらないことである。

 ただ、この小僧の瞳が携えているのがセンチメンタルであったのが、妙に思えたくらいだ。

 

 

 

「ありがとうスターミー。」

 

 カスミはスターミーをボールへ戻す。アシレーヌを相手に張り合い続けて削られた体力を強烈な連撃で一気に刈り取られた。

 それだけでもウーラオスの脅威をリアルとして察するには余りある収穫と言えた。カンナとの連携もある…。

 

「頼んだわよ、ブロスター!!」

 

「ぶろっし!!」

 

 続けて繰り出すブロスターがプクリンと頷き合えばスイーッと近づき、彼女の右手にカールさせた本体を巻き付ける。

 

「あのプクリン、スターミーとだけじゃあない!」

 

「相方のポケモンを装備品として扱うに長けた戦法か!」

 

 思えばハガネールハンマーからしてチーム<セキエイ>の合体連携技はそうであるかともハプウは思わされる。

 そんなプクリンがジャコン!と右腕のブロスター、そのハサミを向ければ…

 

「ハイドロポンプ!!」

 

ボシュウウウ!!

 

「ぬおお、バンバドロ!!間に合わせよ!」

 

 放たれるは水流弾、狙いはウーラオス。そこに走り込むのはバンバドロだ。

 

 

 

「バンバドロが身代わりになってウーラオスを残す算段でしょうか?」

 

 ハガネールハンマーにせよカンナのプクリンを起点にしたカスミのポケモンたちとの連携にせよ欠点はある。

 あくまで片方を追加デバイスのように扱う関係上メインで戦うそれを振るうもう片方への比重が大きくなる。

 プクリンがブロスターを『装着』して戦うのならそれは実質プクリン単体とあまり変わらないのだ。まぁ、そこは連携を解除すれば済む話ではあるのだが…。

 

「多分違うな。少なくともしまクイーンにそんな気はないようだ。」

 

 シンジが断ずる。

 ヒロシも追従して頷いていた。

 

 

 

「お主たちがポケモン同士で"人器一体"を表現するならば!」

 

「私たちが表現するのは"人馬一体"!!」

 

「ぶるぅひひひぃぃぃん!!」

 

ダカラッ!ダカラッ!ダカラッ!

 

「ウーラオス!」

 

「べあっくぁ!」

 

 迫る水流弾を前にウーラオスはジャンプ。そこに走り込むバンバドロの背に跨り、ハイドロポンプをやり過ごす。

 

 

 

「信じられない!乗った!」

 

「あらま〜。」

 

 カロス地方にて、自宅のテレビで中継を見ていたユリーカとドラセナも興奮を隠せない。

 そこにキッチンから召使いのようにシトロンが観戦用の夜食を持って来ていた。

 

 

 

「カスミ。プクリンの波導もブロスターに使わせて。」

 

「はいッ!」

 

 この指示からハイドロポンプをサイコキネシスで操作しての択をカンナが切り捨てたとなればカスミが動く旨は決まっていた。

 突っ込んでくる『人馬一体』を真正面から迎え撃つ準備だ。

 

「ブロスター、波導の応用よ!」

 

「ぶぅろろろ…!!」

 

 右腕の発射口に波導のエネルギーを蓄積させてブロスターが形成させるのは、巨大な剣…!

 

 

 

「あのブロスター、弾を撃つだけじゃあないのか!?」

 

「特性メガランチャーの応用だろう。ブロスター自身と、プクリンの波導を組み合わせて強力なエネルギーを凝縮させている。」

 

 カキにシゲルがすかさず答え解説する。メガカメックスを通して波導の心得があるが故にすぐ導き出せた説論だ。

 

 

 

「波導!即ちスピリット!!」

 

「「必殺!!スピリット・オブ・ソード!!」」

 

「ぷうっくぅぅぅッ!!」

 

 カンナとカスミのシャウトがリンクし、プクリンがしならせるようにブロスターを、波動の剣を真横に振り抜く。

 

「スイレン!妾に任せよ!!はぁぁぁ…!」

 

 ここが勝負どころと踏んだハプウは思い切り開眼しゼンリョクポーズを決めてゆく。

 

「ポニ島に張り巡らされし大いなる根よ、我らに力を与え給え!!」

 

 ハプウから放たれたZパワーがバンバドロへ注がれ、全身に赤茶色をしたじめんの、地脈のエネルギーを纏う。

 その馬体に波導の剣が直撃するも、決して歩が緩むことはない!

 

「く、止まらないッ…!?」

 

「このいくさの、この大会の妾たちの集大成ッ!!見せ付けよバンバドロ!!」

 

 肝を冷やすのはカスミだ。

 メガランチャーにて強化された2体の波導を叩き込んでなお、バンバドロの突進が決して止まらないのだから。

 

「ライジングゥゥゥゥゥ…!!ランドオーバァァァァァァァァッッッ!!!」

 

「ぶるぅひひひひひぃぃぃぃぃ!!!」

 

「カンナ様ッ!」

 

 鬼気迫るカスミにカンナは短く頷く。その刹那、

 

ドドッ!!ドオオオオオッ!!

 

 バンバドロのゼンリョクの突撃が強烈なエネルギー爆発と共に閃光を起こし、皆の視界を真っ白に染め上げた。

 

 

 

「なんという凄まじい衝突!!バリアフィールド越しでも圧がとんでもないことになっております!!」

 

 フラッシュが収まり、モヤが風で消え、飛び交うカメラロトムからの映像をキャッチしている放送席はいち早くフィールドの状態が確認されてゆく。

 

「倒れてるのは…!」

 

 

 

「ひひぃぃん…!」

 

「ぶろし…!」

 

 バンバドロとブロスターだった。すぐさま電光掲示板には直前のリプレイ映像が流れる。

 バンバドロがプクリンへ取り付く直前、ブロスターは装着状態を解除してこちらも突撃。至近距離からのハイドロポンプを喰らわせながらZワザの直撃を受けていた。

 

 

 

「プクリンとウーラオスは!?」

 

 両チームとも倒れているのは片方のメンバーのポケモンだけ。もう片方同士の行方は…。

 

 

 

「上だ!」

 

 ダンデが端的に叫んだ。

 

 

 

 バンバドロの捨て身の突進に際してブロスターがその身を挺して飛び込んできた中、ウーラオスはバンバドロの背から、プクリンはその場から勢いよくジャンプし暴発するエネルギーの奔流から逃れていた。

 そしてラスト1同士の衝突は、飛び上がった直後から始まっている!

 

「つばめがえしッ!」

 

ガキィン!

 

 自由落下に身を任せる中、ウーラオスの鋭い手刀が空気に近いひこうエネルギーを纏いながら放たれればプクリンは両手から伸出させた『氷の刃』でコレを受け止める。

 こごえるかぜと勢いよくジャンプしたことによる空気の流れを利用して作った二刀流だ。

 

ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!

 

 

 

「あーーーッと!プクリンとウーラオス、空中で手刀と氷の刃をぶつけ合うーーーッ!!」

 

 

 

「見ろ!ウーラオスの腕が…!」

 

 両陣営ベンチから身を乗り出しながら空を見上げればアキラが指差す。激しい氷の刃とのぶつかり合いでウーラオスの両拳から腕にかけて凍結が始まっていた。

 

「タイプ相性はエネルギー間でも健在!加えてカンナさんのプクリンの方がレベルも高い!!これならウーラオスをこおり状態にしてフィニッシュだ!!」

 

 握り拳を振るわせながらアキラが叫ぶ。

 シンジは右隣のキクコ監督が眉を顰めているのを見てから思案し、すぐその理由に行き着く。

 カンナが本来のバトルスタイルから逸れているのだ。

 

 

 

「べあッく…!」

 

 程なくしてウーラオスの両腕が氷に包まれる。このまま全身を凍結させる、とは考えない。

 今のカンナは溶け出た後に全てを飲み込む『激流』であった。

 

「サイコキネシスッ!!」

 

「させない、ウーラオスッ!!」

 

「ぷぅくぅ〜ぶッ!?」

 

 ガツン!プクリンの両目にサイコパワーが宿る前にウーラオスの技とも言えない頭突きが突き刺さる。

 

 

 

「ウーラオス、強烈なヘッドバットでサイコキネシスを阻止ーッ!!」

 

「しかし両腕は封じられた。ここでプクリンを逃がせば勝ち目はなくなるぞ。」

 

 ダンデは馴染みだったウーラオスへ意識をトリップさせたままである。

 それでもコメントとして成立しているのは彼が天性のバトルマニアであるからに他ならない。

 

 

 

「ウーラオス、ここしかない!!」

 

「べあくぅ!!」

 

 頭突きをかまし、空中でバランスを崩したウーラオスは両足で仰け反るプクリンの頭頂部とテラスタルジュエルの中間を絡め取る。

 

ビキキキキッ…!

 

 

 

「あーッとウーラオス、両足でプクリンをキャッチ!!しかし場所が悪いッ!!こおりのテラスタルジュエルが放つ凍気が、容赦なくそのウーラオスの両足を凍らせてゆくーーーッ!!」

 

「いや、違う!ウーラオスはわざとあそこに組み付いたんだ!!プクリンを逃がさないために!!」

 

 ダンッ!とテーブルを叩きながらダンデが立ち上がり、叫ぶ。

 

 

 

「ウーラオス、あのままフィールドに落着してプクリンを締め倒す気ね。」

 

「あっ、そうだ!プクリンはふうせんポケモン!空気を吸い込んで体を膨らませれば、落下スピードを弱められるんじゃ…?」

 

「そんなことをしてみろ。空気と密接な関わりがあるひこうエネルギーを凍り付かせるほど強力なカンナさんのプクリンのこおりテラスだ。体内の空気ごとプクリン自体がこおり状態になるぞ。」

 

 ネクストサークルからウーラオスの攻め手を読んだカオルコにジロウが必死に対処法を浮かべるもシンジは即座にそれを否定する。

 ここにきてカンナの鍛え抜いた氷の奥義がカンナ自身の首を絞めることになるとは、とジロウは眉尻を下げるしかなかった。

 

 

 

「カンナ様…!」

 

「コレは、仕方ないわね。」

 

 カスミのブロスターは完全に沈黙しており動けない。

 審判は身の安全からポケモンの攻防がひと段落してからでないとチェックを行えず、審判のコールを待たずに自己判断で戦闘不能ポケモンを回収するのはよほど緊急時の対応でない限りレギュレーション違反なのだ。

 だから少なくともこのウーラオスとプクリンのやり取りが終わるまではジュンもフィールドに介入が出来ない。カンナはボールを構えた。

 

「プクリン、戻ってきて!」

 

 フィールドのポケモンが対処できないならば交代する、サイクル戦の基本だ。

 が、ここでカンナのポケモン交代を許せばハプウとスイレンに勝ちの芽は消える。彼女にはまだ万全の3体目が残っているからだ。

 

「ぶるぅぅぅ…!」

 

「バ、バンバドロ!」

 

 ブロスターのハイドロポンプを至近距離から叩き込まれ、倒れたと思っていたバンバドロが力なく起き上がってゆく。

 カンナやカスミはもちろん皆ウーラオスとプクリンの空中でのやり取りに目がいっていた。気付いたのは、主人のハプウだけ…!

 

「よくぞ…よくぞ立った!最後の大仕事じゃ!!」

 

 ハプウを悲しませまいと持ち堪えたバンバドロが両前脚に力を込めてゆく。

 巨体に僅か残したじめんエネルギーを必死にかき集め、馬体を持ち上げた。

 

「コレが、妾たちの詰めの一手じゃあああああッ!!!」

 

「ばるひひひぃぃぃんッッッ!!!」

 

ズッシィィィン!!!

 

 バンバドロが持ち上げた馬体を勢いよく振り下ろし、蹄の型が残るほど両前脚を叩き付ける。

 最後のじゅうまんばりき、ターゲットは…いない。

 

「くうッ!?」

 

「カンナ様!?」

 

 ただ、フィールド全体にもたらした揺れは意識をプクリンの回収に意識を向け切っていたカンナの不意を突いた。ボディコンに閉じ込めた肢体がよろめくのをカスミが慌てて倒れぬよう支えに入る。

 尻餅をつく無様こそ弟子のおかげで晒さずに済んだカンナだが、彼女のボールが放つ回収光線は狙いが外れ、プクリンを引っ込めることに失敗していた。

 

「あとは任せたぞ、スイレンよ…!」

 

 最後の力を振り絞り、出し切ったバンバドロが今度こそ右横腹を地面に付けて倒れ込む。

 ハプウたちの意地が起こした交代阻止に、スイレンの瞳が、燃えた。

 

「ウーラオス!!」

 

「べあぁあッッッく!!」

 

 スイレンの瞳の炎が、ウーラオスにも伝播する!

 

「必殺、スイレン・スペシャル!!!」

 

「べあああくぁぁぁーーーッッッ!!!」

 

ズガァンッ!!!

 

「ぷくぁぁぁッ…!!」

 

 急速落下したウーラオスは逆立ち状態でフィールドに落着。

 着地時の衝撃で両腕の氷は砕け、入れ替わりで凍り付いた両足からの強烈なインパクトがプクリンを襲う。

 そのままウーラオスはフィールドに仰向けで横たわった。

 

 

 




 『人馬一体』
 読んで字の如くハプウのバンバドロの背にスイレンのウーラオスが飛び乗り爆走する。
 騎乗しながらでもウーラオスの連撃のキレがブレることはなく、バンバドロの突撃の足が止まることはない。黄金ペア決死の陣形なのだ。
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